はじめに
さて、近年やたらとYoutubeや各種SNSで見かけるようになった「動画編集で楽に副業」とか「会社辞めて動画編集で収入を得るようになった」などの動画編集の教材系CM。一般の方には目に入らないCMかもしれませんが、日常的に動画編集関連の動画やカメラ系の動画を見ている人は一度は目にした事はあるはず。
私自身は依頼を受けての撮影やレビュー動画の制作や記事のライティングを行う事はあれど、動画撮影や編集で儲けることにほとんど興味がない人です。あくまで趣味の延長レベルです(クオリティの向上には貪欲ですが)。
なので、この手の事情に詳しいとは言えませんが、長いこと撮影から編集までをやっている人間として、「そんな甘くないと思う」という注意喚起をしておきたいと思います。予め書いておきますが動画編集を仕事とすることを否定するものではありません。しかし動画編集だけで楽に大儲けできる的なイメージを持っている人が居るなら、「厳しいと思うので冷静になった方がいいよ」という話です。決して上から目線で言ってるわけではなく純粋にそう思うのです。
「動画編集だけ」ですげー儲かっているという人は私の界隈にはいないからです。皆さん楽になんて稼いでません。映像関係で仕事をしている知人達は編集だけでなくめっちゃ働いて収入を得ています。
ここから書くことはあくまで私の一意見ですので、動画で副業にしたいと考えている方は「動画 副業」とかで検索するだけでなく「動画 副業 デメリット」なども含めてスコープを広げて総合的に判断する事が必要だと思います。
現在の我が家の趣味の編集環境
CMの謳い文句とそれに対する感想
とにかく見かける「動画編集で儲ける」系の動画その内容のいくつかをピックアップしてみたいと思います。
・謳い文句1:私でも簡単に稼げる
・謳い文句2:動画編集はとにかく稼げる
・謳い文句3:自宅にいながら以前と同じ会社と同じ収入が得られる
と言ったもの。今回はこれらが本当にそうなのかと言う点を考えてみたいと思います。おそらく常識的な人であればかなり「胡散臭い」と思うはず。
広告主が本当に動画編集で凄く稼げているのであれば、あえて競合を増やして市場を壊すようなことはしないでしょう。結局「儲かる」という話で人を釣って「教材を売って儲ける」という「いつの時代もあるビジネス」なのだという見方を大半の人がしているはずです。
一方でこれらの文言の良い側面だけを捉えて、「そうか、簡単に稼げるなら私も初めてみようか」とこれらの情報商材系の話に乗ってしまう人も一定数はいると思います。
上記の教材を購入したことも、購入するつもりもないので正直どういった内容を教材購入者にレクチャーしてくれるのか詳細には知りません。
ただ、言えるのは動画編集ってよっぽど好きじゃないと、シンドイよ。という話。
まぁ仕事全般に言えますが、金儲けのために動画編集をしても多分モチベーションは上がらないし長続きしないと私自身思うのです。ひたすらカット編集、テロップ入れ、SE、BGM、各種エフェクト、場合によっては色補正、モーショングラフィック、アニメーション作成を行うことになると思います。頭は使うにせよひたすら作業です。
動画編集は稼げるか稼げないかと言われたら時給換算で安くていいなら稼げる言えます。
とにかくゼロから始めてすぐに一般社会人並みの収入になれるのは、異常に金払いの良い「ある種、発注事情や動画事情に疎いクライアントさん」と巡り合わない限り無理だと思います(言い方悪くてすいません)。
多くの一般企業のサラリーマンは仕事がベテラン社員の1/100以下の仕事しかできなくても入社当初から給料が支給されますが、一方でフリーとして動画編集を生業とする場合、仕事が出来なかったら儲けはありません。
始めたてはクラウドワークスやランサーズのいいとこ5000円とかの案件を数日かけてこなすことから始めることになるでしょう。5000円の案件が取れればいい方です。経験を積めば効率は上がっていくでしょうけど、下手をすると5000円以下の案件を苦労してこなすという状況から抜けられません。そもそも好きでもない動画編集ソフトの大量なキーボードショートカットとか覚えられないと思う。
そして今日び動画編集好きの小学生でもできるような比較的簡単な動画編集だけの仕事なら単価は今後下がるだけだと思います。
また、後半にも書きますが、他人が撮影した映像を編集することは結構なストレスです。それを修正依頼を受けて1週間で完パケたとして時給はいくらになるんでしょうか。。。(ちと極端な例だけど)
