ついに正式発表されたNikon Z9の動画性能について書きたいと思います。
https://www.nikon-image.com/products/mirrorless/lineup/z_9/
Nikon Z9概要
まずは、動画性能うんぬんを書く前に製品の概要について触れておきます。
撮像素子:FXフォーマット(フルサイズ35mm判)
有効画素数:4571万画素
ISO感度64~25600
発売日:2021年中
参考価格:税込み63万円(MAPカメラ)
噂通りこのカメラにメカシャッターはありませんので、その事が価格に反映されているものと思いますがフラッグシップモデルにしては衝撃的に安い。。
スチルにおいてはメカシャッターの必要のない幕速を実現しているためです。スキャンレートはストロボ同調速度から4msecと見られます。
細かいスペックを知りたい方はこちらをご覧ください。
オンライン発表会の動画は下記
動画性能
さて、ここからが本題。このカメラの動画性能についてみていきます。尚、画質に関わる部分に関しては実機の画質傾向が分かりませんのでスペック中心の話題となりますのでその点ご了承ください。
(というか、二時間かけて書いた記事が消えるという事故がありまして、再度書き直したので全部書きたいことがリカバーできてるか不明。。いや、多分コレの1.5倍は書いていたはず。。TT)
実用的な8K30p
ミラーレスカメラとして8K30pが撮影できるカメラはSONY α1とCANON EOS R5がありますが、いずれも熱停止の話はいろいろな所で耳にします。少し前まで多くのカメラで4K30pがギリギリのスペックでしたので無理もないと思いますが、このNikon Z9は8K30pで1時間を超える実用的な連続撮影が初めてできるカメラという事になります。ただし8Kの撮影はH.265に限られるためスペックの高いPCが必要になります。
ProRes422HQフォーマット
公式HPを見ていて、おおっ?と思ったのがProRes422(HQ)の採用です。ProResはAppleが開発した制作用高品質な動画コーデックであり、多くのシネマカメラで採用されているものです。時間圧縮の無いALL-Iフォーマットです。
尚、最近一眼動画界隈でも耳にするようになった動画RAWフォーマットのApple ProResRAWとは異なります。ProRes422(HQ)は圧縮のYUV記録です。高品質なコーデックでファイルサイズは大きいもののデコード動作が非常に軽快です。
ProRes422(HQ)のビットレートはAppleのホワイトペーパーによると4K30pで概ね880Mbpsです。これは秒間110MBのメディアを消費するので1Tのメディアに2.6時間記録できる程度のビットレートとなります。また、同フォーマットは60pではその倍の220MB/sを消費しますので1.3時間の記録ができる計算となります。
※1 120p:119.88コマ/秒、100p:100コマ/秒、60p:59.94コマ/秒、50p:50コマ/秒、30p:29.97コマ/秒、25p:25コマ/秒、24p:23.976コマ/秒
※2 動画撮影メニュー[電子手ブレ補正]は[OFF]に固定されます。
※3 8K UHD動画として記録されます。DXレンズ装着時は選べません。
※4 4K UHD動画として記録されます。https://www.nikon-image.com/products/mirrorless/lineup/z_9/movie/
少し残念な点と言えば、このProRes422HQ記録は4Kまでに制限される点です。8Kの場合はH.265を使ってね!というスタンスの様です。ProResは8Kまでをサポートするコーデックですので、もしかするとファームアップで今後対応するという可能性はゼロじゃないかもですが、こればっかりは分かりません。
あと、できれば圧縮率の少し高いProRes422が実装されていると嬉しいなと思わんでもないです。(普段ProRes422で撮ることはあってもHQってあんまり使わない人なので)
とは言えですよ、ProResのっけて来たスチルベースのミラーレスカメラはこれが初です。素晴らしいと思います。
N-Logガンマの内部収録が可能
10bit記録に限られますが、N-Logガンマの内部収録が可能となります。また、H.265の10bit記録に関してはHLGも記録も可能です。
Nikon機は他のカメラも含め8bit収録ではN-Logが使えない仕様ですが、これはNikonの良心かもしれません。というのも8bitでLog記録をしてしまうとかなりの確率でグレーディング時にバンディング等で破綻します。ある意味8bitならLog記録させないというのは優しい制限なのかもしれません。
Z9では10bitの豊富な階調でN-Logが安心して使えると言えます。
平均ビットレート
H.265における8K撮影の平均ビットレートは400Mbps、4K30pの場合は190Mbpsとなりミラーレスカメラとしては一般的なビットレートでの記録が可能となっています。H.265の場合はビットレートは極端に高くも低くもないと言ったところでしょうか。
動画解像度とフレームレートクロップファクタの関係
8K撮影の場合は当然その画素数の関係からフルサイズ画角のみの撮影となります。
4Kのハイフレームレートの場合はフルサイズ画角もしくは2.3倍クロップのいずれかになります。フルサイズ画角の場合は2x2画素混合による読み出しがされるものと思います。4K60pもフルサイズ画角で撮影が可能ですが、こちらも2x2画素混合読み出しと推測されます。(4K30pのフル画角は全画素読み)
全画素読み出しのモード
全画素読みは8K30pをベースに考えると分かりやすいと思います。ハイフレームレート4Kは2.3倍クロップ、4K30pのフル画角は8K30pからのダウンダンプリングとして機能します。
スチルの幕速は4msecだが動画の幕速は?
