さて、さきほど発表されたFX30ですが、その概要をみてききたいと思います。夜も遅いのでさらりと書きます。
SONY WEBページより https://www.sony.jp/pro-cam/products/ILME-FX30/index.html
いや数週間前に、FX30なんて機種は実はなくて単なるデマじゃないの?というツイートをしたりしましたがその予想は外れフツーに出ましたねぇ。ソニーの公式の動画、およびWEBサイトをあわせてご覧頂ければと思います。
FX30の概要
まずはSONYの新しいシネマラインFX30の製品概要をピックアップします。
・撮像素子:新開発 有効約2010万画素 裏面照射型CMOSセンサーExmor R
APS-Cサイズ
・総画素素2700万画素
・静止画記録画素数 6192 x 4128 約26MP
・6Kからのオーバーサンプリング
・記録フレームレート
3840x2160/59.94p、29.97p、23.98p、[XAVC S-I HD]
1920x1080/59.94p、29.97p、23.98p、[XAVC S 4K]
3840x2160/119.88p、59.94p、29.97p、23.98p、[XAVC S HD]
1920x1080/119.88p、59.94p、29.97p、23.98p、[XAVC HS 4K]
3840x2160/119.88p、59.94p、23.98p
ただし、4K120pは38%の画角がクロップされる。こに関しては後述します。
・ベース感度 800/2500
・電子シャッターのみ
・販売価格:ボディのみ273,900円 / ハンドルユニット同梱:328,900円
・発売日2022年10月14日
SONY WEBページより https://www.sony.jp/pro-cam/products/ILME-FX30/feature_1.html
外観に関して
肩に表記されているFX30という文字以外はぱっと見見分けがつきません。逆に全く同じ筐体にする事によりFX3ユーザーとしてはサブ機として使いやすい様にできていると言えます。
使いまわしと見る人もいるかもしれませんが、全く違うデザインにするよりもFX3を既に使っている人にとってはこれは大きなメリットと言えます。
PRONEWS https://www.pronews.jp/news/202209282300336115.html
この筐体からくるもう一つのメリットは冷却ファンによる長時間撮影を可能にする点です。既にPRONEWSで上がっている通り
ソニー社内の測定だが、給電を行いながら4K60P撮影を最大13時間まで実現できたという。
とあります。炎天下ではどうかはわかりませんがかなり放熱性は高いと言えます。
撮像素子に関する疑問
さて、この撮像素子、少し気になる点があります。おそらく多くの人が思っている疑問。それはX-H2Sのセンサと同じじゃないのか?という点。もちろんX-H2SのセンサはX-Transによる非ベイヤ配列ではありますので厳密に同じななずはないですが、それはあくまでフィルタ配列の話。センサーの下地はX-H2Sと同じでは無いか?という疑問が湧きます。
X-H2Sの3:2記録時の画素数は6240x4160
FX30の3:2記録時の画素数は6192 x 4128
とかなり近いものがあります(多分ピクセルピッチは同じ)。
一方で、X-H2Sは積層型の裏面照射型をうたっていますが、FX30は裏面照射型とアナウンスされています。またセンサの顔つきは両者で異なっているようにも見えます。以下がX-H2Sの積層型裏面照射センサ
FUJIFILM HPより https://fujifilm-x.com/ja-jp/products/cameras/x-h2s/
以下が裏面照射型のFX30のセンサ (正直ピン配がわからないので、これだけではなんとも言えません)わざわざ積層型のExmorRSではなくExomorRと表記しているからには非積層型のセンサーという事なのでしょうけど別物なのか?と、未だ疑っています(ひねくれ者だわなw)
SONY WEBページより https://www.sony.jp/pro-cam/products/ILME-FX30/feature_1.html
とは言え、X-H2SとFX30の4K120pの画角に違いがあり、両者は全く別物と言えそうです。
・X-H2Sでは1.29倍のクロップ
・FX30では38%のクロップ(1.6倍)
このFX30の表記、あまり見ない書き方になっていますが、一次元で38%のクロップがされるとすると1.6倍クロップと読めます。一方で、面積として38%分がクロップされるとも読めます。ここらへんレビューをされている方は今のところ見当たりませんがここ結構重要なポイントかと思います。
多分、水平画素数6192x(1-0.38)≒3840となるのでピクセルバイピクセルによる1.6倍クロップと読むのが正解と思っていますが、間違っていたらすぐ訂正します。
仮にこれが正しいとしてX-H2SとFX30は全く違うセンサーであると言えるかと思います。つまり画素はX-H2Sとピクセルピッチは同じだけど、読み出し回路は根本的に違うものと言えます。このカメラの異常な安さはFX3との筐体や基板の共通化、メカシャッターレス、EVFレスはもとよりこのセンサーに秘密があるのかもと。
少し残念な4K120p
FX30の噂が真実味を増した頃に私が期待していたのは、GH6のようなオーバーサンプリングによるクロップなしフル画角4K120pもしくはX-H2Sのような低いクロップファクタで撮影できる4K120pの撮影フォーマットでした。残念ながらFX30では前述のようにクロップファクタは4K120pの場合は結構大きく、1インチセンサーに近い画角での4K120pとなっていそうです。もちろん4K120pを実装してきたことは素晴らしいのですが、撮影フォーマットによって画角が変わるというのは使いづらいので、ここはちょっと残念ですが価格を考えると高望みしすぎかも。
