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Nikon ZRのRAW(R3D NE)をしばらく試した感想、撮影した作例など

はじめに

Nikon ZRに関して先日の発表の当日に記事にしましたが、今回は実機を触っての感想を書かせていただきます。すでに多くの先行レビューワーがNikon ZRについて語り尽くしているので表面的な部分はさらっと流して、少しマニアックな部分について紹介していきたいと思います。

Nikon ZR動画スペック概要

改めてNikon ZRに関してそのスペックをかい摘んで記載すると、下記のようになります。
・フルサイズ24MP 部分積層CMOSイメージセンサー
・CFexpress Type B + MicroSDカードの2スロット構成
・3つの動画RAWコーデックに対応(N-RAW / R3D NE / ProResRAW)
・6K RAW動画記録(N-RAW / R3D NE) 60p記録
・ProResRAWの場合 6Kは30pまで
・ネイティブISOはLog撮影時 800/6400
・5軸センサーシフト式手ブレ補正
・メカシャッターレ
ファンレス構造ながら長時間記録可能
・本体重量630g
・ボディ単体の価格は実売27万円程度

ZRの構成はシンプル。バッテリーとストラップとUSB-Cケーブルのみの構成
チャージャーは付属していない

手に持った感覚

Nikon ZRはぱっと見と手に持った感覚は少し異なる印象を受けます。いわゆるファインダーレスのカメラでグリップが浅いためそのフォルムからはコンデジ的な小さい印象を受けがちですが、実際に手に取ると意外と大きく感じます。これは悪いといっているわけではなく、むしろ私にはしっくりくる大きさでした。
たとえば、Z8とくらべてみるとその大きさが小さいという印象はないことがわかると思います。

Z8(左)ZR(右)

一方で、厚みに関してはグリップとファインダーがない分かなり薄い印象を受けます。

Z8(左)ZR(右)

液晶はかなり大きい印象を受けます。3.2インチのZ8(3:2)と4インチZR(16:10)ではその印象は全くといっていいほど異なります。多くのレビューワーが言っているようにこの部分はこのカメラの最大の特徴といっていいと思います。

Z8(左)ZR(右)

操作系に関して

初めて触った時に、Nikon ZRは物理ボタンの少なさから、操作しにくいかも?と思っていたものですが、それはモニターのタッチ操作が秀逸なおかげで、さほど気になる点はありません。むしろスマホでの写真撮影、動作撮影に慣れている方であればタッチ操作のほうが自然で受け入れられやすいのかもしれません。

作例の冒頭映像から

物理ダイヤルは親指上部と人差し指の2箇所ですので、絞りとシャッタースピードにダイヤルがアサインされていれば、ISO感度の変更は一発で行うことができないわけです。欲を言えばやはり3つの物理ダイヤルで露出の3要素を同時操作したいところです。

物理ダイヤルは2つ

なお、Nikon ZRの各種動作のレスポンスに関しては非常に速いと言えます。特にプレビュー操作は秀逸です(1つ目の作例の冒頭でその部分は動画化しています)。
スマホのようにメニューを高速スクロールさせるところも今までのカメラになかった部分ですし、撮影の操作に関しては今までになかった感覚で行うことができると言って良いかと思います。
なお、私なりの撮れ高が上がる設定に関しては別途後述いたします。

動画作例

貸し出し期間が少しタイトだったため、作例は2つ(+ HDR書き出し)しか制作できていませんが、ぜひご覧いただければ幸いです。一本目は、梅田の街中を手持ち撮影したものです。

