とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ

ビデオグラファーsumizoonのブログ 一眼動画に関する機材や撮影方法を中心に情報を発信していきます。

グローバルシャッター SONY α9III 予想の遥か斜め上&ローリングシャッターの終わりの始まり?

はじめに

いや、ブログを書くつもりは無かったんだけど、ちょっと(いや実際はかなり)気になったので記事にしました。

FE 300mmF2.8 GM OSSなどの他の発表がありましたがここでは「α9III」にフォーカスします。

https://www.sony.jp/ichigan/a-universe/special_event20231103/

ライブ配信されたSONYスペシャルイベントの中から掻い摘んで紹介していきます。


Special Event - November 7 | Sony | α
www.youtube.com

ちなみに4年前に書いた下記記事を併せてご覧頂けると嬉しいです。

sumizoon.hatenablog.com

ベールを脱いだSONY α9III 発表概要

Special Event - November 7 | Sony | α - YouTube

ライブ配信動画

ライブ配信された本編はこちら


Special Event - November 7 | Sony | α
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Special Event - November 7 | Sony | α - YouTube

24.6MP 2460万画素グローバルシャッター

いや、最初から「マジかー」となりました。「ええ、奥さん!ぐろーばるしゃったーですわよ!!」

Special Event - November 7 | Sony | α - YouTube

これは直近で発表された産業用途のPregiusシリーズ(IMX900)に搭載されているボルテージドメイン型の二層積層技術を使ったものだと推測します。画素領域側で電荷を電圧に変換、電圧レベルを処理回路側に配置された容量に一時保持、以降はローリング読み出しをすることで露光の同時性を担保する構造と思われます。

https://www.sony-semicon.com/files/62/news/i_2023_2023101901/j-1.jpg

IMX900の説明資料より

https://www.sony-semicon.com/ja/info/2023/2023101901.html

 

https://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/202311/23-1107/images/img_004.jpg

α9IIIの説明資料より

https://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/202311/23-1107/ 

いや、数日前に以下の記事を読んでいた時に「まだまだCMOSグローバルシャッターは産業用途など限られた分野だけで使える技術よねぇうんうん」「やっぱり画質を考慮するとCMOSグローバルはミラーレスには使える時代はまだまだ来ないのよねぇ」。とか思っていましたが、完全に間違っていたと言えます。

2023.11.9 追記
画質に関してはかなり明らかになってきましたが高感度のノイズに関しては同画素数のローリングシャッター機に比べ耐性は結構低い様です。これに関しては記事の終わりに追記します。

monoist.itmedia.co.jp

尚、センサーシールドは搭載されていて、ダスト対策の他に、ダーク減算時に使用できるものと思います。

映像エンジン BIONZ XR

BIONZ XRで8倍の処理速度を実現としている。そもそもBIONZ XRはα7IVでも搭載されているプロセッサですが同一なのかどうかは不明。

ここはUp to 8xとされてますが、直近の機種に比べての話ではなさそう(というか情報を追いきれてないです)。

当初、当該カメラのエンジンをデュアルチップ構成と記載しましたが、コメント頂いた通り、SONYのカメラは今現在(BIONZ X以降)ISPを含む画像処理エンジンとフロントエンドを分担させる2チップ構成をとなっている様で、それらを含めてBIONZ XRと呼ぶとのことをご指摘いただきました。

コメントいただいたMEMS様ありがとうございました。


Special Event - November 7 | Sony | α - YouTube

・120fps撮像可能/SpeedBoost


Special Event - November 7 | Sony | α - YouTube

これはシャッター半押し状態では60fps、全押し状態では120fpsで撮像するもの。面白い機能です。

 

ストロボ同調速度 1/80000

グローバルシャッターとなった事によりシャッター幕の全開タイミングの制限がなくなりました。なのでとんでもないことが起きます。


Special Event - November 7 | Sony | α - YouTube

これヤバい。。。日中シンクロの概念がまるで変わるもの。いままではメカシャッターのストロボ同調速度は速くても1/400程度だったと思うのでそれとは次元が全く違う。。。というか違い過ぎる。明るいレンズで開放で撮っても日中シンクロでND不要。あ、すいません、ヤバいとか書きましたが私ストロボワークほとんど出来ない人なのでそれくらいしかメリット思いつきません。。でも今までやれなかった事ができるのは素晴らしいと思います。

