とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ

ビデオグラファーsumizoonのブログ 一眼動画に関する機材や撮影方法を中心に情報を発信していきます。

SIGMA fpの動画撮影に必須な設定と3週間使っての感想

 SIGMA fpをお借りして動画を撮影していた時の設定について、記載したいと思います。

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 SIGMA fpに限らず基本的にこの設定に近いものがありますが、参考になる方とならない方が居られることを承知で書きます。尚、露出もAFも常時カメラ任せで撮りたい、という方には参考になりませんm(__)m

作例

 とりあえず撮影した作例2本のリンクを書きに貼ります。


SIGMA fp DNG12 bit RAW TEST Footage


SIGMAfp Cinematic Airport ITM

設定(露出&フォーマット)

 まずもって、私は(というか一眼で動画を撮ってる方のほとんどだと思うけど)動画をマニュアル露出で撮影します。SIGMA fpはCINEMA撮影モードに入れてマニュアル露出にしても何故か前側、背面のダイヤル操作をしてもシャッター速度も絞りも設定できません。それは、下記のダイヤル露出操作がデフォルトで「切」になっているためです。

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まずはコレを設定しないとはじまらない

 必ずこれを「入」に設定した上で下記の設定にします。

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撮影モードは露出をM(マニュアル)にシャッター速度は1/50もしくは1/60に固定

 シャッターモードはシャッター開角度表示でもスピードでもどちらでも良いと思います。慣れている方でどうぞ。(でもSS 1/120とかは開角度設定じゃないと出来ないので何かと角度設定の方が良いという方もいるかと思います)

 尚、下記写真ではCinemaDNG/8bit/UHD/23.98fpsとしていますが、作例では外部SSDを接続して撮影していましたのでCinemaDNG/12bit/UHD/23.98fpsに設定しました。

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 ホワイトバランスやカラーモード、トーンコントロールは一応撮影時の映像のイメージ掴みやすい様に好みのものを使います。(WBは日中なら太陽光、夜間ならタングステンなどご自由に)

 ただしRAWなので、撮影後にホワイトバランスは調整が可能です。トーンコントロールもおそらくカメラ内で弄ってもRAWデータそのもには反映がされないはずです。(もしかするとメタデータに埋め込まれるかもですが、確認を取っていません。)

AF設定

 次にAFの設定です。

 私の場合はシャッターボタンを録画開始に振ります。この場合、シャッターボタンに半押しAF-ONが振られていると録画開始時にAFが作動してしまい、都合が悪い事です。

 なので AELボタンの機能をAF-ONに設定して親指AFに設定します。

 こうすることでピントを合わせる動作と録画を開始する動作を完全に独立にすることが出来ます。

 私は撮影中にAFが連続動作しない設定にしたい人なので、常時AFは「切」としています。じゃあ、全くAFは使わないかというとそんな事はありません。録画に入る前にピントをAFで合わせて録画中はフォーカスを動かさないというだけです。(モードは基本はAFに設定しますが、撮影中はAFは動作させません。) 

 どうしても撮影中にフォーカスを動かしたい場合は基本的にはマニュアルフォーカスでピントリングを回します。

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私の撮り方なので、参考にならんかもですが。。。

 その際に必要な設定がAF+MFです。これを「入」にすることでフルタイムマニュアルフォーカスが可能になります。

 尚、録画中にSIGMA fpは録画中に単純にピントリングを回してもバイワイヤレンズではフォーカスが動きません。上記設定であれば、AELボタンを押してピントリングを回す必要があります。(これがちょっと面倒だったりします。。。)

 AFに関してはコンティニュアスAFだと、作品的な映像を撮ろうとすると、ちょっと使えるレベルでは無いかと思いますが、ワンプッシュで使う限りは何の問題も無いレベルだと思います。

必須だと思う設定(QSカスタムの順序変更)

