とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ

ビデオグラファーsumizoonのブログ 一眼動画に関する機材や撮影方法を中心に情報を発信していきます。

Nikon Z6IIIのファーストインプレッション(動画のローリングが予想外に速い件)

はじめに

先ほど発表になったNikon Z6IIIに関して記載したいと思います。(本当は記載的には「Nikon Z 6III」ですが以降「Z6III」のようにスペースを省略してきします。)

Nikon Z6IIIに関してはかなり以前から噂がポロポロでていましたが、確証めいたものは私も把握することができませんでした。

以前のNikon Z6IIIとほとんど性能が変わらないのでは?という噂からα9IIIと同じセンサーを搭載するという非現実的なものまで実に様々でした。

NIKONさんのご厚意により発表の直前の体験会に参加させて頂き実機の方も触らせて頂きました。そしてZ6IIIをお借りすることになりましたので、本ブログ記事では、まずは概要を紹介します。

また、以降のエントリではZ6IIIでの実撮影インプレッションなどを紹介していきたいと思います。

というか、今日の今日まで「この機種の詳細をよく隠し通せたな。。。」と感心しました(笑)

Z6III作例

まだ、実撮影時間は2時間ほどですが、現状の作例を貼っておきます。現状まだ一般公開できるほどには編集できてませんのでtentativeとしてます。本当動画は6K60p/4K120pをN-RAWで撮影して軽く露出・コントラスト調整しただけのものです。FHD240pの撮影は別途試してみます。

youtu.be

左下にColor Grading:DaVinci Resolve STUDIO 19として記載はしていますがグレーディングと言える様な作業はほぼ行っていません。

Z6IIIの動画カメラとしての特徴としては高感度耐性に関しては極端に良くなったと言う印象はありませんが、今までの24MPカメラの画質をほぼそのままにフル画角6K60pとAPS-C4K120pが撮影できるようになった。と言えます。これだけでもこのカメラを使う意味があると言えます。

Z6III機種のファーストインプレッション

Z6IIIは言うなればミニZ8という印象です。持った感じもNikon Z8に比べて明らかにコンパクトで軽い印象です。それでいて、高性能な動画撮影(フル画角6K60p / APS-C 4k120p@N-RAW撮影)を実現しています。

左:Nikon Z8(筆者所有)  右:Nikon Z6III

そもそもZ6IIIの事前の噂では、「Z6IIとセンサーは同じ」とか「超高速の積層型が搭載されている」とかいろいろな噂が流れていました。結果、Z6IIIのセンサーは部分積層型というフルサイズとして世界初の方式を採用しています。

以下、私なりの解釈を書きます。
この部分積層センサーは、従来読み出し速度を律速していたA/Dコンバータや周辺回路を画素チップとは別チップとして積層型とすることにより、大幅な速度向上を実現したものだという解釈です。またメモリを積層しないタイプのセンサーになるためコスト的にも優れているものと思います。

Z6IIIではこの部分積層センサー技術がベースとなり、フル画角での6K及び4K60pとAPS-C 120pを実現しています。
私は積層型はZ6では搭載されないと予想していただけに、この発表は非常に驚きました。

Nikon Z6III 製品概要

このブログはスチルよりも動画寄りの情報を発信しているサイトなので、いつもの様に動画性能に関わる部分を中心に紹介しますが、スチル性能に関しても少し触れます。
まずはNikon Z6IIIの製品が概要になります。

レンズマウントニコンZマウント
・撮像素子:有効画素数2450万画素 部分積層型CMOSセンサー
 (フルサイズとして世界初)
・動画記録画素数(RAW動画):
   6048x3402(フル画角) 60p/50p/30p/25p/24p
   4032x2268(フル画角4K) 60p/50/30p/25p/24p 
   3984x2240(APS-C画角4K) 120p/100p/60p/50/30p/25p/24p
・通常動画記録フォーマット:
   5.4K 60p/50p/30p/25p/24p
   4K 120p/60p/50p/30p/25p/24p
   FHD 240p (フル画角の95%にクロップされる)
・認識AF対応被写体:人物/犬/猫/鳥/飛行機/車/バイク/自転車/列車
・静止画プリキャプチャー性能:秒間60コマ@フル画角,秒間120コマ@APS-C画角
・AF方式:ハイブリッドAF(位相差AF/コントラストAF)
・動画N-Log階調時ISO感度
    ISO800〜51200 拡張感度204800まで対応
・スチル/動画SDR階調時ISO感度
    ISO100〜64000 拡張感度204800まで対応
・寸法:138.5 x 101.5 x 74mm
・質量:760g(バッテリー、メモリーカード含む)
・価格: ボディのみ:435,600円、24-105mm f/4 Sキット551,100円

