とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ

ビデオグラファーsumizoonのブログ 一眼動画に関する機材や撮影方法を中心に情報を発信していきます。

NIKKOR Z 50mm f/1.4を動画撮影で試す

はじめに

以前から「私は50mmという画角が好きだ」と各方面で書いてきました。標準画角として35mmを欲する人も多いですが、私は以前から35mmという画角が得意になれずに、もっぱら標準画角は50mmがしっくり来ると感じていて「標準単焦点と言えば50mm」な人です。2008年頃から書いていた写真のブログを書いていたのですが、そのブログでも50mmという画角の写真が群を抜いて多かったと記憶しています。

今回は9/27に発売になったNIKONの新しい50mm単焦点レンズ「NIKKOR Z 50mm f/1.4」の動画、スチルの作例やらインプレッションやらを思うままに書いていきます。

 

なぜ50mmが好きなのか

動画撮影の仕事で撮れ高を稼ぐのであれば、ズームレンズを使うのが便利だという話は以前も書きましたし、同意されるかたも多いと思います。単一の画角だけで一定の尺の映像を構成するのはあまり無い事ですし、そうなると一本で「寄り」も「引き」も撮れるという意味では明らかにズームレンズの方が撮影効率が高いのです。そいういった意味では、以前紹介させていただいたNIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VRなどは超絶便利なレンズなわけです。

sumizoon.hatenablog.com

一方で単焦点は画角を変えることは出来ないので、構図を変えるには足が必要です。とは言えちょっと被写体に寄れば引き算ができて、引き気味に撮れば被写体を取り巻く状況を程よく説明的に画角に入れることができるという使い方ができるという意味で私は気に入っています。

NIKKOR Z 50mm f/1.4 + NIKON Z8
1/1600 F5.6 ISO64

人間の目が50mmの画角だという表現はよくされますが、実際にそうなのかどうかは私にはよくわからないですが、どう撮っても感覚的にしっくり来るというのが50mmだと思うのです。50mmという画角はエゲツないほどに狭い範囲を広く切り取る超広角のような撮影はできませんし、遠くの鳥を大きく写す望遠撮影のような撮影もできません。

スナップで使うにはやや長い画角ではありますが、それだけに被写体をより強調した撮影ができるというのが50mm。今も昔も単焦点でどれか一本というなら私は50mmなのです。

もちろんボケを多用した映像が作りやすいのも単焦点特長です。とくにフルサイズ50mm F1.4というのは人物撮影や、至近距離での被写体を撮影した際の開放でのボケの大きさは印象的に写りますので、いかにも一眼らしい撮影がしたい場合にうってつけです。そして、開放F値の明るさから来る低照度撮影の自由度の高さも言うまでも無いでしょう。

私は50mmという画角のレンズは現在所有しているだけで8本ほどあります。私と同じでやたら50mmを持っているという人はきっと多いと思います。

NIKKOR Z 50mm F1.4概要

さて前置きが長くなりましたが、NIKKOR Z 50mm F1.4のレンズ概要について記載します。

ニコンZマウント
焦点距離50mm
・7群10枚(非球面レンズ1枚)
・最短撮影距離:0.37m
・最大撮影倍率:0.17倍
・絞り羽根枚数:9枚(円形絞り)
・最大絞り    f/1.4
・最小絞り    f/16
・フィルタ径:62mm
・寸法:約74.5mm(最大径)×86.5mm(レンズマウント基準面からレンズ先端まで)
・質量:約420g
・コントロールリング搭載
・価格 81,400円(税込)ニコンダイレクト価格(2024.10.2現在 10%クーポン配布中)

そのほか詳細は以下の公式ページを参考にして頂けたらと思います。

www.nikon-image.com

外観のインプレッション

実際の動画作例とスチル作例は後ほど紹介するとして、このレンズの外観について少し感想を書いておきます。

まず、このレンズは先に発売されているNIKKOR Z 50mm f/1.8 Sとほぼ同じ大きさのレンズであると言えます。なおNIKKOR Z 50mm f/1.8 Sにはコントロールリングはありませんが、NIKKOR Z 50mm f/1.4にはコントロールリングが搭載されています。

