とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ

ビデオグラファーsumizoonのブログ 一眼動画に関する機材や撮影方法を中心に情報を発信していきます。

結局Apple M1チップ搭載 新型MacBookProは動画編集に適しているのか

新型MacBookProはごく一部の人を除いて、実物を扱ったことは無いと思います。当然私もその一人ですが、この新型MacBookPro 13インチについて考えてみたいと思います。(というかコレを書いている時点で考えはまとまっていないので、書きながら結論まで持っていこうかと。。。)

https://www.apple.com/jp/macbook-pro-13/images/overview/camera_hero_hardware__cfpmer0zbeeu_large_2x.jpg

https://www.apple.com/jp/macbook-pro-13/

PowerPCからIntel、そしてApple Siliconへ

学生時代からDos/VWindowsは使っていたものの、基本はMacMacintosh)ユーザーであり私の初めて手にしたMacはClassicIIになります。(今も大切に実家に保存していますが年がバレるよね。。)
その頃CISCベースのモトローラMC680xxからRISCチップのPowerPC(当時のIBM/モトローラ/Appleによる共同開発によるRISCプロセッサ)になったのも大学生の時。私が最後にモトローラ製CPUを使っていたのはMC68040に換装したMacintosh LC475。今思うとあれで構造解析プログラムとかを走らせていたのが信じられん。。。当時は一気にプロセッサを切り替えるのではなく、旧680xxとPowerPCを併売していてPowerPCへの切り替えにはかなりの時間を要していた記憶があります。

社会人になっても基本スタンスは変わらず、会社でも周りがWindows98を使う中で意地でもMacを使い続けていました。MacとMacDRAW II/ProとIgor Pro、Eudraがあれば大概の事務仕事はできたので良い時代だったなぁと。。。

そして時は流れ2006年 AppleはそれまでのPowerPCからIntelベースにCPUを変更する事を発表しました。かくいう私もその第一弾のIntel iMac初代を発売日に購入した一人です。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/5b/Imac17pouces.png/500px-Imac17pouces.png

https://ja.wikipedia.org/wiki/IMac_(%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%AB%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B9)#iMac_(Early_2006)

 それまでPowerPC製のiBook/PowerBookiMovieで編集していた私にとって、PowerPCの性能はIntelに水をあけられている感じでなんとも歯がゆい気分でした。そこへ来てIntelMacの発表。当然ソッコーで購入したものでした。当時はIntel Core DuoPentium Mの後継にあたる32bitCPU。それでも旧PowerPC用のコードで書かれていたアプリも大概は問題なく動作しておりコード変換する技術Rosettaのすばらしさと驚きを感じました。iMovieは早々にユニバーサルバイナリになっており、それはそれは結構快適に編集していたもんです。まぁ当時はSD画質でDVテープをFirewireを使ってシーケンシャルに読み込むなどという原始的な方法で動画編集をしていたんですよ。若い人は信じられんと思うケド。

 とは言えIntel Mac発表時の大々的な持った感の「従来比何倍!」スペックてのにはちょっと感覚的に及ばない感じがしていたのも確かです。あれ?もっと速いんじゃないの?と。。。
さて、今回のApple Silicon M1の登場でAppleが大々的に言う「従来比何倍!」と言うのがどうなのかと言う点も含めてちょっと書いてみたいと思います。

相変わらず前置き長いよね。。。

Appleの謳い文句に裏がある?

ちょっと気になるのがAppleがうたう宣伝文句「8K ProResを1フレームも落とさずDaVinci Resolveで再生できる」と言う点。確かに凄そうですが、これは今までの多くのMacBookProでも普通にできていた事ですし、ProResってのは時間圧縮がないALL-Iコーデックなのでデータレートは高いですがPCに非常に優しいコーデックです。確かにプロモーションとしては8Kがコマ落ちしないと言うのはわかりやすい表現ですが、少し違和感があるんですよね。他に分かりやすいプロモーションの仕方がなかったのだろうかと言う気がせんでもない。(まぁわかりやすく性能表現するなら正解なんだろな。。。)

