とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ

ビデオグラファーsumizoonのブログ 一眼動画に関する機材や撮影方法を中心に情報を発信していきます。

手持ちのフィルタを最大限活かすKase マグネットアダプターリング

宮崎に住むカメラ業界に関わっている友人Yさんから、「これ試して感想聞かせてください~」と送って頂いたものがあります。それは

Kase Magnetic Adapter Ring Kit Pro

というもの。今回はこれについて書いてみたいと思います。「Kase Magnetic Adapter Ring Kit Pro」は、いわゆる前玉につける、フィルター類を瞬間的に「取り付け」、「取り外し」ができる超絶楽ちんになるアダプターです。

撮影現場では手際良く作業したい私にとって、この手の製品を試したくない訳がありません。ちょっとマニアックな話ですがお付き合いいただけると幸いです。

はじめに

この手の製品元祖は、過去にマンフロットが扱っていたXUMEというもので、つい先日まで私も使っていました。詳しくは2019年頃に書いた下記の記事をご覧ください。

sumizoon.hatenablog.com

XUMEのマグネット式フィルタ交換システムは、一眼動画黎明期に多くの人が使っていたアイテムです。一眼動画撮影は

・露出をコントロールするためにNDフィルタが必要になるケースが多い

・レンズ交換を行う機会が多い

という2つケースが発生します。つまりレンズ交換の度にNDフィルタを付け替えるという面倒くさい作業が伴います。

もちろん、レンズ毎に(固定or可変)NDフィルタを付けておくのも手ですが、そんなにフィルターを持ち歩けないし、多数のレンズにそれぞれNDを付けておくなんてのはコスト的にも現実的ではありません。

なので、

①金属プレートがついたホルダー(フィルター背面に装着)
②磁化したアダプター(レンズ前面装着)

①と②が磁気で吸着させるシステムを使ってフィルターの着脱を楽にしてしまおうという寸法です。

この手のアイテムは界隈では大流行りしました。その後、XUMEはディスコンになり、現在では入手困難なアイテムです。代替品は無くはないけどフードが取り付けられなくなるなどの製品が多いのでそこら辺を理解して使うのが良いと思います。この製品の場合はレンズのフィルタ径と同じアダプターを使うとフードもちゃんと使えます。

Kaseとは

Kaseはフィルターとして最近有名になったKaniやNiSiと同様に中国のメーカーになります。

en.kasecn.com

主にカメラのレンズフィルター、撮像素子前面に付けるタイプのフィルター、ドローン用のフィルタを製造、販売しているメーカーで、その設立は2011年。移り変わりが多いカメラ周辺機器メーカーの中にあって意外とその歴史は長い印象です。

尚、日本では「知る人ぞ知る」よしみカメラが同製品の取り扱いを開始しています。

yoshimi.ocnk.net

後述するパーツをそれぞれリーズナブルな価格で単体販売しているので、是非上記サイトをご覧になってみてください。

Kase Magnetic Adapter Ringとは

さて本題。この2週間ほど使ってきて、KaseのMagnetic Adapter Ringは単にマンフロットのXUMEの代替品にとどまらない事が分かりました。まずは、Kase Magnetic Adapter Ring Kit Proの中身を紹介します。

Kase Magnetic Adapter Ring Kit Proを開けると

①MAGNETIC SCREWEDアダプターリング(フィルター背面装着用)
 代理店のよしみカメラでは【B】マグネットリングと表記

②MAGNETIC アダプターリング(レンズ前面装着用)
 代理店のよしみカメラでは【A】マグネットベースと表記

③MAGNETIC INLAIDリング
 代理店のよしみカメラでは【C】マグネットジョイントと表記

④INLAID取り付け取り外しパーツ

尚、前述のよしみカメラのサイトではKase Magnetic Adapter Ring Kit Proは扱っておらず【A】マグネットベース + 【B】マグネットリング+【C】マグネットジョイントを購入した場合と同等になります。同サイトで購入すると7,000円となるのでこの手の製品にしてはリーズナブルです。A&Bはセットで4,500円、Cは2500円)

事前にXUMEの様なものと聞いていたので、開封時に①と②は理解できました。ですが③と④てどうゆこと??と。。。。でもこのパーツがこの製品のキモなのです。

というのも、いわゆるXUMEなりのフィルター着脱システムはその構造上、レンズ枠前面からかなり飛び出した構造になってしまいます。超広角レンズなどを使うとケラれますので使えない場面は正直多いのです。INLAIDリングはそれを極力排除する構造となっています。

上の写真は77mmフィルタ径のレンズと77mmのINLAIDリングです。

上の写真の様にINLAIDリングはフィルター径の内側に埋め込まれる構造となっており、取り付け、取り外しには付属のパーツを使います。(先の①を吸着させて直接ねじ込む方法が取り付けは楽です。)

INLAIDリングを取り付けた後の図(上)。写真を見て分かる様にレンズの前面からパーツの飛び出しは一切ありません。

さて次はフィルター側です。普段使っている固定NDをつけてみます。当たり前ですが、普通にくるくる付ければ簡単につきます。

ウチは固定NDは比較的安価なKenko PRO1Dを使う事が多いのですが、今回の件で、もうちょっと薄枠のフィルタに入れ替えようかなと思いました。

あとはマグネットで付きますので、近づければ「パチン」とくっつきます。そして以前使っていたXUMEよりも強力にくっつきます。

上記はKase MAGNETICスクリューアダプターリング+インレイドリングの場合です。尚、このシステムを使うとレンズ本体前面からフィルタまでのオフセット分は2mmにとどまります。