・謳い文句4:動画編集で儲けたいならスキルよりもビジネススキルだ
お金を儲けようというなら当然営業的なスキルが要求されるのは当然です。ですが、安易にスキルが無くても儲けられる的なイメージの動画が多いと思う。カット編集だけで満足して高額なギャラを払ってくれるクライアントさんがいればいいけどそんな都合の良い案件はほとんどないと思うし、万が一あったとしても案件は取り合いでしょう。日々案件を探し回ることで消耗するのは時間の無駄ですし、それこそ次の文句である家族との時間は減る一方です。
・謳い文句5:辛い会社生活で家族との時間もままならなかったが、思い切って会社を辞めて動画編集の仕事を始めた。家族との時間が増えて充実した毎日を過ごしている
こちらも後半に書きますが、思い切って会社を辞めるとか見切り発車すぎてヤバいです。お小遣い稼ぎや副業ならいざ知らず動画編集だけでフリーランスでやっていくとかはあり得ないと個人的には思います。私の周りのフリーランスな人たちは撮影、編集、配信だけとどまらず、そのほかの仕事まで多くのスキルを持っているマルチな人がほとんどです。フリーランスとして武器が他に多くあればその限りではありませんが、1年後に単価がどうなってるか分からん動画編集という武器(スキル)1つでフリーになろうという考えは無謀だと感じます。
フリーランスとして動画編集だけでやっていくとか考えているなら少し冷静になりましょう。数年前は動画編集はブルーオーシャン気味だったと思いますが今は真っ赤っかです。
・謳い文句6:儲かる動画クリエータになろう
クリエータ。。。Twitterではほぼ未経験の方でも使う都合のいい言葉としてすっかりお馴染みです。
正直簡単にクリエータとかいう言葉使っていいのか?と思わんでもない。それほど名乗るのに覚悟がいる言葉だと思うのです。簡単にクリエータと名乗る人があまりに増えたため、そもそも自分をクリエータと堂々と名乗る人をあまり信用しなくなってしまったという背景もあります。(もちろんちゃんとクリエイティブな仕事をしてクリエータとして名乗ってる方も居られますので全てがコレに当てはまらないですが)
乱発されるクリエータという言葉のせいで、この単語を使うこと自体が恥ずかしくなってしまったというガチクリエータの方も中には居られるのでは?
話が少し本筋から反れたので戻します。
・謳い文句7:クライアントも紹介する
いや、個人でクラウドワークス、ランサーズとか登録すればいいのでは?と思わんでもない。企画書やPPM資料の書き方もその気になればネットで調べられるし多くのことはやる気さえあればいくらでも情報はあるでしょう。まぁそれらの超高単価の仕事が取りやすくする方法を教えてくれるのかもしれないけど、そんな超単価案件がどれだけ存在するか疑問です。
そもそも副業で収益を得るのであったら動画編集以外に楽な方法がいくらでもあると思うのです。
あと、動画編集の方法自体は教材に頼るまでもなく、やる気さえあればいくらでもタダで情報を入手できる時代です。というか無料のDaVinciのマニュアル読んでマスターしたら認定トレーナーになれます(やる気さえあれば)。
月10万程度の稼ぎだったら教材なんぞ買わんでも独学で学んでもイケると思うし、それ以上に本職を目指すなら本気で質のいい学校で一通り学んだりプロダクションに就職した方が良いと思います。
Youtube編集に関する過去の商材例
話は少し過去の話に遡ります。Youtube編集に関する過去の記事から
この記事は2018年のもの、当時はYoutubeの収益化をするための敷居は比較的低く、割とチャンネルの立ち上げと同時に収益化できるためにYoutubeで儲けるための情報商材というのが売られていたようです。詐欺的な事も横行していたという認識です。
おそらく当時はYoutubeでは某有名掲示板の内容を転載するだけの文字だけの動画がやたら量産されていたのですが、それと関連していると思われます。商材販売主は「15分の作業で最低月収50万円」「知っている人は100%稼いでいます」という謳い文句とともに動画を作成する簡易的なツールとスキームを販売し利益を得ていたものと思われます。
ただし、これで実際に儲けたという人はほんの一握。しかも後にYoutubeが文字だけ系の動画を排除したことからこれらのYoutubeチャンネルはほぼ駆逐されました。
加えて、2018年にはYoutubeの収益化を行うためのハードルが上がりました。
