S1HでBlackmagic RAW(以降 「.BRAW」と呼びます)が撮れる様になると言うアナウンスが2021.3.18にされました。これ、今年度最大のLUMIX関連ニュースだと個人的には思います。
https://news.panasonic.com/jp/topics/items/d3442-4155-849116-0.jpg
今回は、S1Hの.BRAW概要を書きつつ、加えて実際にVideoAssistを使った撮影に臨むにあたってメディア選びについて書いてみたいと思います。
尚、.BRAW対応はS1Hのみですが、S5に続きS1の方はATOMOS Ninja Vとの連携でProResRAW記録対応がアナウンスされました。
LUMIX S1H の.BRAW撮影概要
詳細は下記をご覧いただくのが良いかと思いますがざっとまとめます。
・対応レコーダー:Blackmagic Video Assist 12G HDR
・5.9K、4K、アナモフィック(4:3) 3.5Kの12bit動画RAWデータをHDMI出力
・フルサイズミラーレスカメラ初の5.9K「Blackmagic RAW」記録が可能
・ファームウェアのダウンロードサービスは2021年3月31日に公開予定
とまぁメーカーページにはさらっと書かれています。5.9Kの.BRAWが撮れるのはかなりヤバイ。。BMPCC6Kでも6KのBRAWが撮れますがBMPCC6KはSuper35mm、EVA1も5.7Kが撮れるけどこれもSuper35mm、Z 7/Z 6やSIGMA fpはフルサイズだけど4Kのキャプチャです。
つまりフルサイズでほぼ6K .BRAWで撮れる唯一の組み合わせがS1H +Video Assist 12G HDRとなります。
尚、無償版のDaVinciはUHD以上の解像度には対応していないので有償版のDaVinci Resolve STUDIOが必要となります。その他注意点は下記の通り
・音声データのHDMI出力に対応(LPCM、内蔵マイク外部マイク/XLR対応)
・クリエイティブ動画モードのみで提供
・フォトスタイルはV-Logに固定
・SDカードへの同時記録は不可
https://www.pronews.jp/news/202103181010190341.html
より引用
LUMIX S1H の5.9K.BRAW撮影がもたらすもの
Nikon ZやSIGMA fp同組み合わせでBRAWが撮れるわけですが、いずれも得られる解像度は4Kになります。ところがS1Hは2倍以上の情報量の5888x3312の解像度でRAWキャプチャする事が可能です。
.BRAWで撮影した事がある人はご存知だと思いますが、ファイルサイズが小さく動作が軽快ながらホワイトバランス露出の変更が自在になります。H.264/H.265でグレーディングすることはスチルで言えばJPGで加工する様なものですので、基本的に破壊加工を経てのニュートラル出しがスタートになります。これに対して.BRAWは文字通りRAWですので、たとえ撮影現場でホワイトバランス設定に失敗していたとしても完全なリカバーが可能ですし、少々の露出のミスであったとしてもリカバリ耐性が異なります。露出に関しては適性を狙って撮影するのが大前提ですが、それでもH.264/H.265からのリカバーとは耐性が大きく異なります。
また、失敗をリカバーすると言う観点だけでなくRAWベースですのでグレーディング耐性も大きく異なります。ここら辺は実際にS1H + Video Assistで撮影した.BRAWを入手していませんがファームウェアアップデート当日には早速試してみたいと思います。
また、EVA1や(未確認ですがNikon ZシリーズやSIGMA fpも同様と思われる)で制限されているガンマコントロールがS1Hで撮影する.BRAWでは出来る様になるのかと言うのが気になる所です。
https://videosalon.jp/wp-content/uploads/2020/04/4b6b5757489754d0b7e72b7b78781b5d-1024x491.jpg
まぁ、ガンマに関しては通常のグレーディングで弄る事が可能ですが、ネイティブのBRAW(BMPCCやURSAで撮影可能)はカメラRAWウインドウでガンマコントロールが可能です。これが弄れる様になっていると更に良いなと。
.BRAW撮影にあたって
S1Hは昨年の夏にATOMOS NinjaVとの組み合わせで5.9KのProResRAWが撮れるアップデートがされています。実際に使ってみるとその5.9KのRAWデータは鳥肌が立つほど美しく、高解像度の写真が動いている感覚で編集、カラコレが可能で観賞する事ができます。(以下は以前に私の方でProResRAW撮影した映像)
LUMIX S1H 5.9K ProResRAW firstlook (LUMIX S5発表記念?)
