今回はNIKKOR Z 28-135mm f/4 PZをしばらく使った感想を書きたいと思います。
このレンズ、InterBEE2024の段階で試作機を触っていたのですが、気になるレンズとしていつ発売になるの?と思っていましたが、去る2025年4月25日に発売になりました。
このレンズ、28-135mmという扱いやすく主要な焦点距離をカバーしつつニコン初のパワーズームで、多くのビデオグラファーの必携の一本となりうるものです。

なお、本記事はNIKKOR Z 28-135mm f/4 PZのプロモーションを含む内容ですが、記事を構成するにあたり正直な感想を記載することを心がけております。
このレンズの私なりの活用方法と、設定、撮影した作例を紹介しつつこのレンズに対する感想を記載したいと思います。
- 動画作例
- NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZスペック概要
- 操作しやすい3連リング
- 5つのズーム操作
- ズーム操作の下準備
- NDフィルターをどうするか
- フォローフォーカス
- 撮影インプレッション
- 軽量であるが故に可能になる撮影スタイル
- まとめ
動画作例
発売前にこのレンズを試させていただく機会を頂きましたので、撮影した作例を紹介します。以下の動画はいずれもNIKKOR Z 28-135mm f/4 PZ一本だけで撮影しているものです。そして、当然ながらいつも通りのワンオペ撮影です。
NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZはF4通しのスペックから、明るい単焦点レンズや大口径ズームレンズの様な大きなボケを使った表現を行うレンズというよりは、ドキュメンタリーや記録映像に適したレンズと一般に考えられるでしょう。
ですが、風景撮影におけるパンフォーカスを狙った表現、テレ端での大きなボケを使った表現などこの一本だけで撮れる表現の幅は広いです。
もう一つの映像は友人のシンガー/作詞家のS-KEY-Aさんを撮影させてもらったショートMVとインタビューですが、開放で撮るとこれくらいのボケ感で、映像制作にちょうどいいボケが得られていると思います。Gift 楽曲リンク
テレ橋のボケ感は下記の様な感じです。ある意味十分なボケだと思います。

開始35秒の映像リンク
https://youtu.be/7wbu4fW30qM?si=cibD7dWg2ucKo8WW&t=35
そして、このレンズ、かなり寄れるレンズになっていますので、マクロ撮影的な表現も可能です。

開始182秒の映像リンク
https://youtu.be/g0a4G9Lq-TA?si=1skHU3jnUPsFmkI7&t=182
そして何より、パワーズーム(電動ズーム)です。フォーカスギアをズームレンズに装着することで既存のズームレンズを電動化することはできますが、それもかなり面倒なセッティングが必要です。
パワーズームだからこそボディのみの組み合わせでできるズーム表現、超低速のズーム表現もあります。
手動ズームでは実現できない等速ズーム
最近のカメラは8Kや6K映像を撮ることができるので、これを利用して動画編集時に拡大処理を行って例えば8Kの映像から4Kの切り出しを行うことはできますが、当然画質は落ちます。そして、8K映像から4K映像を切り出したとしてもその拡大率は2倍にとどまります。つまり、ポスト処理でズーム効果を使おうとしても4K解像度を担保したいなら2倍というズームが限界です。
NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZは28-135mmのため5倍近いズーム倍率がありますので、8K画質を担保したまま最大で5倍の等速ズーム効果を実現します。

開始146秒の映像リンク
https://youtu.be/g0a4G9Lq-TA?si=6DXWQAJ4rANHyK5_&t=146
そこまでのズーム表現をワンカット内で行うというのは使い所が難しいかもしれませんが、とにかくそれだけの事ができるということは頭に入れておくと良いかと思います。
手動ズームでは実現できない超低速ズーム
オープニングの2カット目で使用した使用した映像ですが、よく見ると低速でズームアウトしていることがわかるかと思います。この素材は船上での手持ち撮影でしたのでブレを止めることに集中しつつスムーズなズーム操作ができたのはパワーズームのおかげといっていいでしょう。

開始25秒の映像リンク
https://youtu.be/g0a4G9Lq-TA?si=tmSAlu5Wk47r-uHM&t=25
他にも細かいズーム操作を入れているカットを随所に入れています。
ズームと被写体の距離を同時に変更することで得られる効果
他にも作例の中には、このパワーズームレンズでなければ実現が難しいカットがいくつかあります。
ドリーズーム
一つはドリーズームです。ドリーズームは被写体との距離に対して逆のズームをかけることで得られる効果で、かのヒッチコックが考案した映像効果だと記憶しています。「めまいショット」と呼ぶこともあります。
・ズームアウトしながら被写体に寄る→被写体の大きさそのままに背景が広がる
・ズームインしながら被写体から離れる→被写体の大きさそのままに背景が狭まる
というのが一般的なドリーズームのやり方です。いずれも視点変化と背景変化が同時に発生するので不思議な映像となります。
今回試したのは上記と同じやりかたですが、奥の被写体をメインに手前の前ボケに対してドリーズーム効果を持たせるという映像を試してみました。

