とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ

ビデオグラファーsumizoonのブログ 一眼動画に関する機材や撮影方法を中心に情報を発信していきます。

カメラのソフト開発はユーザーに頼ってもいいと思う

さて今回は少し趣向を変えたネタ

この数年ずっと思っていた事を文章にしてみたいと思います。それは、多くのカメラを使ってきて「カメラのソフト開発はもっとユーザーに頼ってもいいんじゃ?」というものです。特にその思いは最近になって強くなってきました。まぁ異論があるのは承知だけど話を進めてみます。

私はメーカーサイドの人間ではないので完全にユーザー視点で、誤解や思い込みの強いかなり妄想記事になってるかもなのでその点ご了承ください。

ソフト開発をユーザーが協力する意図とは

いや別にカメラのソフトのコーディングをユーザーに委ねて欲しい訳じゃないです。多分そんな事をすると知られたくない仕様とかバレバレになるでしょうしね。そういう事じゃなくて、端的に書くと「ソフトのベータテスターを一般のユーザーから募ってもいいんじゃないか」という単純な話です。

特に、カメラだけで完結しない動画界隈はジンバルやらモニタや外部機材との接続が多く発生するため、メーカーが自力で検証する側も大変だろうと思うのです。そもそもメーカーが想定される全ての機器を接続テストなんて出来ないでしょうし。。

複雑化する国内デジカメの機能

デジタルカメラのソフトはデジカメ黎明期に比べて等比級数的に複雑度が上がっているのは想像に難くありません。故にソフトのデバッグ、検証工数も莫大な工数がかかっているはずです。もちろんツールの発達に伴う効率化も等比級数的に高まっているでしょうけどね。

デジカメが動画機能を持つようになってきてからは、組み合わせの数が多くなりすぎて、バイチャンスで発生する様な不具合を予見するのは非常に難しいのではないかと思うのです。

ユーザーが普段使うモードは数種類であったとしても

撮影モード(解像度/コーデック) x 露出設定(M/A/S/P)x 測光モード x 手ぶれ補正の有無 x クロップ有無 x AFモード x ピクチャプロファイル x OSD設定 x レンズ種別 x ファンクションボタン設定

仮に上記それぞれが4つの状態を持つとしてもその組み合わせは。。。

4x4x4x4x4x4x4x4x4x4=1048576通り

でも実際そんな数字じゃ済まないです。さらにカードの状態やら録音に関するもの、HDMI出力のモード、言語設定、レンズ収差補正、Wi-Fi状態、Bluetooth/USBによる接続など設定は多岐にわたります。つまり私の手元にあるカメラの状態は天文学的数値の母数に対しての1つにすぎないのです。その組み合わせは取りえる総数は100億や1000億では済まないはず。

まぁ、素人目に考えても、これら全てのモードの動作確認を手作業で全てのモードを検証しているはずは無いとは思うのですが、とにかくメニューで設定を変更できまくるカメラはその検証工数はスゲー事になっているんじゃ無いかと思うのです。(お互い相関がないものに関しては組み合わせ検証する必要がないかも知れんし、もっと上位概念的に検証できるんかもしれんけど素人なのでわからん)

とにかく言いたかったのは、数学的場合の数から平均的確率を考えると「自分のカメラと同じ設定の人は地球上に一人もいない」と言う事。

※全ての設定に重みが無く各設定が一様にランダムになされることを前提としていますが、その場合、実際に販売された同一機種の2台のカメラが「全く同じ設定をなされる確率はほぼゼロ」になるはずです。得意な方はポアソン分布やら二項分布を仮定して計算してください。

さらに接続する機材なんて千差万別。。。

シンプルなBMPCC

少し余談になりますが、海外勢に目を写してみましょう。BMPCCはコスパがいいと言われますが、なぜ値段が結構安いのか、と言う点に関してはハード的にシンプルであること以前に、ソフトの開発工数が少ないから。と言うことも要因の一つでは無いかなと思います。もちろんファブレス(自社工場を持たない)である、社員をあまり抱えないなど会社のコスト体質に関する部分も多分にありますけどね。

AFCや収差補正は一切なく、コーデックもかなり限定的、露出モードという概念もない、当然「ボディ内手ぶれ補正も無い」「ピクチャプロファイルの概念も無い」「ほぼカスタマイズできないファンクションボタン」と組み合わせの工数は国産ミラーレスの比ではありません。これはディスっているわけでもなんでもなく、ユーザーが使う最小限度の構成にとどめた割り切り方は素晴らしいものです。

さらにBMPCCの場合は中のかなりの部分はFPGAで動いているでしょうから、数年毎に独自のエンジン開発をする国内カメラメーカーに比べると開発費も圧倒的に違うはず。電力はバカ喰いでもいい、と言う割り切りも今の国内メーカーではできないものだと思います。

尚、DJIのRonin4Dも一見複雑な様に見えてBlackmagicDesginと同じ思想を感じます。

複雑なZCAM

じゃあ、海外メーカーのカメラがみんなシンプルかと言うとそんな事はありません。例えばZCAMの場合、国内メーカーを超える様な複雑度を有する機能てんこ盛りのカメラを作って販売しています。ZCAM E2とかは、まさに機能のデパートです。

