背景がボケてりゃシネマティックなのかどうかは別として、iPhone13に搭載される動画撮影のモードであるCinematic Modeについて少し映像が出始めたのでいろいろ見てみました。
でもっていくつか感想をば
https://www.apple.com/jp/iphone-13-pro/specs/
Cinematic Modeとは
一応Appleが名付けたCinematic modeですが、これはスチル撮影で言うポートレートモードの動画版と考えれば良いです。深度情報を元に大型センサ&F値の明るいレンズで撮影したかのような大きなボケを演算的に作り出すと言ったものです。
尚、Cinematic Modeには1080p 30fpsの制限がありますので、残念ながら4K60pの様な通常モードでの撮影は出来ません。
更に書くと深度情報を使って動画で擬似的なボケを作り出すという試みは何もiPhone13が初めてではありません。たしかSONYのXperiaも搭載している機種があるはずですが、iPhone13ではその精度が高く、実用できるレベルに近づいたものと思います。
作例①より
今現在いくつかアップされている動画の中で一番分かりやすいのは下記の動画だと思います。
この映像の違和感とは
この映像の違和感の一つは、一般の映画撮影で使われる24p撮影じゃ無しに、30pで撮影されてしまっている点。せっかく「シネマティック」をうたうなら24pで制作してほしかったと思います。
凄くそれっぽく処理は出来ている様ですが、やはり細かい部分ではすぐにそれと分かる処理の限界ってのが見て取れます。おそらく普段被写界深度の浅い映像を見慣れている方は、すぐにその違和感に気づくはずです。重箱の隅をつつく様な見方と思われるかもしれませんが、初見で気付いた点のみをピックアップしています。
0:02のカット
覆面パトカーの屋根が背景と分離できておらずボケ過ぎて違和感があり、オープニングから突っ込みどころが発生
0:13のカット
・ブリージング(ピントが移動した際に画角まで変わる現象)。ここ以外にもかなりブリージングは気になります。
・フォーカスの移動にイーズ(ピントが止まる直前にピント移動を遅くする動作)が無い
0:16のカット
左男性の右目付近がボケている。距離から考えてピント範囲は左頬と同じなので違和感
0:19のカット
男性の頭頂部の髪が分離できない
0:22のカット
右女性の衣装の左側に不自然なエッジが発生する。
0:26のカット
ウォブリング(ピントが前後する)と相まってブリージングが特に目立ったカットです。
ところが、ここから先は比較的違和感が少ない映像となっています。もちろんブリージングは目立つのですが、分離に関しては初見で気づかないレベルのものが多いと思います。
ブリージングに関しては、撮影時にピントを動かしてしまっているためで、おそらく光学的に発生しているものと推測します。iPhoneのセンサは小さいため、そもそもピントは深いはずですので初めからメインの被写体を置きピンで撮って後処理でピントを動かした方がブリージング対策になるかもしれません。(たしか、このモードは撮影後にピント位置を動かせるはずですので)
あとは、個体差はあるにせよ、ピント位置と画角の変化はソフト的にどうにかできる可能性が高いので今後のファームアップでもしかしたら消えるかもという期待もしています。
作例②より
正直この映像は、割と雰囲気に流されてスゲーとなる人が多いと思います。が、iPhone以外で撮られていると思われるカットが混在しているため、正直一気に見ると混乱します。
尚、先ほどの映像とは異なりこちらは24pで制作されていました。なので、こちらの方が映画っぽさは出ています。
0:12のカット
通常の大型センサ&明るいレンズで撮られているメイキングかと思います。
0:23のカット
これ以外にもちょいちょい挟まるカットも同様にiPhone以外のカメラで撮影されたものと思われます。
iPhoneで撮影されたものの多くはCinematic Modeでは撮られておらず、ぶっちゃけiPhone12でも撮れるんじゃ?と思うカットが連続しますが、下記のカットは深度コントロールによるCinematic Modeが使われています。
0:56のカット
