まったくもって需要があるかどうかわからないネタを書いてみたいと思います。
先日SIGMAの20mm F1.4 DG DN | Art先行レビュー動画の制作時にスチル現像で試した事を備忘録として残しておきたいと思います。
多くの方がご存じの様にDaVinci Resolveでは基本的に各カメラメーカーが記録するスチルRAWのデータは現像できません。「基本的に」と書いたのは一部のカメラの中にはDNG形式でRAWを出力するものがあるためで、これらはDaVinci Resolveでも現像処理が可能となっています。代表的なものはSIGMA fpですが、LEICAシリーズでも同様かなと思います。
つまり、メーカー独自フォーマットのRAWをなんらかの方法で非圧縮DNGに変換できればDaVinciでも現像できちゃうよ。という話
とは言え、その中で気づいた事があったのでブログに記載するものです。あくまで私の独断的解釈に基づくもので考察した内容があり、それらが真実とは限りません。その点をご理解頂き読んで頂きたいと思います。
※本手法が現像時にもたらす悪影響があるかもしれません。現にいくつか問題点があることを把握していますので、あくまでネタとして見てください。そもそもDaVinci ResolveのDNG現像機能はBMPCCのデータを現像するために実装されたものであって汎用DNGに対して本来マトモに使えると考える方が怪しい。
DNG変換する代表的ソフト
メーカー独自RAWをDNGへ変換する機能はAdobe PhothoshopやLightroomでも実装されています。
Photoshop上からDNGを保存する
Lightoom上の書き出しからDNGを選択する
とは言え、どちらも一括処理が結構面倒ですし、そもそもそこそこ重いアプリケーションを立ち上げる必要があります。そして、それ以前に有料のサブスクリプション契約が必要です(ウチはしゃーなしに初期から契約してますが)。
そこで登場するのがコレ
Adobe Digital Negative Converter
Adobeから無料で配布されているDNGコンバータです。
Adobe Digital Negative Converterの使い方
いや、もう説明不要なほどシンプルにできています。事実上ほぼすべての静止画カメラRAWをDaVinci Resolveで現像できるようになります。(新製品などの未対応カメラもありますが、よほどマニアックなカメラでなければいずれ対応するはず)
・フォルダを選択→RAWが保存されているフォルダを選択
・変換した画像の保存先を選択→その説明の通り、変換したDNGをどこに保存するかを設定
・変換した画像の名前を選択→特に設定する必要なし
・環境設定→とりあえずデフォ
で、①、②のフォルダを指定してします。今回は①としてLUMIX S5のRAWがずらっと並んだフォルダを指定しました。
変換を押すと下記の様に処理が始まります。
で、出来上がったのかこちら
これらは全部DNGファイルとなります。
DaVinci Resolveで読み込んでみる
で、上で変換したDNGファイルをDaVinci Resolveで読み込んでみます。
一旦写真をタイムラインに配置してカラーページに移動します。
撮影時のホワイトバランスもちゃんとDNGのメタデータとして引き継がれており、そのメタデータをDaVinciが読み取っています。
まぁ、現像時に扱えるパラメータとしては多くはないですが、現像パラメータとして「色温度」「ティント」「露出」その他.brawで現像する際に調整できるパラメータが一通り弄れます。
ただし、ちょっと気になる点もあってなぜかLUMIX S5のRAWデータは16bitとして認識されています。右のインスペクタ上のビット深度が16になっています。
一方でLightroom上では解釈が正しく14bitとなっています。
つまり、DaVinci上では16bitリニアのデータとしてRAWを現像してしまう事になっていてこれがデフォルトで読み込んだ際のデフォルトの露出の暗さに関係しているのではないかとこの時点では推測していました。(確証はないですがリニアデータとしてはRGBそれぞれのベイヤ単位の輝度情報は1/4のデータになってしまうので必然的に暗いデータとして判断されてしまうと言うもの。故に1/4のサイズのリニアの箱に対してsRGBなりのガンマを適用しておかしい事になる?といった解釈)
一応念のため生成されたDNGの中身を確認してみました。
ハイライトまでぶっ飛んだ写真が手元にあったので試しにそれら画像の最大値を見てみます。最大コードが16336LSBなのでLUMIX S5のスチルRAWのデータの箱の大きさは14bitという事が分かります。
つまりDaVinciがこのデータを16bitと解釈している以上、まともな現像処理は現状において行う事ができないのかと推測していました。そもそも向日葵の右上のハイライトへのつながりが非常に怪しい描写をしていて、コレ使えないわな。。。と思っていました。
DaVinciが14bitデータを16bitと勘違いして変なことになっているなら、無理やりリニア14bitを4倍してなんちゃって16bitに変換してDaVinciに食わすという事くらいしか思いあたらん。。。どうしたものか。。。