 

尚、F1.8より絞りを開けるとシャッタスピードは最大1/16000に制限されるらしい。でも早いよねぇ

8段分の手振れ補正効果

ここは実際どれくらい効果があるのかは各社違いがあります。


Special Event - November 7 | Sony | α - YouTube

そもそもEマウントはイメージサークルに対してフランジが極端に小さいのでBISの移動距離に制限があるマウントです。なので小さい手ブレに対しては効果が高いものの大きなブレに対してはどのくらいの効果を示すのかは分からない部分です。

動画機能

もちろんグローバルシャッター機なので歪の無い撮像が可能


Special Event - November 7 | Sony | α - YouTube

6Kからのオーバーサンプリング4K60p撮影が可能。

4K120pはクロップ無し。ただし4K120pはオーバーサンプリングとは言ってなかったと思いますが、常識的に考えてこちらもオーバーサンプリングと思えます。

なによりグローバルシャッターはポストスタビライザーとの相性性が抜群なので、ポストスタビをかけたとしても変な歪みがないと言えます。

4軸マルチアングル液晶

チルトとバリアングルを組み合わせた構造の4軸マルチアングル液晶を搭載

Special Event - November 7 | Sony | α - YouTube

既に同社やS1Hで実用化されている同機構ですが、チルト派とバリアングル派の両方を満足させる仕様です。

944万ドットEVF

240fps駆動も可能なようですが、120pの方が画質が良さげの様です。またアイポイントは25mmなのでα7SIIIとかと同等も模様。あのファインダ見やすいのよね。


Special Event - November 7 | Sony | α - YouTube

価格と発売日

5999ドル、2024年春発売との事

日本の販売価格は未定だけど80万円は超えるものと思えますが、ある意味安いのかもしれません。
→880,000円前後で2024年1月26日発売の模様です。


Special Event - November 7 | Sony | α - YouTube

詳細スペック(追記)

公式HPでα9IIIの公式スペックについて明らかになったので追記します。

www.sony.jp

とりあえず気になる部分を記載します。

 

・カメラ有効画素数:静止画時: 最大約2460万画素、動画時: 最大約2030万画素

・動画記録フォーマット:4K119.88p (最大280Mbps) / 4K59.94p(最大600Mbps) 

ISO感度:ISO250~ISO25600 

・シャッター方式:電子シャッターのみ(センサーシールドは有り)

・フラッシュ同調速度:1/80000

・連続撮影速度 :Hi+: 最高約120コマ/秒

・連続撮影可能枚数:

 JPEG Lサイズ エクストラファイン: 192枚、JPEG Lサイズ ファイン: 192枚
 JPEG Lサイズ スタンダード: 192枚、RAW: 192枚、RAW+JPEG: 192枚
 RAW (ロスレス圧縮): 96枚、RAW (ロスレス圧縮)+JPEG: 96枚
 RAW (非圧縮): 96枚、RAW (非圧縮)+JPEG: 96枚

・その他:動画撮影時ブリージング補正あり、プロキシ記録対応

・質量(重量): 約703 g(バッテリーとメモリカードを含む)

・静止画撮影可能枚数:
 ファインダー使用時: 約410枚、液晶モニター使用時: 約520枚 (CIPA規格準拠)

・実動画撮影時:
 ファインダー使用時: 約90分、液晶モニター使用時: 約95分 (CIPA規格準拠)

・電力:
 ビューファインダー使用時 静止画撮影時: 約4.8 W/動画撮影時: 約6.8W
 液晶モニター使用時 静止画撮影時: 約3.8 W/動画撮影時: 約6.6W


ベース感度が高めですがこれはグローバルシャッター化に伴う弊害が生じている可能性もあります。(推測ですがベース感度を高めに設定しないと高感度特性が維持できない等)

