とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ

ビデオグラファーsumizoonのブログ 一眼動画に関する機材や撮影方法を中心に情報を発信していきます。

H&Y Variable MRC HD ND4-32という可変NDフィルタ

H&Y Variable MRC HD ND4-32なる可変NDフィルタをメーカーさんからサンプル提供頂きました。

このフィルタG9PROIIやS5IIXでの作例撮影時にかなり使っているにも関わらず全然紹介できてませんでした。せっかく提供頂いたのに大変申し訳ありません。

このフィルタ、入手後かなり長い間使ってはいたものの、今まで使っていたフィルタとの差分をしっかり調べた事が無かったのですが、今回やっとこそこらへんの特性が分かったのでこうして記事にしていきたいと思います。

NDフィルタの必要性

このブログをご覧の皆さんには今さら説明不要かなと思いますが、改めて記載したいと思います。動画の撮影では多くの場合、フレームレートの倍のシャッタースピード付近で撮影することがベターとされています。たとえば30pであれば1/60、60pであれば1/120(1/125)という様にです。(まぁ60pの場合は多くのミラーレスカメラが1/120ではなく、1/125設定となるため私はフリッカーを避ける意味で西日本では1/60、東日本では1/100で撮影することがほとんどです。)

つまり、明るいレンズの開放(例えばF1.4)を使って日中の屋外で撮影するならば最低感度(例えばISO100)にしたとしても最適露出を得るためのシャッタースピードは1/1000だったり、ともすれば1/8000やそれ以上になります。

この場合、一枚一枚のフレームに映る動体は完全に止まっている状態となり、それを連続(動画)で見た場合、パラパラとした不自然な映像となります。

この数年テレビや多くの動画配信でパラパラとした映像を目にする機会が増えましたので視聴者としては、その手の映像に違和感が少なくなってきているかもしれませんが、フリッカー(光源が点滅する)などが映り込んでいる場合が多く、撮影者や制作者にそれ相応の意図がない限りは、シャッター速度はある程度落とした方が良いというのが私の今現在の持論です。

もちろん映画やCM/MVでは意図的に高速なシャッター速度で撮影されているケースもあります※。むしろその方が動きにメリハリが出て印象的な映像を撮る事もできますので、必ずしも(1/200以上の)高速シャッターを使ってはダメというわけではないのですが、少なくともシャッタースピードを落とす事を動画撮影者は覚えておいて損はないと思います。

※映画「プライベートライアン」のノルマンディ上陸作戦を描写した映像は高速シャッターを使った例として有名です。また先日友人の照山明氏が「私をスキーに連れてって」のゲレンデのシーンが高速シャッターを使っていて若かりし頃に見たときにスゲー印象的だったという話をしてました。

一方で、信号機のLEDは人間の目には分からない速度で点滅してますので高速シャッターを切って撮影する結構目立ちます。ちなみに以前テレビで大地震直前の映像と称してドラレコで撮った信号機が激しい点滅を繰り返している!これは地震の予兆に違いない!と報道していたのにはちょっと首を傾げました。

可変NDという選択

動画撮影をしていて難しいのは露出の決定プロセスにあります。シャッタースピードで露出をコントロールするのであれば可変NDは不要ですが、一般的にNDフィルタを使って露出をコントロールする動作撮影において考えてみます。例えばNDフィルタ無して1/1000が最適な露出だったとして、これを1/60にまでシャッタースピードを落としたいとなった場合に撮影者は必要なNDフィルタを決定しなければなりません。

この場合カメラマンは

1/1000→1/500→1/250→1/125→1/60と4EV減光しなければならない。つまり1/(2^4)=1/16までレンズの入光を押さえればシャッタースピードを落とせる。と計算します。つまりND16を入れれば撮影に適した露出を1/60で得られる。とフィルターワークに慣れたカメラマンは計算できます。

でも、多くの人にとってこれは結構難しいですし、屋外撮影では光量が変化していくので、バーニア式でフィルタをクルクル回して連続的に明るさを変えられる可変NDの方が使い勝手がいいのです。そもそも面倒な計算要らんしね。それに複数のNDフィルタを持ち歩く必要も可変NDならありません。

これが世の中で可変NDが重宝される理由なハズです。

ただし、可変NDフィルタはその原理上なんらかの偏光効果を有しているので色が変わる、減光しすぎるとムラが出るなどの問題が発生しやすいです。また、望遠レンズを使用した際にピントが合いにくくなるという問題も発生しやすいですので、減光を極端にする場合はご注意ください。

