とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ

ビデオグラファーsumizoonのブログ 一眼動画に関する機材や撮影方法を中心に情報を発信していきます。

EOS R5の登場で逆に評価が高まったLUMIX S1H

 EOS R5カメラの熱停止問題が大きなニュースとなる中で、逆に動画機としてのS1Hの放熱設計が宣伝になってしまったと言う現象が発生しています。

 これに関してはいろいろ思いがありますので、書いてみたいと思います。(お前何様だよと言われると思いますが、単なる週末ビデオグラファーなサラリーマンです。ハイ)

熱問題の記事

 最初に書いておきますが、熱停止するカメラがあっても使い方次第では十分と言う撮り方も出来ますし、8Kや4K120pはチャレンジングで素晴らしい事だと思います。出来ることならEOS R5はS1Hを補完する機材として欲しい位です。特に4K120pは映像の表現できる幅が大きく広がりますしね。

 ネットの評判を見ていると普段スチルを撮影しているカメラマンからは評価が高いと言う印象、一方で動画を普段撮っているカメラマンからは「見せかけスペックで8Kは撮れるけど運用は実際には無理」など厳しい評価を受けている様です。特に問題視されているのは4Kの運用でさえオーバーヒートすると言う点なのだと思います。

www.eoshd.com

 確かに私もメイン機として、撮り逃しの出来ない状況でEOS R5を使うのは結構リスキーだと思いますし、映像を生業にしている方で、EOS R5動画のメイン機として導入すると考える方は希少だと思います。

 EOS R5は記録制限がありながら超高精細な8Kや4K120pの動画がスチル機のスタンスとして撮れるというもので、ガチに排熱設計されているS1Hとは、そもそもの設計思想が違うという認識です。つまりガチガチの動画専用機ではないので世間的にそこまでアレコレ言われる筋合いはないはずです。

 とは言え、動画界隈でこれだけ厳しい評価・反応があるされるとは正直思ってもいませんでした。 おそらくは事前のティザー広告で8Kや4K120pの動画をウリにしてしまった事による、動画界隈の期待度を集めすぎた反動かなと推測しています。また、多くのカメラマンが動画撮影時の熱停止を経験してきており、この数年、ユーザーが熱停止に対する評価が厳しくなってきたという事もあるのかもしれません。

 熱であれこれ言われてしまっていますが、私は8Kや4K120p画質を体験したい思いは非常に強いです。キヤノンさん是非デモ機貸して頂ければ幸いです。(ここ見てるとは思えないし、ガチに書くブログなので絶対無理かと思いますが。。)

 余談ですがSIGMA fpのデモ機お借りした時もアレコレ書いて怒られるかとドキドキしましたが。。。

熱で止まると言っても本体でRAWが撮れる意義はデカい

 現状コンパクトな構成だけでRAW動画が撮れる民生カメラ機材は、Magic LanternをインストールしたEOSシリーズを除けばBlackmagic DesignのBMPCC(無印/4K/6K)とSIGMA fpしかなく、たとえ熱で止まったとしても手軽に撮れる(ポスト処理は手軽とは言えないかもですが)というのはポスト処理を思うと非常に意義が大きいです。

 以前書いたようにワークフローはちょっとどうすりゃいいのかわからないCanon Cinema RAWですが、Premiere Proでどうにかなりそうなので素材が入手できれば触ってみたいと思います。

 話が少しそれますが、以前SIGMA fpをお借りして撮った時の映像を改めて見返しましたが、やっぱRAWはええなぁと。。。

SIGMA fp DNG12 bit RAW TEST Footage

 でも、いきなり8KのRAWなんてものが扱える人が、どれだけいるかはちょっと謎です。ただでさえミラーレスカメラのユーザーの比率から考えて動画ユーザーはどう見ても10%以下。さらに8KRAWが扱える動画バカになると全EOS R5ユーザーの中の1%も居ないと思われます。。。その機能をウリにするというのは私的には非常にワクワクしたものですが、今思えば結構意外なアピールの仕方だったと思います。

S1/S1Hの排熱設計思想

 さて、話題をS1Hに移します。

 実はS1Hも当然の事ながら、S1でさえ熱停止を経験した事が有りません。展示会でS1Hの排熱機構は凄いけどS1も止まった事ないですけど?と伺ったところ熱で止まる可能性はあるがS1も「そう簡単には熱停止しない」様には設計されてるとの事です。

 実際のところLUMIX S1は4K60pで録画して本体制限の29分59秒で停止後に再度録画をしたとしても通常の温度範囲内であれば次のカットも普通に29分59秒回ります。6Kからのオーバーサンプル4K30pに関しては無制限に撮影が可能で、メーカーページには熱停止する事があると明記はされてますが、今のところ熱停止の経験が有りません。