 

Nikon Z9に始まった強烈な動画性能はZ6IIIでも同様です。どうしちゃったのよ?と思うレベル。なお、Z8に関しては下記の4つの記事をVookさんの方で掲載していますので併せてご覧いただければ幸いです。

 

RAW動画機としてのNikon Z 8レビュー①(概要編) | Vook(ヴック)

RAW動画機としてのNikon Z 8レビュー②(撮影編) | Vook(ヴック)

RAW動画機としてのNikon Z 8レビュー③(編集/グレーディング編) | Vook(ヴック)

RAW動画機としてのNikon Z 8レビュー④(マニアック編) | Vook(ヴック)

特にRAW動画フォーマットであるN-RAWやが「扱いやすい6K解像度で撮れる」という部分ではZ8/Z9よりも好まれる人も多いと思います。また内部収録のH.265ではZ8/Z9を超える5.4K60p(クロップ無し)での収録が可能です。

ターゲット層

写真や動画に対して真剣に取り組む、「所謂ガチ勢」が前提になると思います。というのも、Z6IIIは若年層が気軽に買える値段では無いからです。ボディのみで40万円を超える値段設定ですので、気合いが入った層が買うカメラだと思います。

今現在4Kを大きく超えるオーバーサンプリングで、4K60pがフル画角で撮れるカメラはかなり限られています(例えばZ8/Z9)。それらはZ6IIIよりも高価格帯です。なので本体価格40万円は冷静に考えるとそれでも「安い」と言う印象です。
一方で、動画は撮らずにスチルオンリーのユーザーにとっては「高い」と感じると思います。つまりかなりこの価格に関しては人によって受け取り方が違うのです。

ちなみにスチル撮影機能に関してはメカシャッターは前提であるものの読み出し速度が大幅に改善しているため、多くのシチュエーションで電子シャッターでの撮影が可能であると考えます。後述しますが、動画の幕速はZ6IIIに軍配が上がり、スチルの幕速はZ8/Z9に軍配が上がります。

Z6IIIを支える技術

世界初部分積層型CMOSセンサー

まず注目すべきは前述のようにフルサイズとしては世界初である部分積層型CMOSセンサーでしょう。これによってZ6II比で3.5倍の高速読み出しを実現とカタログには記載されています。実際にセンサーのローリング速度を計測してみましたが、確かに動画、スチル共に速いです。

また、積層センサーを搭載してながら43万円という価格を実現できたのはトータルのチップ面積を小さく保つ事ができる部分積層型CMOSセンサーの恩恵でしょう。

Z6III - 製品特長 | ミラーレスカメラ | ニコンイメージングより

FXで60fps/DXで120fps プリキャプチャー可能

前述の部分積層型CMOSセンサーの恩恵は電子シャッターのFXフォーマット60fpsに直結します。DXフォーマット(APS-Cフォーマット)であればその倍の120fpsまでの連写速度を実現します。

メカシャッターはあるが動画のローリング速度はZ8/Z9を大きく上回る

スチル(3:2画角)の幕速は1/100程度ですのでストロボ同調速度はZ8/Z9には及びません。そもそもZ8/Z9は大容量のフレームメモリを積層チップとして搭載することによってボトルネックを解消しているアーキテクチャですが、Z6IIIはメモリを有しておらずボトルネックはエンジンとの間のインターフェースにあると思われます。ですが、これはあくまでスチル撮影の場合の話です。

