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LUMIX S1RIIの動画・スチル撮影で「撮れ高MAX」になるマニアック設定

LUMIX S1RIIを購入して一ヶ月ほど経ちます。このカメラに非常に満足しているのですが、それにはLUMIXのカスタマイズ性の高さが関係しています。

LUMIXは以前からカスタマイズ性が高いことが知られていますが、今回は私のLUMIX S1RIIの設定について紹介したいと思います。
なお、LUMIX S1RIIはリアルタイムLUTが使える機種ではありますが、その部分については割愛しています。内容のほとんどはカスタムダイヤルを使って、動画とスチルをいかにスイッチして快適に撮影するかについての内容になります。
本当は初級編、中級編、マニアック編の順で記事を書きたかったのですが、いきなりマニアック編な内容となっています。カスタムダイヤルを使わない中級編は機会があれば書きたいと思います。

かなりボリュームのある内容になっていますがご了承ください。

なお、なぜLUMIX S1RIIを選んだのかに関しては別途記事を執筆中ですので、後日そちらもご覧いただければ幸いです。

LUMIX S1RIIからLUMIXの操作系が変更になった

LUMIX S1RIIからLUMIXはスチルと動画撮影のモードが明確に物理スイッチで切り替える方式になりました。

【参考 LUMIX S1RII】LUMIX S1RII/S1II/S1IIEからはダイヤルは右手側はあくまでモードスイッチに徹し
左のダイヤル根元にスチル/動画/S&Qの切り替えスイッチが配置される操作系に変更

現在のところこのインターフェースの方式を採用しているカメラはLUMIX S1RII/S1II/S1IIEの3機種です。

なお、以前のLUMIXでは、スチルは通常のP/A/S/Mダイヤル、動画はクリエイティブ動画モードというようにダイヤルを変更してスチル、動画の切り替えを行う方式でした。


【参考 LUMIX GH5S】以前のLUMIXのモードダイヤル
(スチルのモードダイヤルとクリエイティブ動画モードが混在)

これは古くからLUMIXを使っている人にとっては何不自由なく使えているユーザーインターフェースではあったのですが、多くのメーカーが動画とスチル撮影は物理スイッチでの切り替え方式を採用しているため、操作系を他メーカーに合わせたとも考えられます。また、他メーカーからLUMIXへの移行者にとってはこちらの方が違和感なく使用できるものと思います。

動画とスチル撮影の切り替えが2アクション必要になるケースがある

ただ、この方式は、私のように

・動画はマニュアル露出
・スチルは絞り優先

という撮影スタイルの人にとっては「左肩の写真/動画/S&Qスイッチ切り替え」と「モードダイヤルの切り替え」の2つを行う必要があり、旧来の(モードダイヤルを回すだけの)方式に比べてワンアクション増えてしまうのです。このインターフェースの弱点です。

動画↔︎スチルの切替までに2アクション必要なケース

・動画とスチルの露出モードが異なる使い方をする場合
 例: 動画はマニュアル露出(Mモード)/スチルは絞り優先(Aモード)

 この場合...
 写真/動画/S&Q切り替えスイッチとモードダイヤルの2つの操作が必要

無論、動画もスチルもマニュアル露出(M)でのみ使うという人にとってはワンアクションで済むのですが、前述のように「動画=マニュアル露出/スチル=絞り優先」というスタイルの私にとっては(結構)面倒なインターフェースなのです。
「スイッチを切り替えつつモードダイヤルを回せば良いだけじゃないか」と言われそうですが、動画とスチルを瞬間に変更したいという撮れ高を優先したい私にとって、このインターフェースは好きになれないのです。では、1アクションで「動画=マニュアル露出/スチル=絞り優先」を切り替えられないのか?というと、実は可能なのです(なお、以降の設定はS1IIでは初期ファームでは出来ませんので、必ずファームアップしてからにしてください)。
前置きが長くなりましたが、このエントリは、動画↔︎スチル、動画の複数の設定(フレームレートや解像度)切替を如何に手数(てかず)を少なく切替て取れ高を上げるかに主眼を置いて設定を考えてみるという話になります。

無論、こんなことをしなくてもLUMIXは優秀なインターフェースを持ちますのでそのままでも十分使いやすいのですが、それを極限まで活かし切って無駄なく撮影したいぜ。というのが趣旨です。

設定の大きな流れ

先に述べたように、本記事の設定は先に述べた動画↔︎スチルのワンアクション化だけでなく、カスタムダイヤルを使いまくってLUMIX S1RIIの撮れ高を極限まで引き上げるための設定です。この考えはS1II/S1IIEでも使える考えですが、S1RII以前のLUMIXでは考えが異なるので、以降の話はあくまでS1RII/S1II/S1IIEのみに適用できるものと考えてください。また、割と複雑な事をやっているので、ある程度カメラが扱える方に向けた設定なという事をご了承ください。

