とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ

ビデオグラファーsumizoonのブログ 一眼動画に関する機材や撮影方法を中心に情報を発信していきます。

電動ジンバル今昔物語 その1

今回はレビューでもなんでもなくて、思いついたことを思いついたままに書いてみようと思います。というか、喫茶店で窓から見える外の風景にRoninXXを持ったお兄ちゃんが目に入ったので、思いつくままにキーボードを叩いているのでした。

電動ジンバルの出会い

出会いというか、電動ジンバルの存在を知ったのは、今から10年ちょい前の話。2013年春で、当時毎日見ていた「黄色いブログ」ことRaitank氏のブログ記事を目にしたことが始まりでした。

http://www.raitank.jp/wp-content/uploads/2013/04/MoviM10.jpg

引用:https://www.raitank.jp/archives/17099

www.raitank.jp

今では「ジンバル」と呼ぶ事が多い電動式のスタビライザーだけど、同時の呼び名は「ブラシレスジンバル」とかって言ってました。電動ジンバルは「MōVI(モーヴィー)」しかなかったから「電動ジンバル=MōVI」みたいな感じだったように思います。その価格は重量級のモデルの方で150万円近く、安い方のモデルでも75万円程度。そう「出会い」と言ってもそれはネットや展示会での話だけであって、実際の所有したことはないのでした。

今もMōVIを発売していたメーカーのFreeflyはちゃんと存続しているどころか、こないだプロニュースを見ていたら4Kの800fpsのカメラなんかを出していて、今でもちゃんと事業が成り立っていそうな感じ。もちろんスタビライザーの販売もいまだに行っています。

freeflysystems.com

MōVIの出現まで主流だったのはアナログスタビライザー。でもアナログスタビライザーをまともに使うためには、きちんとしたバランス取りをした上でちゃんとしたオペレーション技術が必要でした。ハリウッドでは専属のスタビライザーオペレータってのが居て、アナログスタビライザーをちゃんとオペレーションできれば、それだけで飯が食えるほど?アナログのスタビってのはそれだけ奥が深くて扱いが難しいシロモノなのだと思います。それに対して、MōVIは「その手の技術は不要」という触れ込み(だったと思う)。そりゃみんな食いつくよね。でも高い。。。。まぁシネマカメラの載せるための機材だからそりゃ高いわな。

手持ちジンバルNebula4000/S-Monster

MōVIの登場から2年後Filmpowerというメーカーが発売したのが片手持ちスタイルの小型スタビライザーNebula4000 Liteというもの。 Nebula4000というものがあったかどうかの記憶がないのですが、これが個人が所有できる最初のジンバルだったように思います。

http://www.raitank.jp/wp-content/uploads/2015/04/Nebula4000.jpg

引用:https://www.raitank.jp/archives/18301

Filmpowerはその後いくつかの製品を出したけど結局事業としてうまくいかず、今では会社そのものは存在していないはずです。割と大雑把な作りをしていたのがFilmpowerの製品という印象でした。

また、この時代は電動ジンバルを自作する人が多く、ブラシレスモーターとコントローラー(Basecam Simple BGC)を個人輸入して自作する「ジンバルオタク」的な方が結構居ました。

ミラーレスカメラ用の自作ジンバルの代表格はKen Asano氏が作っていたS-Monster通称「エスモン」(S-Monsterが何のCPUを使っていたのかは今となっては情報が見つけられなかったので、わかりませんが少なくとも制御系はSimple BGCだったと思います。というか、それ以外なかったんよね。。。) 


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てなわけで、日本の電動ジンバルの起源はここにあると思います。今はドローンパイロットとして活躍されているeiji1783さんの動画を見ながら、私もジンバル買うぞ!と心に決めたのでした。

youtu.be

個人的に大失敗だったNebula4200

で、ここからは自分の話。私が初めて電動スタビライザーを購入したのが Nebula4200。前述のNebula4000を発売していたFilmpowerの後継機種です。Nebula4000が一眼動画界隈で「そこそこ評判が良かった」ってのもあって販売前に予約&購入したのでした。

引用:TEST REPORT●フィルムパワーNebula4200 5-axis [スタビライザー] | VIDEO SALON

 Nebula4200は2015年末に発売されたZ軸を含む4軸スタビライザー。4軸と言っても1軸は上記左の画像のようにバネで上下方向の揺れを補正するという、力技(ちから技)のオプションを付けた時の話。もちろん単独で使うこともできました。とは言え、このNebula4200は恐ろしく電池の持ちが悪かった。

