さて、待ちに待ったS5IIXがウチにも届きました。すでにレビュー記事の方はメディア向けに書かせていただいてはいますが、今まで細かい設定に言及していなかったので、今回は各種設定を紹介したいと思います。設定項目のほとんどはS5IIでも共通ですので参考にしてみてください。
本設定の目的
本設定は言うなれば下記に要約されます。
・露出はマニュアル露出で機械任せにしない
・撮れ高を稼ぐために瞬時に動画撮影モード(記録フォーマット)を切り替える
・半押しAFを使わずAFは親指で行う
・AFをMFの両方を使う
・写真とスチルを別設定で行う
・撮影はV-Logプロファイルでカラーグレーディングを行うことを前提とする
とにかくS5II/S5IIXに限らずLUMIXは設定できる項目が多く、その機能を理解すれば使いやすいのですが、初心者の方にとっては意味が分からないメニューが多いのも確かです。機械任せで撮っても美しい映像が撮れるLUMIXですが、設定を理解して思い通りにカメラをコントロールするのも品質の高い映像を収録する上で重要な事です。今後ともこの手の設定、撮影手法に関しては紹介していきたいと思いますのでたまに当ブログを覗きに来て頂けると幸いです。
動画の設定を行う前に理解したいこと
まず、この設定は露出はマニュアル露出で行うことを前提としています。マニュアル露出とは露出の3要素である「シャッタースピード」「絞り」「ISO感度」をユーザーが任意に設定することを意味します。とは言え難しい事はありません。よく分からんって方は太文字だけを頭に入れてください。
シャッタースピード
動画撮影は基本的には
・シャッタースピード:1/60 or 1/50固定です。
とは言えいくつか考慮すべきことがあります。
東日本での撮影の場合:30p撮影の場合=1/50 、60p撮影の場合=1/100
西日本での撮影の場合:30p撮影の場合=1/60 、60p撮影の場合=1/60、1/120
正確には新潟の糸魚川と静岡の富士川を結んだラインを境にして商用電源が違いますのでそこを境に東/西日本と表記しています。
なぜちがう周波数ができてしまったの?|教えて!かんでん|関西電力
全ての照明が点滅しているわけではありませんが、多くの照明は東日本では100Hz、西日本では120Hzで目には見えない点滅を繰り返しています。シャッタースピードが上記のセオリーを外すと画面に映り込んだ照明によってはフレーム毎の点滅が映ってしまったり縞々が映ってしまう現象が発生します。また、スチルではシャッタースピードを高速にする事がありますが動画では動き物を撮影する場合でもシャッタースピードは前述のスピードに設定します。と言うのも、動く被写体はそれなりにブレていないと不自然に映ります。過去にもこのブログでは同様の事を書いていますがアクションカムの映像がやたらパラパラと見えるのはこの(シャッタースピードが速く撮影されている)為です。まぁ世の中の多くの人が速いシャッタースピードの映像に見慣れているのでフリッカーが映っても、パラパラした映像が撮れても構わんって人は上記を無視しても構いません。(とは言え、見る人が見たら「素人臭い映像」と見えてしまう可能性はあります)
絞り値(F値)
絞りは被写界深度(ピントの浅さ深さ)をコントロールする目的と、明るさをコントロールする目的があります。一眼動画ではボケの大きい表現ができることが魅力の一つですが、構図によってはボケが大きすぎるとよく分からん映像になりかねません。F値が小さいほど明るく、ボケが大きくなります。F値が大きいほど暗く、ボケは小さくなります。「暗く」と表現してますがあくまで相対的なものですので、昼間の撮影でF8まで絞ったとしても十分な明るさが確保できます。
よく分からんって方は(異論はあろうけど)下記を頭に入れておいてください。
ボケを大きく取り入れた表現をしたかったらレンズの開放値
手前から奥までピントを合わせたければ数値を大きく
勿論見た目のピントの深さは画角でも大きく異なりますので、絞りを調整しながら自分の好みや照度の状況に合わせて調整を行う必要があります。
ISO感度
