とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ

ビデオグラファーsumizoonのブログ 一眼動画に関する機材や撮影方法を中心に情報を発信していきます。

Z9でNikonが一眼動画界を引っ張る存在になる日が来る?

さて、発表が間近に迫ったNikonのZ 9(未だになんでZと数字の間にスペースが必要なのかわかっていない)ですが、かなり信ぴょう性が高いと思われる記事が出そろってきたので記事にしてみたいと思います。

 

2021.10.28更新 正式発表後の下記記事も参考にして頂ければ幸いです。

sumizoon.hatenablog.com

https://digicame-info.com/picture2/nikon_india_Z9_presentationvideo_002.jpg

尚、一部スチル機能についても触れますが、基本、本記事はZ 9の動画性能(の噂)について語るものです。

各噂記事

まずは記事の引用元を明確にしておきます。既にこれらを元に多くの記事が各カメラ系ブロガーさんによって書かれていますが、基本的には下記ソースを元に書いてみたいと思います。

digicame-info.com

噂①メカシャッターが無い、フルスキャン4msec

カメラからミラーが無くなって数年、ついにメカシャッターもリーフシャッターも無い、完全電子シャッターのみという構成。ある意味革命的というか、ついにこの時代が来たかと思わせる噂です。NikonのセンサがフルA/Dビットのフルスキャンリードで噂通り4msecだとすると

4ms=1/250sec

の超高速読み出しを実現しているという事になりますので、多くのカメラのメカシャッターと同じスペックを電子シャッターで実現する事ができます。

※Nikon1の一部機種では完全電子シャッター構成が実現されていますしSIGMA fpとかもありますが、完全にメカの代わりになるレベルで物理シャッターを廃したとすれば、世界初だという認識です。

https://digicame-info.com/picture2/nikon_india_Z9_presentationvideo_003.jpg

尚、SONY α1の電子シャッターはフラッシュ同調速度から1/200secとなるため≒5msec、EOS R3の場合は1/180secとなるため≒5.5msec
尚、双方ともメカシャッターは搭載しており、必要に応じて電子シャッター、メカシャッターを使い分ける事が可能です。(α1の場合はぶっちゃけメカシャッターが不要なレベルですが、搭載しているメカシャッターの幕速(ローリングシャッター速度)は1/400にまで高速化されています)

幕速が4msecを達成できるのであれば確かにメカシャッターは不要だと思いますし、真っ当な噂かと思います。

それにメーカーにとっては生産コストも下げられるし、ユーザーにとってはシャッターユニットの交換コストが不要になるというのも大きい。

この超高速読み出しは動画の際に有効なのか

さて、ここで一つの疑問が湧きます。この幕速はセンサーの読み出しだけであれば250fps相当の速度を達成することになります。仮に上記の4msecが真実だった場合でも、この幕速がそのまま8K動画や4K動画に活かされるかはまだ分かりません。

というものα1のフルスキャンリードは5msecですが、実際の8K撮影の場合は3倍ほど遅い16.6msという速度となるからです。(つまり60p相当の速度でReadがされる。)

https://www.cined.com/content/uploads/2021/06/RS-Sony-A1-8K-25p-16_6ms-640x360.jpg

α1の動画ローリング速度16.6msecはスチルの5msecよりも3倍以上低速

https://www.cined.com/jp/sony-a1-lab-test-rolling-shutter-dynamic-range-and-latitude/

EOS R5の速度もおおむね上記数値(15.5msec)であり、α1もEOR R5も8Kの速度は似た幕速と言えます。これの意味するところは、「動画撮影時は積層メモリをバイパスしてセンサー外に読みだしている」というものです。積層されたメモリは使わない動きです。(推測ですが、多分あっていると思う)というか、メモリの発熱や電力がヤバくて積層メモリを動画撮影では使えないといった可能性が高いと思います。

スチルと動画のデータレート

今のCANONSONYISPは8Kを60pで受けられる仕様の様ですので、センサーから直接8K60pを読みだす事が可能です。

積層メモリは撮像素子の出力インターフェースとISP(映像エンジン)の受信の間に入る(データレートを見かけ上落とすための)バッファメモリとしてスチルでは使われているはずです。が、これは高データレート撮影時にのみ使用されるものと推測します。つまりスチルの時のみ。スチルでは1/250sの幕速するとその際の読み出しデータレートは16bit/Pix換算として、

8192(H) x 5464(V) x 16bit x 250fps=179Gbps

というレート(ピーク)でデータがオンチップADから読みだされる事になります。(尚、画素数はEOS R5の物と同じくらいと想像されるため、EOS R5の値を使用)

ピークとはいえ、この179Gbpsを実現するインターフェースを作ろうとすると、とんでもない事になるので、一旦撮像素子に積層されたメモリに「一時的にデータを蓄えて」次のフレームまでの間に、「ゆっくり読み出す」というのが積層型のカラクリです。仮にZ 9のフルスキャンの秒間20連写が可能だったとしてその時のデータレートは

