とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ

ビデオグラファーsumizoonのブログ 一眼動画に関する機材や撮影方法を中心に情報を発信していきます。

α7sIIIとLUMIX S1H/S5の解像度比較とノイズに関する考察

α7SIIIってのは基本的には画素ピッチを抑える事によって、撮像速度と超高感度領域での撮影に振った動画カメラなので、基本的にはトリミングや大伸ばしする前提の場合はスチル向きではないというのが私の意見です。ただ少し気になるのは動画撮影時において手持ちのカメラと比べて実際にどのくらい解像度なのかというもの。特に水平画素数が4Kちょっとなので4Kフォーマットで撮影する際に水平画素数6Kからのオーバーサンプリング機とどれくらい違いが出るのか?ってのを一度試してみたかったのです。

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ISO12233準拠 CIPA解像度チャート

解像度を調べる際には再現性のある被写体じゃないと都合が悪いのでCIPAお墨付きのISO12233準拠 CIPA解像度チャートを自腹購入して比較してみました。f:id:sumizoon:20210116145629p:plain

余談ですが、このチャートはパール光学株式会社から発売されておりAmazonでも1枚3万円程度で一般の人が入手できるようになりました。流石に本来8K解像度を測定するチャートなので4800TV本(LW/PH)の空間周波数まで対応しています。よってとてつもない細かさの印刷です。っていうかお札のマイクロ文字よりも細かいのでは。。。

 比較機種と撮像モード

比較を行った機種は下記の通りです。

①α7SIII 4K 4:2:2 10bit 有効画素数 1210万画素

LUMIX S1H 4K 4:2:2 10bit 2420万画素

LUMIX S1H 5.9K 4:2:0 10bit  2420万画素

④LUMIS S5 4K 4:2:2 10bit  2420万画素

いずれも同じ照度、同一レンズ(SAMYAN 85mm F1.4)、同一F値/ISO/SSにてほぼ同じ距離から撮像しました。尚、ピント合わせを複数回実施して一番ピントが合っているものを採用しています。拡大してみるとピンボケっぽく見えているかもしれませんが、ガチピンなはずです。また、ここで紹介しているデータは全てISO640 SS=1/60 F5.6になります。

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解像度の数値化

解像度の数値化に関してはCIPA推奨のHYRes3.1を使用しました。これはCIPAのデジタルカメラの解像度測定方法(2003年12月17日制定)の中でも紹介されているソフトウェアです。下手に人間が測定するよりもソフトウェアを使用する方がよっぽど再現ある数値化ができると思っています。古いソフトなのでWindows互換モードじゃないと動作しませんが、今どきの高解像度データでもちゃんと動作します。※尚、読み込みフォーマットはBMPとJPGとなっていますが、JPGの場合圧縮されてしまう可能性も鑑みてBMPファイルで比較を行っています。

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くさびタイプを指定し、処理を実行させると限界解像度が算出されます。尚、動画からの切り出しはDaVinci Resolve Studio17から16Bit TIFFを出力→ImageJにてRGBマージ後のBMP変換を行いHYRes3.1にデータを食わせています。
てなわけで結果の方は下記の通り。

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一応S1Hの5.9Kの解像度を100%とした相対値も載せておきます。

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①α7SIII 4K 4:2:2 10bit 水平解像限界

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LUMIX S1H 4K 4:2:2 10bit 水平解像限界

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LUMIX S1H 5.9K 4:2:0 10bit 水平解像限界

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LUMIX S5 4K 4:2:2 10bit 水平解像限界

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勝手な考察

ナイキスト限界とかサンプリング定理とか折り返しの類は全くわからんのでこの数値が妥当なのかそうじゃないのかちょっとわかりません。m(__)m

とは言え、同一光学系を使っての評価なので相対的な解像度比較としてはざっくりあっていると推測しています。

α7SIIIの水平画素数は4240Pix

S1H/S5の水平画素数は6000Pix(5.9K時は5888Pix)

α7SIII@4KとS1Hの5.9Kの画素比率は0.72:1となり先のグラフの値とぴったりと一致します。またS1H/S5の4Kの解像度がα7SIIIより上なのは6Kからのオーバーサンプリング分であるのは間違いない所でしょう。ただしフォーマットが4Kで有る分どこかで空間解像度がフィルタされているものと思います。

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左:α7SIII@4K / 中央:S1H@4K / 右:S1H@5.9K

カメラは解像度が全てではないですが、少なくとも解像感を求めた撮影の場合はS1Hの5.9Kフォーマットは3割ほどα7SIIIに比べて高いという事が言えると思います。ってことは、CANON EOR R5の8K撮影の場合はS1Hから30%増しの解像感となるのかってのは非常に興味があるところです。

