実はFUJIFILMのX-H2Sは発売の少し前に評価していました。祇園祭の頃なので発売よりほんの少し前だったかと思いますが、その時期はGH6と共にX-H2Sと使うというなんとも贅沢な事をしておりました。
この時のインプレッションに関してはPRONEWSの方で公開されているのでそちらをご覧頂きたいと思います。
なので、このエントリは短めですが、7月の時点で慌てて原稿を書いたためちょっと言葉足らずの部分もあるので少し補足的なものを書いてみたいと思います。基本内容は同じですし、入稿後に印象・意見が変わったという部分はありません。
作例とX-H2Sの動画機としてのポジション
いつもながらの作例です。試用期間が結構限られていたので多くのシチュエーションで撮ることはできていませんが、それでもそのポテンシャルは感じ取ることができました。
結果から言ってガチ動画カメラでした。ガチの動画カメラは私の中では
・フルサイズ:Nikon Z 9 / SONY α7SIII
・マイクロフォーサーズ: Panasonic LUMIX GH6
Z 9はNikonさん、どうしたの?というくらい動画性能をぶっこんで来たスチル機の見た目をした動画機です。また、今となってはSONY α7SIIIはProResが内部収録できない側面はありますが、フルサイズ動画機として未だに高い人気を誇ります。
そしてGH6はマイクロフォーサーズというセンサーフォーマットの特性を活かした小型なシステムで高品質に映像が撮れる機種として人気です。
そこにAPS-Cフォーマットとしてガチの動画機として割って入った存在と言えます。
いよいよミラーレスカメラへの搭載が一般的になったProRes422収録
思えばNikon Z 9 / Panasonic GH6で高品質なコーデックであるProRes422が搭載され、話題になった事は記憶に新しいかと思います。データ量はH.264/265に比べたら大きいですが、動作が軽快なのでPCのディスクの転送速度さえ早ければ編集がサックサクです。私のメイン機であるGH6では4K120p撮影でなければほぼProResを使う様になりました。昔はミラーレス機では外部収録じゃないと撮れなかったProResですが、やっぱり内部収録できるのはサイコー。
そして今回のX-H2Sは私の知る限りは3機種目のProRes422コーデック搭載機となります。当然ですが、SDカードでは保存できないのでCFexpressカードにのみ保存の形となります。
メーカーの保証としてLexarのゴールドが推奨されていますが、自身の持っているSuneastのCFexpress pSLC640GBで記録していましたが、問題なく記録できていました。
ただ、通常のSLC(黄色いやつ)は容量によって速度が違うので128GBは避けた方がよいです。なお6.2KのProRes422HQ場合は速度保証されていませんのでProRes422に留めておく必要があります。詳しくは上記のメーカーリンクを見てくださいな。
X-H2Sの利点
私の考えるX-H2Sの一番の利点は大きく2つあります。
AFの速度、高い追従性
その一つは認識AFです。正直FUJIFILMのAFは、今までは良い印象はなく動画においてものすごく使える印象はありませんでした。(まぁ、使い込むほどは使った事がなかったんですが)
ところが、X-H2SのAFはカメラ任せでほとんどいいんじゃね?というレベルで使えます。
ここらへんはPronewsに記載しているのでそちらをご覧ください。
カスタマイズ性能
もう一つのメリットは使い勝手に関わるカスタマイズ性です。
特に動画性能を詰め込んだカメラはその高機能故に、設定項目が多くなります。故に操作が複雑になりがちです。X-H2SはかなりGHを研究しつくした感があり、使い勝手の工夫が見られます。
ファンクションはありとあらゆる機能が割り付けられますし、前面のボタンはRECボタンとして使ってねと言わんばかりのものです。
うーむ、これはアレだ。変態カメラ(ご想像にお任せしますが、ご想像の通りです)と同じ様な作りです。そもそもこのカメラもHついてるし。
そして、圧巻のカスタムダイヤルは物理ダイヤルが7つ。例の変態カメラも物理的なC1~C4+ソフト的な設定でトータル13個のカスタム設定を記憶できますが、そもそも物理ダイヤル7つってやりすぎじゃね?と思えるくらいの仕様です。
なので、どりゃーっと気に入った設定を全部設定してしまいます。GH6でも同じように設定していますが、やっぱりメニューって撮影時に現場でいちいち弄ると時間がかかるのでこういった設定ができることは素晴らしいです。カスタムダイヤルは設定した最後の状態を保持し続ける(自動更新する)設定が行えるので、撮影現場を考えればコレを使わない手はないです。
絶対にX-H2Sはアレを参考にしつつ、アレを超える使い勝手を目指した感があります。
というか、現に一部はアレを超えた使い勝手を実現しています。たとえばコレ
それぞれのカスタム設定を任意のカスタムダイヤルにコピーするというものです。いやアレでもできるのですが、インターフェース的に秀逸です。
さらにですよ、GH6に実装されたのが画期的!と思っていたソフト的なフォーカスリミッターまで搭載されています。
X-H2Sは既にやれることはやりつくした感がある。。
と利点を二つ紹介しましたが、画質も6.2Kオーバーサンプルによる解像感が非常に高く印象が良いです。Dレンジこそ一般的な広さと言った印象ですが、ハイライトのロールオフが美しくうまくクリップレベルにつながります。