とは言え、従来のMacBookに対して性能比率で考えた場合、非常にコストパフォーマンスが高いのは間違いないと思います。てな訳で以下あれこれ書いていきます。

 新型MacBookProのGPU性能

まずは、Apple公式のページに書かれている新型MacBookのグラフィック性能について考えていきたいと思います。

www.apple.com

このページには新型MacBookのグラフィック性能は旧MacBook Proに比べて5倍という記載があります。

注釈もちゃんと読むと下記の文言にたどりつきます。

Apple M1チップ搭載13インチMacBook Pro試作モデル、Intel Iris Plus Graphics 645を装備した1.7GHzクアッドコアIntel Core i7搭載13インチMacBook Pro量産モデルを使用し、2020年10月にAppleが実施したテスト結果によります。すべてのシステムに16GBのRAMと2TBのSSDを実装。3,840x2,160解像度、毎秒30フレームのApple ProRes 422ビデオを含む10秒のプロジェクトを使用し、リリース前のFinal Cut Pro 10.5でテストを実施。パフォーマンステストは特定のコンピュータシステムを使って実施したもので、MacBook Proのおおよその性能を示しています。

と言う訳で、ここで言う「5倍の性能」と言うのは比較対象がIntel Iris Plus Graphics 645と言う事になります。ではIntel Iris Plus Graphics 645がどのくらいの性能なのかと言うことを見てみます。

ベンチマークサイトに記載されているIntel Iris Plus Graphics 645と現行MacBookPro16インチに搭載されている中堅どころのGPU Radeon Pro 5500Mの比較をしたものが下記になります。

www.videocardbenchmark.net

このサイトによると

Intel Iris Plus Graphics 645 =1812

Radeon Pro 5500M =6714

当然Intel Iris Graphicは基本性能が劣りますがAppleの公式ページの5倍と言う数値をそのまま素直に受け取ると

Intel Iris Plus Graphics 645 x 5=1812 x 5 =9060

とすると

新型MacBook Pro > Radeon Pro 5500M

と単純に決まってしまう事になります。うーん新型MacBookの内蔵GPU性能が外部GPUの性能に勝ってしまうのか?

とは言えここらへんのプロモーション上の数値は3Dのタイトルを使った場合の記載にフォーカスして記載されているので、これをそのまま鵜呑みにしてしまうのも時期尚早かと思います。

f:id:sumizoon:20201112203506p:plain

https://www.apple.com/jp/macbook-pro-13/

そもそも、3Dのレンダリングに関してはIris645が極端に遅かったと言う見方もできますし、FinalCutProXの処理は通常の映像素材のレンダリングがメインとなりますので、FinalCutProXが5倍快適になると言う訳ではないのではないかと考えています。

まぁ、それでもIris645を使った編集よりも遥かに快適になるのは間違いないと思います。内蔵GPUとして飛び抜けているのは恐らく間違いないでしょう。今後ここら辺はもう少し注視していきたいと思います。

CPU性能は?

動画編集ソフトにもよりますが、単に素材プレビューを行っている場合の処理はCPU側でデコード処理を行っている事が多いので、プレビューの快適さに直結すると思います。で、今回のApple M1チップの謳い文句が下記

f:id:sumizoon:20201112192632p:plain

https://www.apple.com/jp/macbook-pro-13/

f:id:sumizoon:20201112193352p:plain

https://www.apple.com/jp/macbook-pro-13/

ううむ、何やら魅力的な数値が書いていますが、このProResトランスコードの2.8倍の条件についてもう少し見てみましょう。

Apple M1チップ搭載13インチMacBook Pro試作モデル、1.7GHzクアッドコアIntel Core i7搭載13インチMacBook Pro量産モデルを使用し、2020年10月にAppleが実施したテスト結果によります。すべてのシステムに16GBのRAMと2TBのSSDを実装。Apple ProRes 422にトランスコードした4KのApple ProRes RAWメディアを含む55秒のクリップ(4,096x2,160解像度、毎秒59.94フレーム)を使用し、リリース前のFinal Cut Pro 10.5でテストを実施。パフォーマンステストは特定のコンピュータシステムを使って実施したもので、MacBook Proのおおよその性能を示しています。

このサイトによれば

1.7GHzクアッドコアCore i7のスコアは3960(シングル1050)

実はすでに同サイトにはApple M1搭載のMacBook Airベンチマークが載っていて

Apple M1 搭載MacBook Airのスコア:7430(シングル1685)