おそらく全画素読みの際は8K30pであっても8K60p相当で動作するものと推測します。また、スチルの際に有効になる1/250secでの幕速は動画では有効にならないものと推測します。これに関しては先日書いた記事を参照ください。
いや、動画撮影時でも積層メモリを使った高速読み出しで、ローリングを抑えているという嬉しい誤算の可能性もゼロでは無いと思うケド、こればっかりは実機を見ない事には分かりません。というか、ここらへん情報をお持ちの方は是非コメント頂ければと思います。
その他
まだ私が調べ切れていないだけかもしれませんが、プロキシ同時記録とかそこらへんの動画機としての機能については実装されていない様です。ですが、もしかするとファームアップで対応される可能性もゼロじゃないかなと。
また、現時点での外部HDMIでのRAW記録はアナウンスされていません。つまり現時点ではProResRAWやBlackmagicRAWの対応がされるか否かは不明。Z6/Z7の外部RAW Recを行ったNikonの事なのでここは期待して待つとしましょう。
予告されているファームアップ内容
予告されているファームアップの内容の中で私が注目している部分を記載します。
8K UHD/60p(12bit)のRAW動画の内部記録
8K60pのRAW撮影が可能となるものです。少し気になるのは8K60pの圧縮コーデックでの撮影がアナウンスされていない点です。
ここからは少し予想になりますが、8K60pはRAWのみの撮影に限定される可能性があるかもしれません。というのも圧縮コーデックの場合は、各種収差補正(歪曲収差、色収差等)、ノイズリダクション、アパーチャ、WB処理などの各種の画処理を経てYUV記録されるものですが、RAW記録の場合それらのほとんどの処理はバイパスされます。つまりRAW記録の場合は圧縮記録に比べて画処理エンジンの負荷が低い事を意味します。
一眼動画界隈でもRAW動画を有難がる傾向にありますが(私もだけど)、圧縮コーデックは前述の様な高度な処理を行っているフォーマットです。RAWはそれらの処理をポストプロダクション側で好きに処理することができるメリットがありますが、それらをカメラ内部で行わない代わりに8K60pの記録ができるようになるのでは?という推測をしています。(その代わりメモリへの書き込み負荷は高いはずです)
あとは、前回も書いた通り、このRAWフォーマットが何者なのかです。NLEとの兼ね合いも気になります。
動画撮影中の赤枠表示
これは私も愛用しているLUMIX S1Hからミラーレスカメラに搭載されている、REC時の表示方式になります。とにかく、この表示のお陰で逆タリーの確率は格段に減りました。素直にこの表示が採用される事は素晴らしいと思います。
動画撮影中の拡大表示倍率の切り換え
これも素晴らしい。特にマニュアルフォーカスでの撮影を行っている最中に画像を拡大できないカメラが多いのです。というはほとんどのカメラが拡大表示できない。これができるのと出来ないのとでは撮影の安心度が違います。
感想
このカメラ、当然プロ向けのスチルカメラの位置づけですが、動画撮影用のカメラとしてスペックは現存するミラーレスカメラとして最高峰のものです。
というか、スチル撮影機能からメカシャッターを排した事で、スチル機なんだけどほぼ動画機に近い構成となっていると思うのは私だけでしょうか。
ミラーが無くて、連写が凄くて、メカシャッターが無い、それでいてセンサーはデカく高品質なコーデックを搭載している。それはスチルカメラの形をしたシネマカメラと言わずして何でしょう。
いや、コレ見てると凄いスチルカメラなのは分かるのですが、ミラーレスの将来は完全にスチルと動画の融合をするんじゃじゃないのかなと思わんでもないのです。
もちろんスチルと動画ではシャッタースピードのセオリーの違いや、スチルのストロボを使った撮影など両者相容れない点はあるかと思うのですが、機能的な側面で言うと両者垣根がなくなっていく様な気がします。
思えば、昔はスチルに比べて動画は画質がかなり落ちました。FHDで30pがやっとという時代から比べると、今現在、動画はフレーム切り出しでスチルと見分けが付かないレベルに到達しましたし、解像度もスチルと動画は同じです。そしてビット数こそまだスチルに比べて少し落ちますがRAWで記録できるという時代。
スチルの連続(画質)が動画となり動画からスチルを切り出すという両者垣根がない状態にほぼなったと感じます。これからの写真のありかたが変わる。歴史にその名を遺す可能性があるカメラがこのZ9かもしれないなと思った次第です。
あとは、このカメラの画質を実機で確認したい所ですね。
筆者:SUMIZOON
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