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ビデオグラファーsumizoonのブログ 一眼動画に関する機材や撮影方法を中心に情報を発信していきます。

SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Artファーストインプレッション

はじめに

SIGMA待望の50mm F1.4 DG DN | Artが先ほど発表になりました。35mm判の50mmと言えば言わずと知れた標準レンズ。よく言われるように人間の目の焦点距離感覚は50mmとされています。もちろん目自体の視野角自体はもっともっと広い視野角をカバーしているわけですが、私たちが普段見ている世界は概ね50mmの感覚で捉えているという理解です。

故に50mmで撮った写真、動画は人の感覚にもっとも近く違和感の少ない絵であったり日常の感覚そのままに写すレンズとして適していると考えています。

多くの人が50mmという焦点距離に思い入れがあるかと思います。このブログでも私が50mmが一番好きだという事を何度か書いています。事実50mmのレンズは私が過去1番購入本数が多い焦点距離。どこのメーカーも50mmがそのメーカーの顔となる製品だと思っています。

DNという型番から分かる様にこのレンズはミラーレス用に作られたイマドキの50mm。その魅力を第一弾として紹介してみたいと思います。

SIGMAの50mmの過去製品

SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM(2008年発売)

50mmのなかで私がもっとも思い入れが深いのが、SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSMです。2008年に発売になったレフ機用のレンズで、当時私が一眼レフでアホほど撮影に使用したレンズです。ここで何度も書いていますが、私に写真を撮る楽しさを教えてくれたレンズであり、この一本がなかったら写真から転じて動画の世界へ、そして今こうしてこの文章を書いている事もなかったはずです。

当時のレフ機用の純正レンズの性能を上回る描写力で、私のSIGMAに対するイメージが大きく変わったレンズです。また写真を撮っていて鳥肌が立ったと言う感覚を初めて味わったのもこのレンズ。使いすぎて外装にかなり使用感がでていますが、絶対に手放せないレンズです。

筆者所有のSIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM マット仕上げの部分はハゲハゲになる程使い込んだ

SIGMA 50mm F1.4  DG HSM |Art(2014年発売)

先の50mm EX DG HSMの発売から6年の月日を経て発売になったのが50mm F1.4  DG HSM | Artです。当時もまたミラーレスカメラは一般的ではなく、当然このレンズもフランジバックの長い一眼レフ用に作られたものです。

www.sigma-global.com

引用元:50mm F1.4 DG HSM | Art | レンズ | SIGMA | 株式会社シグマ(2014年発売)

とは言え、SIGMAはこのレンズを EマウントとLマウント用に販売しています。あくまでも当時の設計のまま、マウントコンバータを内蔵してミラーレスに合わせた感がある製品であり、ショートフランジバックであるミラーレスカメラに最適化をしたわけではありません。

故にLマウント用では123.9mm、Eマウントでは125.9mmと、レフ機マウントであるSAマウント機の99.9mmを上回る長さとなっています。

Lマウントカメラ導入時にこのレンズの購入を考えた事もありますが、その時はミラーレス専用設計である純正レンズの方を選択いたしました。

ついに発表になったSIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art概要

2023年現在、世はすでにミラーレス全盛の時代。ずっとSIGMAの50mmがいつ出るの?早く出してよ!と思っていた方も多いかと思います。私自身もSIGMAの新型50mmは気になっていた1人です。

前置きが長くなってしまいましたが、まずはその製品概要から見ていきます。

製品名:SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art

対応マウント:Lマウント、ソニーEマウント

レンズ構成:11群14枚(SLD1枚、非球面レンズ3枚)

絞り羽根:11枚

最小絞り:F16

最大撮影倍率:1:6.8

最短撮影距離:45cm

最大径・長さ:
 Lマウント:φ78.2mm × 109.5mm/ソニー Eマウント:φ78.2mm × 111.5mm

質量:Lマウント:670g/ソニー Eマウント:660g

このレンズを初めて手にした感想としては「SIGMAのArtレンズなのに大きくない」というものでした。SIGMAのArtレンズは特に光学性能に拘った製品群のため、かなり大きい製品が多い印象です。とは言え、ミラーレス全盛の現代において大きすぎるレンズは敬遠される傾向ですし、各社とも最近はレンズのサイズを押さえてきています。
SIGMA 50mm F1.4は小さくはないが大きくも無いそんな印象。フィルタ径も72mmという事から分かる様に、前玉は過去の50mmと比べて1サイズダウンしています。重量も600グラム台後半であり、ものすごく軽いわけでは無いですが、過去のSIGMAのArtレンズに比べるとかなり抑えた重量という印象です。これなら日常的に持ちだせる絶妙なサイズに収まっていると個人的に思います。