これに伴って、Youtubeのチャンネルを立ち上げてチャンネル運営で楽に儲けるというスキームが完全崩壊したのではないかと思います。まぁ、元からチャンネル運営で実際に儲けたという人はほとんどいなかったものと思います。やり方次第では再生回数が回って収益を得た人も中にはいたのかもしれませんが、「15分の作業で最低月収50万円」「知っている人は100%稼いでいます」という文句は
・「15分の作業で最低月収50万円」→一発あたって単月で50万円の人が1人いれば嘘にはならない
・「知っている人は100%稼いでいます」→ほとんどの人の収益は時給数百円にも満たないけど稼いでいることに間違いはない。
つまりこの文面、独立事象とAND論理で見る人でイメージは大きく変わります。
例えば上記文言は「知っている100%の人が、15分の作業で最低月収50万円儲けている方法」というAND論理の文章に読む人がいるはずです。この手の広告は広告主も100%の嘘はついたらマズイことはわかっているでしょうから巧みに消費者の心理を逆手に取った手法を使っていたのではないかと思います。そしてこの手の広告は見る人が見たら「胡散臭さの塊」であっても、見る人が見たら意外とよくできている。この広告を見て0.1%の人が釣れたらシメたもの。という感じだったのでしょう。
なお、今なおこれらの教材を元に作られている「亜種」と思われるチャンネルは今も多く存在していて、同じスキームで動画を作っている「情報商材の臭いがするYoutubeチャンネル」は未だ多く存在します。なので見かけたらそっと閉じてます。。。
近年見かける動画編集系教材
以前はチャンネルを立ち上げてチート的に動画で儲けるというビジネスが流行っていたようですが、そのスキームが崩壊した数年後、特に目立つようになった「儲かる系」の広告には次の2つがあります。
それが「プログラミング」と「動画編集」です。
プログラムに関してはプログラム脳が必要で、適正というのがかなり求められます。一時、プログラムは簡単で儲かる、就職率99%という実態にそぐわない文言で情報弱者を誘ったとして大炎上した方が居られますが、ここにも「儲かる」はキーワードでした。そして動画編集にも「儲かる」というキーワードを付加して教材を進める広告が世にあふれ出しました。
どちらも人材が不足しているということから、それらスキルを身につければ儲かるイメージがあります。それに前述のようなチート的要素も少なく「プログラミング」も「動画編集」ちゃんとしたスキルであり、その技術を身に付ければ儲けられるというイメージが強いからです。
次に、仮にしっかりとしたスキルを身に着けたとして、そのプラス面の裏にあるマイナス面を想像してみたいと思います。
動画編集ビジネスのマイナス側面
社会的信用と曖昧化する仕事/家庭の境界ライン
よく見かける動画編集ビジネスCMの謳い文句に関してですが、広告の内容が全てが嘘であるとは言いません。効率よく案件をこなせて長続きさせる気力があればそれなりの儲けは出るでしょう。でも楽に凄く儲かる、凄く簡単といったイメージが植え付けられて無いでしょうか?
動画編集に対してプラスイメージを植え付ける広告がほとんどです。
「会社辞めて、自由な時間で仕事ができる動画編集を始めて充実した毎日」とか言っても、それ本業にしちゃって大丈夫???家を建てたいと思っても多分ローンが通らないけど。そして勤めていた会社にあったセーフティネットも使えなくなるけど。
そして状況によっては家庭に仕事を持ち込むため下手をすると家庭と仕事の境界ラインが曖昧になって人によっては家庭崩壊を招く可能性もあるわけです。
近年在宅ワークが浸透し、家庭と仕事の境界がおかしくなって家庭が崩壊している例は多々ありますので、単純な謳い文句に乗る人ほどここら辺の思慮に欠いていないか考えましょう。
自分以外が撮影した素材を編集するという点
この手の動画編集請負の仕事は素材を発注元から入手して編集、書き出しを行なって納品するスタイルだと思いますので、素材は編集者(請け負う人)が選べないという点が苦しいところです。というか、動画の撮影〜編集までを一つのフローとしてやってきた私には人の素材で編集することは正直耐えられません。常に撮り手が同じであれば素材の癖にも慣れるでしょうけど、コロコロ変わる撮影者の癖とかわからんしそのたびにルーチンを組み直すとかシンドすぎると想像できます。。。
それに「自分の撮影した映像」を「編集でよりよく見せたい」とか「編集イメージ」から「こう撮る」というように私は撮影と編集はセットで考えてます。しっかりしたプロダクションなら撮影もしっかりしていて水平分業がされているケースがほとんどなのでこういったストレスは少ないと思いますが、私自身は撮影と編集が切り離せない人間ですので編集特化というのは単価が高かったとしてもモチベーションは保てないと思います。特に動画が好きで趣味から始めた人には耐えられないと思う。