長年使ってきた可変ND

私が動画撮影を始めた時に買ったNDはTIFFENの可変NDです。当時品質の良い可変NDの定番で、多くの一眼動画ユーザーが使っていたと記憶しています。

可変範囲は2段から6段でこれは2回ほど買い換えています(合計3回購入)。ただしお値段は二万ちょいとそれなりにします(昔はもっとした気がします)。

H&Y Variable MRC HD ND4-32なる可変NDフィルタ

毎度前置きが長くなりましたが、やっとこH&Y Variable MRC HD ND4-32の説明。

hy-filter-japan.com

これは先に述べたTIFFENの可変NDに比べて極端に薄く小さいです。

以前使っていた可変NDフィルタもH&Y Variable MRC HD ND4-32も同じ77mmのフィルタ径ですが、その大きさと厚みはかなり違いがあります。

フィルタの厚みや大きさ、重量なんてどうでもいいじゃん。と言われそうですが、それはちょっと違います。

以前いマグネットシステムを使ったフィルタ交換システムについて何回か説明したことがありますが、マグネットの吸着力には限界があります。つまりフィルタが重くてデカい場合、レンズにフィルタを付けたまま歩いて何かの拍子にレンズの先端が体に強く触れたりするとフィルタが脱落します。

私が毎度NDフィルタを買い替えるのは劣化するからというものありますが、この脱落でフィルタを傷つけてしまうことが主要因です。なのでフィルタは軽くて小さいものがありがたいです。

前面にはフィルタが重ね付けできるマグネット機構を搭載

面白い事にこのフィルタの前面にはマグネットが埋め込まれています。

レンズに取り付ける側(フィルタの後方)はスクリュータイプですが、フィルターの前面側にはフィルタスレッド(溝)が切られいません。その代わりマグネット式のフィルタが付けられる仕組みになっています。

例えばH&YのミストフィルタやCPLフィルタ、はたまた単体NDフィルタをねじ込み無しでワンタッチで重ね付けられる構造になっています。

H&Y Variable MRC HD ND4-32とMagnetic White Promistフィルタは互換性があるのでパチンと吸着する

 

hy-filter-japan.com

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色味の変化(カラーシフト)

さて、ここでこのNDを使った実験をしてみます。単純にホワイトバランスを固定して、NDを濃くしていき色味が変化するかを見てみます。

可変ND無し(SS=1/8 F/ISO/WB固定)

左:ND4相当(SS=1/2 F/ISO/WB固定) 右:ND8相当(SS=1s F/ISO/WB固定)

左:ND16相当(SS=2s F/ISO/WB固定) 右:ND32相当(SS=4s F/ISO/WB固定)

ほんの少し色のシフトが暖色にシフトしていると感じる人がいるかもしれません。現にND4(最低効果)から若干ですが色のシフト(色温度にして200K程度)があります。

が、これは同条件にて撮影した結果、過去から使っていたNDでもほぼ同じ傾向でした。

このフィルタの特性としてND32までの減光が最大減光効果となります。ND32まで濃くして言っても色のシフトはほぼ変わらない様です。

実際にND32あればよほどベース感度が高いカメラを使わない限り、多くの場合カバーできます。尚、ベース感度が高いカメラを使って、ND32以上に減光したいケースではND2もしくはND4を重ね付けすれば最大ND64/ND128とすることができますので、必要に応じて重ね付けをするのが良いかと思います。

尚、その発想は既にされていてこれまたお友達のエマークさんが紹介しておられました。

youtu.be

中望遠まで使えるフィルタ

このフィルタは色ズレも少なく多くの場面で使えるコストパフォーマンスの高いフィルタですが注意点があります。

それは400mm域の超望遠レンズを使う場合においては、このフィルタの使用は避けた方が良いという点です。これは可変NDあるあるですが、可変NDと超望遠の相性は悪い事が多く、像が結像しない事が多くあるのです。実際にどの焦点距離からピントが合いにくくなるのかの正確なデータは持ち合わせていませんが、概ね85mmまでであればなんら問題なく使用できる印象です。現に24-105mmのレンズ全域で使っても問題ないので100mmでも全然OKだと思います。(ここでの数値は35mm判換算焦点距離ではなく、レンズ自身の焦点距離を指しています。)

メーカーさんの情報によると下記フィルタであればより精度の高い研磨技術をつかっているので更に望遠域まで仕様が可能という事です。

hy-filter-japan.com

こちらは自腹で近く購入してみたいと思います。

まとめ

軽くて、薄くて、比較的安価なのはカメラマンにとってありがたいです。それでいて各種フィルターが重ね付けできるのは動画撮影時におけるフィルターワークの煩雑性を緩和してくれるものだと思います。

ご興味のあるかたは是非一度H&YのHPをご覧くださいませ。

hy-filter-japan.com

 

筆者:SUMIZOON

Facebookグループ一眼動画部主宰

Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOON の人