とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ

ビデオグラファーsumizoonのブログ 一眼動画に関する機材や撮影方法を中心に情報を発信していきます。

LUMIXのBlackmagicRAW収録が完全体になった話

最近ブログをサボってばかりのsumizoonです。すんません。

2022年7月25日に全く前触れなく公開されたLUMIXファームウェアアップデートですが、これについて記事にしたいと思います。
というか、このアップデートはBlackmagicRAW収録をする上で「待望」というか「必須」のアップデートだからです。
まず、公式のHPに書かれている事を引用します。

https://av.jpn.support.panasonic.com/support/dsc/download/index4.html

Blackmagic Design社製レコーダー「Blackmagic Video Assist 12G HDR」で収録した Blackmagic RAW データについて、DaVinci Resolve Studio でホワイトバランス調整を行う際の精度が向上しました。
https://av.jpn.support.panasonic.com/support/dsc/download/index4.html

これらはGH5S / BGH1/S1/S1H/S5/BS1Hのリリースノートに共通で書かれている文言です。「ふーん、そうなんだ」と見過ごしがちですが、実はかなり重要な意味を持ちます。

BlackmagicRAW収録ができるLUMIXをおさらいしつつ、既知の問題点を整理する

VideoAssist 12G HDRを使ったBlackmagicRAW収録ができるLUMIXは実はかなりあります。

マイクフォローサーズボディ:GH5S / BGH1

フルサイズLマウントボディ:S1/S1H/S5/BS1H

これらはHDMIでBlackmagic VideoAssist 12G HDRと接続することでBlackmagicRAW(通称.braw)で収録できます。この流れでGH6もbraw対応来るんでしょ?と言うのはユーザーとして強い要望ですが個人的にはそう遠くない未来にアップデートが来るものと信じています。

GH5S/BGH1のWB調整に対応

Twitterで呟いたかもしれませんがGH5S/BGH1のRAWに関しては大きな問題がありました。それは。。。。

旧ファームでのRAW収録ではGH5S/BGH1のRAWはホワイトバランスとティントがグレーアウトしていた

RAWなのにホワイトバランスとティントを現像モジュールで弄れない問題です。
つまりホワイトバランスやティントは通常のカラーグレーディングの項目で触る必要がありました。一応後者でもそれっぽくホワイトバランスは調整できるものの、いわゆるjpg画をlighroomで調整している様な感覚に近いものです。(まぁH.264/H.265/ProResのグレーディングは文字通りそれに近いけど)
これらを根本から解決するぜ!ってのが今回のファームウェアアップデートの内容の一つ

LUMIX SシリーズのWB精度の向上

そして、LUMIX Sシリーズはホワイトバランスは従来から調整は可能だったのですが、

・太陽光セッティングで撮影
・電球色セッティングで撮影

という様な同じ被写体、露出で撮影された2つのRAWがあったとして同じパラメータ使用して現像したとしても

太陽光セッティングで撮影(3000K現像) 電球色セッティングで撮影(3000K現像)

と絵が微妙に異なる問題がありました。これに関してはTwitterでターミガンデザインズの高信さんと話題にしていた記憶があります。
これはBlackmagicRAWを生成する過程でカメラ内の情報をHDMIを通じてVideoAssist側に完全に伝えきれていなかったことに起因するものと推測していますが、あれこれ推測するのは自信がないのでこの場ではやめておきます。いや、書いてもいいけど多分理解されない。。。
とにかく、これが解消されていればよりRAWとしての利便性は格段に向上するものと思います。

実はファームウェアアップデートの前触れがあった

前述の様に「前触れなくファームウェアが公開された」と書きましたが、実はファームウェアのアップデートが近いことは6/30の段階でわかっていました。Video Assistのファームが6/30にアップデートされていたのですが、そこにはしっかり書かれています。

Panasonic GH5SおよびBGH1カメラ用の調整可能なホワイトバランスおよび精度も追加し、Panasonic S1H、S1、S5、BS1Hカメラにおけるホワイトバランス精度も向上。

https://www.blackmagicdesign.com/jp/support/

これを見たときに、ファームのアップデートが近い事を悟っていました^^v

早速検証する

とりあえず手元にあるGH5S/S1H/S5のファームウェアをアップデートして検証してみました。カメラの新しいファームウェアとVideoAssistはVer3.7、そしてDaVinciはVer18が必要です。いずれかが欠けてしまえば今回のファームウェアアップデートの恩恵は得られませんので注意です。

https://www.blackmagicdesign.com/jp/support/

GH5Sの状況

①カメラ側WB設定:電球色(ボディ旧ファーム)
②カメラ側WB設定:太陽光(ボディ旧ファーム)
③カメラ側WB設定:電球色(ボディ新ファーム)
④カメラ側WB設定:太陽光(ボディ新ファーム)
⑤カメラ側WB設定:太陽光-2EV(ボディ新ファーム)