たとえば、NIKON Z8には親指と人差し指にあたる部分にのみダイヤルがあります。動画撮影を行う多くのカメラマンはマニュアル露出で撮影していますので、絞り/SS/ISOをワンアクションで操作できることを望む人は多いと思います。つまり、ワンアクションで絞り/SS/ISOが操作できる様にするためにはカメラ本体以外の3つめのダイヤルが有効なのです。

個人的な意見ですが、Z8で動画撮影をする場合はコントロールリングの無いNIKKOR Z 50mm f/1.8 Sよりもレンズ側のコントロールリングがあるNIKKOR Z 50mm f/1.4の方が操作系において圧倒的なアドバンテージです。

また、先に発売されているNIKKOR Z 35mm f/1.4と同じ外観であると言えます。

なお35mmにはF1.8のSラインであるNIKKOR Z 35mm f/1.8 Sもありますが、これら4本を含めて並べた写真が下記のようになります。

ぱっと見はどれがどのレンズかを大きさからは区別することはできないくらい似ています。

NIKKOR Z 50mm f/1.4とNIKKOR Z 35mm f/1.4の次も全く同じ外観で別の画角のレンズが今後登場するのでは?と思わせるものがあります。

重量は420gで非常に軽量でありながらもF1.4の明るさを実現しています。

動画作例

既にYoutube上で公開済みのNIKKOR Z 50mm F1.4の動画作例を紹介します。
暑さも和らいだ9月、写真を趣味にする友人と共に、少し遠出をして撮影した映像を中心に構成した動画になります。

時間に縛られないスローなスタイルでの撮影をしたので、こういった映像を撮るにはぴったりです。先に書いた様にボケを活かした撮影から、単焦点ならではの高画質な撮影もお手のものです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/sumizoon/20241003/20241003234337_original.jpg
NIKKOR Z 50mm f/1.4 + NIKON Z8
1/200 F1.4 ISO800(動画からの切り出し)

さらにISO感度を抑えた夜間撮影はF1.4という明るさだからこそ実現可能なものです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/sumizoon/20241003/20241003234018_original.jpgNIKKOR Z 50mm f/1.4 + NIKON Z8
1/125 F1.4 ISO4000(動画からの切り出し)

画質インプレッション

インプレッションとしては写りの二面性を感じるというものです。開放のピント面は鋭くシャープというわけではなく、どことなくシネマレンズを思い起こさせるような柔らかさを感じつつ、少し絞り込むとシャープな描写を見せれくれるものです。

NIKKOR Z 50mm f/1.4 + NIKON Z8
1/250 F1.4 ISO800(動画からの切り出し)

NIKKOR Z 50mm f/1.4 + NIKON Z8
1/500 F1.4 ISO64

NIKKOR Z 50mm f/1.4 + NIKON Z8
1/400 F5.6 ISO64

最近は多くのレンズが開放からシャープに写るものが多いですが、このレンズの開放は少し特性の異なる側面を見ることができます。それは決して悪い意味ではなく、解像度重視の昨今のレンズが多い中で個性が光るものだと思います。レフ機時代は絞るとシャープだが開放は甘く使えないレンズが多かったものですが、そう言ったものではなく、NIKKOR Z 50mm f/1.4は素直に使える二面性がある描写が楽しめる。というのがファーストインプレッションです。一粒で二度美味しいレンズだなと(古いか。。。)

逆光耐性

逆光耐性に関しては想像していたよりも良い印象でした。全くゴーストが出ないというわけではないですが、例えば下の様な写真を撮った場合というのは、左下に太陽のゴーストが出るレンズが多いのですが、そういった描写をしたカットは見当たりませんでした。今回作例を撮影していても逆光で困ったというカットはなく、逆光でもなんら問題なく使える印象を持ちました。

NIKKOR Z 50mm f/1.4 + NIKON Z8
1/6400 F2.0 ISO64

解像度

16:9のテストチャートを8KRAWで撮影したものを以下に示します。50mmという焦点距離と撮影位置の関係から中央と四隅では撮像面からの距離誤差が大きいためそれぞれ中央とコーナーではピントを取り直しています。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/sumizoon/20241003/20241003225339_original.jpg