唯一深度コントロールしているのは56秒と1:01のシーンここはブリージングがあるものの結構綺麗に決まっていると感じます。女性のまつ毛が分離できてないですが、ご愛敬かなと。
1:01のカット
1:18のカット
男性の左顔の側面が完全にハイライトクリップします。私はボケの処理うんぬんよりもこのハイライトクリップの方が気になりました。
iPhone12 Pro Maxをレビューさせて頂いた時にはダイナミックレンジはかなり広いという印象でしたが、もしかすると、Cinematic modeは一切のHDR機能が使えない状態かもしれません。というは、これだけコントロールされている照明なのにハイライトが飛んでいるという事はiPhoneお得意のHDR処理が封じられてレンジがかなり狭いものと推測
突っ込みどころはあるけど冷静に考えて凄いと思う
上記突っ込みを書きましたが、そもそもほとんどの人はその違和感に気づかないと思います。そいいうレベルで動画が撮れる(可能性がある)のがiPhone13の凄いところ。まだ、大型センサーの光学的なボケを完全に違和感なく再現できるまでは少し時間がかかりそうですが、うまくうけばほぼ違和感のないボケ映像が撮れる可能性があると思われます。
「思う」を連発しているのは、実際に手にしないと、この手の新機能がどこまで実用できるかの確証がないからです。上記の映像が撮れるまで制作側はかなりの時間をかけつつ、ポスト処理を入念に行ったと思われますが、少なくともこれらの映像作れる素材が撮れているわけなので、冷静に考えて凄い事だと思います。
Cinematic ModeはiPhone13では1080p 30fpsに制限されているのが残念な点ではありますが、4Kが実現されてたとすると逆に粗が見えてしまうかもしれません。
結局は、浅いピントを得るにはまだまだ、ミラーレス一眼で動画を撮る方が確実で綺麗に撮れるというのは間違いないですが、「ミラーレス一眼いらねー」という時代が数年後に来ている気がします。
ゴーストがどうやら解消されていそう
と、ここまで2つの映像をご覧いただきましたが、以前ウチで撮影したiPhone 12 Pro Maxの映像も少し紹介したいと思います。こちらは贅沢にもiPhone 12 Pro Maxの発売に併せてデモ機を2台お借りして撮影したものです。
で、iPhone12 Pro Maxの撮影時に何が困ったかというと、「ゴースト」です。
特に望遠側のレンズではこのゴーストが出やすく、後処理もほぼ不可能でしたのでそのままにしました。
1:28のカット
6:42のカット
一方で、今回のiPhone13では少なくとも映像を見る限りは派手なゴーストが発生しているカットは見受けられませんでした。うまく誤魔化している可能性もあるけど。
とにかく、ゴーストに悩まされている人にとっては、この部分においては期待が持てると思います。(OSでゴースト対策されるという噂もあるけどどうなったんでしょうね)
そもそもCinematicって
いや、このモードのネーミング、少し恥ずかしいと思っているのは私だけではないはず。。。実は私の周りも意外と同じ事を言っている方が多いです。そもそもシネマティックとはなんぞや。映画調に色調を調整して、シャロ―フォーカスを多用して24pで書き出したらシネマティックと言うのかもよくわからん。。私自身、この言葉を使うとしても定義がわからんので、Cinematicと口にする事自体に違和感があるのでした。(とは言え一回だけタイトルに付けた事あるけど)
そして、なんか映画(または映画的な映像)への青臭い憧れの様な響きにも聞こえなくない。
なもので、「Cinematic」と言う音の響きに違和感と同時に正直なんかこっ恥ずかしいようなムズガユイ変な感情が湧いてくるのです。
というか、ここをご覧の方もCinematicという動画のタイトルをお使いの方も多いかと思いますが、すいません、きっと私が古い感覚の人間だけなんですm(_ _)m 普通に他の方が使ってる分には気にならないのですが、自分で使おうと思うと上記の様に使えないというだけの話。
てなわけで最後はモードの名前について書いて締めましたが、iPhone 13 Proは是非とも使ってみたいぞ。
筆者:SUMIZOON
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