ビデオ雲台と自由雲台を取り換えるのって意外と面倒です。
・撮影現場でくるくると雲台を外して、別の雲台をくるくると取り付ける。
・ビデオ雲台が付いた三脚と自由雲台が付いた三脚を2本撮影現場に持っていく
どっちにしてもしんどいです。前者は時間がかかるし、後者はアシスタントでもいない限り体力を奪われます。
今回は今さらながらiFootage Seastars Q1Sを紹介します。と同時に多くの撮影ケースで使える三脚システムについて記載していきたいと思います。
まずは、このシステムを使うとどれだけ雲台の入れ替えが速くなるのかをご覧ください。30秒ほどの動画です。
あれこれ紹介していきますが、キモはこの一つのパーツです。画期的に雲台の入れ替えをラクにしてくれるパーツとして素晴らしいものだと思います。
私の普段の三脚システム
以前にも書いていますが、私のメインの三脚(INNOREL RT90C)と雲台(ザハトラーFSB6)は大型のもので、リュックに括り付けて街中を歩くような事はできません。この三脚や雲台に関してはものすごく気に入っていますが、基本的には飛行機撮影の機材です。
この10年、三脚を含めた撮影機材の進化は目覚ましくジッツオやハスキーじゃないとダメという考えは時代錯誤になってきたと思います。
知ってたけどこんなに便利とは知らんかった
前回、渓谷撮影に行ったときに「なぜ私が固定撮影のみにしていたのか」、そのオチを含めた記事を書きました。結果、それはそれでいい映像を撮れたのではありますが、ビデオ雲台を使ってパンする映像も本来は撮りたかったのです。
そもそも撮影現場で雲台を取り外して付け替えるってのは結構面倒。ビデオ雲台付いた三脚と自由雲台付いた三脚を両方もって長時間歩くなんてのは論外。ならばビデオ雲台だけもっていけばいいじゃんとなりそうですが、ウチのビデオ雲台はどれも大型のものだし、そもそも縦構図の写真も撮ることを想定していたので結局は自由雲台を付けた軽量の三脚一本で渓谷を撮ることにしました。
ですが。。。。。
「それなら三脚撮影時に雲台を剛性を保ったままスピーディに入れ替えられる便利なパーツあるよ~」と森脇先生から連絡。
いや、なんとなくその手のパーツはあることは知っていたのですが、結局重くなるし剛性的にどうなのよ?と思ってここら辺の製品は避けてたんですよね。。。
で、今回は森脇先生が使っているシステムをまんま試させていただきましたが、これが想像以上に良かったのでこのエントリを書いています。相変わらず前置きが長くてスマヌ。
システム詳細
システムを見ていきます。
・IFOOTAGE クイックリリースシステム Seastars Q1S
・IFOOTAGE クイックリリースシステム Seastars Q1S プレートのみ
・IFOOTAGE クイックレベラー QL-I
・IFOOTAGE ビデオ雲台 Komodo K5
・IFOOTAGE ボールヘッド M30
・Fotopro 中型カーボントラベル三脚 X-6CN
IFOOTAGE クイックリリースシステム Seastars Q1S
まず今回のキモとなるパーツがコレ
下部のベースと上部のプレートがセットになったもので、ワンタッチで着脱を行う事ができます。
※世の中にはアルカスイスクランプ&プレートやマンフロットクランプ&プレートがポピュラーですが、いずれも着脱時にネジを締める作業が必要になります。そもそもそれらのクランプは三脚と雲台を着脱する目的では使われないのです。あくまでカメラと雲台の着脱を楽にするものがアルカクランプ、マンフロットクランプです。一方で。。。
Seastars Q1Sは明確に雲台と三脚を着脱させる目的で作られているのでその強度は強く、ガタは一切なし。最大積載荷重は9kgを想定しています。つまり雲台そのものを入れ替える事を想定しています。
IFOOTAGE クイックリリースシステム Seastars Q1S セット | アサヌマネットショップ
発売日は2021年5月21日です。Seastarsつまりヒトデです。見た目がまさにヒトデですが、この形はリリース時に比較的少ない力で取り外せるように考えられたもので理にかなっています。
IFOOTAGE クイックレベラー QL-I
いわゆる水平出しに必須なのがレベラーです。スチルの場合は構図を決める際に雲台より下部の水平が取れていなくても自由雲台側で水平を取れますが、動画で水平方向にパンするような使い方だと、そうはいきません。
パンニングさせる場合は雲台の根本に水平が取れている事が必須だからです。
大きな雲台は基本的にボウルを使ってレベリング(水平出し)を行いますが、軽量な三脚や雲台の場合は基本的にボウルがありません(いわゆるフラットベース雲台)。そのフラットベース雲台で水平出しに必須なのがレベラーとなります。
IFOOTAGE クイックレベラー QL-I | アサヌマネットショップ