流れは下図のようになっています。

基本設定

まず、動画でもスチルでも基本となる設定を作ります。それらを作って、後述のカスタムダイヤルに展開するのが目的です。無論、後で設定は変更することは可能ですが、C1〜C5のダイヤルに動画、スチル、S&Q毎にともに適用させるので設定を作り込んでからカスタムダイヤルに展開するのが便利なのです。

というわけで、私の設定を順を追って説明します(設定は使用者によって異なるので変更して頂くのが良いと思います)。

①共通設定を変更する

以下の項目はスチルと動画の共通設定になるため、後述する「スチルの設定」の前に行えば「動画撮影の設定」で再度行う必要はありません。また、P/A/S/Mのどのモードで設定頂いても構いません。以下は私の設定となります。

・「ダイヤル設定」→「コントロールダイヤルの割当」→ISO感度
・レンズ位置メモリー:ON
・ダブルスロット機能:バックアップ記録

・動画撮影時の制限緩和:高
・動画記録中の赤枠表示:ON

・カスタムモード設定
  カスタムモード表示の制限:10
  登録内容の呼出タイミング→撮影モードの変更時:OFF

・AF補助光:OFF
・シャッター半押しAF:OFF
・シャッター半押しレリーズ:ON

 

他にも

・MF時フォーカスリング設定:リニア
はお約束のように設定しますが、図は割愛します。因みにレンズを付けてないと設定できませんので注意が必要

②スチル撮影の設定

①の設定を行ったら続いてスチルの設定に移ります。

スチルの設定は先に述べた様に私は絞り優先を基本にしています。なので「撮影モードダイヤル」をAモードかつ、写真/動画/S&Q切り替えスイッチを「写真」にして下記の設定を行います(デフォルトから変更する点のみを記載しています)。

Aモードに入れて、写真/動画/S&Q切り替えスイッチを「写真」にして設定を行う

なお、あくまでベース設定ですので、実際の撮影ではこれらから変更することもあります。以下はあくまで私の基本設定ですのでご自身の使い方に合わせて変更頂いても問題ありません。

・「フォトスタイル」

・「記録ファイル形式(写真)」

・「長秒ノイズ除去」

・Fnボタン設定

スチルのファンクションボタンに関してはさほどカスタマイズはしておらず
下記のような設定を行っています。
赤い動画スチルモードで動画を撮ることがないので、RECボタンではシャッター方式を選択できるようにしています。

前面のボタンに関しては右手中指ポジションで手ブレ補正のON/OFF/流し撮りを選択できるようにしています。また前面RECボタンはAFポイントスコープをアサインしています。

コントロールダイヤルの十字方向ボタンに関しては後述の動画設定と同じピーキング、ゼブラ、フォーカスリミッタ設定をアサインしています。

カスタムダイヤルに全て登録する

ここまで出来たら一旦、カスタムモード登録(写真モード)でC1〜C5-10の計14個のカスタム設定に登録を行います。これを絞り優先(Aモード)の挙動として登録するのであればAモードに入れたままカスタムダイヤルに登録します。
名称変更はかなり面倒ですので全てに名前をつける必要はありませんが、下記の例では14個全てにSTILL A Modeとして全く同じ設定を登録しています。

これでカスタムダイヤルに入れれば写真撮影のモードでは全て絞り優先で上記の設定がなされた状態になります。

スチル撮影の設定の思想

一応思想を書いておくと私の場合、フォトスタイルはRAW現像を前提にしているのでスタンダード設定です。そのためにも記録ファイル形式はRAW+JPGにします。

記録形式をRAWのみにするとプレビュー画像が粗くなる事は(以前の機種はありましたが)S1RIIではありませんのでJPGが必要ない方はRAWのみでも差し支えありませんが、私の場合、スマホを使ってダウンロードしてそのまま他の人にデータを渡すことも想定されるのでRAW+JPGです。

S1RIIは長秒ノイズが少なく、多くの場合ダーク減算が不要です。なので長秒ノイズ除去もOFF。

AF補助光は周りに迷惑がかからない状態であればONしますが、撮影現場の状況が分からないのでデフォルトはOFFにします。

ここでは取り上げてませんが、「フォーカス/レリーズ優先」はとりあえず写っている事を優先し、レリーズにします。シャッター半押しレリーズはS1RIIを超フェザータッチにする設定で、代わりにAFの動作は親指にしています。これはもう10年以上前からの設定ですが、この部分は好みが分かれると思います。

