ワイヤレスビデオ伝送システムであるHOLLYLANDのMARS400Sをこの数週間試しました。結果的に、撮影だけでなく動画の編集時やプレビューなどかなりの場面で使えると感じました。HDMIケーブルから解放されたら便利だろうなぁと漠然と思ってはいましたが、ワイヤレスはやっぱり便利よねぇと痛感した次第です。
- はじめに
- 製品概要
- 製品説明
- どのようなシチュエーションで使えるか
- ③PC→RX→TX→大型TV
- 最近のミラーレスってスマホと直接Wi-Fi接続できるけど?
- 遅延は?
- バッテリーの持ちは
- Youtubeでの紹介・レビュー動画
- まとめ
【ご注意】
HollyLand MARSシリーズ製品の運用周波数帯は5.2GHz帯(5150〜5250MHz)にあたる為、現状の日本国内の電波法では、原則、屋内のご利用のみ許可されておりますのでご注意ください。
詳しくはこちらをご確認ください。
はじめに
動画を撮影する際に外部モニタで確認する事は多いかと思います。そのモニタがカメラのそばにあればHDMIケーブルで繋げば何の苦労もないですが、距離が離れると話は変わります。
外出自粛の折、外で撮影はできない代わりに自宅で撮影するという人も多いかと思います。そんなときに自宅にあるテレビにワイヤレスで映像を飛ばして大型のモニタに使うという活用をしています。これかなり便利です。
他にもクライアントモニタを設置した撮影現場などでは、長いケーブルを引っ張っる必要もないですし、ちょっとしたアイテムと組み合わせればケーブルに縛られない生配信・WEBミーティングも可能になります。
あとはジンバル撮影を撮影チームを組んで行う場合などでも威力を発揮すると思います。そもそもジンバルの場合はオペレータ以外がリアルタイムでモニタリングすると無線伝送が必ず必要になりますしね。
尚、今回はメーカーのShenzhen Hollyland Technology様より提供を頂いて同製品を評価させて頂いた次第です。提供頂いたからヨイショして書いている訳では無く、とにかく凄く簡単で便利です。
製品概要
この製品の概要は
・HDMI/SDIのワイヤレスビデオ伝送システム 送信(TX)・受信(RX)のセット
・本体サイズはTX/RXともに112 x 65 x 23.5mm
・重量約190グラム(アンテナとバッテリー除く)
・伝送距離は見通しの良いところで最大120m
・スマートフォンのアプリでも受信可能
・伝送可能な解像度・フレームレートは下記の通り
送信機 | 受信機 |
HDMI: | HDMI: |
480P60 | 480P60 |
576P50 | 576P50 |
720P50/59.94/60 | 720P50/60 |
1080i50/59.94/60 | 1080i50/60 |
1080P23.98/24/25/29.9/30 | 1080P24/25/30 |
1080P50/59.94/60 | 1080P50/60 |
SDI: | SDI: |
1080P60/59.94/50(Level A) | 1080P60/50(Level A) |
1080P60/59.94/50(Level B) | 1080i60/50 |
1080i60/59.94/50 | 1080P30/25/24 |
1080P30/29.97/25/24/23.98 | 720P60/50 |
1080Psf2.5 | 1080i50(1080Psf25/24/23.98 Input) |
720P60/59.94/50 | 1080i60(1080Psf30/29.97 Input) |
1080Psf24/23.98 |
・伝送遅延は0.1秒未満
・OLEDディスプレイによるステータス表示
・国内技適取得済
レビューのお声がけを頂いた際に真っ先にメールで確認したのが日本国内の技適取得に関してでしたが、担当者さんからは当たり前の様に「取得しています」とのお返事。送られてきたパッケージ及び本体背面には技適マークがちゃんと入っています。
はじめは怪しいメーカーからレビュー依頼が来たと少し疑っていたのですが、すいませんでした。m(__)m
よくよく調べてみるとHOLLYLANDの製品は普通にSystem5などの大手の映像機器販売店で扱われているので、至極真っ当な製品だったんですよね。。。
話は少し脇道にそれましたが、このMARS400Sは4Kこそ伝送はできませんが、FHD60pまでの解像度・フレームレートを5GHzOFDM方式で無線伝送を行い、高画質なモニタリングが可能になっています。
なお、レシーバー側はノンドロップフレームで伝送される仕様です。(29.97p/59.94pではなく30p/60pとして伝送)
製品説明
パッケージを開けるとACアダプター、コールドシューマウント、USB-Cアダプター、1/4インチネジ、L字ブラケットが付属品として同梱されています。
続いて本体側。送信機と受信機1台ずつ。それにアンテナが5本入っています。1本は予備の様です。
側面を見るとTX(送信機)/RX(受信機)の記載があります。逆にぱっと見はこの表記以外で見分けがつかないので間違わないようにしましょう。