実験
さて、ここで落ち着いてもう一度実験してみます。
①RAWファイルをLightroomで直接読み込んだもの
②RAWファイルをDNGに変換しDaVinci Resolveで読み込んだもの
①RAW(.RW)をLightroomで読み込んだもの(左)
② DNGをDaVinciで読み込んだもの(右)
このRAWファイルはLightroomで読み込んだ初期状態はハイライトがクリップしている様に見えますが、実は少し上にデータが残っています。試しに-3EV落としてみます。
Lightroom初期状態
Lightroom -3EV現像
ちなみにコレ(RAWデータ)を画像解析ソフトに突っ込んでみると
解析ソフト上のデータ 表示ガンマはテキトー
16338でクリップされていることが分かります。(14bitデータなので16383になりそうですが、そこはなんらかの都合なのでしょう)つまりLightroomはベイヤデータが一部クリップしていてもどうにか現像を行う処理をしているという理解です。
さて次ににDaVinciです。とりあえずDaVinciにRAWからDNGに変換して読み込ませてみます。
なんかハイライト側がイヤーな飛び方をしています。元データのこれを-3EV下げてみましょう
本来隠れているはずのデータを解釈せずにハイライトがクリップしたままです。
DaVinciは16bitでデータを解釈しているのでは?という書き方をしましたがどうやらそれも違うらしい。14bitを16bitと解釈して現像しているならハイライト部はクリップせずにカラーバランスが崩れていく画になるはずです。
DaVinciがハイライトクリップさせた部分のデータを再び確認してみます。
ヒストグラム的にわかりにくいですがデモザイク前のGr/R/Gb/B(RGBベイヤ)データとして完全に分離した状態を表示してみます。
分かりにくいのでさらに拡大。
クリップしているのがG画素なはずです。クリップしていないのはBとR。DaVinciはB画素がクリップしていると判断すると(通常は)デモザイク時にRGBチャネルをすべてクリップさせる動作を行う様です。つまりでモザイク時に色情報とれないんだから白(無彩色)でいいよね!という動きかと思う。
ハイライトリカバリ
とは言えLightroomとかだとこの部分は階調が残っている画像として現像できます。ではDaVinciResolve側でG画素がクリップしたらそこは現像できないのか?というと実はそうではありません。
カラクリはしらんけど、ベイヤを構成する4画素のいずれかが飽和していても残りの画素情報から諦めずにデモザイクを試みる動作をしていると解釈しています。
ハイライトリカバリOFF
ハイライトリカバリON
クリップしていたはずのハイライトが戻ってきている。もう一度Lightroomの-3EV現像を見てみます。
DaVinci上での上記-3EVに相当する現像。
ちょっと色味は違いますが、ハイライトリカバリをONさせてちょいちょいと数値を弄ればLightroomと似た結果が得られる状態となります。
ハイライトの描写がおかしい事に関しては当初カラースペースやターゲットガンマの設定がおかしいからかな?と思っていましたが、DaVinci上のベイヤの処理に起因しているもので、ハイライトリカバリーをかければ通常の現像ソフトと同じような処理ができるという理解をしています。
というわけで、結果的には「ハイライトリカバリをONするだけ」というしょーもない結果となりましたが、なんとなくハイライトリカバリがどのような処理をしているのか、自分の中でわかってきた気がします(間違ってるかもしれんけど)。そして一部のbrawがなぜハイライトリカバリに対応していないかについても今回の件と少し関係があるのでは無いかと思っています。(想像するにS5やS1の外部RAW記録の場合カメラ内で既にハイライトリカバリに相当する処理は済んでいてYUVとしてVideo Assistに渡している→故にベイヤ(色)毎のハイライトクリップ情報は得られない。でもハイライトリカバリはOFFできないないだけで既にそれに相当する処理は適用されている。と推測します。マジで想像なので正しいか保証は無いです)
そもそもDaVinciでスチルのRAWを現像したいという奇特な人は少ないかもしれませんが、現像モジュールからその後のプライマリ、セカンダリ、はたまたレイヤ合成を含めて一貫して処理できるという点はLightroomにはできない芸当です。この記事が誰かの何かの役に立つかは不明ですが、とりあえず備忘録として残しておきます。
下記動画に出てくる後半のタイムラプスではこの方法を少しためしたので貼っておきます。
あと、設定でハイライトリカバリをONした状態で色温度を落とすと(色温度を上げる分には問題ない)Rのチャンネルが階調不足になるという問題がありますが、これに関しても少し考察して機会があればここで書きたいと思います。
ではでは
筆者:SUMIZOON
Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOON の人
チャンネル登録して頂けると幸いです