ダイヤル設定のコントロールダイヤルの割当てがLUMIXでは古くからデフォルトでヘッドフォン音量に設定されていますが、これをISO感度に割り振ります。これは絞りとISO感度のいずれの設定もワンアクションで行うようにするためです。

Fnボタンの設定は、フォーカスリミッターの設定に関するものの設定や、手ブレ補正に関しては流し撮りに対応できるように切り替えをFnボタンにアサインします。

という思想です。

 

③動画撮影の設定

続いて、動画撮影側の設定です。スチルの設定は先に述べた様にマニュアル露出を基本にしています。「撮影モードダイヤル」をMモードにして「写真/動画/S&Q切り替えスイッチ」を「動画」にして下記の設定を行います(デフォルトから変更する点のみを記載しています)。

Mモードに入れて、写真/動画/S&Q切り替えスイッチを「動画」にして設定を行う

以下はあくまで私の基本設定ですのでご自身の使い方に合わせて変更頂いても問題ありません。

・フォトスタイル
・記録ファイル形式(動画)
・録音レベル表示
・動画画質
・スポット輝度メーター

・Logビューアシスト
・ゼブラパターン表示

 

・WFM/ベクトルスコープ表示
・タリーランプ設定

 

・Fnボタン設定
動画撮影時のファンクションボタンに関しては下記のような設定を行っています。
ISO感度変更はコントロールダイヤルに割り振っているので、ISOボタンには電子手ブレ補正の設定ができるようにしてます。また、赤いRECボタンには動画ライブビュー拡大表示を設定しています。

 

右手中指の設定は手ブレ補正ブースト(動画)を設定してします。余談ですが、手ブレ補正ブーストは電子補正と勘違いしている方が多いようですが、これはセンサーシフト手ブレ補正を最大限に使った設定です。歩き撮りする場合にはこれをOFFし、カメラワークの無いFix撮影ではこれをONさせる使い方が有効です。
よって私は、この設定を被写体、カメラワークに応じて頻繁に切替えます。なので、絶対にファンクションボタンの割り当てが必要と考えています。

コントロールダイヤルにはスチルと同様にピーキング、ゼブラ、フォーカスリミッタの設定を行っています。特に飛行機などの望遠撮影時にあらかじめ被写体までの距離が想定できる場合は必ず設定しています。なのですぐアクセスできるようにしています。

一旦、動画基本設定をカスタムダイヤルに全て登録する

ここまで出来たら一旦、カスタムモード登録(動画モード)でC1〜C5-10の計14個のカスタム設定に登録を行います。これをマニュアル露出(Mモード)の挙動として登録するのでMモード/動画に入れたままカスタムダイヤルに登録します。

仕上げ:登録したカスタムダイヤル設定のコーデックを変更していく

さて、最後です。今現在は8K30pがカスタムファンクションのC1〜C5-10にアサインされていますが、これをコーデック毎に変更します。以前から書いていますが、ここからがこのカスタムファンクションを使った設定のミソです。

それぞれのカスタムダイヤルに回したあとコーデックの設定を行います。なお、私の使用頻度をベースに作っているテーブルは下記の通りです。

カスタム

設定

写真

動画

S&Q

H.26X/ProRes

画角

解像度

フレームレート

C1

Aモード

H.265

FULL

8K

30p

未設定

C2

Aモード

H.265

FULL

5.9K

60p

未設定

C3

Aモード

H.265

FULL

4K

120p

未設定

C4

Aモード

H.265

PixByPix

4K

120p

未設定

C5-1

Aモード

ProRes422

FULL

5.8K

30p

未設定

C5-2

Aモード

ProRes422

FULL

4K

60p

未設定

C5-3

Aモード

ProRes422

FULL

FHD

120p

未設定

C5-4

Aモード

ProRes422

APS-C

FHD

120p

未設定

C5-5

Aモード

ProRes422

PixByPix

FHD

120p

未設定

C5-6

Aモード

H.265

FULL

8K

30p

未設定

C5-7

Aモード

H.265

FULL

8K

30p

未設定

C5-8

Aモード

H.265

FULL

8K

30p

未設定

C5-9

Aモード

H.265

FULL

8K

30p

未設定

C5-10

Aモード

H.265

FULL

8K

30p

未設定

 

手順としては
・ダイヤルをC1に設定してコーデックを8K30pに設定
・ダイヤルをC2に設定してコーデックを5.9K60pに設定
・ダイヤルをC3に設定してコーデックを4K120pに設定