多くの人がお世話になったマンフロットXUMEですが、超広角との相性が悪かったのはこれが理由です。Kase MAGNETICスクリューアダプターリング+インレイドリングの場合だとレンズ、組みあわせるフィルターにもよりますが、ケラれる確率はさがりますのでマンフロットXUMEよりも良い結果をもたらします。

また、この場合は77mmフィルタ径のレンズに対して77mmのマグネティックアダプターをつけているためフードが使えるのもありがたいです。

尚、MAGNETIC INLAIDリング(マグネットジョイント)は上記の様にフィルターネジの内側に取り付けるモノです。つまりレンズによってはネジ溝が深いケースがあります。その場合INLAIDリングがレンズ前面よりも深い位置に取り付けられることになり、結果として①のMAGNETIC SCREWEDアダプターリングと面で接しなくなります。故に①と③に隙間が生じるためお互いの吸着力が弱まります。ネジ溝が深くINLAIDリングが奥まってしまう場合は無理せず②MAGNETIC アダプターリング(レンズ前面装着用)を使うようにしましょう。

Kase Magnetic Adapter Ring Kit Pro X2セットを使った
2段階フィルタ楽ちん入れ替えシステムを3本レンズで運用する

前節で②MAGNETIC アダプターリング(レンズ前面装着用)を使っていませんでしたが、④のレンズの内側に埋め込むタイプのアダプターではなく②は従来型のアダプターに近い物になります。取り付け方は普通にレンズの前面にねじ込むだけですが、2mm弱ほどフィルター前面からアダプターが飛び出す形状となります。なので、超広角には使いにくい構造です。(フィルター径55mの超広角に77mmのステップアップリングを付けて②を取り付けるとかならアリだと思う)

なので、このアダプターは超広角ではなく、やや広角~望遠域のレンズに相性がいいと思います。

さて

①MAGNETIC SCREWEDアダプターリング(フィルター背面装着用)x2
 よしみカメラでは【B】マグネットリングと表記

②MAGNETIC アダプターリング(レンズ前面装着用)x2
 よしみカメラでは【A】マグネットベースと表記

③MAGNETIC INLAIDリング x2
 よしみカメラでは【C】マグネットジョイントと表記

を使うと2つのフィルタの重ね掛けをしつつ3本のレンズでフィルターをラクに交換できるシステムができるので紹介します。

使用レンズは下記

LUMIX S14-28mm F4-5.6(③MAGNETIC INLAIDリングを装着)
LUMIX S 35mm F1.8(②MAGNETIC アダプターリングを装着)
LUMIX S 85mm F1.8(②MAGNETIC アダプターリングを装着)

このうち35mmと85mmはフィルター径が67mmなので68-77mmのステップアップリングを装着した上でマグネティックアダプターを取り付けています。(尚マグネット式のレンズキャップは別売りです)

35mmと85mmはレンズ前面からリングが少し飛び出すタイプの②MAGNETIC アダプターリングを使っていますが、標準~中望遠域なのでなんら問題無し。

次に

手持ちの固定NDの背面に
①MAGNETIC SCREWEDアダプターリング
③MAGNETIC INLAIDリング

を取り付け、可変NDの背面に

①MAGNETIC SCREWEDアダプターリング

を取り付けます。下記の前後関係を参考にしてください。

これでKase Magnetic Adapter Ring Kit Proを2セットまるまる使い切った状態。

これのいいところは固定NDの前面に可変NDを重ね掛けできる点です。固定NDの前面にINLAIDリングを付けていますので可変NDを重ね掛けできるという仕掛けです。超広角で使うとケラれますが、標準域では問題なく使えます。可変NDは濃度を濃くすると画質低下を招きますので、そうならないために固定NDと組みあわせるという使い方ができます。

実際の使用を想定するとそれぞれ固定NDを単体で使用したケースが上記

ちょっとわかりにくいですが、固定NDの前面に可変NDを重ね掛けした状態。重ね掛けをする場合は背面が固定、前面を可変とします。

どの組み合わせもパチンパチンと一瞬で装着可能です。

尚、ステップアップリングを取り付けた2本のレンズは当然ながらフードは付けられません。その場合は67mmでアダプターリングを揃えるしか方法は無いと思います。

まとめ

本製品は吸着力はマンフロットよりも上、かつレンズ面からのフィルタの飛び出しも最小限に抑えられているので単なるXUMEの代替品というよりも広角を活かした撮影でも使用可能なケースが増えます。具体的に力を測るべく業界の数値計測職人のアノ方の元にコレを持っていきたいところですが。。。。

この数年、いくつかフィルターを楽に交換できるシステムってのは発売されていますが、手持ちのフィルタでシステムを組めるこのシステムは私にとっても多くの方にとっても使い勝手がよいと思います。なによりコスト安いしね。

尚、2023年6月より同製品はよしみカメラで販売を開始しています。Amazonでは同製品は取り扱っていないので下記サイトをご覧になって購入検討頂くのがよいかと思います。

yoshimi.ocnk.net

 

筆者:SUMIZOON

Facebookグループ一眼動画部主宰

Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOON の人
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