とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ

ビデオグラファーsumizoonのブログ 一眼動画に関する機材や撮影方法を中心に情報を発信していきます。

時間をかけて作った動画ほどYouTubeでは再生されにくい時代の話

はじめに

今回はちょっと切ない話について書いてみたいと思います。それは「時間と労力をかけて丁寧に作った動画ほど、YouTubeでは再生されにくい」という現実について。YouTubeで動画をアップしたことのある人であればこのモヤモヤした現実は一度は味わっていると思います。
私自身、構想、脚本、絵コンテ、撮影から編集、サムネイル作りに至るまで数週間を費やして作り上げた動画が、蓋を開けてみれば「再生数300回」みたいなことが何度かあります。
逆に、どっかにスマホやミラーレスカメラを一台持って撮影し、1時間程度で適当に繋げて作った動画が万単位で伸びることもあります。
なぜこんなことが起きるのか?今回はそのことについて考えてみたいと思います。
というのも、この動画をアップした時の初動がまさにソレ...

もう少し(再生維持率を向上させる)工夫の仕方もあったのかもしれませんが、作りたかった映像が出来て満足している作品です。なので、こういった記事は書いていますが悲観的にはなっていません。

「視聴者のニーズ」と「作り手の熱量」は一致しない

映像を作る側としては、「新しい試みをした!」「いい画が撮れた!」「構成にもこだわった!」「音も整えたし、完璧だ!」と自己満足的な手応えがあるわけですが、それがそのまま視聴者のニーズに直結するかというと、そうでもありません。
視聴者はサムネイルとタイトルでしか判断できない。
極端に言えば、「何が得られるか」「何秒で面白いと思えるか」がすべて。
作り手の「想い」や「こだわり」は、動画を最後まで見てもらわないと伝わりません。
ですが、YouTubeでは、その「最後まで見てもらう」というハードルがとても高いのです。

生成AIによるイメージ写真

YouTubeアルゴリズムは「努力」ではなく「結果」にしか興味がない

YouTubeアルゴリズムは冷酷と言えるでしょう。
仮にサムネイルを何度も作り直したり、色合わせに時間をかけたこと、構成に試行錯誤したことは、YouTubeは評価してくれません。
評価されるのは、クリック率、視聴維持率、そしてコンバージョンだけ。
つまり、たとえ中身がスカスカであったとしても、興味を引くサムネと、7秒でオチがくる構成のほうが、アルゴリズム的には「優秀」と見なされる。これはもう、仕組みの問題と言えるかと思います。

生成AIによるイメージイラスト

例えば起承転結をしっかりすればするほど、再生されにくい傾向にあるとも言えるかもしれません。

「映像が綺麗な動画」は実は見た目で損をしている?

私の動画が完成度が高いとは決して言えませんが、一般的な話として書きます。
「綺麗な動画は実は見た目で損をしている」これは、一見おかしな話ですが、あまりに完成度が高く見えると「広告っぽい」「プロっぽすぎて自分とは関係ない」と感じる視聴者も一定数います。
YouTubeはもともと「素人が等身大の自分を発信する場」としてスタートしました。
なので、あまりにテレビ的だったり、シネマチックすぎると、逆に「遠くに感じる」のかもしれません。
「素人っぽさ」や「隙」があるほうが、人は親近感を抱く。
これはクリエイターにはなかなか受け入れがたい事実かもしれませんが、再生数に関しては無視できない要素です。

生成AIによるイメージ写真

SEOとタイトル術」を制する者が再生を制する現実

どんなにいい映像でも、「検索されない」「クリックされない」では存在していないのと同じです。
YouTubeでは、動画の内容よりも先に、タイトルとサムネイルが評価されます。
これは本当に痛感します。
つまり、動画の「中身」よりも、まず「入り口」をどう設計するかが重要。
このタイトル設計、SEOの感覚、キャッチコピーの力が、映像の完成度を凌駕する瞬間があるのです。
でも、世の中にはびこるド派手はサムネであったり「〇〇こそ正義」「〇〇こそ神」「これを知らない奴は終わってる」とかいう煽り気味のサムネは絶対に付けたくないというポリシーを持っている人こそ損をします。なんかモヤモヤする話ですが、私自身そういうサムネを見るたびに「絶対真似しないでおこう」と思う反面、それはある意味視聴者を遠ざける行為なのかもしれません。