8192(H) x 5464(V) x 16bit x 20fps=10Gbps

撮像素子とメモリは一つのチップに収まっているため高速に伝送が可能と思いますので、

オンチップAD→メモリ間伝送=179Gbps

メモリ→ISP(映像エンジン)伝送=10Gbps

とすれば見かけのセンサのデータレートは低くても、幕速を極端に上げる事が可能となるはずです。

さて、先ほどの動画の話に戻ります。8K60pというもののデータレートを推測してみましょう。おそらく動画モードはスチルに比べてbit数は少ないものと推測しますので、12bitとして計算します。これを60fps相当の幕速で読んだとすると

7680(H) x 4320(V) x 12bit x 60fps=24Gbps

となります。おそらくCanon/SONYが実現しているISPも24Gbps以上のデータを受けられるはずなので、Nikonも同様でしょう。つまり

オンチップA/D→直接ISP伝送@24Gbps

のパスを通ればメモリの読み書きの電力を大幅に削減できる事になります。おそらくNikon Z 9もメモリを使わない、この「通常ローリング方式」を取るものと推測します。(というか長時間メモリに書いて読んでをやると燃えるのではないかと思います。)

まぁ予想なので外れたらすいません。よって動画時のローリングシャッター歪はそれなりに出る可能性が高いですが、60p相当の幕速なのであんまり気にならないかと思います。それよか、長時間撮れることの方が重要かと思う。

②8K60p撮影可能 8K30pは1時間以上の連続撮影が可能

前述の通りなので今更書くのもアレですが、ミラーレスカメラとして初めて8K60p撮影が可能になる模様です。というかやべえ。。。既に下記ティザーで明らかになっている事ですが8K30pの方は、かなりの長時間撮影が期待できます。

一方で、噂は8K60p対応は発売後のファームウェアアップデートで実現されるというもの。


www.youtube.com

先にも書いたようにスチルのフルスキャン20連写時よりも8K60pの撮影の方がデータレートは高いですし、発熱もかなりもものとなると思います(積層メモリは使わないにせよ)。
画質に関わる駆動やソフトウェアのチューニングはまずはスチルと8K30pに注力してから後日アップデートという形は至極当然なのかもしれません。

それと、スチルの秒間20コマというのは動画8K60pのデータレートよりも低いので、今後このコマ数は上がる可能性があるとみています。(この制限はフレームバッファの帯域やカードへの書き込みで律速されているか、もしくは発熱によるものかもしれませんが、スチルは内部処理的にはフルスキャン秒間40コマの能力があってもおかしくないはず)

③N-RAW

キャノンは独自の動画RAWフォーマットをEOS R5に搭載した(Cinema RAW Lightではなく12bit Canon RAW)事は記憶に新しいですが、Nikonも独自の動画RAWフォーマットを搭載するのではないかという噂があります。

NLE(ノンリニア動画編集ソフト)との関係は?

この噂が本当であれば、動画ガチ勢にとっては非常に面白い事になると思いますが、一方でユーザーがメリットを受けられるか否かは動画編集ソフト(というかカラーグレーディングソフト)側の対応がどうなるか次第だと思います。

たとえばニッチな所でいうとZ CAMとかもRAW動画を撮影することができますが、DaVinciでネイティブにグレーディングすることは出来ません(Z CAMさんには悪いですが実質使い物にならないです)。

またApple ProResRAWという広く知られるようになったRAWフォーマットもDaVinciでの読み込みは出来ません。一方でBlackmagic RAWはFinal Cut Proでの読み込みは不可能ですし、Premireでの運用もかなり制限がある状態です。

つまり、独自RAWが搭載されても結局それを扱える環境がそろうのか否かが重要だと思います。

また、少し気になるのはEOS R5単体でのRAW動画撮影や、LUMIX S/Gシリーズの様に外部RecでのProResRAW/BlackmagicRAW対応など多くのカメラがRAW撮影に対応してきてはいますが、「本当にユーザーは使っているの?」という疑問が湧きます。ウチみたいな変態ユーザーはかなり使っていますが。。

かなり、ここらへんの開発競争は激化していると思いますが、カメラメーカーのマーケティングとクリエーターの実際がどこまで一致しているかが非常に気になるところではあります。

まとめ

とりあえず、使ってみたいぞ!これはCanon EOS R5発表の時よりもずっと気になる。。。

というか、ここに来て少なくともスペックを見る限り、かなりぶっとんだ仕様を盛り込んできているのは間違いありません。そして、それら機能はやがて下位機種に展開される内容でしょう。動画スペックで一歩躍り出たNikonの今後に大いに期待したいと思います。

発売からしばらく後でもいいので、こいつにレビューさせてもいいというメディアさんがおられたらウチに是非😅

 

筆者:SUMIZOON

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