この製品は最短撮影距離は45cmで寄れるレンズではありません。どうしても近接撮影をこのレンズで行いたい場合は、クローズアップレンズやエクステンションチューブを使うのも手です。

インプレッション

このレンズが手元にきて間もないという事もありますが、まずはファーストインプレッションとして読んでいただけるとありがたいです。

SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Artで撮影した2つの動画作例と画質印象

まずは作例のご紹介から。2本作例を載せていますが、いずれも若干のトーン調整のみを行いエフェクトの類は一切適用していません。
yokoさんをスタジオ撮影したものが下記。尚、カット毎のF値、SS、他設定はサブチャンネルの方で公開しておりますので併記したリンクをご覧ください。

youtu.be

※カット毎の設定情報を載せた動画はこちらをご覧ください。
※撮影スタジオ 白スタ・オオサカ

この映像はSIGMA 50mm F1.4 DG DN | Artの描写の美しさが現れていると思います。

ボケとピント面までの立ち上がりが美しく編集していてもテンションが上がったのは言うまでもありません。

50mmというレンズは引けば35mmの様に撮れるし、寄れば85mmの様に撮れる。この汎用性の高さに私自身が惹かれる部分はあるのですが、特に人を撮るにはもってこいの一本だと感じます。

ほとんどの撮影をNDフィルタで減光した上で開放撮影をしていますが、さすがにイマドキの高性能レンズらしく周辺に嫌な描写が見当たりません。

もう一つの作例は冬の風景をSIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art一本のみで撮影したものです。

youtu.be

※カット毎の設定情報を載せた動画はこちらをご覧ください。

風景撮影の場合はズームレンズを使って撮影するのが便利ですが、私のお気に入りの場所をこの美しい描写の一本だけで撮ってみたくなり50mm縛りで撮影を行ってみました。

数カットAPS-Cクロップしたものがありますが、基本的に50mm画角で足を使って構図を作っています。

撮影はパンフォーカスで撮影したかった部分が多いので開放で撮ったものから絞ったものまで試しました。こと描写に関しては先の作例と同様に開放の状態から周辺を含め非常にシャープなので絞った際にピント面の描写が大きく変わるといった印象はありません。最近のSIGMAのレンズ同様に開放からシャープに写る傾向と言えます。

機能

このレンズにはファンクションボタンが備わっています。

以前SIGMAの20mmF1.4 DG DN | ArtやSIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sportsでの記事でもお伝えした通り、このファンクションボタンは例えばLUMIXでは複数の機能をアサインすることが可能になっています。

LUMIX Sシリーズの場合、割り当てられるファンクションは多い

また、Lマウントであればフォーカスのリニア駆動に対応していますのでバイワイヤならが自然なピン送りが可能となっています。

LUMIXの場合リニア制御の設定および回転角の調整が可

また絞りリングが備わっており、その動作はクリックレスとクリックありを切り替える事ができるようになっています。故に絞りをマニュアルで連続的に動作させる様な動画撮影にも向いています。

オートフォーカス

今回作例で使用したボディはS5IIでしたが動画、静止画共に非常にスムーズに動作します。50mmという焦点距離の特性上、私はそこまでAFは速くある必要は無いと考えている人ですが、やはり動作が軽快なのはありがたいところです。また、S5IIを使っているというのもありますが、動作撮影時におけるピントの合い方も自然で被写体を外すことはほぼありませんでした。

尚、一つの目の作例は全てAF-Cを使用した撮影となっています。

解像感・各種収差・フォーカスブリージング

解像度チャートを使ったテストはまだ行っていませんが、先にも述べた様に中央から周辺まで非常にシャープに描写します。

例えばこの写真。比較をするために撮影したわけではないので開放ではありませんが、雪が降った日に少し遠出をして撮影してきた雪の写真なのですが、周辺まで美しく描写していることが分かります。自宅に戻ってきてその絵を見たときに惚れ惚れしていましました。

P1009400

SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art + LUMIX S5II
F5.6 SS=1/200 WB:Manual ISO640 絞り優先 (-1/3EV)

P1009417

SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art + LUMIX S5II
F11 SS=1.3sec WB:Manual ISO100 絞り優先 (-1/3EV)

この記事を書いている段階ではMFT曲線は公開されていませんが、SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Artは以前のレフ機の50mmに比べて周辺まで比較にならないほどの特性が公開されているはずです。

またパープルフリンジは全く無いわけではありませんが、雪が積もった枝などのコントラストが極端なシチュエーションでも見えにくくしっかり補正されている様です。

P1094251

SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art + LUMIX S5
F1.4 SS=1/500 WB:Manual ISO100 絞り優先 (±0EV)

