今現在私のメインのスタビライザーになっているGUDSENというメーカーのMOZA Aircross2を今更ながら紹介したいと思います。
もともとお世話になっている代理店さんから発売直後にサンプルを提供頂いていたのですが、クソ忙しくてレビュー動画はまだ完成していません。m(__)m
とりあえず、この機材のレビュー動画を制作する際の備忘録も兼ねていろいろ書いていきたいと思います。
MOZA Aircross2の概要
搭載可能機材は?
Aircross2は中型のジンバルですが、ペイロード(耐荷重)が3.2kgとかなりの重量級機材を搭載できるジンバルです。後述しますが、このクラスの競合製品はZhiyunのWeebill SとDJIのRonin SCです。実機を見比べる機会が結構あったのですが、載せられる機材という観点ではMOZA Aircross2が最も優れていると感じます。私の所有している機材の一つに、「ミラーレスカメラの形をしたシネマカメラS1H」がありますが、これですら搭載可能です。(あの重量級レンズのS Pro50mmF1.4でも、アームを左側にセットするとバランスします。広いクリアランスがあるためチルトしても干渉しません。)
尚、メーカーの公開しているリストにかなりの数の組み合わせの情報が記載されていますので気になる方はそちらをご覧ください。
→MOZA AirCross 2 Camera & Lens Compatibility List
バッテリー駆動時間
これに関しては12時間となっています。私は毎回撮影が終わると、こまめに充電しておりギリギリまで使用したことがないので、これが正確なものかは正直不明です。ですが、普通に使用していてバッテリーが無くなって困る状況は今の所ありません。(そもそもバッテリー持続時間って搭載する機材や運用方法、バランス次第で大きく変わる筈なので数値化しにくいと思うんですけどね…)
おそらくガワを剥いだら18650のバッテリーが2本使用されていると思いますが、今までのGUDSEN製品と違って完全に専用バッテリーとなっています。充電が専用のチャージャーが不要になった点は何気に便利です。
ステータス表示モニタを搭載
Aircross2にはOLEDディスプレイが搭載されており、どんなモードのどんなフォロースピードに設定しているかが一目で分かるようになっています。これは私が大型機材を使用するときに愛用しているMOZA Air2で初めて搭載されたもので、画期的な表示体系になっています。というかAir2の表示系・操作系を引き継いだ仕様になっています。
具体的には各軸のロック・フォローの状態とフォロースピードが表示されます。これがAircross2のデフォルトのモニタ表示です。
他のモニタの製品だとPF(パンフォロー)/L(ロック)/F(フォロー)などの略語で表示されているものもありますが、この製品はそうではなく、Tilt/Roll/Panの3軸の状態とフォロースピードを併せて表示する表示です。
瞬時にフォロースピードが変えられる事が最大の特徴
最大の特徴と書いてしまいましたが、実際に私自身Air2やAircross2を愛用している最大のポイントがコレです。他のジンバルではスマホアプリなどを使うか、メニュー階層を下りて設定すればできる事は出来るのですが、Air2とAircross2は瞬時にフォロースピードの設定が出来るようになっています。予め定められたフォロー速度のジンバル動画を撮る場合なら、フォロー速度をコロコロ変更する意味はほとんどないと思いますが、実際に撮影したいフォロースピードってカットによっては意外とコロコロ変えたいものなのです。
ジンバル撮影じゃなしに、ビデオ雲台を付けた三脚にカメラを載せてパンやチルトすることを想像してみるとその利点は明確だと思います。いつも同じ速度でパンする撮影者はいないでしょうしパンやチルトの速度は使い分けを無意識にでもしているはずです。機械任せに陥りやすいジンバル撮影でパン、フォローの速度が変えにくい機材は、ますます機材任せの映像になってしまいます。
そこを分かっていて(かどうかは知らんけど)GUDSEN製品はユーザーに「じゃんじゃん好き勝手にフォロースピード変えてね」というインターフェースを提供しているのです。この機能が無いとカット毎にフォロースピードを変える事は不可能に近いです。 忙しい撮影現場でいちいちスマホ取り出して変更なんて出来ないですし、メニューを下りるなんてこともやってられません。
ダイヤルをグリグリするだけでフォロースピードが変えられる点が圧倒的に楽です。
ただし、このダイヤルはAir2からかなり軽いタッチに変わっており、不用意に触っていつのまにかフォロースピードが変わってしまっているケースが起こり得ます。なのでRecボタンを押す前は必ずフォロースピードが意図した数値になっているかを確認した方がよいでしょう。
