PRONEWSさんのサイトでレビュー記事を執筆するのにしばしキヤノンEOS R5 MarkIIをお借りしていたのでこちらでもEOS R5 MarkIIについて書きたいと思います。
殆どは以下の記事に書いていているわけでして、詳細は記事をご覧いただければと思います。このブログでは改善要望点を中心に書いてますが、以下のPRONEWSさんのサイトには全般的な話しから一部マニアックな内容までを寄稿しています。
動画作例
今回は夏休み直前のタイミングで、あまり時間が取れなかったので幅広い被写体を撮影することはできませんでしたが、それでもいつもの被写体を撮影してみました。
左下にはメタデータから抽出した撮影情報を記載しています。H.265撮影ではISO感度の抽出がうまくできなかったのですが、基本はISO4000を上限に撮影していたと記憶しています。
CANON EOS R5 MarkII 8KRAW&4KRAW Test Shoot
ガンマプロファイルはCanon Log3で撮影していて、基本的にはREC709のLUTを当ててコントラストを調整したものがほとんどですが、おそらくISO6400でも問題なく運用できるものと思います。なお、PRONEWSの記事でも記載した通り、Canon Log3もLog2もNative ISOは800と4000の2段階の様です。厳密にいうとRAWにはLogという概念がありませんが、RAWを一旦Log3にしてからグレーディングしています。(理由としてははH.265で撮影した映像が全てLog3収録だったためで、RAW/H.265素材を混在して両者同じフローでグレーディングしたかったからです)
初代400mm F2.8 L IS USMでもアダプタ経由で快適に使用できた
飛行機の撮影は毎度お馴染み、友人から借りた初代EFヨンニッパ。超重量級のレンズですので気軽に撮影できませんが、EOS R5 MarkIIとの組み合わせ(純正マウントアダプタ経由)はバッチリでした。
EOS R5 MarkIIの動画的な特徴
EOS R5 MarkIIの(動画的な)特徴は書いた通り8K60pのRAWが撮れる事。そして、SRAWと言われる8K読み出しに対して記録を4Kに落とし込む使い勝手の良いRAW動画が撮れることが特徴として挙げられます。
私の愛機の一つにNikon Z8がありますが、動画機として明らかにEOS R5 MarkIIはZ8を意識して開発されたものだと感じます。まず、Nikon Z9/Z8は8K60p(RAW)が撮れますが、初代EOS R5は8KのRAWは30pに留まっています。EOS R5 MarkIIの8K60pはZ9/Z8のスペックに合わせたものと推測されます。
まぁ、実際にEOS R5 MarkIIやZ9/Z8で8K60p RAWを常用するのは同カメラユーザーの中でも1%もいないんじゃないかと思うのですが、そこは意地があるでしょうし、私のような映像馬鹿ならそのスペックで撮りたくなるものです。
とにかく8K60pが取れるのは素晴らしい事です。
これが出来ればもっと良かったのに。。というポイント
EOS R5 MarkIIは動画機としてよく出来たカメラだと思いますが、試用している中で感じた改善要望ポイントがあります。4点ほどピックアップします。
8K60pのH.265/H.264撮影ができない(RAWは可能)
これはNikon Z9/Z8でも出来ないポイントではあります。8K60pの撮影はRAWのみに限られるのでご注意ください。
H.265での8K設定 30pを超えるフレームレートは設定できない
これは8K60pという超巨大なデータをH.265に圧縮(エンコード)して記録するという事がエンジン的に難しいということが要因だと想像できます。一般的にRAW撮影できる事は「すごいスペック」の様に感じるかもしれませんが、RAWは時間的な圧縮や各種収差補正を行わないのでメモリの速度や転送バスの帯域が確保できるのであれば、画像処理エンジンの負荷は低いというのが私の認識です。とにかく、センサーから出てきたデータを最小限の画像処理(空間圧縮、キズ補正)に留めて力技でメディアに書き込むというのがRAW記録なはずです。(ちょっと極端ですが)
動画RAW記録フォーマット一覧(8K60p軽量RAWも設定可能)
なので、技術的にはH.265記録の方がずっと高尚な事をやっているはずなのですが、8K60pはH.265記録が出来ない点は残念ポイントです。まぁ今のところどこのカメラも出来てないので高望みしすぎかもですが。。
4K60pの8KオーバーサンプリングH.265/H.264撮影ができない(RAWは可能)
8K全画素を使った4K60p記録は実はできます。正確にはCanonはこのことをオーバーサンプリングとして明記していませんが、RAW動画記録の4K60pのSRAW記録は8K60pからのオーバーサンプリング記録だという認識です。
HEVC 422 10bit記録フォーマット一覧
ただし、H.265/H.254記録において8K60pをベースとしたオーバーサンプリング4K60p撮影のモードは存在していません。(Nikon Z9/Z8にはオーバーサンプリングするための設定が存在)