FXというネーミング
いや、噂段階でずっと違和感があったのがこのFXというネーミング。SONYにはFS7/FS5シリーズの様にSuper35mmのシネマカメララインが存在しています。そのシネマカメラがフルサイズセンサーを搭載してFXになったという理解でいたので、FXという型番はフルサイズのために作られた型番であるという理解をしていました。
今回はSuper35mmを搭載しながらFXという型番をつけていますので、どうやらSONYはFXは今後のシネマライン全機種に共通する型番として使用していくことになるのでしょうね。
メカシャッターレス
このカメラの特徴の一つはメカシャッターレスであるという事です(シネマカメラだという位置づけだからメカがないのはある意味普通なんだけど)。ただし、ローリング速度が4K120pの速度が最大幕速で120p相当だったと仮定すると
1行あたりの読み出し速度は1/120/2160=3.86usec
これをオーバーサンプリング読み出しの時の速度に適用すると
3483(16:9読み出しの垂直画素数)x3.86usec = 13.4msec
概ね74p(1/13.4ms)相当の幕速が導き出されます。これはZ9やα1などメモリ積層型のスチル読み出しに比べると遅い方ですのでストロボ撮影には向かないと言えます。シネマカメラだし、これでストロボ使うって人も少ないでしょう。が、今現在の動画機としては標準的な速さと言えます。α1やZ9と動画の幕速は積層メモリをバイパスして読みだすのでそれらと同等になるはずです。なお、FX30はX-H2のように低いクロップファクタで4K120pを実現するセンサに比べて幕速は遅いはずです。
まぁ、SIGMA fpを愛用している身としてはこれでも十分早いのでFX30でスナップ写真を撮影するとかは全然アリでしょう(これでスナップ写真撮る人がいるとはあんまり思えないけど、スチル機としてもちゃんと使えそうです)。
出力解像度に関して
今のミラーレスカメラは6K近い解像度のデータをそのまま記録するという機種が増えてきている一方で、FX30は6.2Kのセンサーながらその解像度をそのままに出力するという記録方式は存在していません。記録解像度はあくまで4Kとなります。HDMIからの出力時は4672x2628となりますが、いずれにせよ6Kをそのまま記録するというモードが存在しません。おそらくほとんどのユースケースにおいては4Kで十分市場ニーズを満たすという判断なのでしょう。6Kの生データに触れるとスゲーって思うので、ちょっと残念ではあるけどある意味商品ヒエラルキーや実際の使われ方を考慮した仕様なのだと思いますし、これはこれで一つのSONYの答えでしょうしある意味正解かもしれん。
意外だったSONYのAPS-C販売・開発戦略
何が意外だったかというとソニーのAPS-C機の噂が出たときに、α7SIIIからFX3のようにミラーレスカメラをベースに低価格帯シネマカメラへ展開するものと思っていました。販売台数が望めるミラーレスを皮切りに制作用カメラへ展開するという流れですが、今回はシネマカメラが先に登場する形となりました。おそらくこのセンサーはVLOGカムへの布石となり、その際にも戦略的な販売価格で発売されるものと思います。
でも、こっちが先なのか〜という印象を持ったのは私だけではないはず。
尚、このFX30は実は冷静になって考えると、今年発売になった動画特化型のミラーレスカメラに対しては見劣りする点があります。ProRes収録ができない、高解像度(内部、外部)収録ができない、4K120pのクロップファクタが大きい、FHDでの240p撮影も不可で、EVFがなく、メカシャッターもない。一方でFX3共通の空冷ファンを搭載しています。おそらくこのカメラはかなりコストを下げつつも、シネマラインというイメージ戦略にうまく乗っかりつつ「サブ機需要」や「若手クリエイターの新規需要」を狙った商品であると考えています。尖ったスペックはないものの、その戦略的な価格設定で結果的にかなり売れるでしょう。これはSONYだけができる王者の戦略と言えるのかもしれません。
まとめ
とりあえず、FX30に関しては深堀りしていきたい部分がいっぱいありますので、今回はこれくらいにして印象を述べますと
FX3を持っている人にとってのベストなサブ機
という印象を受けます。
FX3は画素数がほぼ4Kということもあり、望遠撮影などは正直向かない機種です。水平解像度も総画素数をかなり控えめにしていることからクロップ撮影にもあまり向かない機種です。そこに対して、APS-C(Super35mm)の画角で水平画素数が6.2KのFX30を投入するあたり、非常にユーザビリティを考えた機種だと思います。
PRONEWS https://www.pronews.jp/news/202209282300336115.html
ちょっと寄った画角で解像度が欲しいという場面は多くの撮影でありますので、FX30をFX3のサブ機として用意するのは非常に理にかなっていると言えます。
また、価格もかなり戦略的ですので、これから動画を始めたいという方にとってもFX30は選択肢の筆頭にあがるカメラとなるでしょう。
筆者:SUMIZOON
Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOON の人
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