とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ

ビデオグラファーsumizoonのブログ 一眼動画に関する機材や撮影方法を中心に情報を発信していきます。

Apple シリコン搭載M1 Macは動画編集では驚くほど速くは無い?

少し前にM1チップ搭載Macに関して記事にしました。

sumizoon.hatenablog.com

この時はネットに色々書かれている情報を集めて動画編集では実際の所どうなのよ?という憶測で記事を書きました。

M1 Macとフラッグシップと比べる事の意義

いや、M1 Macの発売後のネット上の記事を読むとフラッグシップのMacよりも圧倒的に速いという風にも読めてくるし頭が麻痺しちゃうんですよね。。

特に下記の記事とかを見てると、もう自分のMacBook16はM1 Macと比べて相当遅いのか?という気にすらなってくる。

iphone-mania.jp

iphone-mania.jp

iphone-mania.jp

ネット記事を読めば読むほどにM1 Macに対する期待というハードルが高まって行きました。

でも、私が普段行うカラーグレーディングやノイズリダクション処理したタイムラインにおける4K書き出しで、その速度を定量的に比較しているサイトはあまり見かけません。多くは素材をそのままエンコードしたというものが多く実際の編集に即していません。

また、定量的な情報と言えば、ベンチマークとかはすぐ見つかりますが、結局、動画編集などの実運用でどのくらい快適なのかを語ってくれている人があまり居なくて難儀します。(最後にマトモなリンクを載せていますが)

ならば、自分で試すか!ってなことで今回は自身のMacBookPro16 core i9を持ってM1搭載MacBookAirを購入した友人宅に押しかけて試させて頂きました。

今回の比較に関して

最初にお断りしておきますが、速さの感覚は比較しているMacとそれを使う環境に大きく左右されるという事です。つまり圧倒的に速いという言葉は数年前の同レベルのMacと比べたら圧倒的に速いという感覚になるはずです。私の比較対象は現行(に近い)の私が普段外出先で使うIntel MacBookPro16 core i9と比べての事になります。既に多くのレビューでM1 Macが普通に使えるのは分かっている事なので、焦点は前記記事にもあるようにフラッグシップMacに比べて本当に驚くほど速いのか?という点にあります。多くの記事がMacProより速い!とか言う記事が動画編集においても当てはまるのか?とどうしても検証したかったのです。

最初に書く結論

結論的にはM1 Macコスパ以上に速い、でもあなたがMacBook16松モデルを持っていて自宅メインでそれを使っているなら、今はM1 Macにリプレースする必要は無いというものです。(逆にMacBook16松モデルが比較対象となる時点でM1 Macは速いという見方も出来ます。)ぶっちゃけサイズ感やバッテリーの持ちを考えると外で使うには最高のマシンだという認識も付け加えておきたいと思います。 
ではその詳細を見ていきましょう。

比較対象

では今回の比較対象を下記に示します。

友人のM1 MacBookAirの構成

MacBook Air 2020
・8コアCPU、8コアGPU、16コアNeural Engineを搭載したApple M1チップ
・16GBユニファイドメモリ
・1TB SSDストレージ

対するウチにあるMacBook Proの構成は下記

MacBook Pro 2019
・第9世代Intel core i9
Radeon 5500M(8GB)
・32GBメモリ
・1TB SSDストレージ

DaVinci Resolve STUDIO 17の比較

DaVinci Resolve STUDIO 17はVer17.1βからM1ネイティブに対応しているため、両者17.1βをインストール。パブリックβではありますが両者とも有償版でテストしています。両者のMacにプロジェクトアーカイブをそのままコピーして書き出しを比較しました。

動画/書き出し条件

・タイムラインフレームレート/解像度は4K24p

・編集尺は7分

・解像度は3840x2160

・素材は 4K24p 4:2:2 10bit(H.264)が全体の70%

・4K60p H.265 4:2:0 10bit (H.265)が25%程度、一部FHD30p 4:2:0 8bitが5%

・グレーディングはシリアルノードで色補正/マスク/レイヤノードx1/LUT適用x2

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クリップ毎に違いますが、大体こんな感じのノードで特にシンプルな構成。多分多くのアマチュアの人でもこれ位のノードだと思います。 

書き出しを行った動画は下記のものになります。

【MV】Snowflakes S-KEY-A

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左:M1 MacBook Air 右:MacBookPro16 Core i9

書き出し時間と考察

MacBookAir(M1):23分55秒

MacBookPro16(Intel Core i9) : 7分14秒

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結果はMacBookPro16 Core i9の圧勝でDaVinciでは比較にならない程の差がついてしまいました。

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左:M1 MacBook Air 右:MacBookPro16 Core i9

アクティビティモニタを見ているとDaVinciの書き出し中はM1 MacではCPUが結構遊んでいる様に見えます。一方GPU側はフルで動作しています。MacBookPro16 Core i9はCPUはそこそこ負荷がかかっていてGPUもフル稼働をしている状態。

今回DaVinciでは3倍ほどIntelMacの方が速いという結果になりましたが、これはCPU/GPUのソフトウェア的な処理がM1に最適化しきれてない可能性もあるかと思います。

結果的には現状でDaVinciで編集・書き出しを行うのであれば、IntelMacの方が速いという結果になりました。また、編集時のプレビューもMacBookPro16 Core i9の方がストレス無くプレビューが出来ていました。

※個人的には一番使う機会が多いDaVinciでこれだけM1 Macが遅いのはちょっと解せないので、何か状況が変わればまたこの場で共有したいと思います。

※DaVinciはメモリをかなり消費するので、16GBというM1 Macのハードウェアの制約でスワップしまくっていたという可能性もあります。ちゃんとメモリ状況も見ておけばよかったですが時すでに遅しm(__)m とは言えM1 Macの最大メモリ容量は16GBなのでたとえスワップが原因だったとしても速度低下は不可避となります。