この動画で使用したレンズはNIKKOR Z 50mm f/1.4とS
IGMA 50-100mm F1.8 DC HSM | Artの2本

前者のレンズは動画向けとも思えるほどに柔らかい表現を得意とするレンズです。多くのミラーレスレンズは解像感が高いものですが、むしろこのレンズは柔らかさを売りにしているレンズだと思います。
後者のレンズはキヤノンEFマウントのためMegadapのEFTZ21というマウントアダプタを介して撮影しています。SIGMA 50mm-100mm F1.8 DC HSM | Artは本来はAPS-Cイメージサークルを想定して作られたレンズですが、実際に撮影できる画角はもう少し広いのです。EFTZ21はSIGMA 50-100mm F1.8 DC HSM | Artにつけるとフルサイズ用レンズとして使えるためイメージサークルギリギリを狙った撮影ができるのが良い点です。
そうして撮影した映像が上記映像になります。
もう一つの作例は下記動画です。毎度の伊丹空港での望遠撮影をメインとした映像になります。

いずれの動画も左下にメタデータから抽出した露出設定を記載しておりますので参考にしていただければ幸いです。
後述いたしますが、グレーディングを行うにあたっては、R3Dファイルの扱いに詳しいターミガンデザインズの代表高信さんにアドバイスを頂きました。

ZRで撮れ高を上げる設定

ZRには物理ボタンは少なくモードダイヤルの類はありません。一般的なミラーレスカメラのようにモードダイヤルを回してカスタム設定を複数選択するという使用方法はできませんが、その代わり、ユーザー設定を4つカスタマイズして記憶させることができます。(これらの設定は、モードボタンやモード設定を使用して、素早く呼び出しを行うことができます)

スチル、動画ともにユーザーセッティングは4つまで登録可能

ここで必須なのが、変更内容の保持:ONです。これがONであればU1〜U4、はたまたスチルを撮ろうともそれぞれ最後の設定を保持し続ける設定となります。夕刻の露出が刻々と変化する中でモードを切り替えながら撮るような状況では絶対に必須の設定です。

変更内容の保持を行えば、最後の露出状態や設定情報が
U1〜U4に独立して保持され続ける

 

作例撮影でおこなった4つの設定

 

モード選択で4つのモードを瞬時に呼び出せる

なぜ、このような設定が私には必須なのかを説明しておきます。一言で言えば6K60p/6K30p/6K24p/4K120pを超短時間で切り替える必要があるからです。
飛行機がこちらに向かっている状況を6K60pで撮影しつつ、飛行機が頭上を越えたら即座に4K120pに変更して着陸シーンを撮る。そいいう撮影ではモード切り替えにかけられる時間は長くて2〜3秒程度。つまり、フレームレートを切り替えるためにメニューを下がってフレームレートを変更するような操作は現実的ではありません。iメニューに動画の撮影フォーマットの設定をしてもその手間はあまり削減できません。結局どのカメラでも行き着くところは「カスタム設定を切り替える方法が一番早い」というのが私の認識です。
ましてや、60pは手ぶれ補正をスポーツモード、4K120pはノーマルモードを瞬間的に切り替えたりすることは困難ですので、想定される状況ではあらかじめU1〜U4に必要な設定をプリセットして撮影に臨むというのが私の撮影方法です。
ちなみに手ブレ補正の設定は撮影時にかなり変更します。固定撮影ではノーマル、カメラワークを行う場合はスポーツモードに変更します。Z8での撮影ではこれがすぐに切り替えられるようにボタンにアサインしていますが、いかんせん、ZRには物理ボタンがあまり無いため、ここはiメニューを使った操作としています。

あまりデフォルトから変更はしていないですが、
ISO感度は物理ボタン+物理ダイヤルとしてタッチ操作を避けている

ケージ、専用グリップはあったほうがいい

グリップを気にしないのであれば裸で使っても差し支えないと思いますが、ZRはグリップが浅いため、握っている感覚はあまりありませんので、大きなレンズをつけてホールドをしっかりしたいのであればケージ、もしくは専用のグリップを用意した方がよいです。
ただし、ケージをつけるとZ8よりも横幅が大きいサイズとなりますので、その点は考慮して導入するとよいと思います。

