はじめに
今回はフルサイズではなく、APS-C用の超明るい単焦点レンズの話
ここでも以前なんども書いているTTArtisanのレンズのサンプルを先日頂きましたので紹介いたします。
自身5本目のTTArtisan
TTArtisanと言えば私は
・11mm Fisheye(フルサイズ):Lマウント導入時期に購入
・35mm F1.4(APS-C用):あまりに安かったためMFT用とLマウント用の2本を購入
・50mm F2.0(フルサイズ):代理店さんからご提供
これらの4本を使っています。
特に11mmフィッシュアイは純正のレンズには無い焦点距離を実現しつつ50mmF2.0はこれまた純正には無いコンパクトさがウリです。
で、今回はAPS-C用の35mm F0.95です。F0.95という超明るいレンズはフォクトレンダーのノクトンシリーズで使っていたのですが、ある時期に金策のため手放してしまいました。当時F0.95を実現しているレンズは数少なく、マイクロフォーサーズで夜を撮影するなら明るいレンズが欲しい!と飛びついたものです。
この数年中華ブランドからF0.95のレンズは複数出ていますが、コレもかなりリーズナブルなお値段のF0.95レンズです。というか、いくらAPS-C/MFT用とは言えひと昔前は3万円台でF0.95のレンズが買えるなんて想像してませんでした。
いや、ある意味いい時代になったものですが、逆にメーカーはこんなんで儲かるのか?と心配になってきてしまう次第です。
TTArtisan 35mm F0.95概要
さて、このTTArtisan 35mm F0.95のスペックについて記載しておきます。
対応マウント:SONY E、富士フイルムX、キヤノンEF-M、ニコンZ、キヤノンRF、ライカL
開放絞り:F0.95
最小絞り:F16
絞り羽根:10枚
レンズ構成:5群7枚
質量:約250g(Lマウント、キヤノンEF-M、富士フイルムX、SONY E)
約265g(ニコンZ)、約255g(キヤノンRF)最短撮影距離:35cm
フィルター径:52mm
フォーカス:マニュアル
絞りリング:クリック感
35mm判換算焦点距離:52.5mm
スペックに現れないものとして、このレンズの鏡筒材質があります。すべて鏡筒は金属鏡筒で大きさの割にはずっしり感があります。とは言え重量は250gなので実際は重いわけではないですが、大きさからくる印象はずっしりしたものです。
フォーカスリングのすべり止めに設けられたスリットは鏡筒を削って作られているパターンですが、このデザインは結構好き嫌いが分かれるかもしれません。
動画作例
まずは作例を含む動画を貼っておきます。
まず、本作例は全カット開放で撮影をしています。日中のLog撮影ですのでNDフィルタを入れていますので一部光学的な劣化を伴う撮影であることはご容赦ください。
とは言え、結構雰囲気ある映像が撮れたと思います。というのもLUMIX S5IIは4K60p撮影ではフル画角が使えないのでAPS-C画角となります。つまり4K60pだけで映像を撮るならAPS-Cレンズで撮ってもなんら差し支えはありません。
尚、4K60pはAPS-Cクロップされるので35mmF1.8の様なレンズを使ってもフルサイズで言う所の52.5mm F2.8弱相当のボケしか得られません。 TTArtisan 35mm F0.95を使った場合はほぼフルサイズ換算52.5mm F1.4弱相当のボケが得られる事になりますので、あたかもフルサイズ50mmF1.4っぽい雰囲気となります。
開放で撮った事もあり本映像は全体的にやわらかい印象に仕上がっています。
スチル作例
続いてスチルの作例。近所の公園をぶらぶらした時の写真やら、夜な夜な街中をぶらぶらしたときの写真より。
お気づきかと思いますが、F2での描写は結構シャープに写ります。普通に撮って「ええやん」と思う描写を普通にします。
作例では開放で撮影した写真もありますが、その開放描写は割とほわーっとした感じに写ります。以前の50mm F2も似たような感じでしたが、今回のTTArtisan 35mm F0.95Cの方が開放描写は独特のものがあります。開放時のボケは滲みを伴う描写ですが、F0.95で多くを望むのは酷というものかもしれません。
SIGMA fp + TTArtisan 35mm F0.95C (F2 SS:1/8000 ISO100)
SIGMA fp + TTArtisan 35mm F0.95C (F2 SS:1/8000 ISO100)
S5II+ TTArtisan 35mm F0.95C (F0.95 SS:1/8 ISO400)