ちなみに上の写真を拡大してよく見るとα7SIIIは1500TV本の解像度を超えたあたりからモアレとはちょっと違う周期パターンが見える事があります。周期的に線が消えている様に見えます。これが何なのかってのは分かったらまたここで記載したいと思います。

 同じ4Kでも解像感は結構違うもの

 まぁ今回比べてみて改めてわかったのは最終フォーマットが4Kとしてもオーバーサンプリングの元になるデータの数が異なる状態だと結構解像感が変わるという点です。つまりは4Kのフォーマットでその解像度を活かした解像感を得るためにはそこそこのピクセルデータが必要だという事です。元データがベイヤだと一次元配列画素数に対して2~3割の解像劣化があるとよく耳にしますが、完全な4Kのデータを撮像するためには5K以上の画素データが必要という事を意味します。そういう意味では5Kセンサくらいの搭載したカメラが4Kフォーマットの解像度を活かせて、速度も解像度もバランスの良い機種なんじゃないかと個人的には思うのですがどうなんでしょうね。

意外とローパスレスとローパス有りの解像度に違いはなかった

もう一つ今回の比較で確めたかったものが、「光学ローパス有りのS1H」と「ローパス無しのS5」の解像度比較でした。結果によると少なくとも4Kの比較においては両者全く同じという結果になりました。ただし、モアレの状況は結構両者異なっているので機会があればこの件に関してはそのうち記事を書いてみたいと思います。また、S5を5.9KRAWで撮った場合の解像感はもしかするとS1Hを上回らないかな?と思ってたりもしますんで、そこらへんも検証したいと思います。

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繰り返しになりますが、映像は解像度が全てじゃないですし、ダイナミックレンジ、S/Nやフレームレートなど総合的なもので決まりますんでここだけ切り取ってS1Hがスゲーといっている訳ではありません。更に言うと、カメラの画質が映像作品のクオリティに寄与する比率ってのはせいぜい2~3割程度だと思います。ほとんどは照明やシチュエーションや技術によるものなはずです。あくまで、技術的な興味でやっている検証なのでこの結果が作品のクオリティに直結するわけでは無い事を改めて述べておきたいと思います。

α7SIIIのノイズ感に関して

ただ、意外だったのはISO4000位の低感度(って言える時代が凄いけど)に関しては感触としてS/NもS1H/S5の方が良いんじゃ?という感触がありました。超感度領域だとα7SIIIに優位点がありそうですが、ちょっとこれに関しては更に検証が必要なので後日ちゃんと比較したいと思います。

→2021.1.17追記:

当方での実測はまだ行っていないのですが、少し気になったので調べてみました。下記DxOMarkの値を参考にしました。なお、DxOMarkは現状S1H/S5のベンチがされていませんので同じセンサを用いていると思われるS1にて比較をしています。

www.dxomark.com

で、SNR 18%なる比較が下記。横軸が実効ISO感度、縦軸がSN比(数値が高いほど低ノイズ)となります。dB表記なので6dBで倍半分の差が発生すると捉えてください。
結果はISO51200を超えるとα7SIIIが有利、それまではS1が優位と言うものです。ただ、この測定が詳細条件が開示されていません。もしくは私が見つけられなかっただけ?
恐らくは18%グレイとなる様なセンサ面照度におけるリサイズ後のS/N比をRAW(LSBコード)から算出しているとは思うのですが、そこらへん開示して欲しい。。。

 

https://cdn.dxomark.com/wp-content/uploads/medias/post-67392/Sony-A7S-III-SNR.png

ダイナミックレンジが下記。(条件が開示されていない?)縦軸の単位はEVとなります。

https://cdn.dxomark.com/wp-content/uploads/medias/post-67392/Sony-A7S-III-DR.png

www.dxomark.com

確実にピクセルレベルではα7SIIIのS/Nは良いはずですし、飽和電子数も大きくダイナミックレンジ向上に寄与しそうですが結果はそうはなっていません。

これは比較対象(ここではS1)が同じ画素数にリサイズされているためと推測出来ます。少なくともS1は画素数が約2倍である事から結局は実効的にS/Nもダイナミックレンジも画素数が多いカメラが優位に働いてしまうものと考えます。(読み出し系のSNが同じとすると画素数が倍であればS/Nもレンジも√2倍有利になる?)

で、話は動画に戻りますが、動画フォーマットは4KなりFHDなりのリサイズが前提になっています(視聴フォーマットが決まっている以上当たり前ですが)。同ベンチマークサイトは全てのカメラを同一サイズにリサイズした場合としての比較だとするとDxOMarkはスチルと言うよりも動画画質として捉え方の方がむしろ良いのかもしれん。。。

最後はかなり憶測で書いちゃったので、ここら辺鵜呑みにせずに、いろいろ調べて見ると面白いと思います。ここらへんに関してはまだまだ表面上の比較なのでもうちょっと掘り下げていければと思っています。

ではまた次回

 

筆者:SUMIZOON

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