左:Z8 / 右:SmallRigのケージをつけたZR

カテゴリ/カメラケージ/Nikon Nikon ZR用ケージキット:トップハンドルとサイドハンドル付きアドバンスケージキット-メーカー名:Nikon/対応モデル:ZR/商品ID:5466/グリップだけで良い場合はSmallRigのグリップのみを選ぶのも手(6690円)
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ZRのダブルRECできない問題とHDMIがマイクロ端子である問題をどうにかする

ZRが発表になった直後、ZRの動画がダブルレック(バックアップ記録)できないという点はSNSを中心にかなり話題になりました。個人的にはCFexpressで記録できなかったという事故に遭遇したことはありません。CFexpressであればメディアの信頼性が高いため記録に関する事故の発生確率は低いと言うことが関係していると思います。ですが、これも絶対ではありません。
話は変わりますが、シネマカメラが基本的にシングルRECなのはメディアの信頼性が高いことに関係していると思いますし、システムの冗長性の観点からシステム障害が発生してしまえばダブルレックの意味が無いという部分からも来ていると思います。片方のメディアが不具合を起こしてもう片方のメディアのRECが止まるケースもあるので、ダブルレックが意味をなすのはメディアの偶発不良や操作ミスによるデータ消失に対してです。
これらに関してこれ以上書くのは避けますが、ダブルレックもシングルレックもそれなりのリスクはあるということは言えるでしょう。
リスクが低い記録方法はメディアの系統と別系統で撮影する方法です。要は、HDMI経由でバップアップ記録を取る方法です。下はVideo Assist 12G HDRを使用したバックアップ記録例です。

撮影モードは限られるが、4Kでのバックアップ記録が可能

なお、外部記録制御(HDMI)をONにすれば、ZRの本体記録が始まると同時にVideo Assist側でRECが始まりますので余計な操作は不要です。
なお、HDMIがマイクロ端子である問題も一部で強度問題が取り沙汰されていたいと思います。これに関しても対策を記載しておきますと、専用ケージ+SmallRigのHDMI変換アダプタを使うことでガッチリとポートを保護することができます。

Nikon ZR用ケージキット:トップハンドルとサイドハンドル付きアドバンスケージキット

www.smallrig.com

左:Nikon ZR専用 基本ケージキット11,790円

SmallRigアフィリエイトリンク

今現在ケージはAmazonでは入手できないようですので、SmallRigのサイトから購入する必要がありますが、少なくともHDMIを接続するのであればケージとHDMIアダプタを導入することをお勧めします。
ちなみに、このZR専用基本ケージは本体の底面と上部のストラップホルダーの部分の3点をネジ止めするタイプなので非常にガッチリ止まります。

ケーブルクランプも付属していますので、HDMI/USB-Cポートをしっかり保護してくれるので安心度が違います。

R3D NE/ N-RAWのビットレート

R3D NEデータに関して記載しておきます。
R3DNEのRAWデータはかなり大きいです。実測した結果、そのビットレートは約6K60pで3700Mbps、6K30pで約1900Mbpsでした。(これはN-RAWの高画質モードと寸分違わず同じですのである意味R3D NEはN-RAW高画質モードのメタデータ違いである可能性もあります。

で、このR3D NEの記録時は1TBでどのくらい記録できるかかというと、

6K60p → 36分(1,000,000MB/462.5=2162秒)
6K30p → 70分(1,000,000MB/237.5=4210秒)

※1TBを1,000GB=1,000,000 MB と仮定(実際は1kbは1024bitですが1kb=1000bitとして計算)
※3700 Mbps=462.5 MB/s@6K60p
※1900Mbps=237.5MB/s@6K30p

です。つまり6K60pをR3Dで撮影しようとすると、2秒強で1GBものデータを消費する勢いです。よってR3D NEで動作を撮影する場合はかなりのメディアの消費を見込んだ方がよいです。
また、6K60p撮影は比較的安価なTLCタイプのCFexpressだと書き込み速度が間に合わない可能性もあるため、長時間撮影することを想定するならpSLCタイプの導入を考えた方がよいかと思います。
今回の作例撮影で使用したカードはEXASCEND NITROの1TBを使用しました。同カードはTLC NAND をベースとしつつ、pSLC モードを採用して高耐久/高速度を引き出しているもので少し高価ですが、今回の撮影では速度不足による停止は発生しませんでした。