 S1でさえこんな排熱設計なのでS1Hは言ってしまうと、「過剰とも思える排熱機構を持ってして絶対にカメラを止めさせない」と言う思想が備わっているとも言えます。

https://panasonic.jp/dc/s_series/products/s1h/img/top/s1h_top_mv_pc.jpg

https://panasonic.jp/dc/products/s_series/s1h.html

そもそも撮れない事自体が有りえない

そもそも民生カメラ、一般工業製品として、

「撮りたい時に撮れない、撮り続けられない」

と言うのはカメラとしてあり得なく、クソ暑い条件下でも

「いつでも撮れる、撮り続けられる」

と言う思想を実現している唯一無二(4つあるけど)のミラーレスカメラがGH4、GH5、GH5S、S1Hと言う事が言えます。

 カメラは「撮る」ための道具ですので、「撮影が発熱で出来ない事がある」と言う事自体有りえない。言うのがGH4から続くパナソニックのいわば「H」の変態思想だと言う理解です。

 でも、考えてみて下さい。それって動画をウリにしている以上、当たり前の事なのかもしれません。(開発者の方々は凄い苦労してると思うのに、こんな書き方ですいません。)

 少し負荷の高い計算すると電源が落ちるPC、とか、高速運転したらその都度停止する車とか、30分に1回切れるエアコンとかは工業製品として普通には考えられないわけです。

 なので、動画はちょいちょい撮るから停止してもOKなんて考えはなく、ぶっ通しで撮っても止めさせない。と言うのがGH4から脈々と続いている思想な様です。

 少し懐かしい動画になりますが、当時パナチューバーとして有名になりつつあったアンソニーさんがGH4を紹介をした時の動画にも、その事が触れられています。

 

余談ですが見返したら私の映像も紹介頂いた動画だった事を思い出しました。

Panasonic Lumix GH4  購入の決め手となった3つの動画

「業務用のビデオカメラを作っているメーカーとしてビデオカメラが撮影の最中に止まるなんてありえない」

 おそらくそれを語ったのは、このブログでも何度か紹介したミスターGHこと香山氏だろうと言うのは想像に想像に難くは有りません。同氏は当時様々なインタビューでGHの熱設計に関する話を文字通り「熱く」語っていたと記憶しています。

 この時から既にGHの熱停止を絶対にさせないと言う異常なまでの執着心があったと想像しています。

 私の周りでGHが熱停止した言う話は数あるGHユーザーの中で、異常に暑い炎天下での運用で2件ほど聞いた事が有りますが40℃の環境下では熱停止しない設計の様ですし、少々の夏日差しの下で撮影しても止まる事は経験上無いです。

 実はS1Hを手にしてから本格的な夏を経験していませんが、おそらくS1Hも止まる様な設計はされていないと思われます。あのファンを内蔵してるくらいですしねぇ。。。

趣味だから止まっても大丈夫か?

 カメラが「撮れない」というシチュエーションで私の撮影経験の中で「一番ゾッとするシチュエーション」を想像してみました。昨年のこの時期に撮った一生に一度あるか無いかのこの映像。もし、この映像の最中にもし、カメラが熱停止したとしたら。。。。多分一カ月は立ち直れないと思います。下手すりゃ一生撮影を辞めるレベル。。。

[Air Force One/G20]エアフォースワンの機体が美しすぎた 伊丹空港

 他にもブライダルとか一生撮り直しが効かない場面ってのは結構あります。趣味で撮るというシチュエーションでさえ後悔する事があり得るのは確かです。子供の学芸会で撮影中に熱で止まって大後悔したという知人もいます。

 その時、恐らく私はカメラを一生恨むかもしれませんし、止まるカメラを選んだ自分に後悔するかもしれません。経験を積めばどのくらいで止まるというのは判断できるようになりますが、普段長尺を撮らない人ほど止まるリスクがある機種をメイン機に使うのは危険な事だと思います。

 余談ですが、エアフォースワンの動画撮影は私が一生忘れられない撮影となりましたが、この最高のシチュエーションで最高のパフォーマンスを発揮したカメラ達(S1/GH5S)には未だに感謝をしています。

熱設計だけじゃ無いS1Hの凄さ

 GH4以降のHの系譜は熱設計の歴史でもあるわけですが、実はHの思想はかなりぶっとんだところにまで踏み込んでいます。

2014年 GH4

 4K30p内部記録

 Log記録

 4:2:2 10bit外部記録

2017年 GH5

 フル規格のHDMI端子搭載

 4:2:2 10bit内部記録

 4K60p内部収録

 4K60p10bit外部記録

2019年 S1H

 4K60p 10bit内部記録搭載

 6K 10bit内部記録

 赤枠タリー表示&前後タリーランプ搭載&外部タリーランプ対応

 前面Recボタン

 高精細576万ドットEVF

 チルトバリアングル高輝度液晶

 クーリングファン搭載

 