S5II+ TTArtisan 35mm F0.95C (F0.95 SS:1/8 ISO400)
S5II+ TTArtisan 35mm F0.95C (F0.95 SS:1/30 ISO400)
SIGMA fp + TTArtisan 35mm F0.95C (F0.95 SS:1/8000 ISO100)
SIGMA fp + TTArtisan 35mm F0.95C (F0.95 SS:1/8000 WB:オート)
SIGMA fp + TTArtisan 35mm F0.95C (F2 SS:1/1600 )
夜景撮影もためしましたが、さすがにF0.95の開放だと、ISO400で撮影したとしてもシャッタースピードは像を容易に止められるレベルに収まります。尚、4枚目の描写はある意味絵にかいたようなサジタルコマフレアが写っています。なのでいくら明るいからといっても星とかを撮るには不向きなレンズと言えるでしょう。あくまでスナップで撮ってこそ本領を発揮すると言った印象を受けます。
チャート
解像度チャートを写したものを下記に示します。まず、このレンズは結構樽歪があることが確認できます。特にチャートなど被写体に寄った感じでは歪は大きい印象かもしれませんが、ある程度距離を置いて撮影する場合などはその歪はそれほど感じません。
どうしても気になる方はスチルであればLightroomなどで歪補正を、動画であればDaVinci Resolveでの歪補正をするのが良いかと思います。尚、前述の動画作例では歪補正を一切使っていません。
F0.95
F2
開放では周辺減光を含め四隅の描写もかなり流れる印象ですが、これはF2くらいから急激に改善される傾向にあるようです。
下記はS5II(APS-C画角トリミング 4000x2666)を400%拡大したしたものです。
F0.95(Center / Corner)
F2(Center / Corner)
F5.6(Center / Corner)
F8(Center / Corner)
完全なコーナーまで行ってしまうとF8でもちょっと甘いところがありますが、少し内側の小さなクサビはF5.6ではかなりシャープに写っています。
HYResIVで計測した際の垂直解像度をグラフにしたものが下記ですが絞った際の解像度はなぜがセンターよりも高くなる結果となっていました。(ホントか?と思う部分がありますが、実際に目視確認してもそんな傾向にあるようです。)
逆にセンターの解像度だけに着目すると、開放から改善する傾向はあるものの、絞った時の解像度と言うほど変化はないようです。
なのでド開放でセンターはそこそこシャープに、周辺は流れてても気にしないという方や、背景のボケとして表現するような撮り方であれば結構開放から使えると思われます。
また、解像度チャートによる測定結果はあくまで近接撮影による結果です。よって遠景では傾向が異なる傾向もありますが、概ねF値による描写変化の感覚は上記傾向と概ね一致します。
Super35mm画角での活用
先にも述べた通り、フルサイズミラーレスカメラLUMIX S5IIは4K60pで、センサーフル画角を活かした撮影はできません。4K60pを撮りたい場合はAPS-Cクロップを余儀なくされるわけですが、APS-C画角でフルサイズの大きなボケを得たい場合はレンズを明るくする必要があります。本レンズはマニュアルフォーカスとはなりますが、F0.95で撮影した際のボケ量はフルサイズ50mmF1.4にほぼ近い感覚ですので、「俺は4K60pでエモいスロー映像を撮りたいんじゃ!」って方には是非検討してみる価値があるレンズだと思います。
全体的な感想
まぁF0.95のレンズを3万円そこそこで売りだしてしまう昨今の中華レンズは恐ろしいところです。いつぞやも書いたことですが、これでメーカーは儲かるんか?と思うくらいに安いですし、部材も金属削り出しなのでチープさはありません。
太陽光など強い光が前玉に当たるとかなりコントラストが低下しますし、隅まで写るとは言えないレンズですので万能とは言えないレンズですが、某有名F0.95よりも個人的には好きな描写をしていると思いますし、これはこれで面白い表現ができるかと思います。興味のあるかたは是非。
筆者:SUMIZOON
Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOON の人
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