このレベラーの動きはヌルーっとしていて水平出しが私の持っているボウル雲台よりも出しやすいです。
IFOOTAGE ビデオ雲台 Komodo K5
で、三脚に載せるビデオ雲台です。
カウンターウェイトは可変ではありませんので、チルト動作をさせる場合はチルトロックをある程度半締めにして使用することになると思います。
IFOOTAGE Komodo K5 | アサヌマネットショップ
この雲台のいいところは重量が760gと小型軽量であること。動きも悪くないです。そもそも冬場に弱いフルード雲台ではなさそう。
IFOOTAGE ボールヘッド M30
自由雲台ですがちょっと変わった構造をしています。これ、アルカスイスとマンフロットプレートの両対応のクランプが付いています。
IFOOTAGE ボールヘッド M30 | アサヌマネットショップ
ありそうで意外と見たことがない。尚、一見スライド式に見えますがストッパーの構造上サイドロードタイプになります。むしろスライドタイプは結構現場でハマらずにイラっとすることがあるので上からハメるサイドロード式の方が手間がかからないので好きです。ですが、装着時にしっかりハマっているかを確認する様にしましょう。
初めは装着のコツが少しありますが慣れれば非常に便利です。ストッパーが飛び出た状態ではしっかりハマっていない事が分かるのでこれも地味に便利です。
Fotopro 中型カーボントラベル三脚 X-6CN
最後に三脚
コレだけはiFootageではなくFotoproです。というか剛性が高く、コスパがいい中型のトラベル三脚として割と有名な一本です。三脚部の重さは1.66kgです。三脚のうち一本は取り外しができますので一脚としての使用も可能です。耐荷重は4.5kgとなっていますが、剛性は高いです。流石に脚の太い大型三脚とまではいきませんが、ほとんどのケースで使える三脚と思ってよいかと思います。
Fotopro 中型カーボントラベル三脚 X-6CN | アサヌマネットショップ
ただ、X-6CNは発売から少し経っているという事もあって在庫はかなり少ない模様です。ヨドバシとかは取り寄せになっています。
注意点を説明しつつ組み立ててみる
手順を紹介します。
①付属の六角レンチで雲台の底面にあるイモネジを外す
まずはFotoproの三脚から付属の自由雲台を外して別の雲台を取り付けますがその際に注意すべきは雲台底面のイモネジを外すことです。
さて雲台を外すとこの様にイモネジが見えます。これを締める(出っ張らす)事により雲台が外れる事を防ぐ構造になっています。
今回のシステムでは回転部全てにイモネジが採用されていますのでコレを忘れないように締めるようにします。尚、上記プレートと三脚のポールを固定するイモネジも付いています。これもしっかり締まっている事を確認したほうがいいでしょう。
②IFOOTAGE クイックレベラー QL-Iを取り付ける
レベラーを3/8インチネジををとりつけて固定します。
回して底から先程のイモネジを締め付けます。
このイモネジですが、締め付け過ぎには注意した方がいいです。と言うのもこのネジをきつく締めつけ過ぎると取り付けた位置によってはレベラーの動きが硬くなることがあるからです。
※このレベラーは下図の様にレバーを締める事によって赤い矢印で示したようにリングが閉じることによってレベラーが固定されます。逆に開放時にはこれが緩む事によってレベリングが可能となります。この構造が下からイモネジを強く締めすぎると下のプレートが上部に押し出される状態となり、レバーの締め付け・開放をしてもうまく動かない状態となります。3/8インチネジはオレンジの矢印の様にレベラーを引っ張る下向きの力が働き、イモネジは緑色の矢印の様にレベラーの下部を押し上げる構造になります。つまり、強くイモネジを締め付けるとプレートが微小な歪みを生み、レバーが開放されにくい状態になるのです。つまり締めすぎに注意です。レベラーの動作が鈍くなり過ぎないようにイモネジを注意しましょう。
③IFOOTAGE クイックリリースシステム Seastars Q1Sを取り付ける
さて、今回のシステムの中心的な存在はコレです。一度使うとやめられないやつ。すんばらしいしパーツです。
三脚に取り付ける「ベース(下部)」と雲台に取り付ける「プレート(上部)」が一体化されている状態で梱包されていると思いますが、これの取り付け方を紹介します。実はこの内側にもそれぞれ回転止めのイモネジがあるので、これをしっかり取り付ける必要があるのです。そのためにはまず、ベースとプレートを分離する必要があります。
ベースとプレートがくっ付いた状態を簡単に分離するために先に三脚(レベラー)に取り付けます。
この際にガッツリ締め付けます。(じゃないとQ1Sが外すときに回転でベースごと外れてしまいます)