また、安価なCFexpressでも6K30pだったら安定して書き込みができるかもしれません。いずれにせよZRが販売されて多くのユーザーレビューが揃ったら大容量のメディアを買う。それまでは様子見をするというのが良いかもしれません。

DaVinci上でのプロジェクト設定(R3D NEのDaVinici Resolveの扱い)

さて、今度はZRのR3D NEデータの扱いです。今回R3D NEデータをDaVinci Resolveで扱うにあたり、R3Dファイルの扱いに詳しいターミガンデザインズの代表高信さんにアドバイスを頂きました。
以下の設定を記載いたします。

Rec.709での書き出し前提となる設定

同設定は、カラーサイエンスをDaVinci YRGB Color Managed、入力カラースペースをREDWideGamutRGB/Log3G10、タイムラインカラースペースをREDWideGamutRGB/Log3G10、出力DRT(Display Rendering Transform)をRED IPP2としています。これはREDのR3Dデータを扱う際に行う設定そのものと思います。これらの設定はすでにテクニカルLUTを適用することなく、タイムライン上ではRec.709の映像が出力されますので、そこから微調整を行う作業を行いました。
そして上記のまま、Rec709で書き出した映像が下記。

youtu.be

出力カラースペースをRec.2100/ST2084に変更し微調整して書き出したHDR映像が下記になります。

youtu.be

HDRに関しては撮影時、編集時ともにもう少し追い込む必要がありますが、それでもRec.709前提のままほぼ特別な作業を行うことなくHDRに変換した映像でも十分美しいものだと思います。

再三に渡りQ&Aに答えていただいた高信さんに深くお礼申し上げます。高信さんのYoutubeチャンネルではテクニカルな貴重な情報が多く共有されておられますのでぜひ一度ご覧になられることをお勧めいたします。

www.youtube.com

再生、書き出しのパフォーマンスについて

編集は主にMac Studio M2 Max(32GB)とMacBook Pro M4(16GB)を使用しました。いずれのMacとも最小構成のいわゆる吊るしモデルですので、超高性能と言うわけではありません。6K30p素材を4Kタイムラインに載せた場合の再生パフォーマンスは両者とも30fps出ていました(RAWパラメータ調整、トーンカーブ調整、Rec.709変換のみ実施)。書き出しに関してはMacBook Pro M4が29fps、Mac Studioが73fpsとなりました。レイヤを重ねたりすればパフォーマンスは一気に低下しますが、単純にグレーディングして書き出すだけであれば、極端に高性能なPCは要らないと言えます。

なお、空間的・時間的ノイズリダクションをかけると半分以下にパフォーマンスは落ちますのでその点はご注意ください。
なお、R3Dデータを書き出す際はApple シリコンのMacの場合、H.264よりもH.265の方が圧倒的に書き出しパフォーマンスが高い傾向にあります。H.264書き出しで遅いと感じる方がおられましたら一度H.265の書き出しをお試しください。

なお、MacBook Air M4 10コアであれば先に述べたMacBook Pro M4に近いパフォーマンスが期待できます。

R3Dのダイナミックレンジの考え方

Nikon ZRのR3D撮影では一般的なISO感度の考え方ではなく、EI(Exposure Index)の考え方が適用されています。EIとは簡単に言ってしまえば、メタデータベースのISO感度設定のことを言います。これは少々理解しにくい部分があるので長くなりますが、順を追って説明していきます。
話を一度スチルのISO感度に移します。スチルのISO感度は拡張感度でない限りは標準照度からハイライトクリップするまでの段数は基本的に変わりません。つまりISO400でハイライトが飛ぶのであれば同一照度、同一F値、同一SSであればISO100に下げることで2段分の余裕が生まれます。このことはスチルカメラマンの多くの人が体感していると思います。そして、それは逆に言えば標準露出を基準にハイライト側のクリップ余裕がISO感度によって変化しないことの裏付けなわけです。
話を今回のR3Dに移します。R3Dのデータはベース感度を基準にISO感度を下げれば、ハイライト側が狭くなるようにシフトします。これはスチルでいう拡張感度の低感度側の動きと同じです。
さて、Nikon ZRのダイナミックレンジですが、下図のようになっています。