 わかりやすい機能・機構だけでもこれだけ有りますが、それ以上に書ききれないほどの機能・機構が搭載されているのがHシリーズです。今時使うの?と疑問に思ってしまうカラーバー表示、本体内でベクトルスコープ、波形モニタ表示、外部LUT取り込みが可能であったり、スポット輝度メータが表示出来たり、とにかく撮影現場から有りとあらゆる意見を詰め込んだと思われるのがS1Hになっています。

 また、手振れ補正に関してはジンバルや手持ち撮影と相性の良い初動が滑らかに動く動作を実現していたり、再保存不要なカスタムメニュー構成、純正外レンズの手振れ補正範囲調整、分割撮影機能、カード&バッテリー交換時警告などスペックに現れにくい部分にまで実に考えられた配慮がされています。

 つまりS1Hは動画も撮れるカメラではなく、スチルも撮れる動画機なのです。なので動画も撮れるカメラとは一線を画しているというのが私の感想です。

S1H長期使用レビュー(前編)

 私がLUMIX のH機を使い続ける理由がこの様な、手にしてはじめてわかるカメラ設計者の「魂」を感じるからに他なりません。

 とまぁ、若干大袈裟になっちゃいましたが、他のカメラでは触れたことの無い思想がそのボディから伝わってくる、使えば使うほどによく考えられていると感心するのです。

Netflixの証明

 話は時間無制限記録に戻ります。8Kやフル画角の4K60pこそ撮れませんが、時間無制限に確実に撮れる事を前提に制作現場でも使える、業務で使えるカメラとしてメーカーが世に出した結果がS1Hです。

 その結果+画質がNetflixのミラーレス初の認定カメラと言う快挙に繋がっていると言えます。と言うか記録時間制限がある時点でNetflixの認定門前払いなると思われます。

  S1Hはスチルカメラでは無く、ガチの動画機として認められたというのがこの事から証明されていると思います。

S1H Firstlook β - DNA of H -

 尚、単なる週末ビデオグラファーな私でも↑の映像が撮れるS1Hは今の所最大の武器です。 

 私が普段使っているからと言うから贔屓目に書いたわけではなく、実際にすげーよコレと言うのを使う度に思うのでした。

とは言えパーフェクトでは無い

 画質や多くの機能性こそ、個人的にはパーフェクトだと思いますが、全ての人の要望を満たすパーフェクトなカメラなんてこの世に存在しえないわけですが、一般に言われている事として「デカい・重い」と言うのは有ります。箱型のシネマカメラに比べると圧倒的に小さく、街中でも使える大きさでは有りますが、流石に気軽に散歩には持ち歩け無いです。そこは時間無制限とのトレードオフなわけです。私は結構気にせず持ち出しますが、カフェでおもむろに取り出して動画を撮る様なカメラでは無いわけです。そう言った意味ではS1H画質・機能で小型化されるなら、もう他に何も言う事は有りません。(もとい、引き続き言わせて頂きます。)

可変NDフィルタの内蔵

 これは多くの人が言っている事ですが、もしも画質劣化なしに可変NDが実現できるのであれば是非搭載頂きたいものです。というか超広角のレンズにフィルタ付かないので可変じゃなくND8だけでもあると嬉しいんですが。。

AFの改善

 これに関しては正直かなり改善されたと言う認識ですし、一時期のGH5から比べるとウォブリングは全く分からないケースが多いです。コントラストAFだけでよくこの領域に到達したものだと逆に感心させられます。ですが、一定距離よりも寄るとボケ量からえられる情報が得にくいためかウォブリングはそれなりに発生してしまいます。私自身は昔ながらのワンプッシュAF派なので撮影で困る事は無いですが、AFに頼り切ったユーザー層の「まぬあるフォーカスってなんですか?」と言う人が使うと最初は戸惑うかもしれません。とは言えBMPCCがあれだけ受け入れられている事を考えると画質が落ちる位なら今のままでの良いのかもしれん。。。

 ちなみに次世代LUMIXにToFセンサが搭載されると言う噂が囁かれていますが、個人的には有り得ないと思っています。そもそもToFって至近距離までしか測距出来ないですし、光軸上に赤外発光源を入れられる余地は無いと言う認識です。光軸外に入れるとしても長玉を始めとするレンズの影になるわけですしそもそも長玉でAFが必要な距離は100mオーバーとなります。どこからこの噂が出てきたんでしょうね。。。

純正レンズのラインナップ拡充

 以前、下記の記事に記載した通り、ネイティブレンズはかなりの本数になったもののF1.8とかの気軽に使えるレンズがまだまだ少ない印象です。ロードマップ上は今年何本かのF1.8レンズが出てくるので期待しています。でも個人的にはちょっと安めの超望遠が欲しい。。

l-mount.hatenadiary.jp

こんなユーザーがいるからメーカーも苦労するわけだ。。。m(__)m 

 

筆者:SUMIZOON

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