とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ

ビデオグラファーsumizoonのブログ 一眼動画に関する機材や撮影方法を中心に情報を発信していきます。

SIGMA fpの動画はどのモード撮るべきか

 SIGMA fp Cinemaの動画は何のフォーマットで撮るのが良いのかというお話。いや、個人的には、DNG12bitなんですけど実際どのフォーマットがどう違うのか?というお話。私も、DNG8Bitなんてハナから使えないよね。と思っていましたし、下記内容もほとんど8bitは使えないかなというスタンスで書いています。

 ですが、特性を理解すると使えなくもないかなと思い始めています。

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MOV / DNG8bit / DNG12bit

  SIGMA fpで動画撮影するフォーマットとしてこのMOV、DNG8bit、DNG12bitが選べます。その中で、私がSIGMA fpで作例を撮る際に使用したのがDNG12bitです。ではなぜこのフォーマットで撮っているかについて少し説明をします。DNG10bitの話を置いておきます。

SIGMA fp DNG12 bit RAW TEST Footage

なぜDNG 12bitで動画制作するのか

 まず初めに、私の場合は撮影後にそこそこ色を弄る事を前提に動画を撮ります。

 その際に、DNG 8bitやMOVじゃあかんのか?と言われそうですが、このカメラをDNG 8bitやMOVで使うとそのフルポテンシャルは発揮されません。と言うかMOVを使うのであれば、S1やそれこそGH5の10bitLogを使って撮影した方が、グレーディング耐性は圧倒的に上です。

 もちろんSIGMA fpの撮って出しの絵に十分満足がしてて、撮って出し素材をそのまま編集するという方はMOVで撮影するのが良いと思います。私は天邪鬼なので、メーカープリセットを使いたく無いと言うスタンスなんですよね。メーカーさんごめんなさいm(__)m

 いや、だって、RAWで動画撮れるんですよ、このカメラ。SIGMA fpの最大の価値は小型ボディと言う点もありますが、RAW(DNG)で動画が撮れる事にあると思うのです。(とまあ、ブログ主はこの様に思想が偏ってますので、ここで不快な方は、以降は読まない方がいいかもです。。。)

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DNG12bit,DNG8bit,MOVの違い

 論より証拠という事で、それぞれのモードで撮影した映像の切り出し画像を下に示します。

標準露出

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 ここでは、標準露出(厳密にはちょっとアンダーだと思います)で撮影した映像の切り出し画像です。どうでしょう?RAWであるDNGはそのままストレート現像です。どうでしょう?違いは分かりますか?

 おそらくこの状態だとMOVが一番メリハリがあって一番好印象だと思います。

 そうなんです、好みのプロファイルでの「撮って出し」で色やトーンを後処理で触らない場合はMOVで十分だと思います。

アンダー露出と補正後

 次にアンダー露出概ね-4EVで撮影したものです。ほぼ真っ暗で何を撮っているのか分からない状態です。

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 これが意図通りの絵であれば、それぞれの映像に違いはありませんが、仮にこれを現像で補正することを考えてみます。それが次の絵になります。

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 素材は一つ上のと全く同じで、現像時に増感しています。(MOVの場合はRAWでは無いので、現像ではなくレベル補正と捉えてください。)

 WEBだと小さくて分からない方は、Flickr拡大可能な画像をアップしましたので、そちらをご覧ください。

 これだとDNG12bit以外の絵はカメラのボディ部分の階調が全く無く、完全に破綻していることが分かると思います。ぱっと見はMOVの方がまだマシに思えますが、カラーチャートの部分に関してはDNG8bitの方がマトモな印象です。いずれにせよDNG8bitもMOVも特定のカラーチャンネルが完全にクリップしており、増感しても標準露出まで破綻なく露出を合わせる事は不可能です。

オーバー露出と補正後

 では反対にオーバー露出の場合はどうなのかというと次の様になります。

 かなりぶっ飛んだ状態で撮影しています。概ね+4EVでの露出での撮影になります。MOVの場合は特定のプロファイルを当てて撮ってしまっているので、若干飛びが激しい状態です。

 これを減感して露出を落としてみます。

 

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 それが以下の絵になります。カラーチャートの一部がクリップしかかっていますが、DNG12bit、DNG8bitともにほとんど同じ状態に見ます。MOVは予想通りですが、救いようはありません。一応こちらもFlickrで公開しています。

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 ここで意外な事に気づきます。

 DNG12bitとDNG8bitではハイライト側のレンジには違いが無い(厳密には違うのかもですが、私には分かりませんでした)事です。

 12bitと8bitでは情報量は4bit(つまり情報として16倍)違いますが、SIGMA fpのDNG8bitの場合はDNG12bitに比べてシャドー側の情報を捨てることで8bitを実現しているという状態なのだと推測します。

