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LUMIX S1IIシリーズ以前の液晶/EVFの常時プレビューパカパカ問題は何が問題だったのかを今更だけど整理する

LUMIXの「常時プレビューパカパカ問題」という言葉をカメラ事情に詳しいLUMIXユーザーなら聞いたことがあると思います。

実の所、私はこの問題が何の事なのか、何が問題なのかをよく理解できずにいました。LUMIX S1RII以降の機種に関してはこの「常時プレビューパカパカ問題」が解消されているという話もあり私の認識がないまま問題は収束しています。

ですが、今回は「常時プレビューパカパカ問題」が実際にどんなケース、どんな使い方をするケースで問題となるのかを考察してみるというエントリです。まぁ、普通に考えればパカパカはしないに越したことはないのですが、これをデメリットだけの観点に捉われず、その裏に隠れた理由や設計者の意図を勝手に考察してみたいと思います。

常時プレビューパカパカ問題とは

まず常時プレビューパカパカ問題とは、どういう現象を指しているのかですが、端的に書くと

特定の設定において
シャッター半押し(AF駆動時)時に背面液晶、EVFの明るさが変動する問題

の事です。決して撮影された露出が変動するわけではなく、あくまで撮影中の背面液晶、EVFの表示上の問題です。

常時プレビュー:ONに設定し、M露出に選択するとパカパカが起きる

その名の通り「常時プレビュー」をONした時に発生する現象ですが、まず、この「常時プレビュー」というものについて説明します。

「常時プレビュー」設定とは

主にマニュアル露出時において、
撮影前のEVFやモニター表示に、現在設定している露出効果(明るさ、被写界深度)を常に反映させて表示する機能。
設定で絞り効果(明るさは標準のまま)のみを反映する事も可能。

です。

LUMIX S1RII以前のLUMIXマニュアル露出時(Mモード)においては、デフォルトの設定(常時プレビューOFF)では露出を反映しない状態を背面液晶/EVFに映し出すという方式をとっています。つまり、「撮影者は露出はあくまでも露出計を見て、判断するんでしょ?」という前提で、「マニュアル露出時はどんな明るさで撮れるのか、どんな被写界深度で撮れるのかは背面液晶/EVFのプレビュー時には、反映しませんよ」という「一眼レフ的な思想」です。

それに対して、常時プレビューONの設定は、背面液晶/EVFに撮影者が設定した露出、被写界深度を反映する形で明るさが変動するという動きになります(異なる設定も可能)。つまり、ミラーレスなのだからプレビューと撮影する絵は一致させるべきだという「イマドキ?な思想」です。

ちなみに常時プレビューは絞り優先モード(A)モードでも設定可能で、常時プレビューON時は下記の3つの挙動が選択できるようになっています。Aモードでは実絞りでプレビューできる挙動となり、被写界深度の変化量を確認しながら撮影することができます。

LUMIX S5IIXの常時プレビューの設定(選択)画面

なお、常時プレビューパカパカ問題が発生するのは基本的に「Mモード絞り/SS効果」という絞りもシャッタースピードも撮影者が設定したものでプレビューするモードで発生します(つまり上記設定の選択肢②と③)。

LUMIX S1RIIよりも以前のLUMIXは基本的にレンズ絞りは開放で測距・測光を行い、シャッターを切る瞬間のみ絞りが設定した絞り値に絞られる仕様であったという認識です。常時プレビューはAモードにおいて絞りをプレビュー時に反映させる機能、Mモードにおいて絞りもしくはSSと絵の明るさを反映させ実際に撮れる状態の絵をプレビューで反映させる機能と考えた方がいいでしょう。

常時プレビューパカパカ問題とは「常時プレビューが一時的に解除される現象」

ここからは私の推測になりますが、常時プレビューパカパカ問題は

常時プレビューパカパカ問題の実際の動き

M露出でアンダーもしくはオーバーの状態にあった場合に、
一時的にAFの情報が最大限活かせる露出になるように
露出(絞り、シャッター速度、ゲイン)が一時的に標準露出に戻る
場合によっては絞りを開く動作を行う

