マイクロフォーサーズはボケない?
以前も書いたのですが、意外と知られてないマイクロフォーサーズのボケ事情(どんな事情だか...)について書きたいと思います。
とにかく、フルサイズ界隈からは「ボケない」と言われがちなマイクロフォーサーズです。確かに背景がボケると「なんか上手くなった気になる」というのはありますが、いつでもどこでもボケりゃいいってもんでは無いです。
ですが、確かにボケを作りたい場面はあります。背景情報を消したい場合や極端に被写体を浮かび上がらせたい場合はボケると楽なことも多いのは確かです。今回は純正ではありませんが、マイクロフォーサーズ機で使える(おそらく)ボケ量Maxになる組み合わせについて紹介します。尚、純正レンズでは実現不可の領域なので今回は、サードパーティレンズの話です。真似される方は自己責任でお願いします。
私が愛用するマイクロフォーサーズ「ボケ番長」
以前も紹介したことがある個人的ボケ番長ズームレンズはSIGMA 50-100mm F1.8です。

マイクロフォーサーズにはLUMIX純正の10-25mm F1.7と25-50mm F1.7という変態レンズがありますが、それを遥かに上回るボケを実現するのがSIGMAの50-100mm F1.8です。
これ、標準域〜望遠域に転用できるズームレンズとしては、最大の明るさを誇るズームレンズです。価格もレフ機時代のものなので安いです。たまに新品在庫も見かけるのでそこまで古いレンズではありません(発売は2016年だったと記憶)。
ただし、妥協のない作りなのでクソ重い(約1.5kg)。。。そして、通常のマウントアダプターを介してしまうと35mm換算の画角は100-200mmとなるので望遠ズームとなってしまいます(その使い方もアリっちゃありだけど)。
なので、後述する縮小光学系(レデューサー)を使えばマイクロフォーサーズでギリ標準域70mm〜140mmとして運用できると汎用性が高いレンズとなります。で、その方法と作例のお話。実はこのレンズはAPS-C用のレンズながら、APS-Cよりも少し大きなイメージサークルをカバーしています。そして、古いレンズながら、今時の高画素数のカメラでもへっちゃらな解像力を有します。
尚、このレンズをマイクロフォーサーズで運用する場合はレンズ側を持って移動・撮影するのを心がけてください。じゃないとヤワなボディにつけた場合、マウントが歪む可能性もあります。
有効口径55mmオーバーのスペック
焦点距離が同じであればF値が小さい方がボケる、同じF値であっても焦点距離が長い方がボケるというのは感覚的にも多くの方が理解されていることかと思いますが、これをわかりやすく数値化したものが焦点距離をF値で割った有効口径です。ボケの大きさははこの有効口径に比例します。たとえば50mm F1.4のレンズの場合、有効口径は
50mm / 1.4 = 35.7mm
です。
ボケ量はセンサーサイズには依存しませんが、マイクロフォーサーズにつけると画角が2倍に狭くなるので、たとえばマイクロフォーサーズでフルサイズの50mm画角を実現しようとすると25mm F1.4とかのレンズを使うことになりますが、この場合は
25mm / 1.4 = 17.8mm
となりマイクロフォーサーズで25mm F1.4を使う限りはフルサイズの50mm F1.4よりボケ量が半分になると言えます(F0.7というレンズが実在すればフルサイズ50mm F1.4と同じボケ量になる)。これが、一般に言うマイクロフォーサーズがボケないと多くの方が感じられる理由です。
では、先のSIGMAのレンズに関してですが、このレンズはテレ端で100mm F1.8のスペックですので
100mm / 1.8 = 55.5mm
となります。つまり50mm F1.4より圧倒的にボケると言えます(画角は当然狭いけど)。ちなみにワイド端の50mmでも50/1.8= 27.7mmとかなりのボケ量を実現します。ですが、この50-100mmというレンズはマイクロフォーサーズで使うには少々長いレンズなので、レデューサーレンズという光学系を挟むことで画角を0.71倍にすることを考えます。

レデューサーをつけると画角が広くなりますが、これはイメージサークルの小さいマイクロフォーサーズとイメージサークルの大きなレンズの組み合わせだからできる芸当です。
勘違いしがちだけどレデューサーではボケ量は変わらない、でも...