街中の風景などを撮影した中での印象ですが、歪曲収差もボディ側の補正を若干行っているためかほぼ感じません。

玉ボケに関しては中央は真円で周辺では口径食が見られますが、美しい玉ボケが得られていると思います。非球面レンズ起因と思われる輪線ボケは拡大すればその状態を確認できますが、引いた絵では確認しにくいレベルだと感じます。

ここまで褒めまくってきましたが、フォーカスブリージング(ピント位置による画角変化)に関してはそこそこ有ります。ここはピント送りを多用するような動画作品撮影で、ブリージングをゼロにしたい場合はポスト処理を行う必要があろうかと思います。とは言え、これも個人的には許容範囲内かなと思います。気になる人はいるかもしれないけど一般的なブリージング量だと考えていただくのが良いかと思います。もちろんスチルで使う分にはブリージングは関係ないのでスチル用途で使われる方は無視してください。

逆光耐性

逆光耐性に関してはもの超優秀という印象はありません。標準的な印象でした。これは組み合わせるボディ(撮像素子の表面コートやマイクロレンズ特性等)に対して少し状況が違うかもしれませんが、S5IIと組みあわせた際の印象となります。

太陽を真正面に入れた際の対角上に出るゴーストは逆、少なくともこれくらい出てくれた方がエモいよねと感じさせるもので、さすがにオールドレンズの様な派手なゴーストは発生しませんし、画面全体がコントラストが低下するという事もありません。

このレンズでは動画、スチルともに今現在は常用レンズとして試用していますが、美しさと快適性を兼ね備えたレンズでありもっともっと多くの被写体をこれで撮ってみたいと思わせるものです。以前SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSMでスチルを毎日撮っていた思い出が蘇る様に、ちょっとした街中を歩くにしても持って出たくなるものです。

以前に比べて35mmも最近は使う頻度が増えたのですが、35mmだと寄り切れない事が多いと感じる私は50mmがやっぱり好き。冒頭でも書きましたが、85mmの様なポートレートレンズぽい使い方もできる50mmはやはり汎用性が高いと思うのです。

スチル作例

いつも動画作例が多い当ブログですが、このレンズはスチルで使いたいという方が大半を占めると思います。もちろん動画撮影だけの為に使うのもアリですが、それだけでは勿体ないと思わせるレンズです。ここではスチル作例をいくつか作例を貼ってみます。
ありふれた日常の中で使ってこその50mmと思うし、その日常をSIGMA 50mm F1.4 DG DN | Artは印象的に飾ってくれるはずです。こちらも先の動画作例と同様に若干の露出補正を行った程度で、ほぼストレート現像の状態のものを貼っています。

P1009444

SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art + LUMIX S5
F1.4 SS=1/80 WB:Auto ISO100 絞り優先 (±0EV)

P1094550

SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art + LUMIX S5
F5.6 SS=1/100 WB:Auto ISO100 絞り優先 (-1/3EV)

P1094545

SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art + LUMIX S5
F5.6 SS=1/125 WB:Auto ISO100 絞り優先 (-2/3EV)

P1094570

SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art + LUMIX S5
F1.4 SS=1/80 WB:Manual ISO100 絞り優先 (-2/3EV)

P1094329

SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art + LUMIX S5
F1.4 SS=1/1600 WB:Manual ISO100 絞り優先 (+1EV)

P1094612

SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art + LUMIX S5
F4.5 SS=1/250 WB:Manual ISO400 絞り優先 (-2/3EV)

P1094326

SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art + LUMIX S5
F1.4 SS=1/2000 WB:Manual ISO100 絞り優先 (+1EV)

P1094581

SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art + LUMIX S5
F5.6 SS=1/80 WB:Manual ISO100 絞り優先 (±0EV)

P1009664

SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art + LUMIX S5
F1.4 SS=1/500 WB:Manual ISO100 絞り優先 (+1/3EV)

まとめ

今回は、SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Artの紹介をいたしました。
このレンズはEマウントにとっても標準レンズの重要な選択肢になり、また一方でLマウントにとっては50mm F1.4というスペックにおいて数少ない選択肢です。日常を切り取るもよし、ポートレートを撮るもよし。これで風景を撮ったとしても画質で答えてくれると言い切れるレンズです。撮影したデータを持ち帰ってPCで見たときのハッとする感動がこのレンズにはあります。

CP+2023のSIGMAブースの一つの目玉となるであろうこのレンズ、近く店頭での展示もされると思いますので気になる方は是非手にもって試されるのが良いかと思います。

このレンズに関してはもうしばらくお借りできるので、近いうちにまたエントリを書こうと思います。是非ブックマークいただけると幸いです。

 

筆者:SUMIZOON

Facebookグループ一眼動画部主宰

Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOON の人
チャンネル登録して頂けると幸いです

 

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