また、電力に関しては若干α1よりも高め。撮影枚数も少ないですが、さほど差はない印象です。

グローバルシャッターの何が凄いのか

ここをご覧の方はグローバルとローリングの違いがわからないと言う方もおられると思いますが、軽く説明します。

ローリングシャッターは画面上部から画面下部までの露光開始〜露光終了(読み出し)までの時間差が生じるセンサーです。センサーにも依ますがその時間差は10〜30msec程度の時間差があります。

ミラーレスカメラに搭載されている電子シャッターと言われるものは基本的に従来はこのタイプのもので高速に移動する被写体を、メカシャッターレスで撮像すると少なからず歪みが生じました。そのためスチルでは幕速の速い機械的なメカシャッターを使うというのが一般です。

そのメカシャッターの代わりに「電子シャッターをつかってしまえ」という発想に至ったのが初代α9であり、完全なメカシャッターレスを実現したNikon Z 9だったりするわけです。ですが、α9もZ 9もローリング速度は超高速でありながらもメカシャッター速度程度かそれ以下の速度のローリング速度(3msec程度)でした。高速な列A/Dを搭載し行毎に順次読み出しを行う方式です。

グローバルシャッターはそれとは異なり、露光は同時。厳密に言えば画面内でのスキュー(露光開始時間の面内ばらつき)は発生するものと思いますが、その同時性はほぼ担保されているはずです。

ゴルフスイングを撮ろうと、カワセミの飛び込みを至近距離で撮ろうと歪み無しの撮像を実現します。

もともとグローバルシャッターはCCDを言われる撮像素子にできた芸当ですが、そのCCDはS/Nが悪く民生カメラではほぼ淘汰されています。デジカメ黎明期では広く使われていたCCDはやがて画質の良いCMOSに置き換わりましたが、その代償としてローリングするセンサーとなったわけです。でもメカシャッターのあるカメラであればそれでもなんら問題なかったのです。

今、ミラーレスカメラはメカシャッターレスの時代に突入しだしました。それは前述のα9やZ 9が切り開いたものですが、メカシャッターに相当するほど高速なCMOS技術ができるようになったからです。

ですが、α9の場合は電子シャッターで同時性を担保するところに到達した初めてのミラーレスカメラ。もちろんメカシャッター(シールドはあるけど)なんてものはそこには存在しません。そもそも必要がないからです。

https://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/202311/23-1107/images/img_004.jpg

https://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/202311/23-1107/

と、ここまでは一般的な話ですが、α9IIIの凄さはそれを発売にこぎつけたという点にあります。グローバルシャッターは画質に難ありとされていました。CANONのシネマカメラもSONYのシネマカメラ(CineAlta F55)もグローバルシャッターを搭載していましたが画質がイマイチと称されていた印象があります。REDもKomodoではグローバルシャッターですしZ CAMもグローバルシャッター機がラインナップされていますが、ローリングシャッター機に比べて画質的に劣るというのが一般的な見方です。

なので、私は長年「ミラーレスカメラに搭載はできるけど搭載しない」という技術がグローバルシャッターだったという理解をしています。

それをやってのけたα9III。こうして大々的に発表するからには画質は過去のリーリングシャッター機に対して劣る部分は少ないのでは無いかと思います。はやく実物が見てみたいです。(ここに関しては最後の画質の部分をご覧ください)

事前の噂

デジカメInfoによる事前の噂は下記の様なものでした。

ソニー「α9 III」はブラックアウトフリーで120コマ/秒の連写が可能? 

ブラックアウトフリーで120秒/秒の連写という噂。→本当だった

ソニー「α9 III」はグローバルシャッターの2400万画素センサーを採用?

こちらもグローバルシャッターを搭載するというもの。一般にCMOSセンサーのグローバルシャッターは実用化されているものの、画質が一般のローリングセンサーに比べて悪いとされています。一度電荷をアナログメモリに蓄える方式が一般ですがその構造のため画質が大きく低下するのでマシンビジョンなどの一部の限られた分野での使用が一般的。なので私は懐疑的に見ていました。。が、→本当だった

ソニー「α9 III」には世界初の機能が搭載される?

