最近はあまり耳にしなくなった「マルチアスペクトセンサー」について少し書いてみたいと思います。
最近でこそ採用はされていませんが、LUMIX GHシリーズではGH2/GH5Sにマルチアスペクトセンサーが採用されています。
フォーサーズセンサーとマルチアスペクトフォーサーズセンサー
一般的なフォーサーズセンサー(非マルチアスペクトセンサー)
一般的なマイクロフォーサーズ規格に使用されているフォーサーズセンサーについて記載します。
下図の白い円はマイクロフォーサーズのイメージサークルを示しています。
この円の内側であればマイクロフォーサーズレンズの純正レンズであればケラれずに撮影することができます。
このイメージサークルをベースに考えると、4:3画角は青のサイズとなります。これが一般に用いられる4/3なはずです。

では、この青色で示したセンサーから16:9画角を撮影した場合の画角はどうなるかというと上図のピンク色の領域となります。※クロップ無しで16:9画角が撮影できる機種の場合
フルサイズやAPS-Cなどの3:2画角のセンサーでも同じことが言えて、水平方向の画角はそのままに縦方向が切れるという形です。今のほとんどのカメラはこの考えです。
マルチアスペクトフォーサーズセンサー
先ほどの一般的なフォーサーズセンサーに比べて、マルチアスペクトタイプのフォーサーズセンサーについて描いたものが下記になります。
先ほどと同じように青は4:3画角を設定した際の撮影範囲。黄色は16:9画角で撮影した際の撮影範囲となります。

つまり青の4:3も黄色の16:9もいずれも四隅がイメージサークルに接する画角で撮影することになります。この2つの領域が撮れるためのセンサーサイズが赤の領域といえます。
繰り返しになりますが、マルチアスペクトセンサーは撮影した画角に対してイメージサークルをギリギリまで使う思想といえます。その画角はセンサーの光学中心からコーナーまでの距離が同じです。
ここで二つを重ね合わせたものを表示します。3:2画角で撮影した場合は、両者のセンサーは同じ画角ですが16:9画角で動画を撮影した場合には黄色とピンク色の領域に違いがでます。

マルチアスペクトセンサーで撮影すると4:3画角では映らなかった左右が広がって撮れるので、初めは不思議に思えるかもしれませんが、対角線の長さが変わらないマルチアスペクトセンサーの方が4:3や3:2スチル画角に対して画角の変化を感じないはずです。
仮にとあるカメラで、4:3画角、16:9画角しか撮れないカメラがあったとしましょう。
そうすると、そのいずれも画角にも含まれない四隅の部分は撮像(記録)されないものとなります。

勿体無い感じがしますが、そもそのこの領域はイメージサークルを飛び出しているので撮影しないという思想なのだと思います。(先日紹介したGY-LS300CHとは違う思想です)
チップサイズが増大するのでコスト的に不利な(贅沢な)センサーがマルチアスペクトセンサーです。
実機を調査してみる
さて、手元にあるいくつかの機種のサイズを見てみます。ものすごく厳密に撮影&大きさを合わせているわけでは無いですが、参考にはなると思います。

このうち上に表示したGH2/GH5Sはマルチアスペクトセンサーで、GX7(II)/GH7は通常の非マルチアスペクトセンサーとなります。なお、写真はフランジの内側にサイズを合わせて表示しています。
上の写真を等倍に表示し直したものが下記です。

フォーサーズセンサーとマルチアスペクトフォーサーズセンサーの節で示した大きさとは誤差がありますが、マルチアスペクトセンサーの方が大いことがわかります。
ちなみにGH2の記事は下記にも書いたのでご参考までに
ビミョーにボケ量が大きいと感じるのはGH2のセンサーサイズの大きさからかもしれません。
まとめ
マルチアスペクトセンサーが最後に採用されたのはGH5Sです。その発売日は2018年でもう6年半以上経っています。
マルチアスペクトはのイメージサークルをギリギリまで使うという思想は、スチルとの画角変化が感じにくく、撮影する人にとってはメリットがありますが、その恩恵を体感できる人とできない人がいると思います。なので、センサーのコストを上げてまで今後マルチアスペクトセンサーを搭載したカメラが出るか?というと望みは薄いのでは無いかと思うのです。
いっそ、先日のLS300のように誰もがわかるほどにセンサーサイズを大きくすれば良いのではと思わない事もないのでした。
自己紹介
筆者:SUMIZOON
Facebookグループ一眼動画部主宰
Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOON の人
2011年よりサラリーマンの傍ら風景、人物、MV、レビュー動画等ジャンルを問わず映像制作を行うビデオグラファー。機材メーカーへの映像提供や映像関係メディアでレビュー執筆等を行う。Youtubeチャンネル「STUDIO SUMIZOON」登録者は1.4万人以上。Facebookグループ「一眼動画部」主宰。「とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ」更新中。