正確な数値は若干これとは微妙に異なるかもしれませんが、ここではこれを真として話をします。低ゲイン側のベース感度のISO800では、標準照度に対してハイライト側は+7STOPの余裕を持ったガンマ仕様になっています。
では同一の被写体で絞りやシャッタースピードを変更せずにISO400に設定して撮影すると何が起きるかというと、無論全体的に暗く映ります。そして、ハイライトが800で飛んでいたのであれば、その部分の白飛びは解消されません。(クリップした部分は暗くなりますが情報が無いという意味では状況は変わりません)
これは何を指しているのか、誤解を恐れずに書くならばISO800とISO400が同じデータでデータの解釈だけが異なることを指しているはずです。異なるのは撮影者がどのISO感度で撮影したのか、というメタデータが映像に埋め込まれるだけで、ISO800でもISO400でも同じです。なんならISO200も3200も同じデータとなっているハズです。(なお、ベース感度の切り替えを跨ぐとデータは変わります。)
これが、ISO感度が現像時に後から変えられると言うカラクリのベースとなっています。
シネマカメラはISO感度が後から変えられるのだぜ、「ウェーイ」と言うYoutubeレビューをよく目にしますが、それは同一ベース感度間ではデータは変わらずにメタデータだけを書き換える動作だからと言えます。これがEI(Exposure Index)の考え方であると私は理解しています。

シネマカメラの考え方は基本的にこの考え方に基づいています。REDもARRIもBMDのカメラの基本はこれで、ネイティブゲイン内でのデータはメタデータだけが変わっているはずです。

補足)かなり昔に書いた記事ですが、こちらも参考に読んでいただければ理解が深まると思います。

sumizoon.hatenablog.com

一方、一般的なスチルカメラはこの考えとは異なっているので、この点を理解して撮影に臨むことが品質の高い映像を撮影するのに有効かと思います。
なお、この考えはハイライトがクリップしなければガッツリISO感度を下げて良いと言えます。一般的にスチルではETTR(Exposure to the RIght)と言うハイライトが飛んでなければ露出をめいいっぱい稼いで、現像時に露出を下げると言う考えがあります。
R3Dにおいてハイライトが飛ばない範囲でISO感度を下げて標準露出になるのであればそれは、スチルで言うところのETTR撮影を行っていることに他なりません。
EIの良いところは、最終の仕上がりを確認しながら仮想ETTR撮影ができるところにあると思います。ベース感度よりも下げられないカメラの場合、ETTR撮影を行うと、露出が明るすぎる状態で撮影しつつ、後処理で露出を下げることが必要ですが、EI撮影でベース感度よりもISO感度が下げられると仕上がりのルックを確認しながら撮影できるメリットがあります。ただし、繰り返しになりますがハイライトの余裕はかなり狭まることを理解して撮影する必要はあります。

ローリングシャッター速度の測定

Nikon ZRのローリングシャッター速度は6K撮影においてはフレームレートに依らず、9.5msecを誇ります。これは100fpsを上回る速度ですので、このローリング速度はかなり速いものです。そしてこの速度は2.35:1画角であれば十分フル画角でも120fpsを満たすものです。
ですので、できればシネスコ6K120pを実装して欲しいと思うのですが、こればかりはセンサーが出力可能でも、後段ISP(エンジン)が受けられない仕様なのかもしれません。とにかくセンサーだけならシネスコ6K120pがイケる仕様なのは確認できています。
ちなみに、この速度はZ6IIIで計測したものと全く同じ結果となっています。