 SIGMA fpにはダイヤルが2つしかありません。前面に絞り、背面にシャッター速度がデフォルトで割り当てられますが、ISOに振れない様です。

 動画の場合はシャッター速度は固定、その上で絞りとISO感度を変更する撮り方がほとんどですので本来はダイヤルが2個しか無いのであれば、前面ダイヤルを「絞り」、背面ダイヤルを「ISO」と設定したいのですが、これが出来ません。

 余談ですが、S1Hでは前面ダイヤル「絞り」、背面ダイヤル上部「シャッター速度」、背面ダイヤル下部「ISO」に振る事で全ての露出要素をワンアクションで変更することが可能で、私はその操作体系に完全に体が慣れてしまっています。

 では、どうやってストレスを最小限に「絞り」と「ISO」を変更するかというのが下記になります。

 QS(クイックセットボタン)は一発で主要な設定を変えるのに便利なボタンです。このボタンはデフォルトでは左上に「撮影フォーマット」の選択が割り当てられています。

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左上にISOを設定することがポイント

 ですが「QSカスタム」を選択すると、QSボタンを押したときの項目を入れ替えたり、任意の設定項目に変更するカスタマイズが可能です。尚、右の写真は入れ替えた後のものです。

 なぜ、ISOを左上にするのかというとQSボタンの初期選択の状態を常にISOにしたいという意図があります。この選択状態は電源を入れている限りは最後の選択状態を保持します。(例えばQS押してCOLORを選択して、撮影してもう一回QSを押したらCOLORの選択となる)

 ですが、一度電源をOFFにすると、この「選択状態が左上に戻る」という挙動をします。そういった意味では一番使用頻度が高い「ISO感度設定」を左上に設定するのが一番ストレスが無いのです。(ISOはオートにする人は別だけど。。。)

 というわけで、個人的にはこの設定は必須の設定事項です。

 場合によってはISO感度オートに切り替えてしてしまえば、露出オートで絞りもシャッタースピードも固定できるのでISOが左上にあるのがやっぱり便利です。

SIGMAfpを使用しての感想

 SIGMAfpはその大きさからしても真のポケッタブルフルサイズです。その大きさを活かして気軽なスナップを撮れる希有なカメラです。だからこそ、ラフに何も考えずに撮るのではなく、それなりにスマートに露出設定して撮りたいという願望が強くあります。

操作系に関わるもの

 特に操作系に関しては、個人的にはいくつか改善して欲しい点があります。その最たる例が前述のISO設定のダイレクト操作になります。今だとQSボタン→ダイヤル設定の2アクションとなりますが、2アクションは意外と面倒です。実質2アクションとは言え、撮影画面が確認できるためには3アクション目の戻るボタン(MENUボタン押下)が必要で、更に撮影画面が意図しない露出だった場合には合計6アクション必要となります。

 これは私のスタイルでは(特に夜間では)結構これが出来ないとシンドイ事が多いので、是非とも背面ダイヤルでのISO一発設定が出来るようになると良いなと思います。

 また、SGIAM fpを使って期待していたことの一つにSTILL(スチル撮影モード)とCINE(動画撮影モード)のシームレスなモード変更でした。

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 例えばスチルでは絞り優先の状態で撮影して、CINE(動画)ではマニュアル露出となるようにシームレスに撮影を行う様な撮り方ができるんだと想像していました。

 ですが、現状ではスチルと動画の設定は同じ露出モードが適用されるため、STILLで露出(露出モードも含む)設定した後にCINEに切り替えると同じ露出モードと設定値が引き継がれるという事になります。

 私は、スチルは絞り優先でシャッター速度はカメラに任せる。動画はシャッター速度は固定、絞りは自分で変更、ISOも自分で変更という撮り方が多いのです。そもそも動画とスチルの撮り方が異なります。故にスイッチ一発で撮り方がガラリと変更できるような使い方が出来れば最高かと思います。(異論がある方は多いかもですが。。。)

 それ以外に関しては、大きさから来る可搬性のアドバンテージは素晴らしいと思います。S1Hを普段使っている私にとってはこの大きさは驚異的でしかありません。欲を言えばチルト液晶があったらと思う場面もありますが、ミニマルなこの構成がシグマの一つの答えなのだと思います。