当時いくつかこんな映像を撮ってものの、このジンバルを常用する気にはならず、気づいたら壊れていたという。。。


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Nebula4200は、Simple BGCというソフト上で最適化を行わないとまともに使えない点も「しんどい」点でした。というか当時のスタビライザーのほとんどはSimple BGCで動いていたのですが、その設定がすこぶるわかりにくいのです。

https://overfree.gunmaonline.com/wp-content/uploads/2015/01/07ba06d2f6f7952b5b69132104212b7b.jpg

引用:https://overfree.gunmaonline.com/post-9087/

基本はPIDというパラメータをいじることでモーターの制御を行うのですが、下手するとジンバルが暴れるとか、ブルブルとした微振動が止まりません。設定次第でモーターを劣化&壊しかねない設定も出来たと思います。とにかくわかりにくいし、数日かけて調整しても撮影現場で微振動が出るとかもしょっちゅうで、私にはとても使いこなせるシロモノではありませんでした。(というかSimple BGCをちゃんと理解してチューニングできた人ってのは日本でも数人レベルだと思います。)

二台目に購入したPylotfly H2

あまりに電池の持ちが悪かったNebula4200に別れを告げ、次に購入したのがPilotfly H2。確か2016年の春の事だったと思います。こちらはジョイスティックを搭載して、今時のジンバルの原型みたいなものだったと思います。当時は中国Feiyutechと台湾Pilotflyがミラーレスカメラ用ジンバルの二大勢力みたいな感じだったと思います。

引用:https://vook.vc/n/295

PilotflyH2の良いところはエンコーダーという、モーター側が自分の位置を把握するための機構が入っていおり、この機構が入っていることで消費電力の低いというのが特徴でした。

正確にはエンコーダーがどういったカラクリなのか私は理解してませんでしたし、今も理解してません。でも、とにかくこのジンバルは数時間使っていてもバッテリーがなくなるということはありませんでした。

ですが、このジンバルもまたしてもSimple BGCで設定する必要があり、ぶっちゃけ最適化は自分では行ってられないほどのものでした。


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その後

残りは(力尽きてなければ)パート2に回しますが、その後はSImple BGCからの呪縛から逃れ、Zhiyun Crane、MOZA Aircross、MOZA Air2、Zhiyun Crane M2、MOZA Aircross2、Zhiyun Crane M3という流れ。レビューで試させてもらったいくつかのジンバルやスマホジンバルを含めればトータル15台くらいのジンバルが家に転がっていたと思います。Feiyuの機材や怪しいメーカーのジンバルも使いましたが最終的に残ってるのはZhiyunとMOZA(Gudsen)の二社のジンバルのみ。特にMOZAはデッドバンド付近の挙動が綺麗で、私の一番好みのメーカです。

よく聞かれるのはDJIのジンバル使わないの?という話。私自身、初代Ronin Sを発売後一ヶ月ほど使って、すこぶる挙動が好きになれなかったのです。結局、それ以降はDJIのジンバルを使わなくなりました。というか、世の中Ronin Sが出てジンバルが世間の市民権を得て?からジンバルをやたら使う人が増えたように思います。

当時は少なくともRonin Sよりも優秀な小型ジンバルは多く、ペイロード的に明らかにオーバースペックなRonin Sに小型のミラーレスカメラを載せている人を見るたびに「ああ、そのカメラならもっといいジンバルあるのに、この人何も知らずに買っちゃったのかも。。」と心の中で思ってしまっていた部分もあります。

Roninシリーズはその後改良を重ねて、まともに使える信頼性の高いジンバルとなっていきました。でもRoninシリーズ自体を使うこと自体に「ミーハーが使ってる」的な偏見が私の中に残存してるから、いまだに使っていないのかもしれません。

で、その後、カメラの手ぶれ補正の機能の向上と相まって、「ジンバル自体があまり意味なくね?」と思うようになりました。ジンバルを使う機会も以前に比べればだいぶ減ったんですよね。

とは言え、ジンバルは状況によっては無くてはならない機材なんでね。引き続き買うこともあるし、最新機材はウオッチしていきたいと思うのでした。

 

筆者:SUMIZOON

Facebookグループ一眼動画部主宰

Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOON の人

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