LiDARによるAFや測距機能が採用されるというもの。LiDARセンサーは発光された光源に対して反射する時間を計測するものですので、原理的に反射光が得られる比較的至近距離までにしか使えない技術です。すくなくともこれはデマだったようです。

感想

そもそもこの発表があるまで前述の通りCMOSグローバルシャッターを搭載するミラーレスカメラの存在ってのは懐疑的でした。それはCMOSグローバルシャッターはそもそも通常のローリングシャッター方式に比べて画質が大きく劣るものとして認識されていたからです。画質は実物を見るまでなんとも言えませんが、ここでα9IIIが実用化されたというからにはまともな画質なのでしょう。

価格はかなり高い設定がされていますが、プロカメラマンを始めとして多くのハイアマ(スポーツ、野鳥分野)でも響く機種だと思います。

そして、ビデオグラファーにとっても適度な画素数で6Kオーバーサンプリングでの撮影ができることから4Kの高解像度コンテンツを作るのに適していると思われます。

ちなみにLog撮影載るんでしょうかね?α9は伝統的にLogプロファイルなかったので今回はそれらが載るのか否かが少々きになるところです。→搭載されるとの事です(2023.11.8追記)

しっかし、ぶっこんで来ましたねぇ。想像していたよりも遥か斜め上のスペックです。というか目が覚めました。。お値段がかなり高いとは言えついにこの時代が来たのか。。。というのが率直な感想です。

ローリングシャッターの終わりの始まりが2023年11月7日だったと後世に残るかもしれません。この機種はメカシャッターの終わりの始まりのきっかけを作ったNikon Z 9 / Z 8の更に上を行くローリングシャッターという変曲点を作り出したわけです。
そしてスポーツ撮影の分野におけるカメラ技術で、キヤノンニコンを現時点では大きく突き放したと言ってもいいでしょう。

寝ようとしてたのに、すっかり目が覚めてしまった。。。

画質に関して(2023.11.9追記)

等倍画質をご覧になりたい方は
https://www.photographyblog.com/reviews/sony_fe_300mm_f2_8_gm_oss_review/sample_images

をご覧ください。

https://www.photographyblog.com/reviews/sony_fe_300mm_f2_8_gm_oss_review/sample_images

1/16000s · f/2.8 · ISO 12800

https://www.photographyblog.com/reviews/sony_fe_300mm_f2_8_gm_oss_review/sample_images

ノイズは偽色というよりも画素単体が飽和した様な白点状の描写がみられます。シャドー部だと分かりやすいかと思います。ディテールは極端に悪いと言う印象はありませんが肌の色が随所で黄色になっている描写が気になります。光源の影響もあるのかも?
と言いながら別のショットを見る限りさほど印象は悪くなさそう。

1/16000s · f/2.8 · ISO 12800

https://www.photographyblog.com/reviews/sony_fe_300mm_f2_8_gm_oss_review/sample_images 

1/6400s · f/2.8 · ISO 12800

https://www.photographyblog.com/reviews/sony_fe_300mm_f2_8_gm_oss_review/sample_images 

まぁいずれにせよ、このカメラは画質を最優先した機種ではなく、メカシャッターレスで同時性を確保したい人向けの機種でしょうから、風景撮りの人向けではないでしょう。無論、星景写真とかで使う様な使い方は意味が無いと言えます。

α1もα9もソニーが放つ意欲的かつ実験的要素を含む機種シリーズという印象ですので、そこらへんをわかって使うユーザー向きでしょう。この機種は90万円近いボディですが、その価値がわかる人には安いと言えるでしょう。

ローリングシャッター機に比べてノイズが多い!とかネットでは騒がれていますが、それと引き換えに得るものの方が多いと感じる人も多いでしょうし報道を前提とした日中撮影であれば何ら問題なしと思いますし、ISO6400も実用範囲と思います。少なくともファーストインプレッションは想像していたよりも全然問題なかった印象でした。

現段階で画質ガーと言うのは時期尚早と思いますので、また思うところがあれば記事にしたいと思います。ではでは

 

筆者:SUMIZOON

Facebookグループ一眼動画部主宰

Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOON の人