上で示した写真は、SIGMA 50-100 F1.8にレデューサーレンズ(Viltrox EF-M2II)を付けてF1.2にした状態です。(正確にはF1.27に明るさが1段向上します)
ちなみにF1.27に明るさが上がるとボケ量も増えると思いがちですが、
① SIGMA 50-100mm F1.8を素の状態で使用
② SIGMA 50-100mm F1.8にレデューサーレンズをつけてF1.27にして使用
の①と②のテレ端での最大ボケ量は同じです。②は1段明るくなりますが、そもそも焦点距離が0.71倍と短くなるのでレデューサをつけようとつけまいとボケ量は同じなのです(ボケ量はマスターレンズの変態スペックのおかげであり、レデューサーをつけたからではないことに注意です)。
① SIGMAmm 50-100 F1.8 テレ端の有効口径 = 100/1.8 = 55.5mm
② SIGMAmm 35.5-70 F1.27 テレ端の有効口径 = 71/1.27= 55.8mm
つまり上記の数式からボケが変わらないということがお分かりでしょう。
ちなみに存在しませんが、0.5倍の画角になる2段明るくなるレデューサーがあったとすると、フルサイズでで撮影した場合の画角と同じでボケ量も同じになるはずです。
話を元にもどしますが、有効口径55.5mmというのは単焦点ばりのボケ量ですし、レデューサーをつけた後の焦点距離は0.7倍の35mm判換算で70-140mmと扱いやすい焦点距離になります。これがレデューサーをつける一つの意味です。
おそらく、マイクロフォーサーズの純正レンズの標準〜望遠域で一番有効口径が大きいAF対応レンズはオリンパスの
75mm F1.8(有効口径41.7mm)
でしょうけど、この75mm F1.8の単焦点レンズよりもボケるということになります。
また、マイクロフォーサーズの大口径ズームの25-50mm F1.7の有効口径は50/1.7=29mmですので、ボケ量に関してはSIGMA 50-100mm F1.8の55mmに遠く及ばないと言えます。またボケ目的で25-50mmを買ったはいいものの、テレ端しか使わないという人はむしろノクチクロン(42.5mm F1.2)の方がボケます。
※ちなみに純正レンズでは300mm F4が有効口径が75mmと大きいですが標準画角撮影はできませんし、フォクトレンダーの60mm F0.95も有効口径が60mmを超えますがAFの使用はできません。
もちろん、レデューサーをつけることによって一段明るくなるので、露出を稼ぐという意味もあります。特にこの50-100mmというレンズはズームレンズながら、F1.27という単焦点に比べても明るいという変態レンズになるため、夜の撮影でも威力を発揮します。
ちなみに、レデューサーレンズは縮小光学系レンズを挟むことになるため、画質は大丈夫なのか?と思われるかと思います。私も過去にいくつかのレデューサーを試しましたが、同価格帯ではViltroxのものがベストという認識です。解像感の低下はなく、むしろ0.7倍画角となることで情報量が凝縮された分、画質が向上したとすら感じるものです。
SIGMA 50-100mm F1.8 + VIltrox EF-M2II + G9PROIIの作例
では有効口径55mmのボケ量を活かした撮影をするとどうなるのかを実際にご覧ください。
まぁ、マイクロフォーサーズはボケすぎないのが利点の一つではありますが、SIGMA 50-100mmを使うとこれだけボケるといえます。ボケもフルサイズの大三元で140mm撮影した場合よりもボケは大きいので、この映像はフルサイズで撮ったと感じる人が多いと思います。
しかも4K120pは唯一無二の5.7Kのオーバーサンプリングなのでこの絵自体はGH6/7/G9PROIIでしか実現できない解像感のスロー映像と言えます。以下スチルを貼っておきます。

SIGMA 50-100mm F1.8 + VIltrox EF-M2II + G9PROII

SIGMA 50-100mm F1.8 + VIltrox EF-M2II + G9PROII
レフ機時代の古いレンズということもあり、私はこのレンズを以前8万円程度で購入しました。が、今は中古市場に玉数が少ないためか10万円程度で販売されていることが多い様です。