開始31秒の映像リンク
https://youtu.be/g0a4G9Lq-TA?si=UwabbQxnLrVPzlfk&t=31
左上の被写体に気づかないと単なるズームアウトのカットですが、気づく人には分かるという隠し効果で、被写体のミステリアスさを助長する効果が得られたと思っています。他にも2つの作例ではこれをこのドリーズームを使った箇所があるので探してみてください。ただ、このドリーズームは効果は目立ちやすいので、あまり使いまくらないのがお勧めかと思います。おすすめは実は下記の逆ドリーズームだったりします。
逆ドリーズーム
他にも実は逆ドリーズームを使った箇所があります。「逆ドリーズーム」と書きましたが、この効果に名前がついているのか分かりませんし、一般的な技法かどうかはわかりませんが、今回結構使いました。その効果は下記
・ズームアウトしながら被写体から離れる
・ズームインしながら被写体から寄る
→通常の移動よりも大幅に移動したかの錯覚が得られる
たとえば下記の映像ではスライダーレールの移動距離は40cmに満たなかったと記憶していますが、ズームアウトを併用することによって、より被写体から離れたような映像効果を助長できたかと思います。

開始90秒の映像リンク
https://youtu.be/g0a4G9Lq-TA?si=AMlhztHY6aGJAJWP&t=90
普通に見ると何気ない映像で違和感も少ないですが、作例ではこのパワーズームに頼った撮影を行っています。
NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZスペック概要
さて、改めてNIKKOR Z 28-135mm f/4 PZのスペック記載したいと思います。
レンズマウント:ニコン Z マウント
焦点距離:28mm–135mm
絞り:F4
レンズ構成:13群18枚
EDレンズ3 枚、ED非球面レンズ 1枚、非球面レンズ4枚
メソアモルファスコートあり、最前面のレンズ面にフッ素コートあり
構造:インナーフォーカス/インナーズーム
最短撮影距離:
焦点距離28mm時:撮像面から0.34m
焦点距離35mm時:撮像面から0.34m
焦点距離50mm時:撮像面から0.34m
焦点距離70mm時:撮像面から0.39m
焦点距離85mm時:撮像面から0.43m
焦点距離105mm時:撮像面から0.49m
焦点距離135mm時:撮像面から0.57m
最大撮影倍率:0.25倍(焦点距離55~135mm)
絞り羽根枚数:9枚(円形絞り)
フィルターサイズ:95mm
寸法:約105mm(最大径)×177.5mm
質量:約1210g(三脚座を含む)、約1120g(三脚座なし)

https://nij.nikon.com/products/lineup/nikkor/zmount/nikkor_z_28-135mm_f4_pz/
このレンズを端的に表現するなら、「F4通しの28-135mmの軽く寄れるパワーズーム」です。
大きさこそ、フィルター径が95mmあるので前玉こそかなり大きいですが、見た目の割には比較的軽量であると感じます。
このレンズ、非常に似たスペックのものが、とあるメーカーからも出ていますが、全く別物です。特に、最大撮影倍率0.25倍まで寄れるのが最大の武器だと思っています。

操作しやすい3連リング
レンズの前方からフォーカス・ズーム・アイリス(絞り)のリングが装備されており一度に複数のリングを操作しやすいように配置されています。いわゆるデジと言われる業務ハンディカメラと操作系統と同じです。とは言え私はデジをほぼ使用したことがない人間ですので、後日友人の照山さんに感想を伺って、ここに記載したいと思います。
左から、フォーカス、ズーム、絞りリング
同時操作しやすい配置で並ぶ
5つのズーム操作
このレンズのズームの操作方法は複数あります。どれかの方法を選ぶというよりは全ての操作が常に使える状態になるので必要に応じて使い分けるのが良いかと思います。
① レンズのズームレンズを回す操作
② レンズ横のズームレバーを操作する方法
③ カメラのボディ側で操作する方法
④ リモートグリップMC-N10を使う方法
⑤ 無線接続による方法