便利な機能に関して
オートチューン
これはGUDSEN製品全般に搭載されているはずですが、今回もちゃんと搭載されています。とにかくこれを使えば通常使用において微振動がおきるケースはほとんど無いです。S1Hの場合MAXまで上がってますが、モーターのパワー感じません。走り撮りとかでは少し不安が残りますが、通常範囲内では大丈夫です。
バランスチェック
これは必要なのかどうかはわからないですが、意外とバランス取りを間違っているケースが散見されます。ちょっと例を出すのは申し訳ないですが、某有名サイトのレビューの下記写真が気になったので参考にさせて頂きます。
この記事の中で気になったのがこの写真の右上部分になります。
https://www.appbankstore.jp/article/?p=83190
ジンバルを使っている方であれば、何がおかしいかは一目で分かると思います。この状態は一応カメラが静止している状態なので、初めてジンバルを手にされた方は、これでバランスが取れていると勘違いしがちです。明らかにカメラのバランスが下にあるのでカメラは前を向いて止まっているものの、バランスはめちゃめちゃおかしい事になっています。このままカメラを上に向けたところで静止せずにすぐに前を向く状態になってしまいます。
こういったケースでもバランスチェックをするとバランスがおかしい事が機材が教えてくれるので、慣れるまではバランスチェックを使ってみるというのがいいかもしません。機械的なチェックができるというのは初心者にとって安心材料かと思います。
※ただし、このバランスチェックはYAW軸バランスのチェックはしていないはずなので、YAW軸バランスはマニュアルで確認してください。
ミミックモーション
これもワンオペだと使い道があるのか?と言われそうですが面白い機能です。スマホのジャイロセンサを利用しているのだと思いますが、スマホの向きをそのままジンバルに伝えてくれる機能になります。
下記のリンクを見るとどんなものかはわかると思います。
https://www.gudsen.com/aircross2_en/img/tigankongzhi.mp4
たとえばジンバルを持った撮影者とパンニングを行う撮影者で役割を分担させるという使い方ができると思います。個人的には要らんけど。。。結構おもしろいのでしばらく遊んではいました。
ホイールでのフォローフォーカス
私の持っているGHシリーズとS1シリーズでホイールを使ったフォーカスコントロールが可能です。
ですが、S1との相性はよいもののGH5だとかなりグリグリ回さないとフォーカスが移動してくれません。かなり遅い移動なのです。S1の場合は感覚的に凄く丁度いいのですがGH5系はちょっと使いにくいです。
また、結構S1での撮影でカメラがスリープに入ると接続がきれてしまい、接続しなおしをしなければならないケースがあります。これはカメラ側の問題なのかジンバル側の問題なのかイマイチわかりませんが、気づくと接続が切れているケースがあります。普段、私はジンバル側でカメラをコントロールする事は行わないので、ケーブルを使わない事が多いのですが、もうちょっと安定性が向上すると有効に使えそうな気がします。
余談ですが、ジンバルをバリバリ使っている方で、ケーブルを使ってジンバルからカメラのコントロールをしているユーザーは意外と結構少ないです。結局カメラ側でRecボタンにする、置きピンで撮影する、という手法に多くの方が落ち着いている印象です。
全軸ロック機構
ロック機構の採用はZhiyunが先だったかMOZA Air2が先だったかは調べていませんが、Aircross2にはGUDSEN製品として初めて全軸をロックする機構が備わっています。この半年に発売された最新ジンバルであればかなりの機種でロック機構が付いていますが、やっぱりコレがあると便利です。バランス設定時と移動時にロックできるのは大きいです。
縦位置動画に対応
Lブラケットをサイドで取り付けるタイプのジンバルなので縦にセットする事も可能です。まだまだ、最近WEB CMなどで目にすることが多くなった縦動画ですが、このジンバルであればカメラを縦にして撮影することが可能です。
超重量級機材S1Hを載せる
S1Hを載せる場合は少しイレギュラーな方法を使います。S1Hはそもそもデカいのでアームを伸ばし切ってもレンズの光軸がROLLモーターよりも左側に来ます。左右バランスはレンズの位置に近い所にあるのでこのまま手を離すと左に傾きます。
つまり、このアームはもう右には伸ばせないので左右のバランスはこのままで撮る事は不可能です。(右側にウェイト載せるという方法がありますけどね)