生成AIによるイメージイラスト

「短くて分かりやすい」が正義の時代

特にTikTokの台頭以降、YouTubeInstagramもそれを追うようにショート動画(リール)機能の強化をしてきました。つまりショート動画全盛の時代に突入してかなり時間が経ちます。
10分かけて構成を丁寧に見せようとしても、3分の時点で離脱されれば、視聴者に何も届きません。
むしろ、雑に見えるけどテンポの良い1分動画のほうが、再生回数も評価も上がったりする。これが現実です。
10分のショートフィルムは短編動画ではなく、長尺動画の部類になっているのが今の世の中です。

生成AIによるイメージ写真

作品と割り切るか、戦略と割り切るか

この現実は、動画を作品として作る人にとっては本当に苦しいものでしょう。
「良いものを作れば、自然に広がるはずだ」という信念は、YouTubeというプラットホームでは意味をなさないと思います。これはYouTubeに限った話ではなく、製品やサービスの世界でも“良いものが売れるとは限らない”という現象は普通に見られます。良いものが、手間をかけたものが売れる時代では無い。そしてそれらは売り方の問題だったりします。

YouTubeアルゴリズムに対して最悪な相性の動画をアップしてみた

YouTubeは特に冒頭での離脱率が低いほど評価されます。つまり視聴維持率が高い動画が評価されるわけです。また、サムネの引きが強いほど評価される傾向にあります。

残念ながら、サムネやタイトルで胡散臭いほどにド派手な事を書いて、最後まで視聴者を引き付ける矢継ぎ早に情報を出し続ける動画がYouTubeアルゴリズム上は強いのです。

では、「冒頭3分くらいまでは仕掛け」、「オチはその後に来る」「それなりに余韻をもたせる」ような動画を作った場合はどうなるかというと、YouTube上は「最悪な構成」と言えるでしょう。全くリコメンドされない可能性があります。
以下は本日公開した、その典型であるかのようなショートフィルム(コメディ)です。

上記動画はまさにこのパターンに当てはまります(撮影には時間をかけてないけど、構想から撮影準備は普段よりもだいぶ時間をかけました)。
とは言え、この動画のカラクリ上、冒頭の2分半くらいまでは、この構成を取らざるを得ませんでした。
そういえば、(同列に扱うのは烏滸がましいですが)あの「カメラを止めるな!」は冒頭37分が壮大な前フリだったので、あの映画はあれほど話題にならなければ多くの人が前半離脱してしまう人が続出する映画だったのかもしれません。

どうやったら多くの人に見てもらえるのか?

では冒頭3分の視聴維持率が期待できない(イマドキじゃ無い)動画は、多くの人に見てもらうためにはどうするか?について私なりに考えてみました。
まぁ自己満足に近い動画なので、他人の貴重な時間を奪ってまで見てもらうのは忍びないのですが、でも多くの人に見てもらいたいと思うのが多くの動画制作者の思うところでしょう。ではどうやったら再生数を少しでも伸ばせるのかという観点で少し考えてみました。

YouTube以外の媒体を使って認知してもらう
・シリーズ化して認知してもらう
・予告編的な分かりやすいショート動画を作って告知・誘導する

YouTube以外のSNS媒体を使って認知してもらうためには各種SNSでそれなりのフォロワー数が必要ですので簡単なことではありません。が、それなりにアクティブなアカウントであれば有効な手段でしょう(こうして自虐ネタを書いているのも、実はこの側面があります)。
シリーズ化すれば、これ好き!っていうファンが現れるかもしれないのでこれも地道に行くしかないかなと。
あとは分かりやすい動画を作って興味を引くというやり方。以上3つですが、逆に考えると私にはこの程度の方法しか思いつかない...
まぁ、自分だけで作った動画であればあとはそんなもんだと「諦める」というの手ですけどね...
本当に動画撮影・編集好きなら再生数に関わらず続けられるはずかなと。

おわりに

ここまで書いておいてなんですが、やっぱり私は、イマドキの動画/サムネが作れない(作りたくない)タイプの人なのかもしれません。
情報を密に、冒頭で視聴者離脱率を抑えつつ、サムネでド派手にぶちかます。これをすれば少しはYouTubeアルゴリズムに乗っかることはできるのかもしれませんが、なんか凄く「イヤ」なのです。

だからこれからも、再生数は「そこそこ」でいいので、誰か一人にでも深く刺さる動画を作れたらなと思います。

筆者:SUMIZOON
Facebookグループ一眼動画部主宰
Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOON の人

2011年よりサラリーマンの傍ら風景、人物、MV、レビュー動画等ジャンルを問わず映像制作を行うビデオグラファー。機材メーカーへの映像提供や映像関係メディアでレビュー執筆等を行う。Youtubeチャンネル「STUDIO SUMIZOON」登録者は1.4万人以上。Facebookグループ「一眼動画部」主宰。「とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ」更新中。

 

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