レンズ横のズームレバー
この中で一般的なのは①と②でしょう。③のカメラボディ、④のリモートグリップMC-N10を使ったズーム操作に関しては後述しますが、⑤の無線接続による方法を含めてパワーズームという電気&機械機構のおかげでいままでズームリングを操作する以外に方法がなかったズーム操作ですが、様々な方法でズーム操作ができるようになったということがお分かりでしょう。

SnapBrigeからのズーム操作も可能
ほかにも対応機種であればBluetooth接続の「Nikon純正リモコンML-L7」での操作が可能の様です。これはAkira Iwamotoさんが以下の動画で紹介されています。このML-L7はZ8では使用できないなど対応機種が限られているので予めご確認の上使用検討してみてください(Z6IIIは対応機種)。
ポケットに忍ばせることができるこのリモコン、Z8でも使いたい。。。
ズーム操作の下準備
上で説明した③と④に関しては予めカメラ側での設定が必要です。動画撮影における設定はメニューからおこなうことが可能です。

さらに本メニューではそれぞれのボタンに対するズーム速度設定を行うことができます。撮影待機中と録画中での速度を別で割り振れるのは便利ですが、待機中と録画中を別設定にすると、待機中ではズーミングのリハーサルができなくなるので注意しましょう。

以上の設定を行うカメラのボディやリモートグリップ(MC-N10)でのズーム操作が可能となります。

左:NIKON Z8 右:リモートグリップMC-N10
NDフィルターをどうするか
NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZはF4通しのレンズなので、明るいレンズではありませんが、それでも日中撮影ではNDフィルターを使用する必要が多いはずです。
NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZはフィルター径が95mmのかなり前玉が大きいレンズとなっています。95mmの可変NDフィルターを用意できればいいのですが、95mmの高品質な可変NDフィルタはかなり高価です。
私もいくつか95mmのフィルター径のレンズ(NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VRなど)を持っていますが、普段可変NDフィルタを使用していません。代わりに使っているのは下記の2枚。普通のND4とND8の固定NDフィルタです。

筆者が95mmフィルター径レンズで使用している2枚
安価な可変NDフィルタだと望遠側撮影での解像度低下やムラが発生しやすいですが、固定NDフィルタであればその心配はないです。取り付けが面倒で状況変化に対応しにくいという問題はありますが、ND4では2STOP、ND8では3STOP、ND4+ND8で5STOPの減光が可能となるので、大概の撮影ではこれで対応することができます。
フォローフォーカス
0.8mmピッチのギアであればフォーカスおよび、ズームともに操作が可能となっています。今回の作例撮影ではAFと電動ズームを使用したため、フォローフォーカスを使用した撮影は行いませんでしたがマニュアルフォーカスを多用する様な撮影の場合シンプルなセッティングでフォローフォーカスを導入できるのは便利だと思います。

フォーカスリングにフォローフォーカスと取り付けた例
ズームリングでも取り付け可能
撮影インプレッション
8K撮影でも余裕の解像度
先の作例動画からの切り出し映像をいくつかピックアップしてみます。
いずれもローキーにグレーディングしているので少しわかりにくいですが、8Kの解像度が十分出ているカットだと思います。
N-RAW 8K30p N-Log NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZ SS:1/60 F5.6 ISO800
https://youtu.be/g0a4G9Lq-TA?si=AMlhztHY6aGJAJWP&t=31

N-RAW 8K30p N-Log NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZ SS:1/60 F4.5 ISO800
https://youtu.be/g0a4G9Lq-TA?si=1LVoeew_cJnqjUEr&t=96

N-RAW 8K30p N-Log NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZ SS:1/60 F4 ISO800
https://youtu.be/g0a4G9Lq-TA?si=nQ9fUh7fXoYdIgoN&t=231

N-RAW 8K30p N-Log NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZ SS:1/60 F10 ISO3200
https://youtu.be/g0a4G9Lq-TA?si=-KiuJEJAGso7ZLfP&t=93
困りもののブリージング特性がほぼ無い
動画のいくつかのカットでピン送りをしていますが、フォーカスで画角が変わる現象(フォーカスブリージング)は感じませんでした。
一部の機種だとカメラ内部でブリージングが目立たない様な補正処理をおこなっていますが、RAW動画の場合だとそういった補正を効かせないのが一般なのでレンズの素の特性としてブリージングが抑えられている特性が重要になります。