左側面はSDI端子、HDMI端子、USB-C端子があります。右側面には電源スイッチとDC入力があります。SDI/HDMI端子はフル規格(というべきか通常BNCとHDIM TypeA)ですので端子の強度が高いので安心感があると思います。
USB-C端子はファームアップ用です。一部サイトでは電源供給に使える旨の記載がありますが、メーカーに確認したところ電源供給はできないとの事です。(メーカーのデバックログ取得にも使用されている模様)
裏面にはSONYのLバッテリー(NP-F570/970)を取り付けられるようになっています。また、底面には1/4インチのネジ穴が切ってあります。
どのようなシチュエーションで使えるか
①一般的な使い方:カメラ→RX~TX→モニタ
おそらくこのサイトを見ておられる方が想定する使い方がコレだと思います。
送信機(TX)をカメラに接続して、受信機(RX)を接続したモニタでプレビューを行うとういう使い方。クライアントモニタとしても高品質に映像を伝送できますし、私の使い方では一切のコマ落ちはありませんでした。自宅付近では5GHzの電波があまり飛んでいないという事が大きく影響しているとは思いますが、とにかく伝送が安定して途切れを経験したことは一度もありません。
自宅でブツ撮りをする際に大型テレビをつないで被写体にのっている細かい埃をチェックする、という事をしながら何度か撮影を行いましたがやはり便利です。カメラをセッティングしてテレビの前で隅々までチェックすると言うのは、カメラの液晶では絶対に確認できないです。別にHDMIで配線したって良いじゃんと思われますが、どこでもケーブルが繋げられる位置関係にある訳でもないですし、三脚の位置を細かく移動させて撮影する場合、都度ケーブルを気にする必要もないと言うのは素晴らしい事だと思います。
①’一般的な使い方:カメラ→RX→TX→モニタ&スマホ
MARS400Sの大きな特徴であるWi-Fi同時伝送を使ってスマホに映像を配信するというものです。
MARS400Sは5GHz OFDMを使って送信機→受信機の伝送を行いますが、これに加えて送信機側はWi-Fiでスマホに伝送する機能が備わっています。
伝送距離・画質こそ5GHz OFDMにはかないませんが、タイムラグは受信機側の映像と遅延差はほとんどありません。
なお、このWi-Fi接続は受信機が必要ありませんので、送信機とスマホだけの組み合わせだけでも機能します。ちょっとした撮影でモニタリングはスマホのみで行うというケースもありかもしれません。
ただし、スマホへの伝送の場合、私の古いAndroid携帯の場合はアプリはインストールできるものの、Wi-Fiのアクセスポイントを認識できませんでした。iPhone8は問題なく接続できました。新しいスマートフォン・タブレットであれば問題ないのかもしれませんが、この手の接続には相性があるかもしれません。
②カメラ→RX→TX→PC→ネット配信/WEBミーティング
「無線伝送を使ってまでWEBミーティングするの?」と言う疑問をいだかれるかもしれません。まぁ会社でのWEBミーティングでこれをやる人も皆無だと思いますが、Youtubeなどの生配信において、PCから離れてカメラを移動させつつ映像を配信したいという要求は結構あるかもしれません。
カメラはケーブルの縛りから解放されますので、電波の届く範囲内であれば自由に映像を配信し続けられるというメリットがあります。
1つのカメラだけで、リビングで映像配信をして、キッチンに移動して料理を作り、ダイニングで料理を食べる一連の映像配信がワイヤレスで行えるといった使い方ができます。手軽にワンオペでこれができるはずです。
なお、これを実現しようとする場合はHDMIキャプチャーボードで映像をPCにリアルタイムで取り込む必要があります。(8,000円クラスのUSB Video-Classに対応した機器がオススメです。多分高いの要らんかと)
私はPengoのHDMIキャプチャーデバイスを使用していますが、値段が安い割には非常に質感も高くお勧めです。(Mac/Windows両対応)
とにかくPCに挿したらWEBカメラとして認識します。品切れ中なので下記の代用品のリンクを貼っておきます。
③PC→RX→TX→大型TV
もしPCとテレビが配線が引けないような状態にあっても、PCから大型テレビに映像を無線伝送してセカンドモニタにすることが可能です。通常作業するために使うのではなく、たとえば映像が完成した際のプレビューモニタとして使うのはなかなか快適です。まぁYoutubeとかであればTV側に視聴するための機能が備わっていますが、PCの映像をリアルタイムに離れた場所のTVに映し出せるのは便利です。
うちの常設スタイルは、リビングのテレビに受信機を接続(さらにACアダプタで常時電源供給)
動画編集が終わったらPC側から映像を飛ばして、映像を確認するという使い方をしています。というのもPCでのチェックよりもTVでの視聴の方が実際のユーザーに近い感覚で見れますので、このスタイルが凄く気に入っています。
最近のミラーレスってスマホと直接Wi-Fi接続できるけど?