でも、このZCAMは最近になって少し方向転換した様に思います。カメラの開発というよりカメラ周辺機器に開発リソースをシフトした感じで今後ZCAMというメーカーがどうなっていくのは注視していこうと思います。

が、なんぼ勢いのある中華メーカーだからといってやりすぎじゃね?と思っていましたが大丈夫なのだろうか。。。

ユーザーがソフト開発に協力するメリット

やっと本題に戻ってきました🙏

要は今後も複雑化するのであれば、今後は多分メーカーの独力だけで開発を進めるのは限界があるんじゃね?という事なのです。その昔は機械式カメラは数人で開発していたものと思います。今はカメラのイチモデルの開発になんらかの形で関わる総人数は多分1000人クラスの規模でしょう。(細かい部品レベルまで行けばそんなレベルじゃないでしょう。)

ならばソフトのベータテストも一部はユーザーに任せるべきじゃ?と思うのです。実際に使われる使い方はメーカーも予想しないケースで使われるなら、

ユーザーは最悪は記録できなくなるリスクを承諾

した上でβファームを試す機会があっても良いんじゃないかと考えます。

だって、PCのソフトなんて一生ベータ版みたいなもんでしょ?ソフトが異常停止するたびにエラー情報をメーカーに送っているわけで、それに近いことをユーザーに委ねてもいいんじゃないかと。もちろん、カメラは「記録する」という絶対的な使命がある機械ですので全ての人にベータ版レベルのファームを使わせると色々事故になるのでNGでしょうけど。

あとはデッドロックするなど最悪の事態に備えて強制的に工場出荷状態に戻す情報を提供する、製品版のファームにいつでも戻せる様にするとかは必要かもです。

ベータ版公開によるユーザーメリットとメーカーメリット

完全に妄想記事なのでメリット、デメリットは整理できてないですがちょっとピックアップしてみます。

ユーザーメリット

ユーザー側のメリットは下記の通りです。

・最新の技術に触れられる

・開発に関わった満足感を得られる

・機材に愛着が湧く

バグフィックスを一足先に試せる

基本的はメカ好きの人を満足させるメリットが中心となりますが、それでもこのメリットを感じる人は多いはずです。

メーカーメリット

一方でメーカー側メリットは下記になります。

・デバックが捗る

・話題になる

SNSなどの露出が上がる

・ユーザー要望の吸い上げが可能

もちろん意図しないバグの混入を事前に検出するといった効果もありますが、SNSマーケティングツールとして勢力を伸ばしている世の中でその話題性はメーカーの強力な武器になる可能性があります。

また、メーカーとユーザーの距離が近くなるので、より多くの潜在的な要望が吸い上げられる可能性もあります(情報過多になるデメリットももちろん存在すると思います)。

なので情報の取り扱いはより慎重にする必要がありますが、いうほどデメリットは多くはないんじゃないかと考えています。

コレが出来ない理由

と、書いたところで上記は実現しない可能性が高いと思う。。。

またしても話がそれますが、中華系カメラメーカーのアップデートの速度は凄まじくその勢いを感じる事が多いです。そもそもFacebookなどにメーカー自身が作ったユーザーグループが存在していてこまめにアップデート情報を共有しています。ではなぜ日本のカメラメーカーにはそれが出来ないのでしょうか。

その理由をシンプルに書いてしまうと、「老舗の大企業だから」と推測します。そもそもソフトを一般公開(リリース)するためには常識的な企業は多くのデザインレビュー(DR)などのステップを経てリリースがなされるものだと思います。企業が許容する最低限の品質を担保するためには絶対に必要なプロセスですが、同時にユーザーに小出しにソフトウェアをリリースする事が出来ない原因となると思われます。

なので、技術や情報の統制以前に多分企業体質的に無理なんじゃないかなと。老舗家電メーカーは先進的なソフトウェアを作れない理由もこういうところにあるだろうし、日本がソフト開発に弱い理由の一つに、少々未完成でも「世に出してからユーザーのフィードバックを受けて直す」といったある種の「割り切るいい加減さ」が無く「真面目」だからと言う様に感じます。

 

じゃあ、それが出来る国内メーカーはあるのか?と考えてみると、出来そうなメーカーの筆頭は老舗ではあるけど母体がカメラ事業である

SIGMA

万が一、山木社長様このブログ読んでたら是非ご検討を😁

それととオリンパスという大企業から脱却した

・OMデジタルソリューション

の2社くらいかなと。。。まぁ両社ともモノづくりにひやすら真面目な会社だと思うけど小回りの利き方は他のメーカーの比ではないはず。

まとめ

いやね、実は先日の撮影中の怪我で、若干むち打ち症状があって撮影に出かけられない反動でちょっと書いてみた文章でした。

異論も多くあると思うし、賛同してくれる人も中には居てるかもですが、雑記的に書いてみました。

メーカーの人がこれを見て、「このブログ主、こんな事言うのはけしからん!!」とか思わるかもしれません。。。。まぁそんなに影響力がないので許してください。

ではでは

 

 

筆者:SUMIZOON

Facebookグループ一眼動画部主宰 メンバー4500人

CP+2021 LUMIXブースセミナー登壇

Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOON の人

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