ちなみに下記の映像は以前、写真家の森脇先生を撮影させていただいた映像になります。本映像では「Shot on S1RII」と記載された以外のカットは、LUMIX G9PROIIとSIGMA 50-100mm F1.8 + VIltrox EF-M2II の組み合わせメインで撮影しています(一部S5IIXを使用)。あえてフルサイズのS5IIXを多用しなかったのは激しく降る雪をFHDの300fpsで撮影をしたかったからというのと、普段よりもボケを活かして撮影したかったというのが理由です。
これを見ても、前編フルサイズで撮ったかの様なボケ量の映像であることがお分かりかと思います。
下記の映像も大半はSIGMA 50-100mm F1.8 + VIltrox EF-M2IIで撮影したものです(サムネは8-18mmです)。
2010年に発売されたLUMIX GH2での映像(撮影は最近)ですが、ボケを多用しているためFHDでもピント面がシャープに見えるという効果があるかと思います。
下記の映像はシンガーのS-KEY-Aさんを撮影したもの(完成前の限定公開リンクとなります)。やはり、このレンズでの人物撮影の相性は抜群と思います。
とにかく、やわらかいボケとピント面のシャープさのギャップがお互いを強調し合うので、高級なシネマカメラで高いレンズを使って撮ったと言っても多くの人がいい意味で騙されてしまうと思います。
まとめ
マイクロフォーサーズの良さはコンパクトなシステムで高速フレームレートを実現している部分にあると考えています。S1RIIが実現した4K60p/4K120pは確かに魅力的ですがS1RIIが発売になった今もマイクロフォーサーズの動画撮影の優位性に変わりはありません。4K120pが5.7Kでのオーバーサンプリングで撮れることと、全ての撮影モードで画角が変化しない点を含めていまだにGH6/GH7/G9PROIIの優位性があります。
ボケないと言われることがデメリットの一つであるかのようにマイクロフォーサーズは語られますが、ボケが必要ない状況ではマイクロフォーサーズ以上に使いやすいコンパクトな動画システムはありません。そして、安易にフルサイズを使うよりも、それ以上のボケ表現をすることだってレンズや撮り方を工夫すれば可能です。
尚、今回紹介した組み合わせのAFの挙動は完璧ではありませんが、被写体から2m以上離れた状態だと普通に像面位相差でのAFが可能です。レンズの駆動音がデカいので音声を使うには向きませんが、人を撮ったり普通に歩いて近づいてくる人を撮る分には十分なAF速度です。
また、人によってはEF-M2IIが全く動作しないと言った報告もありますので、購入を検討される方は自己責任で返品がきく販売店での購入をおすすめします。
EF-M2IIは最新ファームウェアにアップデートして使っていますが、G9PROII発売以降にはファームウェアが公開されていません。GH7/G9PROII様に最適化されたファームウエアをアップデートしてくれないかなぁ。。。Viltroxさん、お願いします。
てなわけで、マイクロフォーサーズでボケに飢えている方はお試しを。
それと、パナソニックさん!LUMIX 純正の50-100mm F1.7を作って欲しいです。それがあれば10-25mm / 25-50mm / 50-100mm のマイクロフォーサーズ第三元の完成になると思うのでぜひ作って欲しい。。。今ならきっとSIGMA 50-100mmよりもずっと軽いレンズが作れると思うのです。ぜひ🙏
筆者:SUMIZOON
Facebookグループ一眼動画部主宰
Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOON の人
2011年よりサラリーマンの傍ら風景、人物、MV、レビュー動画等ジャンルを問わず映像制作を行うビデオグラファー。機材メーカーへの映像提供や映像関係メディアでレビュー執筆等を行う。Youtubeチャンネル「STUDIO SUMIZOON」登録者は1.4万人以上。Facebookグループ「一眼動画部」主宰。「とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ」更新中。