と言う数値になっています。流石にAppleの言う2.8倍とまでは行かないもののこれは結構驚異的な数値じゃないかと思います。 

tabkul.com

なお、私のMacBookPro16のGeekbenchスコアは6114(シングル1127)※引用元

さらにMacBookPro16のCore i9-9980HK 2.4GHzの最上位CPUでもスコアは7000に届きません。

つまりどう言うことかと言うと

現行の全てのMacBookProよりもApple M1のCPU性能は高い

と言う事になります。マジか。。。。しかもMacBookAirに関してはファンレス

発熱は大丈夫なのか、と言う気もするのですが、普通にベンチマークが取れているので通常使用なら全く問題ないんでしょうね。。。ヤバいマシン様な気がする。

メモリは足りるのか

とはいえ、結局私が新型MacBookProで最も心配するのがコレです。そもそも新型MacBookProのメモリは最大で16Gまでの搭載となっています。普段私はDaVinciを使用する場合はデスクトップPCを使って編集していますが、このPCのスペックをざっくり書くとCore i9 9900K + nVidia  RTX2060 Super(6G) + メインメモリ32G。出先で使用するPCはMacBookPro16 2019 (Core i9 9880H + AMD Radeon Pro 5500M + メインメモリ32G)です。
ですが、これらのスペックでは4Kをプロキシ無しで編集した際にメモリ不足を起こす事があります。(頻繁ではないけどノイズリダクションなどの処理をすると大概メモリ不足に陥ります。多くはGPU側でメモリ不足の警告で、これが起きると再起動を余儀なくされます。)

そういった意味で今回のユニファイドメモリ(CPU/GPU兼用)が最大16Gと言うのはかなり不安要素となります。せめて32Gの選択肢が有ったら安心なんですけどねぇ。
メモリが効率的に使える様にOSが賢くチューンされているのかもしれないですが、ほんとにこのマシンでS1HやS5+Ninja Vで撮る5.9K ProRes RAWの編集に耐えられるのか否かは非常に興味があるところです。

eGPUが使えない

eGPUとはThuderbolt経由で外付けGPUに仕事をさせて高速化を図ると言う、結構マニアックな使い方です。GPUボックスとGPUが必要になるものの、一部のMacBookMacMiniでは性能の低いCPU内蔵のGPUを使うため、コアなユーザーには重宝されてきたのがeGPUです。

↓こう言うやつでデカくて高いので私は正直、あんまり食指が伸びないやつで使った事がない。。。

まぁ基本性能が高いのであればeGPUが使えないところで大した問題ではないのではないかと思いますが、eGPUを使って最新のGPUを外付けしてウェーイって言う使い方はどうやらできないらしい。まぁ、もしかしたら将来的に対応する可能性もあるのかもしれないけど、Irisの5倍速いと言うのが本当なら当面要らんと思います。

japanese.engadget.com

今のところの私の考え

4Kのカット編集とかはおそらく全然問題ないと思います。むしろ快適そのものと推測します。なので、外でカジュアルに簡易編集とかをするのであれば、この新型MacBookProもしくはMacBookAirで大概の作業は事足りてしまうのではないかと思います。ただし、DaVinciでゴリゴリにカラーグレーディングしたりノイズリダクションをかけたりするとおそらく音を上げるかと思いますのでそこは使い方次第じゃないかなと思っています。

あとMacだったらFCPXが動作として非常に軽いと言うのがありますので、メモリさえどうにかなればProResRAW5.9Kが新型MacBookPro13で快適に編集できたりしないかなぁ。。。

とりあえず、MacBookPro/MacBook共にAirMacBookPro16の最上位に勝っている可能性が高い訳ですが、ディスプレイの大きさやメモリ搭載量を考えると現行のMacBookPro16(Core i9ならば)の方が動画編集には向いていると思います。でもねぇ、値段が全然違いますわな。。。8Core/8CoreGPU+16GBのMacBookAirでこの値段。現行のMacBookPro16の半額以下

 

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LUMIX S1H 5.9K ProResRAW firstlook (LUMIX S5発表記念?)

上記はかなり無理させたMacBookPro 2014(core i7 メインメモリ16GB)のFCPXで編集したProResRAWの作例。記事を読んだついでにご覧頂けると幸いです。きっとこの時より快適に編集できるんでしょうね。

 

なぜかAmazonでは8GBモデルしか販売してないんよね。。。

 

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筆者:SUMIZOON

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