以降上記テーブルの設定を行っていきます。先に述べたようにカスタムダイヤルは自動更新設定となっているのでそれぞれの設定をした後に保存する必要はありません。

【参考】カスタムダイヤルC2の場合。5.9K60pに設定

上記テーブルの全ての設定

動画撮影の設定の思想

動画撮影での思想を書いておくと私の場合、フォトスタイルは基本的にLog撮影です(Log以外も使いますが、まずは一番選ぶ可能性が高いこの設定を基本にしています)。

周辺光量補正は切っています。これは高感度撮影時に周辺にノイズが出てしまう事を避ける目的です。ノイズが出るくらいならビネットが出ている方が良いという判断ですが、ここは好みでしょう。

記録ファイル形式はMOV(コンテナ)を基本とし、7680x4320(8K)30pに一旦は設定します。カスタムダイヤルにアサインするときにこれは変更しますのでとりあえず、このカメラの一番高解像度な16:9アスペクト設定にしているものです。

撮れ高の上がるカスタムダイヤル

読者の皆さんの中には「カスタムダイヤル」を使ったことが無い方が多いかもしれません。ですが、敢えてここで述べますが、複数のフレームレートを切り替えつつ動画(M露出)を撮影しつつ、スチル(絞り優先モード)も撮りたいという撮影スタイルにおいてカスタムダイヤルを使わない手はないです。

いちいちメニューに入り動画のフレームレートを変更したりする手間は秒を無駄に出来ない撮影現場では手間がかかり非常に億劫なのです。なので、カスタムダイヤルが使えるようになったほうがいいです(一気に撮影がスマートに行えるようになります)。場合によっては人がワンカット撮影してる合間に4カット以上撮影出来てしまうケースすらありえます。

設定ダウンロードリンク

※本設定の適用に伴う責任は一切負いかねます。特にARRI Log アクティベートされている個体への適用は避けた方が賢明と思います(確認は出来ていませんが、当方の個体はアクティベーションを行なっていないためアクティベート情報が消える可能性があるためです)。消えない可能性もありますが、現時点で未確認です。

ここまでの設定を全て行うには結構な時間がかかるため、参考までに下記に設定ファイルを置いておきます。

LUMIX S1RII 設定 Google ドライブ

上記ファイルは

SDカード第1階層 AD_LUMIX
 SDカード第2階層 CAMSET

の下に配置される必要がありますのでご注意ください。

SDカードの第1階層

SDカードの第2層(AD_LUMIXフォルダの中)

SDカードの第3層(AD_LUMIXフォルダの中のCAMSETの中)

まとめ

かなり面倒な設定を紹介しましたが、この設定を行うと、例えば

C1で8K30pでマニュアル露出で動画撮影している場合、写真/動画/S&Q切り替えスイッチでスチル設定にすればそれだけでスチルのAモードで写真撮影を行うことが可能です。再び8K30pの動画撮影に戻ったとしても、切替直前の設定を覚えているので動画の露出設定を再びやり直す必要がありません。つまり、動画とスチルをほぼシームレスに撮影することができるというメリットがあります。また、C1からC2にスイッチするだけで8K30pから5.9K60pへの瞬時の移行も可能です。

唯一、課題があるとすると、カスタムのスチル撮影設定が独立しているのでC1のスチル設定とC2のスチル設定が連動していないという点でしょう。

ただ、スチルの場合は動画よりもコーデックに関する設定がなく、いつでもRAWで撮れるというメリットがあるので、絞り優先でRAW(かつオートホワイトバランス)で撮るのであれば、そのアクションはカメラを構えて、露出(絞り、露出補正)、構図を決めてシャッターを押すというシンプルなものにできます。

そんな単純なものじゃないだろ!と怒られそうですが、前述のように、あくまでこの設定は、1秒と無駄にできない撮影現場でスチルと動画、動画のコーデックを撮影現場でいかに効率よく撮るかを主眼にしているのでその点ご了承ください。

S1RIIの導入以降、動画とスチルを異なる露出モードでワンアクションで切り替えつつ、異なるフレームレート設定もワンアクションで切り替えるという方法は現状この方法しか思いついていません。とりあえず今は撮れ高を稼ぐ方法としてこの運用方法を使っています。

もしも他にこんな方法あるよ!という方がおられましたら是非教えていただければ幸いです。ではでは

 

筆者:SUMIZOON
Facebookグループ一眼動画部主宰
Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOON の人

2011年よりサラリーマンの傍ら風景、人物、MV、レビュー動画等ジャンルを問わず映像制作を行うビデオグラファー。機材メーカーへの映像提供や映像関係メディアでレビュー執筆等を行う。Youtubeチャンネル「STUDIO SUMIZOON」登録者は1.4万人以上。Facebookグループ「一眼動画部」主宰。「とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ」更新中。

 

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