また、再撮影はできないので編集でどうにかしてという無茶な要求をされることも想定できます。オートのホワバラで撮られたコロコロ色味が変わる素材をどうにかしてくれと言われたら短い動画でさえ修正するのは至難の業です。また、知り合いにの中には白飛びした空のカットに本来映っている電線を復活させてほしい、なんていうリクエストを受けたのでウチに相談が来た例もありました。(無下にできないので、こちらで電線新たに撮って部分合成して素材を作って送ってあげたという経験もあります)
とにかく後工程はしわ寄せが多いと言う事を覚悟しましょう。
尚、ちゃんとしたポスプロで働いている方が扱う素材はこういった話はほぼ皆無と思います。そもそも撮影がちゃんとしていると思うので。問題は低単価で発注される素材がきっとクオリティが安定しない点だと思います。
この手の教材屋さんは本気で動画編集を勧めたいのか、単に教材を売って儲けたいのかが正直わかりませんが、マイナス面をきちんと説明してくれていないのであれば後者の確率が高いと言えるでしょう。
やるなら本気でやるべし
前述の様に軽い気持ちで会社辞めて動画編集の仕事だけで生きていくとかマジで思わない方がいいです。(そんな人はほぼいないと思うけど)あまりにもリスクが大きすぎます。
本気でエディターやカラリストやカメラマン、DITになりたいんだったら、ちゃんとした学校に行くかそれなりの制作会社に就職してから独立した方がいいと思います。(ここ宣伝すると迷惑がかかるかもしれないのでやめときますがちゃんとした現役の映像業界の方を講師にした映像関係のスクールは存在します。)
誰でもできる技術で儲けられるなら、やがて儲けられなくなると思います。多分それは一生モノのスキルとは違うはず。
まぁ、私は動画撮影・編集は本業ではないですので本気でやるべし、というのも烏滸がましい話ですが、それなりの収益を得るのであれば本気でやる覚悟が必要だと思います。
仮に動画制作を副業・本業にするなら撮影スキルとセットで学ぶべきと思う
個人的に動画制作を副業にするのはおすすめしませんがどうせなら撮影から編集までを全て行うまでを副業にしてみては?と思います。フリーランスの映像制作者はほぼこのスタイルだと思います。これだと、自分の撮った映像を自分で編集できるので、自分で映像を作っている感覚になるはずです。
せっかくなら撮影するスキルをしっかり身につけるべきだと思うのです。(と偉そうな事を言えるほど私はスキルが高わけじゃないですが)
でも、Twitterでとある方が呟いてたけど、動画撮影も編集も趣味で無尽蔵なコストと時間をかけて超絶クオリティの高い動画をタダで作っている人はわんさか居ます。そんな人たちがいっぱいいる業界でフリーランスとして稼いでいくというのはこれまた簡単な話では無いと思うのです。
なんだか夢のない話を書いてしまいましたが、私が動画を本職としない理由が「仕事にすると好きな動画撮影、編集が楽しくなくなるから」という点につきます。
本職にすると少なくとも今より動画撮影・編集が好きではなくなってしまうでしょう。動画は趣味として楽しんで、場合によってはお小遣い程度がゲットできるくらいがバランスいいんじゃないかなぁ。それが動画を好きでいられる秘訣かもなと。消極的な意見ですいません😅
最後に
普段あまり書かないネガティブな文章も書いてしまいましたが、自分で撮った映像を自分で編集することは非常に楽しいです。これから動画撮影、編集を始めようと思う方はまずは純粋にこれらを楽しんでみては如何でしょうか。考えは人それぞれですので、その楽しさを仕事にしても維持できる、仕事にしても長続きする確信したら仕事にしたらいいのではないかと思います。
それと近く初心者の方に特化した記事を何回かに分けて公開予定ですのでまたお知らせします。
うーん改めて読むとクリスマスの晩に書くような内容じゃないww
けど、今年の夏に一回書きかけたこの記事を年内のウチに公開しておこうと思いましてクリスマスの夜にシコシコと書いた次第です。
ではでは
筆者:SUMIZOON
Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOON の人
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