はじめに
今回は国内で正式発表になったLUMIX GH7のレビューを書いていきたいと思います。GH7を試用させて頂いて2ヶ月以上になりますが、このブログの更新が行えてなかったのもこの2ヶ月ほどGH7で撮影する事に夢中になっていたからでして、ここをご覧の方の中には、更新頻度が落ちてきているSUMIZOONはなんかテストしてるんだろうなと思われた方もおられたかもしれません。
はい、その通りです(笑)
大手メディアへの寄稿ではなく、本ブログで正式発表に合わせて先行レビュー記事を書かせて頂くという日が、まさか来るとは思っていませんでした。
ご存知かもしれませんが、私は数多くのLUMIXを気に入っている人間です。過去の公式を含めた紹介・レビュー記事もかなりの数になっていますが、今回も忖度無しの冷静な観点で少々マニアックな側面を含めてGH7の紹介をしたいと思います。
尚、後述しますが、本記事だけではGH7の魅力は半分も伝わらないと思いますので、これとは別に細かい所を掘り下げた記事を後日書いてみたいと思います。
まずは、GH7レビュー記事の第一弾としてご覧いただけると幸いです。
※本記事はLUMIX GH7プロモーションの一環としてメーカーより依頼を受けて作成した記事になりますが、いつもと変わらない感覚で書いておりますし、記載内容に関しての制限は一切受けておりません。長年LUMIXを使い続けてきたユーザーとして普段通りのレビュー記事を心がけております。
機材提供:パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社
- はじめに
- GHの歴史
- 作例
- 2022年春に発売されたGH6の革新的な部分
- 完全体となったGH6がGH7
- GH6から追加・強化された機能
- 細かすぎて伝わらないかもしれない新機能
- 完全体になったダイナミックレンジブーストで画質が大幅に向上した(GH6との画質比較)
- 使いこなしのポイントと次回予告
- まとめ
GHの歴史
ミラーレスカメラLUMIX GHシリーズが一眼動画という分野を切り拓いた歴史的なカメラである事は、古くから動画撮影をしているの多くの人が持たれているイメージだと思います。
今でこそミラーレスカメラで動画撮影を行う事は当たり前になったものの、GH1/GH2が発売された2009/2010年では「動画はビデオカメラで撮るもの、一眼は写真を撮るもの」と多くのスチルユーザーから半ば冷ややかな目で見られていました。当時はまだ一眼動画が市民権を得る前の話です。
一方、ビデオカメラより圧倒的に大きいセンサーで撮る映像の魅力に取り憑かれた「コアな人達」がGH2をこぞって使っていました。振り返ると私もそのGH2にハマった1人だったわけで、当ブログでもGH2の歴史やその性能に関しては幾度か言及しています。とにかくそれまで実現不可能だった浅い被写界深度表現や(当時は)超高画質なFHD画質は画期的だったのです。
そう、私は「一眼で動画を撮る」と言った文化を築いた立役者は間違いなくLUMIX GH2だと思っています。
往年の名機GH2とGH7
そしてそのGH2で芽生えたGHイズムは後のGHシリーズに引き継がれ、ミラーレスカメラとしてその動画性能は異常な程の進化を遂げてきました。
業務で使える高ビットレート、世界初の4K10bitや4K60p、手持ち動画撮影を可能にする強力なボディ内手ブレ補正、魅力的なスロー撮影を可能にするバリアブルフレームレート、外部RAW収録、内部ProRes記録、Log撮影機能、動画撮影を快適に行う(ウェーブフォーム、ベクトルスコープ、ゼブラ等)各種アシスト表示など、今でこそ良く耳にするキーワードの多くは(全てではないですが)他のカメラに先駆けて惜しみなくGHに投入されたものです。
一眼動画のテクノロジードライバがGHという存在だったのは紛れもない事実でしょう。
そのGHシリーズの最新機種が先ほど発表になったGH7です。
今回は動画性能にフォーカスし、GHシリーズの最新機種GH7の機能、特徴、作例について私の感想を含めて記載していきます。
作例
毎度の事ながら本ブログでは小難しいことを書いてしまっているので、まずはGH7の作例をご覧いただき、このカメラのポテンシャルを感じ取っていただければ幸いです。
LUMIX GH7 first look -Completed retina of DNA H-
作例は主に以下の5つにカテゴライズしてクリップを並べています。
①ダイナミックレンジブーストがON条件での撮影(主に5.7K30p/60pを中心に構成)
②像面位位相差のAFを活かした撮影(特に今までGH6では苦手とされていた場面での撮影)
③ハイフレームレートでの撮影(FHD300fps/4K120pでの撮影)
④ProResRAW内部収録(内部収録ProResRAWでの撮影、色編集はFinalCutProを使用)
⑤手持ちでの歩き撮りの撮影(電子手ブレ補正 動画:強)
本作例を撮影するにあたり、使用した主なレンズは下記の通りです。
・LEICA DG VARIO-ELMARIT 8-18mm / F2.8-4.0 ASPH.
・LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S.
・LEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm / F4.0-6.3 II ASPH. / POWER O.I.S.
・LEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.
・LEICA DG ELMARIT 200mm / F2.8 / POWER O.I.S.
全てのクリップの左下には動画ファイルから自動抽出した撮影条件(ISO/SS/F値)、レンズ、フレームレートの条件を記載していますので是非参考にしてみてください。
撮影条件と各種情報
2022年春に発売されたGH6の革新的な部分
まずは、LUMIX GH7のひとつ前の機種GH6について少しおさらいします。
2022年春発売になったGH6
GH6は2022年の春に発売されたマイクロフォーサーズのハイブリッドミラーレス機のフラッグシップモデルです。様々な機能を搭載した革新的なミラーレスカメラですが、その代表的な特徴を3つほど記載します。
フルサイズミラーレスカメラと見紛う「繊細な描写」
GH6で撮影した映像を初めてみた印象は「繊細」と言う一言に尽きます。GH6以前のマイクロフォーサーズ機の絵の印象は素晴らしいカメラであるものの、フルサイズ機に比べるとやや線が太いイメージがあり繊細さと言う意味では若干見劣りする部分がありました。ですが私の中でそのイメージを払拭してくれたのがGH6です。
LUMIX GH6 first lookより
「6Kオーバーサンプリング4K120p」
GH6は今なお他社のミラーレスカメラが到達していない「高解像度5.7Kからのオーバーサンプリング4K120p」を実現したカメラです。4K120p記録ができるカメラは今現在、いつくか存在しますが、それらは画素混合(ビニング読み出し)であったりピクセルバイピクセルであり、GH6が持つ4K120pとは解像感が異なるという認識です。無論動画の画質は解像度(解像感)だけでは決まりませんが4Kパネルの性能を使い切る解像性能で4K120p性能を持ったミラーレス一眼はGH6が初めてであり、発売から2年経った今でも他社の追従を許していないというのが筆者の認識です。
ダイナミックレンジブースト
GH6はフルサイズカメラと肩を並べるくらいのダイナミックレンジを実現しています。それを実現しているコア技術が「ダイナミックレンジブースト」です。技術的な説明や効果は後述しますが、異なるISO設定で得られたデータを画素毎に合成してダイナミックレンジを拡張すると言うダイナミックレンジブースト技術は、高速性を実現しているマイクロフォーサーズならではのものです。
完全体となったGH6がGH7
しばらくGH7を使ってみての感想を一言で表現するなら「完全体/完成形」といったキーワードが思い付きます。
GH6が不完全/未完成と言うわけでは無いのですが、GH6は描写性能の素晴らしさを有する一方で、多くの人にとって使いにくい部分があったのです。その代表的なものは下記の2点
・ダイナミックレンジブーストを有効にした場合のネイティブ感度がISO2000(V-Log撮影時)
・像面位相差を使用しないコントラストAF(DFD)
この2点はNDフィルタの運用や撮影のテクニックやでカバーできるものの、使いこなしには手間や工夫が必要であり、GH6が敬遠される理由の一つだったかと思います。
LUMIX GH6とGH7
この二点に関してGH7では完全に解消されており
・ダイナミックレンジブースト有効時のネイティブ感度はISO500
・像面位相差画素を使用した優秀なAF
になっています。完全体になったGH6がGH7と言う言い方もできるかと思いますが、それだけにとどまりません。
GH7概要
ではGH7の概要について紹介していきますが、GH6からの変更点はNEWとして記載しています。
・マウント:マイクロフォーサーズマウント
・ボディサイズ:約138.4mm×高さ約100.3mm×奥行約99.6mm
・質量:約805g(本体、バッテリー、SDメモリーカード1枚含む)
・動画記録フォーマット:代表例
5.8K30p/24p 4:2:0 10bit(4:3アスペクト)