画質に関わるもの

 画質に関しては、下記エントリでも記載させて頂きましたが、シャドー側の情報量には唸るものがあります。とにかくRAW撮影時の情報量が素晴らしく、アンダーで撮るのが楽しくなるカメラです。(高感度の事ではなく、低感度撮影時の低照度側の描写が素晴らしいと思います。)

 余談ですが、私はSIGMA DP2/DP1Merill/DP2Merillを愛用していた時期があります。馬鹿みたいにこれらで何でも撮っていました。

 その時にも感じたのはSIGMAのカメラにはアンダーが似合うというもの。

 Quattoro世代は私は全く使ってないので分かりませんが、当時からSIGMAのアンダー側の絵作りが非常に好きで、多くのアンダーな雰囲気の写真を量産していたものです。

 その昔下記の動画「スライドショー」を作って公開した事がありますが、今見返しても、改めてSIMGAでアンダーな写真を楽しんでいたことが分かります。

 


My Camera History #2 SIGMA DP2 Merrill

 一方で、ハイライト、特に赤の飽和が早く、赤色発光体を撮ると飛びやすい、というのはSIGMAの絵作りの思想なのかもしれません。空港での撮影では赤色灯の明かりが飛んでしまって少し残念な部分はありますが、アンダーの描写が変わってしまうくらいならこのままであって欲しいと思います。

 尚、動画フォーマットに関しては下記の記事でいくつか実験を行いましたがやはりDNG12bitの情報量は流石だなぁと思った次第です。

sumizoon.hatenablog.com

 凄く可能性のあるカメラだと思いますし、動画のメイン機として撮れるカメラとして一発目でこの完成度は凄いと思います。夏には大きなファームアップが予定されているので、その進化を期待せずにはいられません。

 尚、フルサイズ画角でCinemaDNGが撮れる民生カメラはこの世に他にありません。Canon 1DX MarkⅢもRAW動画は撮れるものの、実質デファクトであるソフトでのグレーディングが不可能なのでRAWで撮る意味がゼロに等しくRAW撮影の機能そのものが意味をなしていません。その意味では個人的には(少なくとも今現在は)1DXMarkⅢよりも圧倒的に使えるシネマカメラだという事ができます。

◆ 撮影に使用した機材

1つめの作例の冒頭のカットで使用していますが、大型機から小型機まで載る万能ジンバル

ただしSIGMAfpのジンバルからのコントロールは出来ないはずです。(対応リストに載ってないので接続テストすらしませんでした)今後ファームアップでUSBコントロールが対応されるといいなと思いますが、考えるとSSD挿せなくなるな…

マニュアル露出の必需品

500Gだと4K撮影は26分までしか撮れないので大量に撮る方は1T買いましょう

ウチにあるLレンズ群を使用して撮影しました。

LUMIX S 24-105mm F4 MACRO O.I.S.

LUMIX S 24-105mm F4 MACRO O.I.S.

  • 発売日: 2019/04/04
  • メディア: エレクトロニクス
 

 尚、空港の撮影では旧型のEF400mmF2.8L ISとMC-21を使用して撮影しています。

シグマ SIGMA MOUNT CONVERTER MC-21 CANON EF-L

シグマ SIGMA MOUNT CONVERTER MC-21 CANON EF-L

  • 発売日: 2019/04/19
  • メディア: エレクトロニクス
 

 

 てなわけで、ひょんな事からSGIAMfpをお借りできたわけですが、これはいずれ導入しないとあかんやつだな、と感じた次第です。 普段使っているS1Hとは強い部分のベクトルが逆であり、互いに補間出来る間柄なのです。

 なので両方メイン機として運用したいというのが正直な感想。競合しないカメラというのはお財布に厄介だ。。。レンズ群を新たに揃えないで良いのは救いだけど。。。

 評価機に関して、貸出のお話を頂いた方にこの場をお借りして感謝を申し上げる次第です。

筆者:SUMIZOON

 Facebookグループ一眼動画部主宰

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 Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOONをアップしている人

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