意外すぎる程持つバッテリーの持ち

Nikon ZRの良い点はRAWで撮れることだけではありません。例えばバッテリーの持ちもZRの良い点です。例えば、H.265での4K30p撮影ではバッテリー一つで2時間もの連続撮影が可能です。
流石にバッテリー1本で4K30pで3時間以上の撮影ができたGH4ほどではありませんが、その感覚に近いものがあります。
最近のカメラは消費電力が高いため、頻繁なバッテリー交換を余儀なくされる傾向にありますが、ZRのバッテリーの持ちは驚くべきものだと思います。

大型モニタがもたらす操作性

操作に関する解説は冒頭にも記載しましたが、単純にモニタが大きいだけではなく、その操作体系が優秀な点もZRの良い点です。例えば、モニタ表示に関する設定を下記のような一覧で設定することが可能です。
ピーキングやグリッドライン、ゼブラ、赤枠表示、モニタ輝度など表示関係に関するもの全てがこの画面で設定することが可能です。これはBMPCCの操作系を連想させるものもありますが、ミラーレスカメラとしては初めて採用されたインターフェース形態と思います。

また、スマホのように使えるメニューのスクロール操作などはこのカメラだらかこそ成し得たものだと思います。

まとめ

本来もう少し時間をかけてアレコレ試したかったのですが、今回は時間がなく、深掘りを行うレベルにはありませんでしたが、それでも私なりの使用方法や、画質に関する確認は行うことができました。そして、思うところが多くありました。
一言で言うなれば、Nikon ZRはストレスなく楽しい動画カメラと言えます。
動画でRAWを弄る作業はすこぶる楽しいものですし、また、露出調整、ホワイトバランスの調整に関しては時間がかからないので、その分グレーディングに時間を割くことができます。
なお、R3Dに関してはREDのカラーサイエンスと言う言葉が飛び交っていますが、結局のところ自分の好きなようにグレーディングすることが前提のRAWなので、色の傾向がREDのそれと似ているか否かは私はさほど関心はありません。確かにREDに寄せているのかもしれませんが、ZRのR3D NEとREDのR3D素材の混在した映像を撮る人にとってはありがたい話ですが、それはほんの一握りの人だと思います。それよりもZRは初めてRAWに触れてグレーディングを楽しむきっかけとなるカメラと言う意味合いの方がすごく大きい。そう思っています。
画質に関しては、高ゲイン側のシャドー部の描写にはまだ改善の余地があると言う印象ですが、夜間に明るいレンズを使えば、先の作例のようなクオリティの映像は簡単に撮ることができますし、何より20万円台のカメラが内部RAW収録できてしまう点は他に変え難いものです。BMPCCシリーズも安価ではありますが、BMPCCが手ブレ補正やAFが使えないことを考えるとNikon ZRはRAW収録カメラとしていかにコストパフォーマンスに優れたカメラかはお分かりでしょう。
ただ、一方で、安くてRAWが撮れると言う側面だけで飛びつくと運用が難しい部分があるのも確かです。RAWで撮るのであればそれなりのメディアコストは覚悟する必要がありますので、そこだけは考慮しておく必要があります。
色々な話題をかっさらっているZRですが、これを機に小型シネマカメラのありかた、動画撮影の楽しみ方を変える存在となるのかもしれません。

 

 

筆者:SUMIZOON
Facebookグループ一眼動画部主宰
Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOON の人

2011年よりサラリーマンの傍ら風景、人物、MV、レビュー動画等ジャンルを問わず映像制作を行うビデオグラファー。機材メーカーへの映像提供や映像関係メディアでレビュー執筆等を行う。Youtubeチャンネル「STUDIO SUMIZOON」登録者は1.4万人以上。Facebookグループ「一眼動画部」主宰。「とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ」更新中。

 

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