5.7K60p/48p/30p/24p 4:2:0 10bit
4.4K 60p/48p 4:2:0 10bit(4:3アスペクト)
4K120p 4:2:0 10bit
4K60p/48p/30p/24p 4:2:2: 10bit
4K60p/30p/24p 4:2:0: 8bit(NEW)
FHD240p/120p/60p 4:2:2 240p/120p
・メディア:CFexpress type B x1 & SD x1 の2スロット構成
・EVF:368 万ドットOLED ファインダー倍率0.8倍(NEW)
・手ブレ補正:5軸7.5段効果
・電子手ブレ補正:動画撮影時電子手振れ補正 標準/強(NEW)
・AF方式:像面位相差によるAF(NEW)
・低感度から有効になるダイナミックレンジブースト ISO500(V-Log撮影時)(NEW)
・32bitフロート対応音声収録(XLR2ユニット使用時)(NEW)
・内部RAW動画記録(ProResRAW)(NEW)
・外部SSD記録(静止画・動画両対応)
・外部RAWフォーマット(ProResRAW)
・クロップズーム機能搭載(NEW)
・プロキシ撮影機能(NEW)
・各種ポート:
HDMI A端子/USB3.2(PD対応)/TC IN/OUT端子/マイク/ヘッドフォン端子
・その他:オーバーヒート抑制ファン搭載、マグネシウム合金、防塵防滴耐低温-10℃
相変わらずスペック盛り盛りがGHシリーズらしいところです。
外観はほぼGH6
外観に関しては前面のGH7というバッチ以外に違いを見出すことが難しいほどにGH6と似通っています。
GH6とGH7 外観はほぼ同じ
よく見るとダイヤルの一部が艶消しの処理になっている程度です。
高さ、幅、厚みも共通、ストラップホール、ボタン配置も同じですのでGH6で使用してきたケージはそのまま利用できます。
当然の事ながらGH6のケージはそのまま使用可能
長時間撮影を可能にする空冷ファンやチルトフリーアングル液晶と言ったGH6の特徴はそのまま引き継いでいますので、GH6の操作系に慣れた方でGH7ば全く同じ操作感覚で使用する事が可能です。
撮影フォーマット
相変わらずのコーデックモンスター
GH6同様にGH7も撮影フォーマットの多彩さはミラーレスカメラとして異様なレベルです。
ProResの内部収録や5.7K撮影さらに4:3アスペクトのセンサー全域を使用したアナモフィックレンズに最適な撮影モードであったり5.7Kオーバサンプリングによる4K120pは当然搭載されています。全てをここで書ききれないレベルですが、movコンテナの16:9、17:9アスペクト比率記録だけを分類すると下記の様になります。
GH7の多彩な動画記録形式(movコンテナのみ表示 一部省略)
前述の様に更にアナモフィック記録に適した5.8K 4:3フォーマット、4.4K 4:3フォーマットやFHD60i記録が上記以外に設定できます。
更に、システム周波数を50Hzに変更すればGH6同様にPAL圏に対応した100pや25pの記録も可能です。
GH伝統のシステム周波数変更(PAL圏設定も可能)
GH6から追加された撮影フォーマット①:ProResRAW内部収録
上記に加えてGH7ではいくつかの撮影フォーマットが追加されています。それらについて解説したいと思います。
撮影フォーマットの大きな変化の一つがこのProResRAW内部収録です。ProResRAWは動画の圧縮RAWコーデックの一つです。今まではこのProResRAWを記録するためには外部レコーダーによる収録が必須でしたが、GH7ではCFexpressカードへの内部記録が可能となっています。
ProResRAWの現像・編集ができる編集ソフトはAppleのFinal Cut ProやAdobe Premiere Proなどに限られているためBlackmagic DesignのDaVinci Resolveでは現像・編集を行う事ができませんが、Final Cut Proを使用して編集した際の解像感の高さは目を見張るものがあります。
作例動画よりProResRAW(Final Cut Proによる現像を行なったもの)