FCPの比較

次にFCPでの比較を行いました。余談ですが最新版ではFCPXじゃなくてFCPとなりました。FinalCutProも最新版のM1 Macネイティブバージョンでテストしています。一応MacBookPro16 Core i9のバージョンも揃えて両者書き出し時間を計測しています。

動画/書き出し条件

・TLフレームレートは4K30p

・WideGamut HDR

・素材はiPhone12 Pro Maxの10bit 4K60p H.265(HLG)

・編集尺は7分

・解像度は3840x2160

編集時にカラーホイールでトーン及び色調整、LUT適用、速度調整など一般的な編集。テロップは少なめ 書き出しを行った後の動画は下記のものになります。

Shot on iPhone 12 Pro Max

書き出しはH.265 10bit書き出しとProRes422の2種類を試しました。タイムラインがHDRだったためH.264書き出しは試していませんが、H.264も試しておけばよかったなと後悔しています。。。

今回の記事と関係ないですが、↑のiPhone 12 Pro Maxの動画はスマホとは思えんほどに綺麗に撮れたのでご覧頂ければ幸いです。

書き出し時間と考察(H.265の場合)

MacBookAir(M1):1時間4分

MacBookPro16(Intel Core i9) : 1時間40分

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左:M1 MacBook Air 右:MacBookPro16 Core i9

H.265に関してはかなり時間がかかるので現状は書き出しフォーマットとして現実的ではありませんが、M1の能力を見るのに良いかなと思いこのコーデックを選択してみました。
結果はM1搭載MacBookAirの圧勝。今回のテストの中では唯一M1 MacがMacBookPro16 Core i9を凌いだのがこの項目でした。
というかFCPの場合はIntelMacではGPUが全く仕事をしていないのはどういう事なんでしょうね。。GPUがハード的なエンコードをサポートしているのかもしれませんが、ハードウェアエンコードにしては遅すぎる気もします。。

書き出し時間と考察(ProRes422の場合)

MacBookAir(M1):4分25秒

MacBookPro16(Intel Core i9) : 3分26秒

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こちらの場合はMacBookPro16 Core i9の方が速い結果となりました。この場合はH.265の書き出しと違ってIntel MacでもGPUもそれなりに動作している様な状態です。

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M1 MacのFCPの特筆すべき点はFCPのプレビューの速さと動作の軽快さです。MacBookPro16 Core i9も軽快に動きはしますが、心持ちM1 Macの方が動作がスムーズな気がしました。Apple純正アプリだけに、M1 Macの最適化がかなり進んでいるという事があるのかもしれません。

とにかくFCPを使う上においてはMacBookPro16 Core i9もM1 Macもほぼ同じ感覚で使う事ができるというのはある意味素晴らしい点かと思います。

Premiere Proの比較

私は普段Premiere Proをほとんど使っていないので、この比較の場にプロジェクトファイルを持って行っていなかったのですが、急遽友人にPremiereのプロジェクトファイルを頂いて試させて頂きました。Premiereもβ版ではありますがM1ネイティブのバージョンにて比較を行っています。

動画/書き出し条件

・タイムライン解像度は3840x2160

・編集タイムラインは6分26秒

・素材:α6300 4K30p 8bit

編集時にLumetriカラー調整、スピード調整など一般的な編集タイムライン

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書き出し時間と考察(ProRes422の場合)

MacBookAir(M1):14分16秒

MacBookPro16(Intel Core i9) : 9分50秒

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 DaVinci/FCPに比べてアクティビティモニタを見る限りはM1 MacにおいてCPUもGPUもかなりフル稼働で負荷がかかっている様に思えますが、ここでもM1 MacはMacBookPro16 Core i9に対して速いわけではありません。ある意味倍以上の値段のMacに対していい勝負をしているというのは間違いなさそうです。

最後に

今回3つのソフトにおいて書き出し速度比較を行いましたが、適用している処理においてはかなり状況は変わると思いますし、ソフトのバージョンによって今後この傾向は大きく変わる可能性があると思います。

ですが、ネット上やYoutubeの動画を見ていると「M1 Macは速すぎてヤバい」的な話題が多かったように思います。(Youtubeの動画再生数を増やすとかWEBのページビューを増やすためとかという作為的なコンテンツもあるのも確かだと思います)
でも大騒ぎするほど速いのかというと、実使用上は疑問ではあります。
確かに旧来の同レベルのMacに比べるとかなり速いのは間違いないのですが、フラッグシップMacを凌ぐ様な驚くほど動画編集においては書き出し速度が速いわけでは無いようです。そういった意味での今回のブログのタイトルに至ります。

一方で今回M1 Macをテストしてその発熱の無さには驚きましたし、その発熱の少なさはバッテリー駆動時間に大きな差がでると思います。そしてこれからのApple Siliconの行方は新型MacBookPro16インチ?を含めてパフォーマンス、価格やそれを取り巻くソフト環境などいっそう興味が出てきました。今回のテストもそうですが、これからも動画を編集する道具として今後Appleのハードウェアがどうなっていくのかその展開をこれからも冷静に見ていきたいと思います。

尚、M1 Macでは多くの情報が溢れる中で冷静に動画ツールとして検証している下記の高信さんの記事は非常に参考になると思います。ネットに有りがちな上っ面のレビューとは次元の異なる比較をされていますので、こういった情報などを参考に道具を冷静に判断したいと改めて思った次第です。

www.pronews.jp

 

筆者:SUMIZOON

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