の5つのRAWを取得しました。⑤はオマケでちょっと試したかった事があったので取得。カラースペースはV-Gamut/ガンマはRec.709として現像してみます。

旧GH5Sファームの状況

左①カメラ側WB設定:電球色(ボディ旧ファーム)と②カメラ側WB設定:太陽光(ボディ旧ファーム)

前述の様にボディ側が旧ファームである場合は色温度とティントがグレーアウトしてホワイトバランスをカメラRAWモジュールで調整することが不可能です。

新GH5Sファームの状況

とりあえず読み込んだ状態がコレです。撮影時のホワイトバランスはメタデータとして記録されていますので、それをベースに初期状態は現像されている様です。

左から
③カメラ側WB設定:電球色(ボディ新ファーム)
④カメラ側WB設定:太陽光(ボディ新ファーム)
⑤カメラ側WB設定:太陽光-2EV(ボディ新ファーム)

注目すべきは当然ココ

弄れる!弄れるぞ!

撮影時のメタデータとして色温度とティントを分離して渡している状態になっています。つまり撮影時の色温度設定によってここが違う状態です。
そう、問題はこれらをそろえた場合に一致するのか否かです。それでは
③カメラ側WB設定:電球色(ボディ新ファーム)
④カメラ側WB設定:太陽光(ボディ新ファーム)
のホワイトバランス設定を同じにしてみます。とりえずテスト的に3000K/ティント18に2つのデータを設定したものが下記

③カメラ側WB設定:電球色(ボディ新ファーム)→3000K/ティント18で現像

④カメラ側WB設定:太陽光(ボディ新ファーム)→3000K/ティント18で現像

同じだ!!同じに見えるぞ!!(中二病風)

失礼。いや、RAWなんで当たり前やん。と言われそうですが、これが出来なかったんですよね。。。
さらに⑤カメラ側WB設定:太陽光-2EV(ボディ新ファーム)をプッシュ現像してみます。

はい、+2露出の設定をしてほぼ一致する状態となりました。
多分厳密に波形を見ると現像後の③、④、⑤微かに異なっていますが、相対的に波形を見比べないと分からないレベルとなっています。

S1H/S5の状況

さてもうここまでくればS1H/S5は軽く流しましょう。既知の問題点は下記の通りでした。
①カメラ側WB設定:電球色(ボディ旧ファーム)
②カメラ側WB設定:太陽光(ボディ旧ファーム)
が同一パラメータで現像しても一致しない事です。S1H/S5はホワイトバランス/ティントを設定することは以前から出来ましたが、撮影時の設定によってズレが生じる問題がありました。

旧S1H/S5ファームでは


現像に使用したバラメータ

左①カメラ側WB設定:電球色(ボディ旧ファーム)→3000K/ティント18
右②カメラ側WB設定:太陽光(ボディ旧ファーム)→3000K/ティント18

ぱっと見一緒に見えるかたもいるかもしれませんが、下段のグレーパッチを見ると左がかなりアンバーであることが分かります。実際にはこの違いは相対比較をしてしまうとかなり気になるレベルでした。

新S1H/S5ファームではこうなる

では新ファーム適用後ではどうなるかを見ていきます。

③カメラ側WB設定:電球色(ボディ新ファーム)→3000K/ティント18で現像
④カメラ側WB設定:太陽光(ボディ新ファーム)→3000K/ティント18で現像

波形も画像も一致しているのがお分かりかと思います。ついでに2段アンダーで撮ったものをプッシュ現像で戻したものも貼っておきます。元の絵はコレ

それに対してほかの先ほどの絵を+2EV設定して合わせた結果がコレ

わかりにくい説明ですんません。

③カメラ側WB設定:電球色 ④カメラ側WB設定:太陽光 ⑤カメラ側WB設定:太陽光-2EV

が同じパラメータを使って

③カメラ側WB設定:電球色 ④カメラ側WB設定:太陽光 ⑤カメラ側WB設定:太陽光-2EV(+2プッシュ現像)

の様に全然違う設定で撮ってもほぼ完全に一致させることができるというものです。
こんなの普通のカラーコレクションだったらめっちゃ苦労するのに、ものの数秒で作業が完了します。

というわけで、これにてLUMIXのBRAWは完全体となりましたとさ。めでたしめでたし。いや、マジでこれはサイレントなすんばらしいアップデートだと思うのです。
あと、一時期全く入手できなかったVideoAssist 12G HDRの5インチは現在入手できるようになってますので、気になる方は是非に

 

筆者:SUMIZOON

Facebookグループ一眼動画部主宰 メンバー4500人

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