イソ感度と表現する人もいますが、昔からカメラに馴染みがある人ほどイソー感度、アイエスオー感度と言ったりします。ISO感度は低いほど暗くノイズが少ない。感度が高いほど明るくノイズが多く映ります。S5IIXの場合撮影プロファイル(スタンダード、CineLikeD2、V-Logなど)で最低感度が変わります。スタンダードではISO100、CineLikeD2はISO200、V-Logは640が最低感度です。個人の感覚は人によって異なりますが、S5IIXではいずれのプロファイルでも概ねISO6400までがクリーンに撮影できると感じています。
日中屋外撮影ではISO感度は最低感度(V-Logなら640、スタンダードなら100)
夜景撮影ではISO感度は6400までに制限
を一つの目安に撮ると品質の高い映像を撮ることができます。よくシャッタースピードを1/200とかに設定してISO25600とかに設定して撮ってしまう人もいますが、ISO感度を上げる前にシャッタースピードが速すぎないか、絞りすぎていないかを確認して撮影しましょう。
NDフィルタによる源光
露出の3要素は上記で示したシャッタースピード、絞り、ISO感度と書いておいてもう一つNDフィルタによる減光の話を書くとここでややこしく感じるかもしれません。NDフィルタはレンズの前に取り付けてレンズに入光する光を制限する役割があります。シャッタースピードを1/60に設定してF1.4、ISO感度640とかに設定してしまうと、明るく撮れすぎて白飛びしてしまうので、NDフィルタを使うのが一眼動画ではセオリーなのです。無論夜の撮影ではNDフィルタを使う必要は(基本的に)ありません。そもそもISO感度を上げないといけない状況化でNDフィルタを使うというのは画質を落としてしまう要因です。なのでISO感度を上げる前に、NDフィルタを取り付けたままになっていないかを確認しましょう。尚、基本は可変NDフィルタを使うのがラクです。
NDフィルタの使い方と露出コントロールの仕方に関しては次回のエントリで紹介いたします。
S5IIX/S5IIの設定
では実際に私の設定をすべて記載します。今回はRAWやSSDを使わない内部収録の場合のケースになります。が、殆どの設定は共通となります。あくまで私なりの設定ですので、人によっては使いにくい部分があるかもしれません。使いにくいと感じた部分は、自分なりにアレンジして頂くのが良いかと思います。
準備⓪
まず、動画の設定を始める前にモードダイヤルをクリエイティブ動画モードに入れます。動画撮影は基本的にこの設定で撮影します。(最終的にはカスタムダイヤルC1/C2/C3に設定を割り振りますが、設定自体はクリエイティブ動画モードで行ってください)
設定① 画質、フォトスタイル、動画フォーマット
前述の様に動画露出設定は”M”になります。フォトスタイルはV-Logになります。もちろんV-Log以外で撮る事もありますが動画撮影においては多くは標準照度~ハイライトクリップまでの余裕が大きいV-Logガンマにて撮影を行っています。
このページはこれくらい。周辺光量補正はON、回折(かいせつ)補正はAUTOとします。回折補正は絞り込んだ時の回折ボケによる解像度低下を抑制する効果があるという理解です。
動画画質はS5IIXでは5.9K30p / 4K30p ALL-I / 4K60p ALL-Iをメインに切り替えて撮影しますが、一旦ここでは5.9K30pとしています。
カスタムダイヤルによるアサインで動画画質(フォーマット)を複数設定してラクに切り替える方法は後述しますが、カスタムダイヤルを使わない方は例えば4K30p/24p 4:2:2 10bit Long GOPあたりが汎用性が高いフォーマットとなります。「動画フォーマットはよくわからん」って方はこれらを使うのがお勧めです)
設定② フォーカス
このページでは自動認識設定をOFFにしていますが、人物撮影を行う場合はONで自動認識の対象を人物や顔・瞳認識にするのも良いでしょう。また動物を被写体とするならば「動物+人物」とします。
AF連続動画は待機時でもAFが動作するMODE2に設定します。
設定③ 音声
音声系は録音レベルの表示をONに設定してるくらいで標準設定に近いものですが、XLRユニットとマイクを併用する場合は音声モニタチャンネルを変更する必要があります。
XLRユニットを使われない場合ここで必要なのは録音レベル設定くらいかなと思いますので音量に応じてゲインを調節してください。
設定④ その他
手ブレ補正、フォーカストランジションに関しては後述する、Fnボタンアサインの所で紹介しますが、7ページ目の設定は下記の通りです。
設定⑤ クリエイティブ動画の設定値、他