元々Nikon Z8/Z9は動画撮影時にはメモリを使わないで読み出す構造のため、動画撮影においてはNikon Z6IIIの方がローリング速度が速いようです。

と言うかこの点は全くの予想外でした。ギリギリ60fps相当の幕速と思っていましたがこの幕速はグローバルシャッター機を除けば1ラインあたりの処理速度はフルサイズ最速だと思われます。

例えば上の写真はNikon Z8(写真上)とZ6III(写真下)の幕速(ローリング速度)を比較したものです。測定条件としては

Z8: 8K60fps N-RAW
Z6III:6K60fps N-RAW
となります。

光源として1KHzのDuty約50%の光源を撮像した結果。Z6IIIの縞の数は19本以下のため100fpsを超える幕速といえます。一方でZ8の縞の数は30本以下のため60fps相当である事が分かります。

つまり、Z6IIIは60fps撮影ながら幕速はそれを大きく上回る速度でキャプチャ動作をしていると言えます。

尚、本測定を行うにあたり、お友達のたかTube氏に幕速測定器をご提供いただきました。同氏に感謝いたします。本測定器に関する紹介はこの動画をご覧いただければと思います。

ではなぜ4K120fpsが大きくクロップされるAPS-Cフォーマットに限定されるのかですが、これに関してはエンジン側のリソースが限界に近いため。と推測することもできます。ですが、6K96fps(N-RAW)あたりまではファームウェアアップデートで対応できるのでは?と密かに期待しています。(8K60pが処理できるZ8/Z9のエンジンEXPEED 7が搭載されているのでほぼ同じデータレートになる6K96fpsは処理可能な気がする。。Nikonさん勝手なこと言ってすいません。。。)

一つ言えるのはフル画角での6Kからのオーバーサンプリングで4K120pの速度を実現するには速度が足りていないと言う事ができます。EXPEED 7的にもセンサー読み出し的にも難しいはずです。

ですが、いずれにせよ動画撮影時における1ライン単位の読み出し速度は最速と言って良いかと思います。

後日再検証したいネタではあります。

FHD240fpsが可能 

動画撮影の幕速が速いことは前述のとおりですが、記録画素数をより落としたFHDフォーマットでは240fpsになります。この時の幕速は実測3msec以下であることが計測でわかりました。つまり333fps以上の幕速が実現できていそうです。写真は撮ってませんが計測済み。あわよくば300fpsをファームアップしてほしいやつです。(またしても勝手を言ってすいません。)

その他

Z6IIIはデュアルネイティブISOであることは間違いなさそうです。と言うのもN-Log撮影じのノイズの切り替わりがISO6400を境に大きくノイズが減るからです。これに関してはまた別途書きた意図思いますが、例えばISO4000で撮るよりもISO6400の方がノイズが少ない映像を撮ることができると言うことになりそうです。

更に気付きとしては底面にはビデオボスが備わっています。
この事からもZ6IIIは動画撮影機能に関してかなり力を入れているとも言えます。無論スチルの機能・スペック向上も図られていますが、Z9以降の機種はシネマカメラもびっくりの動画スペックを備えています。

操作系に関してはNikonのミドルクラスが採用しているものとほぼ同じと言っていいです。モードダイヤル方式なので直感的に操作する事ができます。

とりあえず、今日のところはこれくらいにして、また作例や気づいた点、について今後も紹介していきます。というか、新宿からZ6IIIを持って帰ってくるのでヘトヘトでして、これ書いてる最中も寝落ちそうでした。

あまり、マニアックな事を書いてもそっぽを向かれそうなので、実写やユースケースを含めて以降のZ6IIIのレビューを書いていきたいと思います。
一つ思うにはZ8をすでに使っている人であれば、Z6IIIは強力なサブ機として使えるし、映像作品を撮るためのメイン機材としてもその期待に応えてくれるスペックです。

あと一応書いておきます。

ここのところ、LUMIX S9/LUMIX GH7と立て続けに実機レビューしてきていますが、どれが一番優れているの?という問いかけを自分にしてみました。ですが、それは全く野暮な話です。その答えは使う人や使用条件によって異なります。

そこら辺を題材に記事を書くのも面白いと思ったりもしています。

てなわけで次回もお楽しみに。

 

筆者:SUMIZOON
Facebookグループ一眼動画部主宰
Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOON の人

 

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