しめつけたら「プレート部のみ」を外します。ヒトデ型の出っ張りを半時計方向に回すだけです。この時に私はレベラーの水準器を人差し指、ヒトデの出っ張りを親指にかけて回すようにしています。これだと力が入れやすい。
プレートが簡単に外れますので、ベースの内側のイモネジを締めます。このネジを締め付ける前にもう一度ヒトデを時計方向に締め付けてからイモネジを締めると良いです。
④IFOOTAGE クイックリリースシステム Seastars Q1Sのプレートを雲台に取り付ける
小型のビデオ雲台である、IFOOTAGE ビデオ雲台 Komodo K5に先程のプレートを取り付けてみます。
ビデオ雲台側は3/8インチネジの穴ですので、そのままQ1Sのネジがハマります。これをくるくるして取り付けます。その際に雲台側のパンロックをしっかりした状態にします。
で、ここにもイモネジがあるので締めます。プレートと雲台をしっかり締ために、一度三脚に取り付けてテコの原理で締め付けるのもアリですが、①付属の大きい六角レンチの方でで中心を締め付けてから②イモネジを締め付けるというのを推奨します。
⑤IFOOTAGE ボールヘッド M30にもプレートを取り付ける
なぜこのボールヘッドが今回のシステムに最適なのかについてまず述べておきます。
動画撮影における多くの雲台はマンフロットタイプのプレートですが、写真撮影における一般的なプレートはアルカスイスタイプが一般的です。マンフロットタイプの自由雲台は少なく、マンフロットとアルカスイスを両対応している自由雲台はかなり数が限られます。IFOOTAGE M30を使うと、マンフロットタイプの雲台をつけたままでも使用可能ですし、写真撮影でアルカスイスイプレートを使う場合においてもそのまま付けられる。というメリットがあります。
で、これにもQ1Sのプレートを取り付けていきます。Q1Sのプレートは単体でも販売されていますので、三脚ひとつに対して雲台2個の組み合わせを想定しているならQ1Sのプレートのみを購入するのがよいと思います。
で、単純にこれを雲台(M30)に取り付けるだけ。先ほどのビデオ雲台と同じ様にパン方向のロックをかけて締めこめば簡単に装着が完了です。
この際にQ1Sプレートにあるイモネジは使わないので外しておくのがよいです。箱にしまって大事に保管しておきました。
完成
いや、大人のレゴブロックですな。
ちなみに、このシステムをTwitterで紹介した事があるのですが、画期的に思われた方が多かったようで多くの反応を頂きました。
むちゃくちゃ雲台の入れが替え速くなった
— SUMIZOON (@sumizoon) September 4, 2022
ミニスライダーなど使う人にも良い
IFOOTAGE Seastars Q1S pic.twitter.com/AG4yPNUT5n
システムとして非常に軽量でヘッドの入れ替えが撮影現場で、もものの数秒で終わってしまいます。ヘッドの入れ替えは結構面倒な作業ですので、現場でやろうなんて発想はあまりないですが、これならヘッドを交換しようという気になります。
また、ヘッドに限らず、愛用しているヘッドをスライダーに装着したいといったニーズにもiFootage Seastars Q1Sはぴったりだと思います。
これでビデオと写真両方を撮り歩くのが楽しみになりました。
おまけ
Seastars Q1Sやボールヘッド M30以外にもiFootageのパーツは非常に使い勝手を考えられていると感心させられた点があります。それはビデオ雲台 Komodo K5のマンフロットタイプのプレートに関してです。
このプレート、一見すると単なるマンフロットタイプのプレートに見えますが実は前方と後方の間に段差が設けられています。
マンフロットタイプのプレート
最近のミラーレスカメラは、カメラボディの小型化に伴い、ボディに対して大きなレンズを付けた場合に下の写真の様にプレートとレンズが干渉するケースが散見されるようになりました。これ、強く締め付けると最悪はマウント破損に繋がります。
マンフロットの純正プレート
iFootage Komodo K5付属のマンフロットタイプのプレートでは、前方と後方に段差があり、後方は厚みがあり、前方は薄い構造となっています。これによりレンズがプレートに干渉することを防ぐ役割をします。
iFootage Komodo K5付属のマンフロットタイプのプレート
こういったプレートは他にはほとんど無く、現在のミラーレス事情を鑑みた構造をとっていて「iFootageやるやん!」と思った次第です。ここだけ見てもこのメーカーを応援したくなりますわな。今まで食わず嫌いですいません。いいメーカーだわ。
筆者:SUMIZOON
Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOON の人
チャンネル登録して頂けると幸いです