作例動画の中からの切り出し(フォーカス位置による画角変化がほぼ無い)
軽量であるが故に可能になる撮影スタイル
今回は撮影において機動力重視のスタイルと、少し精度の高いドリーショットを撮るためのセッテイング、それとこのレンズをより活かした撮影スタイルの3つのスタイルで作成撮影を行いました。当然ながらいつも通りのワンオペスタイルです。
① レンズ+ボディだけのシンプルスタイル
①' ①のスタイルを三脚に乗せて撮影するスタイル
② スライダーレールを用いた軽量スタイル
③ 移動しながら右手でズームできる手持ちスタイル
なお、NDフィルタは状況によって使っています。
簡易スライダーを使ったスタイルもパワーズームと組み合わせることで効果が増大
1つめの作例では主に①と②のスタイルで撮影しました。
この撮影ではカメラマンの有機的な要素を一切排除したかったということもあり、なるべく機械的なカメラワークを行うのが私の中でのコンセプトでした。そこで必要なものはジンバルよりもスライダーです。

実は私が古くから使っているスライダーは実質数千円の超絶安いものですが、このスライダーのいいところは簡単に持ち出せる事。超軽量でベアリングも何もなくメンテナンスフリー(現場でアルコールシートでレールを拭くくらい)。無人島を丸一日歩きましたが、ボディx1、レンズx1、スライダー、軽量三脚のみなのでむしろ普段の撮影より軽い。
高価なスライダーに比べると精度は出ませんが、撮り直しが効く現場なら試行回数、慣れ、工夫でカバーすればいいので未だにこれを使うことがあります。


この機材の注意点の一つは、あまり大きな機材は載せられない点です。軽い三脚にしょぼいスライダーなので、重い記載を載せるとレールの端にいくと、下方向にたわんでしまいます。ですが、このレンズとカメラの組み合わせはパワーズームながら比較的軽量な組み合わせなのでギリギリこれを運用することができました。もう一つの注意点は、不測の落下事故を未然に防ぐためにも三脚は短めに設定しストラップを首にかけるようにした点です。軽量三脚を使用したため三脚ごと倒れかねないので、ここは必ず守る様にしました。
ジンバルよりも軽く、精度も高い。移動距離が必要ないならこの装備で十分と個人的には思うものです。前述のパワーズームを活用した逆ドリーズームを組み合わせれば、これで十分すぎるほどの映像効果を生み出せます。
リグを組んでみた
MVの撮影で、使いたかったのはリモートグリップのMC-N10です。
シンプルに撮影しても全く問題ないのですが、幅広い持ち手で安定化を図り、右手で全ての操作ができるズームができるシンプルな手持ちスタイルというコンセプトで組んでみました。ついでに左手はグリップを握りながらもフォローフォーカスできる。そしてチェストパッドの3点ホールド。


結果からするとフォローフォーカスは使いませんでした。。。ピン送りカットを撮らなかったのと、人物撮影をするにおいて十分実用的なAFが効くのでもうすこし軽量化を図れたかなと。。
ただ、右手のMC-N10はあったほうがいいと感じるのでもう少しだけシンプルなリグを考えてみたいと思います。
まとめ
NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZは比較的軽量ながらズーム倍率の大きく高画質で電動ズームを実現したレンズです。大口径ズームや単焦点ズームの明るさこそ無いですがこれ一本で撮れる範囲は大きいものです。

思えば昔、APS-C機のパワーズームを結構な間使っていたのですが、ブライダルの撮影など、時間と場所が限られた場面で撮れ高を稼ぐのに大活躍した記憶があります。今回の作例撮影はそういった中での撮影ではありませんが、それでも撮れ高の高い撮影をこれ一本でこなせたと思います。
逆光耐性も高く、ドキュメンタリーやブライダルその他多くのイベントなどの記録系でで太陽の位置を気にすることなく構図を作れるのは非常に便利なズームレンズだと思います。
趣味性の高いレンズではありませんが、逆に言うと非常に実用性が高いレンズですので、限られた時間の中で撮影を行う仕事をしている人にとってこのレンズは強い武器であることは確かです。
短時間で撮れ高を上げたいビデオグラファーの方にはぜひ一度試してもらいたいレンズだと思います。
筆者:SUMIZOON
Facebookグループ一眼動画部主宰
Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOON の人
2011年よりサラリーマンの傍ら風景、人物、MV、レビュー動画等ジャンルを問わず映像制作を行うビデオグラファー。機材メーカーへの映像提供や映像関係メディアでレビュー執筆等を行う。Youtubeチャンネル「STUDIO SUMIZOON」登録者は1.4万人以上。Facebookグループ「一眼動画部」主宰。「とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ」更新中。