歯車マークの設定ですが、1ページ目は特に設定をしていません。リアルタイムLUTを使う方はここでの設定が必要ですが、ここでの今回での紹介は割愛します。
画質ページの2ページ目にあるクリエイティブ動画の設定値は変更を行います。
クリエイティブ動画の設定値をそれぞれ🎥マークに変更します。こうすることで動画とスチルを別で設定する事ができるからです。例えば動画でV-Log設定をしたままスチルでも同じフォトスタイルで撮影するといろいろ都合が悪いのです。それ以外にもシャッタースピードの概念は動画とスチルでは異なりますのでここは一気に全部🎥に設定します。
フォーカス/レリーズ関係も特に弄っていませんが、マニュアルフォーカス時にピントリングを回しただけで拡大表示(MFアシスト)に切り替わるのが嫌だという人もいるかと思います。
その場合はフォーカスリングをOFFに設定しましょう。
設定⑥ 半押しAFのOFF
ここはちょっと人と違う設定かもしれません。まず半押しAFをOFFします。
じゃあ、ピント合わせを行う場合のAFボタンはどうするのかというと、親指にあたる部分にあるAF ONボタンです。私の場合、スチルも動画もレリーズボタンでの半押しAFは行わず親指AFでピント合わせを行います。親指AFというものですが、これに慣れると半押しAFは使わなくなります。
https://panasonic.jp/dc/products/s_series/s5m2_s5m2x/operability_function.html
尚、フェザータッチにしたいと言う方はシャッター半押しレリーズ:ONに設定します。
設定⑦ 動画ライブビュー拡大表示設定
動画ライブビュー拡大表示設定のPIP設定は全画面とします。GH6以降のライブビュー拡大表示はx6倍という仕様変更が行われています。撮影中でも拡大表示ができるようになった弊害かもしれませんが、このx6倍表示設定というのが人によっては拡大率が足りないと言う方もおられるかもしれません。
そのため、PIP表示を全画面とすることで少しでも大きく写すという意図で全画面表示にしています。ただし、この表示は画角のどの位置を拡大しているのかが分かりにくいという弊害もありますので慣れが必要かと思います。
設定⑧Fnボタン設定、ダイヤル設定
Fnボタンの設定からFnボタンのアサインをします。
WB/ISO/±(露出補正)はそのままですが、あえて赤い動画ボタンにライブビュー拡大表示を設定しています。これは動画撮影中であっても機能します。撮影中にピントを確認したいというケースはあるので割と一等地にアサインします。
続いてグリップを握った際の中指ボタンですが、ここには手振れ補正の手振れ補正ブーストON/OFFをアサインします。手振れ補正ブーストは三脚の様にビタ止まりするモードですが、これはカメラを振る様な通常撮影には向きません。なので頻繁にON/OFFを切り替える必要があります。なのでこの設定もアクセスしやすい準一等地にアサイン。
さらに私はフォーカスリミッタを使用するケースが多いので
ダイヤルの左にフォーカスリミッタのON/OFF
ダイヤルの右にフォーカスリミッタの設定
をアサインします。
さらにダイヤルの上にフォーカスピーキング、ダイヤルの下にゼブラ表示をアサインします。
続いてダイヤル設定です。初期状態はコントロールダイヤルの割当てはヘッドフォンボリュームにアサインされています。もちろん頻繁にボリュームを変更したい方はそのままでもOKですが、私の場合はコントロールダイヤル(背面ダイヤル)はISO感度にアサインします。
こうすることでISO感度、シャッタースピード、絞りをすべてワンアクションで設定できます。
さて歯車マークの設定に戻ります。操作の2ページ目とモニターの1/2ページ目はそのまま。
モニター/表示(動画)のV-Logビューアシストに入ります。
V-LogビューアシストではLUT選択としてVlog_709、LUTビューアシスト(モニター)をONに設定
動画記録中の赤枠表示:ON / ストリーミングの青枠表示:ONに設定します。
ファンド動作モードはデフォのAUTO2のまま
レンズ位置メモリーはON フォーカスリング制御はリニアとします。回転角は好みで設定。
ダブルスロットの機能は基本はバックアップ記録としています。
動画撮影時の制限緩和メニューに動画記録停止温度:高に設定します。