現象をさしているものと思います。
では、なぜこの仕様なのかを考えてみます。これは、

常時プレビューパカパカの意図とは

AF駆動時にカメラにとって位相・コントラスト情報を最大限に得やすい状態に一時的に戻す動き。故に一時的に常時プレビューが解除される

という動きになっているものと推測します。

特にコントラストAF(DFD)技術で長年AF駆動をさせてきたLUMIXコントラストが得やすい、ブレが少ない(シャッタースピードが一定数速い)状況でAF情報を取得する必要があります。無論それらの条件は位相差方式になったとしてもAF駆動のためには有利なことから、この動きがLUMIX S5II/S5IIX/S9でもベースになっているものと思います。

常時プレビューパカパカ問題にならない使い方、遭遇する使い方

この常時プレビューパカパカ問題は、そもそも常時プレビューを使ってマニュアル露出(Mモード)を使うという場合に発生します。つまりこの問題が発生しないのは

常時プレビューパカパカに遭遇しない撮影者

・そもそも露出Mモードを使わずにP/A/Sモードで撮影する撮影者
・露出Mモードでも常時プレビューを使わない撮影者

と言うことになるかと思います。

実は私は動画はMモードで撮影する人ですが、スチルの場合はAモードを使用することがほとんどだったので、同問題には遭遇する事なく、長年この常時プレビューパカパカ問題という言葉を聞くことがあっても、何のことか理解しきれずにいました※。

※稀にMモードに入れて撮影するとしても常時プレビューをONに設定せずに露出計でのみで露出を判断する人なので、このパカパカ問題に遭遇したことがありませんでした(スチル撮影モードで同問題が騒がれた時に、数回実験して試した程度という記憶です。因みに本現象は、クリエイティブ動画モードでマニュアル露出で撮影前のプレビュー画面でワンプッシュAF動画を行った際にも発生してますが、私はその挙動を全く気にしたことがありませんでした。)

とは言え、設定した露出の状態を、撮影前に確認できるというのはミラーレスカメラの大きなメリットなので、Mモードで露出反映された絵を見ながら撮るということは、多くのカメラマンにとって大きな意味があると思いますし、むしろミラーレスカメラの時代ではそれが当たり前と考えるべきでしょう。

では、再度、常時プレビューパカパカ問題が発生する条件をまとめます。

常時プレビューパカパカ問題に遭遇する撮影者

・露出Mモードの使用がメイン
・「常時プレビューON」かつ「Mモード絞り/SS効果」に設定
・露出が標準よりシフトして撮影している

この3つの条件が重なった時に世間で言う「常時プレビューパカパカ問題」が発動します。

この状態でシャッター半押し状態が続く中で被写体を追うと自分が標準露出で撮っているという錯覚に陥る事はあり得るでしょう。自分がプレビューの露出で撮っているのか、AF-ON時の露出で撮っているのか混乱するということは想定できます。特に露出計ではなく全体の絵に意識が集中した場合はその傾向は高まると思います。

ただ、これに関しては(露出計に頼らずにMモードを使ってしまっている人は別として)Mモードを使うレベルの人であれば露出計は常に意識はずなので、カメラ内部で起きている動作を意識するような(マニアックな)人は問題視しないかもしれません。

むしろ、問題は次のケースで、被写体を追うのに都合がいい特定の露出に合わせていた場合に、AF-ONで標準露出に戻されると被写体が追いにくいという状況がありえます。逆光下で被写体にオーバー露光で露出を合わせている中で常時プレビューの解除が発生すれば、AF-ON時に画面が急に暗くなって「被写体を追いにくくなる」といったケースはありそうです。おそらく常時プレビューパカパカ問題が問題だという人はこういったケースを想定しているものと推測します。

実は常時プレビューでマニュアル露出+Mモード絞り/SS効果でもパカパカしない条件がある

実は、常時プレビューをONしてもパカパカしない(パカパカが少ない)条件があります。それは露出が結果露出計が±0になるように設定した場合です。先に述べたように、常時プレビューパカパカ問題はAF-ON時に常時プレビューが一時的に解除されて「標準露出に戻してAF測距を行う現象」なはずなので、M露出時に露出が±0のドンピシャに設定されていると「パカパカ」は発生しないのです。

つまり下記の動きとなります。

常時プレビューパカパカの明るさの方向

・M露出で標準露出状態であればAF-ON時に(ほぼ)パカパカしない
・M露出でアンダーの設定であればAF-ON時に一時的に明るくなる
・M露出でオーバーの設定であればAF-ON時に一時的に暗くなる

つまり、薄暗い室内でマニュアル露出シャッタースピードが1/8000、F22というような極端に暗い露出、またはその逆に白飛びしてしまう露出設定でも、この常時プレビューの仕様のおかげでAFが合うと言う言い方もできます。