最近のミラーレスカメラはほとんどの機種でスマホを利用した映像伝送が可能で、ある意味外部モニター的に撮影することが可能です。もちろんそれで要件を満たす撮影であればよいと思います。追加機器も要らんし、追加費用掛からんし、嵩張らないでしね。
でも上記の様にカメラの撮影映像をワイヤレスで大型テレビで視聴するとか高画質で映像をチェックするという事は今現在Wi-Fiでは不可能です。
そもそも、Wi-Fiはその画質の悪さを感じておられると思います。
スマホで受信するにあたって、カメラ本体はかなりの情報量をそぎ落として映像を送っているはずですので、画質は良いとは言い切れません。なのでしっかりとしたピントチェックをカメラ純正アプリでやること自体は結構厳しいのです。
この製品の場合はHDMIの信号を極力情報の劣化なく伝送します。ぶっちゃけ画質優先モードであれば優先接続と画質差は分かりませんし、そもそもHDIMIケーブルで接続した場合との画質差を正直感じません。
遅延は?
これは動画を見て頂いた方がよいかもしれませんが、無線伝送を行うことによる遅延は0.1秒以下で高速モードであればさらにその遅延は小さくなります。
人によっては0.1秒の遅延でも困るという方もおられるかと思いますが、ほとんどの映像撮影の用途においてはこの遅延は許容レベルだと思います。
それ以前にLUMIX S1HからATOMOS NINJA VへのHDMIケーブルを使用した有線接続の遅延は0.15秒程度なので、そっちの方が大きいとも言えます。(モードにもよりますが、4K60pをFHD60pにダウンコンした場合の遅延値)
さらに驚くべきことは、トランスミッターからスマホへWi-Fi接続した際の映像遅延が5GのHDMI無線伝送とほぼ同じ遅延である点です。LUMIX SyncなどでスマホとLUMIXを直接Wi-Fiで接続した際の遅延よりも0.05秒程度速い結果となりました。
バッテリーの持ちは
FHD60pの映像伝送でソニーNP-F970バッテリーを使用した際の駆動時間は8時間強になります。結構持ちます。
尚、送信側、受信側いずれが電源が近くにあるならACアダプターを利用するのも手かもしれません。例えば据置TVで映像を受信するなら受信機側はACアダプターを使用するのも良いと思います。
Youtubeでの紹介・レビュー動画
今回もYoutubeとブログの連動記事になりますので、下記動画も併せてどうぞ。実際の接続から出画までの説明を含めて動画にしております。
まとめ
MARS400Sは凄く良い製品なのですが、懸念事項が一つあります。それは大きなイベントなどでの撮影の場合ですと5GHz帯に空きがなく、使えない可能性が出てくる懸念です。これに関しては今現在は検証が難しいですが、自粛生活が解除されたら確認・検証したいと思います。
室内で撮る分には非常に安定した運用ができています。
早くこれを屋外で使いたいなぁと思う筆者でした。次回はもう少し使い込んで多機能なスマホアプリの方の紹介をしたいと思います。
ではでは
筆者:SUMIZOON
お陰様で登録者1500人到達間近
Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOON をアップしている人
お陰様で登録者11000人到達しましたm(_ _)m