テストチャート全景

小さくてわかりにくいですが中央部での描写を見る限り、NIKKOR Z 50mm f/1.4のF1.4(開放)はかなり柔らかい印象を受けます。一方でNIKKOR Z 50mm f/1.8 Sの中央描写は開放F1.8からかなり高い解像感が得られている印象です。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/sumizoon/20241003/20241003225238_original.jpg

中央部の解像感のF値依存

コーナー部の描写に関してですが、NIKKOR Z 50mm f/1.4はF2までは解像感もコントラストも低い印象ですが、F2.8ではかなり改善します。NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sもこの傾向は同じではありますが、両者を比べるとNIKKOR Z 50mm f/1.8 Sの方が全体的に解像感が若干高い様です。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/sumizoon/20241003/20241003225212_original.jpg

コーナーの解像感のF値依存

これらは8Kという高解像度でかなり拡大比較した場合の話ですので、4Kの場合はF2.8以降であればコーナーの解像感の違いもほぼわからないかもしれません。

というもの、動画作例中のいくつかの絞った際の描写を見る限り高い解像感を感じたからです。

NIKKOR Z 50mm f/1.4 + NIKON Z8
1/125 F4.0 ISO800(動画からの切り出し)

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/sumizoon/20241003/20241003232837_original.jpgNIKKOR Z 50mm f/1.4 + NIKON Z8
1/60 F5.6 ISO800(動画からの切り出し)

フォーカスブリージング

フォーカスブリージングとはピント位置を変更した場合の画角の変化を指す言葉です。いわゆる動画ではピント位置を動的に変化させる「ピン送り」という手法をしばしば使いますがその際に大きく画角が変化してしまうレンズはスチル用のレンズには多いです。

NIKKOR Z 50mm f/1.4のブリージングはほぼ無いと言っていいほど特性が良好です。これは結構驚きでした。なのでピン送りに限らず、遠くの被写体が近づいてくる場合などのピントが大きく動く撮影においても違和感がなく撮影を行うことができます。

NIKKOR Z 50mm f/1.4が動画撮影で活用すべきレンズとタイトルで述べたのは、描写の柔らかさもありますが、この特製の部分が大きいです。

前述の動画作例の中のこの部分をご覧いただくとそのブリージングの無さを感じてもらえると思います。

動画作例の56秒付近

動画作例の58秒付近

まとめ

開放での解像度だけに着目すると同じ50mmであるNIKKOR Z 50mm f/1.8 Sの方に軍配があがる印象です。なので、F1.4の開放F値が必要ないという方で、解像度を最重要と考える方であればNIKKOR Z 50mm f/1.8 Sの方を選ぶのがよいかもしれません。また、星景写真での使用もサジタルコマフレアの特性が良好な、NIKKOR Z 50mm f/1.8 Sを選ぶべきだと思います。

ですが、

・コントロールリングを搭載している
・開放のF値が2/3段明るい
・開放の柔らかい描写と絞った際のふた通りの描写が楽しめる
・ブリージングフリーとも言える特性

という側面からトータルで動画撮影で使う場合はNIKKOR Z 50mm F1.4の方を私は選びます。

パープルフリンジに関しても動画の場合はそこまで見えるものでもありませんし、スチルの場合は収差補正を現像時に適用すればほぼ見えないレベルにすることができますので、目くじらを立てるほどのものではありません。

これらの事は先に示した動画の説明欄でも記載した通りなのです。

先にも書いた一粒で二度美味しい部分や無駄にピン送りをしてブリージングの無さを是非楽しんで頂きたいと考えます。

自己紹介

筆者:SUMIZOON
Facebookグループ一眼動画部主宰
Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOON の人

2011年よりサラリーマンの傍ら風景、人物、MV、レビュー動画等ジャンルを問わず映像制作を行うビデオグラファー。機材メーカーへの映像提供や映像関係メディアでレビュー執筆等を行う。Youtubeチャンネル「STUDIO SUMIZOON」登録者は1.4万人以上。Facebookグループ「一眼動画部」主宰。「とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ」更新中。

 

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