ですが一方で、多くの人がDaVinciで直接読み込みが出来ないProResRAWに関して扱いにくさを指摘している人が一定数いる事も確かだと思います。
今回のBRAW対応は普段からDaVinci Resolveでのカラーコレクション、カラーグレーディングをワークフローに取り入れている人にとってはまさに福音でしょう。
逆にFCP一本でフローを完結している人にとってはBRAWの恩恵はありません。
とにかく今回ProResRAWもBRAWも撮れる選択肢が増えたと言うのは間違いなく良い事です。
VideoAssist本体選びと.BRAW撮影に向く推奨メディアを考える
VideoAssist 12Gを使うとS1Hで.BRAWが撮れる様になるわけですが、VideoAssist 12Gには5インチと7インチの2つがラインナップされています。7インチは流石に気軽に撮り歩く?にはちょっと大きすぎるので私は5インチを早速ポチりました。流石にミラーレスカメラにくっつけて手持ちで撮るなら5インチじゃ無いとね。。。
【国内正規品】Blackmagic Design モニター一体型レコーダー プロ仕様スコープ VideoAssist 5インチ 12G HDR HYPERD/AVIDA12/5HDR
- 発売日: 2019/10/09
- メディア: Personal Computers
で、気になるのはどのメディアを使えば安定して「.BRAWが撮れるのか」と言うもの。予め書いておくと、いずれのメディアでもBlackmagicDesignの公式サイトには掲載されているもののLUMIX S1Hとの組み合わせで生成される.BRAWで果たして安定して撮れるのかの保証はありません。
過去にもBMDの推奨メディアが、SDカードの仕様変更で認識すらしなくなったと言う話があるので推奨メディアはあくまで目安でしかありません。メディア選びは相性問題が付き纏うので、仕事で使われる場合や撮り逃しできない撮影に使われる場合は、必ず事前に入念なテストをしてください。
Blackmagic Design公式ページ記載のBlackmagic Video Assist 12G推奨メディアは下記の公式サイトをご覧になれば分かるかと思います。
で、これを元にメディアを考えてみたいと思います。
Blackmagic Video Assist 12G推奨SDカード
Blackmagic DesignのページにいくとBlackmagic Video Assist 12Gの推奨メディアが記録フォーマット毎に記載されています。結構な数のメディアが掲載されていますが、私が着目したのは下記の表記です。
following SD Cards are recommended for recording 5744 x 3024 Blackmagic RAW 3:1 up to 29.97 fps from Panasonic EVA1
Sony Tough SF-G64T 64GB Wise SD2-64U3 UHS-II SDXC 64GB The following SD Cards are recommended for recording 4K DCI Blackmagic RAW 5:1 up to 59.94 fps from Panasonic EVA1
Angelbird AV PRO SD V90 64GB Angelbird AV PRO SD V90 128GB Sony Tough SF-G64T 64GB Wise SD2-64U3 UHS-II SDXC 64GB
.BRAWの撮影で唯一4K解像度を超えるのがEVA1の5.7K(5733X3024)です。これはDCIの画素数の約2倍のデータ量となります。下段のDCI 4Kは60pなので上下の欄のデータ量は同じ?と思われますが、上段の方は圧縮率が低いのでデータレートは上段の方が上です。
その結果BMD推奨メディアの中の最速メディアは下記の2種類と言う事が言えます。
①Sony Tough SF-G64T 64GB 単位(1GB)容量あたり212円/GB
②Wise SD2-64U3 UHS-II SDXC 64GB
下記の64GB版だと思われ。と言うかWiseなるメディアメーカを初めて知ったけど、みなさんご存知なんでしょうかね。下記の128GBのものは推奨リストに入ってないのでちゃんと動作するかはわかりません。なお、こちらのビット単価を計算すると単位(1GB)容量あたり211円/GB
SONYの方も128GBがラインナップされてるのでそちらでも大丈夫と思うのですが、なんともわかりません。それに、どうせVideoAssistを使うならSDカードじゃなくても良いんじゃね?と思います。なので私はSDカードで運用しない予定です。と言うかビット単価が高すぎるんですよね。。。
Blackmagic Video Assist 12G推奨 USB-Cドライブ
続いてUSB-Cに接続するUSB-C接続タイプのSSDについて記載すると、先ほどのSDカードよりも少し選択肢が増えます。
The following USB-C Drives are recommended for recording 5744 x 3024 Blackmagic RAW 3:1 up to 29.97 fps from Panasonic EVA1