左:プレビュー状態 右:シャッター半押し状態
(標準露出なのでパカパカはしない)

左:プレビュー状態 右:シャッター半押し状態
(アンダー露出なのでAF-ON時に明るくなる)

左:プレビュー状態 右:シャッター半押し状態
(オーバー露出なのでAF-ON時に明るくなる)

露出補正パカパカ問題を解消するカメラの仕様変更を考える

いわゆる実絞り測距で常時プレビューON時にこのパカパカを解消するための手法は大きく2つ考えられます。

・AF-ON時はM露出に設定された絵をシミュレートする方法

・常時プレビュー状態で露出設定をそのままに、AFを動かす

M露出設定しているのだから、あらかじめ露出はカメラは認識できているわけで、AF-ON時はあくまで背面液晶、EVFに表示する絵の明るさをゲイン調整して表示してくれば良い。というのが前者の考え方です。

ただ、この手法は誰でも考えつくので、あえてLUMIXがこの方法で今に至るまで仕様変更しないのは、「Venusエンジン側に表示遅延させることなくAFプレビュー画像の明るさ調整(露出シミュレーション適用)させる機能・性能を有していないから」なのかもしれません。

もう一つの「常時プレビュー状態でAFを動かす」は実はS1RII以降でLUMIXが取った手法です。LUMIX S1RIIを手に取ってかなり早期に気づいた点が、LUMIXが今までの開放測光・測距から実絞り測距・測光になったという点です。

測光・測距の方式

LUMIX S1RII以前の機種 → 開放測距・測光
LUMIX S1RII/S1II/S1IIE → 実絞り測距・測光(ただし条件による)

LUMIX S1IIEに関しては実際に触っていないので未確認ですが、ソフトの共通化の観点からおそらく実絞り測距・測光になっているのは間違いないでしょう。実絞り測距・測光とは書きましたが、極端に暗い露出設定では、AF-ON時に絞りを開けて測距します。そのため、一定範囲を超えると露出シミュレーションが適用された画像になります。

なので、LUMIX S1IIR/S1II/S1IIEがマニュアル露出時に実絞り測距・測光になったからといってAFの性能が悪くなったという感覚はほぼないはずです。

いずれにせよ、世間で言われている常時プレビューパカパカ問題は解決されています。

まとめ

常時プレビューパカパカ問題とは、ミラーレスの利点である「撮影前に最終結果を確認できる」という機能が、AF動作時に一時的に解除されてしまう挙動と説明しました。
この現象は露出Mモード+常時プレビューON+露出が標準から外れているという条件で発生し、特に逆光や意図的な露出オフセットを伴う撮影では、被写体を追いにくくなる原因になります(基本的にAモードでは発生しない)。

一方で、この仕様は単なる欠点ではなく、AF精度を確保するという明確な意図を持った開発側の設計思想であると考えられます(露出シミュレーションがなされていれば良かったと言えますが)。

暗所や極端な露出設定でもAFを成立させるためには、撮影者の意図を一時的に“脇に置く”判断が有効な場合もあるということです。

S1RII以降のLUMIXでは実絞り測距・測光の採用により、この問題は事実上解消されています。しかし、それ以前の機種でも発生条件や仕様を理解し、自身の撮影スタイルに応じて設定を調整すれば、パカパカ現象は回避または最小限に抑えられます。また、Aモード、Sモードを使う人にとっては無縁の現象と言えます。
最終的には、この挙動を「欠点」と見るか「仕様上の必然」、「むしろAFが合いやすい仕様」と見るかは、撮影者が何を優先するかによって変わってきます。

私も、この現象に関して考察し出したのがつい一日前なので、まだ考えが至っていない部分もあるかもしれません。他に思うところがあれば追記していきたいと思いますが、とりあえず今回はこれくらいで。ではでは。

筆者:SUMIZOON
Facebookグループ一眼動画部主宰
Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOON の人

2011年よりサラリーマンの傍ら風景、人物、MV、レビュー動画等ジャンルを問わず映像制作を行うビデオグラファー。機材メーカーへの映像提供や映像関係メディアでレビュー執筆等を行う。Youtubeチャンネル「STUDIO SUMIZOON」登録者は1.4万人以上。Facebookグループ「一眼動画部」主宰。「とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ」更新中。

 

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