そいういう意味で3つ目の利点は撮って出しの美しさがX-H2Sにはあります。X-H2Sに限らず撮って出しならFUJIFILMと言われるくらいに手間をかけずに美しい映像が撮れるのがメリットです。
先に紹介した映像もほとんどはETERNAのDR400%での撮影をしていますが、グレーディングを一切することがなく仕上げています。もちろん自分で色で演出したい人にとっては他の撮影方法をおすすめしますが、手軽に映画っぽい映像を撮りたいという人にとっては非常に便利なカメラであると言えます。
FUJIFILMの動画撮影ではダイナミックレンジを設定できるというのが一つのメリットで、これは内部的に適用するガンマを3段階で設定できるため、ハイライト側に余裕を持たせるという撮影が撮って出しでもできる点が利点です。ここの原理的な説明は少しややこしいので機会があれば私の考えを紹介したいと思いますが、いつでもどこでもDR400を使えばよいというわけでななく、S/Nを気にするなら被写体の照度範囲を見極めて都度変更するのがベストかなと思います。(これ以上続けると終わらなくなりそうなのでこれくらいにしておきます)
深堀したかったけどできなかったProResRAW
X-H2Sは発売日前から既にATOMOS NinjaV/NinjaV+によるProResRAW外部収録が可能な状態でした。
実はProResRAWで収録し、編集する段階で私のいろいろな勘違いがあり同組み合わせによる作例を作るに至りませんでした。勘違いとはコレ
https://support.apple.com/ja-jp/HT204203
AppleのページのよるともともとFujifilmのGFXシリーズはホワイトバランス(WB)が弄れないという仕様として紹介されています。これを元にFujifilmのHDMIから出力されるRAWストリームではWBを弄れないもの。と勝手に決め込んでいました。
ですが、X-H2Sでは露出オフセットとともに色温度の変更は可能でした。いろいろ勘違いしててすいませんでした。この件、関係各所にいろいろご面倒をお掛けしたこと、この場でお詫びいたします。
で、問題は次の話でして、私が疑問に思っている点なのですが、FCPでは現在RAWからLogへの変換ができない状態です。ここに関してはまだFCP側が対応していないだけなのか、FujifilmがRAWtoLogのLUTを公開していないのか、はたまた設定する必要がないのかが良く分かっていません。
実はProResRAWに関しては
RAWからLogへの変換「なし」
カメラのLUTを「指定しない」
にしても、FCPはRAWデータのメタデータを参照して適正なガンマ、色域で表示されている様でした。ここに関しては改めて高信さんのFCPの下記の解説を改めて見てみました。
ところが、このProResRAWの表示がちょっと解せないんですよね。「なし」「なし」の状態だとどう見てもLogの表示状態には見えず、ETERNAのトーンとして見えてそうです。つまり撮影時に設定したプロファイルと何か関係しているのではないかと思うのです。ですが、既に時すでに遅し、既にNinjaV+もX-H2Sも返却済みでいろいろ試す事はできませんでした。
この件、高信さんに直接相談しようとメールを書いていたのですが、実機が手元にない以上、最終的に詳細検証できない→詳細記事を書く事は出来ないだろうと言う判断で見送りました。また、グレーディングする際にHDR前提のProResRAWをSDRに綺麗に落とし込むワークフローにも自分で自信が持てなかったというのもあります。そもそもこのデータがPQ前提のデータなのかHLG前提のデータなのかもよくわからなかったので、余計なことを大手メディアさんで書くと混乱を招く。なのでサラッと触れる程度にする。と言った判断です。ProResRAWを使った超高画質グレーディングとして本来は深堀したかったのに編集部にはご迷惑をおかけしてしまいました。
まとめ
その他はあれこれPRONEWSの方に記載していますので是非そちらをご覧頂きたいと思いますが、X-H2Sは空冷ファンの純正オプションまで用意したガチの動画機と言った印象です。
ただ一つ残念な点は無いわけでなく、先に紹介したZ 9/α7SIII同様にX-H2Sでも全画素&フル画角での4K120p撮影が出来ません。画素読み出しは全画素読み出しをベースにしていますが、クロップファクタが1.29倍となりますので、通常撮影時との画角差が発生するのは残念なところです。その点においては4K120pにおいても画角が変わらないGH6(全画素、フル画角4K120p)はマイクロフォーサーズの高速性メリットを活かしていると言えます。ですが、X-H2Sの1.29倍のメリットを使って望遠撮影ができると言う見方もできます。実際にX-H2Sの4K120pはほぼフォーサーズ画角なので、ヒコーキや野鳥を撮るにはうってつけなカメラだと思います。
いや、正直各社こんなに動画性能上げてきたのは正直驚きです。先ほどヒコーキ野郎にうってつけと書きましたが汎用性の異常に高いガチ動画カメラと言うのがこのカメラの印象でした。
いずれこのカメラはまた使う機会があるかもしれませんが、その時はまた何か書こうと思います。LマウントとMFTマウント体制にXマウントをお迎えしたいところではあります。いや、正直欲しい。マジで欲しいんだけど最近SIGMA fp買っちゃったんだよね。。。(オイ)
筆者:SUMIZOON
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