ではどうするかというと、既に上で紹介している様にアームを左側にセットするのです。
これはカメラ全般に言えますが、カメラのグリップは右にあります。例外はありますが、その関係からほとんどのカメラはレンズの位置は左右非対称になっています。(要は後ろから見たら左に寄っている)なもんで、重いレンズを使う場合は左側にバランスがあるという事になります。その場合はアームを左にセットしてしまえば↑の写真の様にうまいことバランスします。(バリアングルは開けないですけど、45°タイプのジンバルなので特に視認性に困る事はないです。)
尚、この場合は付属のLブラケットを下のようにセットする必要があります。
※このブラケットを写真の様に本体に密着させてセットしてしまうと、カメラ本体のUSBポートが塞がれるので、カメラとジンバル本体をケーブルで繋いでフォローフォーカスやRec開始/停止などのコントロールをしたい場合、若干隙間を空けてケーブルをセットすると良いです。
で、50mmF1.4と100g近い可変NDを付けてバランスするかというと普通にバランスします。
気になるアイカップとROLLモーターとの干渉ですが、ギリギリOKです。(ND無しの場合や、軽いND付けるならもっと余裕が出来ます。)
GUDSEN製品に垣間見えるモノづくりの姿勢
以前もAircrossのレビューでも書いたのですが、このメーカーは凄く真面目で堅実さを感じるます。割とWeebillを作っているメーカーZhiyunと対照的なイメージを持っています。いやZ社が堅実では無いと言っている訳ではないのです。割とZhiyunは新しい試みをする面白い会社ですが、GUDSENは今の形のジンバルをとにかくいかに道具として磨くかという所に主眼が置かれている開発スタイルなのではないかと想像します。
凄く細かい事を書くと、YAW軸とROLL軸のモーター部はラバーカバーが取り付けられています。電源OFF時などのモーター脱力時にレンズをこの部分に当てて傷が付くのを防止する大きな役目があります。すごく何気ないカバーなのですが、これは結構重要な改善点だったりします。 また、ロック機構にしても他のメーカーの機構よりも扱いやすいスイッチ形状になっています。Air2の時に面倒だった充電方式も改善されておりユーザーの意見をしっかり反映している製品だなと感じます。
Aircross/Air2よりも悪くなった点はあるのか?
悪くなったいうか、コストを下げるために仕方なかったのかなと思う点ですが、外装がプラスチッキーになった点が挙げられます。アームの剛性自体は高いのですが、モニター部周りのプラスチッキーさが否めません。また、前述の様にダイヤル部がかなり軽いタッチであり安物感がここに出てしまっている感じもします。
Aircrossは金属外装のままグリップをラバーで巻くシンプルな構造でしたが、モニタを搭載したり形状が少し複雑化しているAircross2のプラスチック採用は仕方ないのかもしれません。でももうちょっと質感が高い方がいいかも。
また、ホイールのLEDは別に光らせる必要ある?って気もします。(設定でOFFできますけど)モノはいいけどちょっとデザインが軟派になった気がするんですよね。。。
電源ボタンはホイールの中心に付いていてジンバルを構えた際には左手でON/OFFさせる必要があります。なのでワンハンドでは起動できない点も少しマイナスです。
2019年の中型ジンバルの決定版?
Zhiyun Webill SもRonin SCも似たような時期に似たような値段、ペイロードで発売されたものです。少なくとも私の機材ではWebill SもRonin SCもS1Hは載せられないのです。(無理やりカウンターウェイト付けるといった方法はあるんですけど)
特にRonin SCはロールモーターとのクリアランスが少ないため、ちょっとした長いレンズを搭載するとすぐ干渉してしまう例が報告されています。
Webill Sも先代のWebill Labから大幅に改善されたもののロールモーター部での左右バランスが取れないという構造的な特徴がありS1Hではバランスしない様です。またWebill Sはアームを左側にセットできない構造なのが残念な所です。
私はフルサイズに移行してからMOZA Air2を使ってきたのですが、重量的に軽いAircross2で撮る機会が圧倒的に増えました。ジンバル自体が重いのはやっぱりシンドイので少しでも軽いAircross2の方がラクなのです。(まぁそれを言うとS1Hなんて使うのやめたら?と言われそうですが、S1Hじゃないといけない理由もありますんでねぇ。。。)
てなわけで、他の人に参考にならないかもしれませんが、私のメインのジンバルは今後しばらくはこのAircorss2となりそうです。
参考までにWebill SのAmazonリンクも貼っておきます。