これは本体温度が高くなった場合でも記録が停止しないための設定ですが、空冷ファンを持っているS5II/S5IIXはそもそもそこまで高くなりませんし、記録が停止するケースはほぼ無いと言っていいでしょう。おまじないみたいなもんですかね。
さてあとちょっとです。有線LAN/Wi-Fi設定はこれだけでブログエントリが一本書けるほどのネタですので別途紹介しますが、PCへの転送設定を行うとめちゃくちゃ便利です。
興味ある方は下記の過去記事をご覧ください。
HDMI接続設定も特に設定せず。
設定⑨カスタムモード設定
個人的最重要設定がこちらです。カスタムモード設定に入ります。
登録内容の呼び出しタイミングを撮影モードの変更時をOFFに設定します。
つまり、登録内容の呼び出しタイミングをすべてOFFにするという事は、常に設定を上書き続けることを意味します。シャッタースピード、WBやISO感度もそれにあたります。古いLUMIXの不満点の一つはC1/C2ダイヤルを切り替えるたびに記録された設定を呼び出し直す仕様でした。C1でシャッタースピード、絞り、ISO感度を変更し、C2に回して、再びC1に戻すと先に設定したシャッタースピード、絞り、ISO感度には戻らず、C1を設定した際の状態になります。カスタムダイヤルは切り替えたとしても特に露出設定は最後の状態を保持してほしいのです。
撮影モードの変更時:OFF
に設定するとこれが実現できます。
さて最後の仕上げです。
今まで行った設定をカスタムモードに登録しますが、先にカスタムモード設定の名称変更を行います。
C1には5.9K30p C2には4K30p C3には4K60pを設定して、ダイヤルを切り替えることで瞬時に動画フォーマットを切り替えるスタイルが最終形態となります。
まずはC1~C3-1までを名称変更しておきます。
上記手順のままだと、モードダイヤルは今のクリエイティブ動画モードのままだと思います。そのままカスタムード登録を行います。
設定① 画質、フォトスタイル、動画フォーマットのところで説明した動画フォーマットが5.9K30pであることを確認してカスタムモード登録→C1を選択して保存します。
そのまま動画のフォーマットを4K30pにして上記同様にC2に保存します。さらに同様に4K60pにしてC3-1に保存します。
ここまでやったらカメラ設定の保存/読み込みで保存を行います。名前が付けられます。
さて、画面ばっかりでワケワカメだったかもしれませんが、
以下にこれら設定を行ったファイルを置いておきます。(S5IIXから書き出したので多分S5IIでは読み込めないと思います。)
ダウンロードするとINTERNAL.DATというファイルがあります。(内部収録設定という意味でINTERNAL.DATというファイル名を付けています)このファイルをSDカードのAD_LUMIXの下のCAMSETというフォルダの下にINTERNAL.DATを配置します。
AD_LUMIXもCAMSETも一度も設定を保存したことが無ければ出来ないフォルダなのでなければフォルダを作ってください。
これを設定の呼び出しメニューで呼び出せば上記設定が一発で出来ます。設定に不備があったらコメントで教えてくださいm(__)m
まぁ、これが万人に使いやすいかといわれると自信ないけどね
2023.7.1追記 マイメニュー
マイメニュー登録内容について記載していなかったので追記します。
マイメニューは登録をすると、深い階層を潜らずに目的の項目にアクセスできる(言わばショートカット)機能ですがそれらの設定を記載します。
S5IIXではUSB-SSDとHDMI RAWデータ出力を使うケースが多いのでそれらを登録しています。(S5IIではUSB-SSDの項目は設定自体無いはずです。またHDMI RAWデータ出力もアップグレードキーが無いと設定できないはずです。)
そののかAFに関わる設定、ピーキング表示のON/OFF、手振れ補正の設定や表示系に関するものです。(フォーカストランジションはファンクションに振っているのでここで登録する必要は無いのですが、なぜか登録してました)
撮影する度に必要ではないけど、比較的使う機能はマイメニュー登録をするとラクですのでご自身のスタイルに合わせて設定してみてください。
筆者:SUMIZOON
Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOON の人