Angelbird SSD2GO PKT 512GB Angelbird SSD2GO PKT 1TB Angelbird SSD2GO PKT 2TB Samsung Portable SSD T5 1TB SanDisk Extreme Portable SSD 1TB Wise PTS-1024 Portable SSD 1TB The following USB-C Drives are recommended for recording 4K DCI Blackmagic RAW 5:1 up to 59.94 fps from Panasonic EVA1
Angelbird SSD2GO PKT 512GB Angelbird SSD2GO PKT 1TB Angelbird SSD2GO PKT 2TB Samsung Portable SSD T5 1TB SanDisk Extreme Portable SSD 1TB Wise PTS-1024 Portable SSD 1TB
またしてもあまり馴染みの無いメーカー名の
Angelbird SSD2GOと言うのが出てきた。(私が全然知らないだけなのかもですが。。。)でもAngelbirdの製品は国内で取り扱っている代理店が極端に少ないせいもあって、値段がかなりバラバラ。そこそこ安いものでも5万円オーバーでGB単価は54円。それでもSDカードに比べるとだいぶ安い。けどSSDとしてはかなり割高。
コストだけ考えるとExtreme Portable SSDの方がBlackmagicDesginのサイトで公開しているSSDの中ではSanDiskポータブルSSDが一番です。
お値段 13920円→GB単価13.6円
悩ましいのがこの形状です。SamsungT5とかだとケージに取り付けするための専用のパーツがSmallRigとかから出ているんですが、SanDiskのポータブルSSDの場合はみた事が無いです。なのでケージへのおさまりが良いSamsung T5の方を選ぶのがいいかなと。
とは言え、ラバーハングタブがついているし、外装も金属では無いのがメリットだと思います。カバンに雑にPCと一緒に入れたとしてもPCの外装を傷付ける事が無いと思われます。後述するSamsungT5はアルミケースで美しいのですが、裸でカバンに雑に入れてしまうと、擦れてPCやカメラを傷を付けてしまう可能性があるので雑に扱いたい人にはこちらの方がオススメかもしれません。
結局選んだメディアは
今までもSamsungT5は使っていて、今もT5(500GB)は日常的に使っています。そのコンパクトさからやっぱコレかなと。。。今のところT5が起因と思われるトラブルは一度もありません。
ただし、前述の様にPCカバンに入れて持ち運ぶ場合などはPCがキズキズになるので注意しましょう。
Samsung 外付けSSD T5 1TB USB3.1 Gen2対応 【PlayStation4 動作確認済】 正規代理店保証品 MU-PA1T0B/IT
- 発売日: 2017/09/04
- メディア: Personal Computers
どのメディアを選ぶか
てなわけで上記の書いた様にSDカードを使用した場合のGB単価は200円オーバーで、USB-Cドライブを使用した場合のGB単価は15円前後となります。
なのでVideoAssistを使う場合はSDカードを買うよりも少し煩雑になりますが、USB-Cドライブを使うのがお財布に優しいと言うのは間違いなさそうです。冷静に考えてSDカードを新調するのはちと勿体ない。それならSamsung T5かSanDiskポータブルSSD買うわな。。。ちょっと大袈裟なシステムになりますが、Video Assist自体がそれなりの大きさになるので、今更USB-Cのドライブを付けたところでもう誤差の内かなと。。
まとめ
とにかく、S1HのBRAW対応はS1Hの発表以来の悲願でした。せめてCinemaDNGで撮れればDaVinci Resolveでグレーディング出来る様になるのに、対応したRAWはProResRAWのみと言うものでした。もちろんProResRAWもFCPを使って素晴らしい画質を編集する事が可能です。FCPを使っている人にとってはProResRAWは素晴らしいフォーマットだと思います。
一方で、上でも書いた通りDaVinciワークフローの中心にある方の場合はBRAWを言うフォーマットにありがたみを感じると思います。小さく軽いフォーマットでDaVinciだけで編集、グレーディングを完結出来るそれが間も無く出来る様になるといろいろシンプルに作業が出来ます。
そして、気になるのが今後LUMIX S1/S5で同様の.BRAW対応があるかですが、ここはやっぱり対応して欲しい。絶対対応して欲しいぞ。BRAW/ProResRAWの選択肢が増えるのはユーザーにとって絶対に良いと思いますんでね。(メーサーさん大変でしょうけど頑張ってください)
おまけ
yoko画伯によるおまけ漫画
筆者:SUMIZOON
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