 ダイナミックレンジ的には上のレンジはそのままに、下を切り詰めている。そう推測しています。

 ある意味、「シャドーの情報なんて不要。シャドーなんぞ潰すしてグレーディングするので、アンダーに撮って中間調以上の階調重視だ!」って言う撮り方をするっていう場合に関しては、8bitで撮るというのもアリなのかもしれません。

 尚、MOVは一般的な圧縮コーデックH.264にて記録されます。このファイルはそれぞれユーザーが気に入ったカラープロファイル、トーンカーブを設定して撮った映像が8bitファイルに収録出来るものです。なので、カメラの撮って出しに向いています。(と言うかPC上でカラーグレーディングするなどには不向きで、色やトーンを弄るとすぐに破綻をします)

 先にも触れましたが、撮影時にカメラ側で設定、絵作りをほとんど仕上げておく事が前提となります。

 写真を撮影されている方は、jpgファイルとRAWファイルの関係と言えば分かりやすいと思います。次にMOV/DNGのメリットデメリットをまとめます。

MOVのメリット/デメリット

 メリット:ファイルサイズが小さい/いわゆる「撮って出し」に向く

 デメリット:SIGMA fpは8bitの通常ガンマ撮影のため、後処理での絵作りが困難

DNGのメリット/デメリット

 メリット:撮影後PC上での絵作り(後処理)の調整幅が圧倒的に違う。場合によっては8bitも使えなくもない

 デメリット:ファイルが大きい(UHD24pで500GBでも30分以下の収録時間※)

※DNG12bit撮影の場合

となります。

 念のためにもう一度書いておきます。DNGのデメリットはファイルサイズが馬鹿でかい事です。2.4Gbpsという、一般の圧縮コーデックの10倍デカさです。全てが独立した連番画像ファイルで記録されますので、ファイルサイズはもとより、ファイル数がすごい事になります。DNGで撮影される場合は、ストレージコストを必ず考えておかなければなりません。

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フォルダを開けるとギョッとする程のファイルがある

この2.4Gbps(1秒で300MByte消費するレート)というファイルサイズと引き換えに得られる映像に価値を見出せる人じゃないと、いろいろ運用に厳しいと思います。

DNG12bitをDaVinci Resolveに読み込む

 DaVinci Resolveデファクトのカラーグレーディングツールです。今では編集機能までが統合されておりその機能のほとんどは無償で使用する事が可能です。

www.blackmagicdesign.com

 有償版は10bit圧縮コーデック(GH5などのH.264 10bitファイル)の読み込み、ノイズリダクション、OFXが使えるなどの違いはありますが、無償版でもDNG12bitファイルの現像、編集は現像が可能です。と言うか基本的な事は全て無償版で出来ると言っても過言はないです。

  下は、CinemaDNGを読み込んでいる所です。

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DaVinci  Resolveの現像パラメータ

 調べて頂いたらいくらでも情報はあると思いますが、キモはこれだと思います。

 カメラRAWの設定でCinemaDNGの現像パラメータを弄る設定箇所です。

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 基本的にはここでホワイトバランスを調整してある程度のトーンまで追い込むのが良いと思います。というかLightroomを使っている方なら、ほとんど同じ感覚で使えるのではないかと思います。

 また、BRAW形式(BlackmagicDesign提唱のRAW形式)でちょっとだけウインドウの状況は異なりますが、照山さんの下記の動画がRAW動画の現像の参考になるかと思いますので、併せてご覧ください。

DaVinciのスキマVol.15「RAWの設定項目を理解する」

  私もCameraRAWによる現像・調整作業と通常のカラーホイールを使ったグレーディングの位置付けってのは曖昧だったのですが特に9:00からの説明は、なるほどなぁと思いました。こう言う事を語って頂ける動画は極めて貴重だと思います。

最後に

 SIGMA fp Cinemaの動画は何のフォーマットで撮るのが良いのかという結論は、目的によって違うというものです。

 撮って出しでトーンもホワバラも一切弄らずというケースならMOV

 シャドーのトーンは、触らずに中間調以上のトーンを触る。ホワバラを調整する程度ならDNG 8bit

 シャドーの情報をめいいっぱい使うならDNG12bit

という様な感じかなと、この2週間このカメラを触れての感想です。

 

  あと、このエントリでは、もうちょっと現像フローに踏み込んだ話を書こうと思いましたが、ここで力尽きました。

 現像、カラーグレーディングは人それぞれ作法が違うと思いますので、自由にやったら良いとは思います。

  一応、この件に関連してLUMIX S1Hとの比較なんかをやった動画を下記動画にまとめています。(あくまでDNG12bit vs S1Hの10bit Logの比較ですが)

SIGMA fpのRAW撮影の良い所

 

◆作例及び撮影に使用した機材

SIGMA fp DNG12 bit RAW TEST Footage

LUMIX S 24-105mm F4 MACRO O.I.S.

LUMIX S 24-105mm F4 MACRO O.I.S.

  • 発売日: 2019/04/04
  • メディア: エレクトロニクス