EOS R5 MarkIIの「4K Fine」(H.265/H.264記録)というモードは8Kからのオーバーサンプリング撮影するためのモードですが、このモードは30pまでに限定されています。H.265/H.264記録の場合は「非4K Fine」で撮影する必要がありますが、この「非4K Fine」はおそらくピクセルビニングモードでしょう。
ピクセルビニングとはなんぞやという方は以前書いた以下の記事をご覧ください。
ピクセルビニングのデメリットの代表的なものとして解像度の低下がありますが、8K→4Kの水平・垂直2画素混合の場合、総画素数的には1/4になりますのでエンジン側の負荷が大幅に下がります。ゆえに発熱問題やバッテリーのスタミナの課題を一挙に解決する技術です。
いずれにせよ最高解像度で4K60pを撮るなら8K60p RAWで撮影してポスト処理で4Kにリサイズするのがベストでしょう。(そこまで画質に拘る人がいるのかは分かりませんが。。。)
4K120p RAW記録ができない(H.265/H.264は可能)
EOS R5 MarkIIには4K120pをRAWで記録する撮影モードは存在しません。多分RAWデータを生成するための思想がNikon Z8/Z9とは異なるためなのだと思います。ちなみにNikon Z8/Z9は4K120p撮影できるので、8K30p/60p/4K120pともに完全に同じワークフローでグレーディングできるのがメリットの一つです。
EOS R5 MarkIIは、RAW記録できるモードは8K全画素読み出しがベースとなっているので、ビニング読み出しの4K120p はRAW記録の対象外となるのかもしれません。
ただし、ひょっとすると将来的には4K120pもRAW記録できるというファームアップがあり得るかもしれません。
視線入力が動画で使えない
視線入力は初めて使いましたが、慣れは必要ですしマクロ撮影など高精度なピント合わせには不向きですがキャリブレーションさえしっかり行えば静止画撮影において非常に使えそうな印象を持ちました。(デフォルトは視線入力はOFFになっています)
ただ、視線入力の残念なポイントは「動画撮影で使えない」という点。
動画撮影する人はEVFを使わないという人が多いのかもしれませんが、私の場合はEVFを多用した撮影を行うので「視線入力」に期待していた部分がありました。
仮に視線入力が動画撮影でできたところで、実際にサーボAFで視線を被写体に合わせ続けるといことが動画撮影でできるのかは不明ですし、実際の運用にはかなり慣れが必要でしょう。
ただ、ボタンコンビネーションの様にあるボタンを押しているだけピントを視線に合わせて誘導してくれるという使い方が出来ればすごく画期的な動画撮影ができるような気がします。
現在は動画で視線入力はできませんが、おそらくハード的な制限ではなく、「動画撮影で視線入力を許すと色々な混乱を招く」とか、「ソフトの作り込みができていない」とかの様な気がするので、こちらも将来的にできることを大いに期待するのでした。
いくつか制限はあるものの良くできたカメラだと思う
いや、もうイマドキ、このクラスのカメラで綺麗に動画が撮れないということはありえないわけでして、例によってEOS R5 Mark IIも非常に綺麗な動画が撮れます。
Canon Log2/Log3に対応しているのでH.265/H.264の10bit撮影であれば、グレーディングも高いレベルで行うことが出来ます。
ただし、どうも標準LUTを使うとビデオライクな映像になりがちなのでシネライクな映像を撮りたい人はそれなりに調整は必要という印象ですが、そこは絵作りの思想なのかもしれません。(NikonもCanonも割と標準LUTを当てると絵が硬い印象を受けます)
操作系に関しては、慣れの問題もあるかもですが、私の場合は使い慣れたLUMIXの方が扱いやすいかなと思います。EOS R5 MarkIIもZ8も背面ダイヤルが押し込みにも対応出来てないのですが、LUMIXの場合はGH6/7もG9PROIIもLUMIX Sシリーズ(S9を除く)は全て背面ダイヤルが押し込み対応なので非常に操作が楽です。
操作系に関しては慣れの問題かもしれませんが、他の機種を触るたびに、LUMIXってよく出来ているよねぇと感心するのでした。
逆にEOSの操作系に慣れている人にとっては何の違和感も無くこのカメラを扱えると思います。
以上、雑感でした。
自己紹介
筆者:SUMIZOON
Facebookグループ一眼動画部主宰
Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOON の人
2011年よりサラリーマンの傍ら風景、人物、MV、レビュー動画等ジャンルを問わず映像制作を行うビデオグラファー。機材メーカーへの映像提供や映像関係メディアでレビュー執筆等を行う。Youtubeチャンネル「STUDIO SUMIZOON」登録者は1.4万人以上。Facebookグループ「一眼動画部」主宰。「とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ」更新中。