ProResRAW収録の設定画面ですが、これに関しては若干注意があります。それはProResRAWとProResの見分けがつきにくいことです。ProResで収録しようとして間違ってProResRAWに設定したり、その逆もあり得るようなメニュー構造ですので、ここは上位から分かれていると間違って設定してしまうリスクが減らせるかなと感じました。
GH7ではProResとProRes RAWはメニュー上は並列に並んでいる
なお、内部収録できるのは5.7K解像度の30/24pとC4Kの60/30/24pになります。
GH6から追加された撮影フォーマット②:8bitフォーマット
GH6ではmovコンテナでの収録は全て10bitフォーマットでしたが、一部のユーザーから「撮って出し」の撮影に適した8bitフォーマットを望む声が上がっていました。
GH6は高ビットレートのカラーグレーディング耐性の高い10bit記録が撮れるカメラですが、基本が10bitのGH6は動画撮影の初心者が扱うには敷居が高いカメラだったことは否めません。業務で使う場合においてもグレーディングを行わない撮って出しの場合は編集効率(編集速度)を考えると8bitが適している場合も多いのです。
今回のGH7では撮って出しに最適な8bitフォーマットが追加されています。
8bit動画フォーマットは10bitのそれに比べ、圧倒的に再生がスムーズで編集効率が高いと言えます。ただし、8bitでのALL-Iコーデックは用意されていないので、今後望む声が上がればファームウェアでの対応がなされるかもしれません。
GH6から追加・強化された機能
電子手ブレ補正動画強によるジンバル不要なレベルでの手持ち撮影が可能
GH5の発売から動画撮影時における圧倒的な手ブレ補正性能を有していましたが、GH7では電子手ブレ補正(動画)を併用した、さらなる手ブレ補正を活かした撮影ができるようになりました。
前述の作例の後半ではジンバル無しで歩き撮りをしたカットがありますので参考にして頂ければと思います。
電子手ブレ補正(動画):強で歩き撮りしたカット 動画作例より
なお、多くの場合でジンバル不要なレベルに達し得る電子手ブレ補正ですが、アクションカムと同様に画角の変化を伴います。
「電子手ブレ補正(動画):強」の場合概ね1.25倍の画角になりますので、広角撮影を行いたい場合はより画角の広いレンズを用いる必要があります。
なお、GH7の手ブレ補正の設定は本機能が追加された事により、若干複雑化しておりますので、画角変化がわかりやすいように下記の表にまとめました。電子手ブレ補正(動画):強に設定した場合のクロップファクタは1.25倍、標準の場合は約1.1倍となっています。
なお、手ブレ補正ブーストとは手持ち撮影時における擬似三脚固定モードになるものです。
勘違いされやすいですが、手ブレ補正補正ブーストは電子手ブレ補正ではなく、あくまでセンサーシフトによるB.I.S.(ボディ内手ブレ補正)のアルゴリズムが違うと理解すると良いでしょう。パン、チルトのカメラワークを使わずに(カメラを振らない)固定撮影を手持ちでする場合、このブースト機能を使うと三脚で固定したかの様な映像が撮れます。
像面位相差によるAF
像面位相差画素を搭載するようになったGH7のピントの挙動に関して記載します。GH6に比べるとGH7のピント位置の移動は非常にスムーズになったと言えます。元々GH6のオートフォーカスはコントラストAFとしては非常に優秀でしたが、コントラストAFを採用してきたLUMIXはピントの前後移動をくりかえすウォブリングという挙動が発生する場合がありました。しかし、GH7に関してはウォブリングの挙動は見られません。
また、従来のコントラストAFではシャッタースピードを遅く設定した際に、動きの大きい被写体にピントを合わせる事は難しい場合がありましたが、動きの大きい被写体でもピントを合わせることが可能になっています。
ただ、試させていただいたプロトタイプのGH7は近景撮影でのAF精度は申し分なかったものの、超望遠の領域になると、やや心許ない挙動が見受けられました。
※使用させていただいていたのは試作機評価機ですので、これらは製品版では改善するものと思います。作例の撮影後に評価者向けに配布されたファームアップではかなり改善していることを確認していますが、各種設定での最適化など、追って検証したいと思っています。
あの20mmF1.7がAF-Cで動作する
スチル撮影に関する内容をほんの少しだけ紹介します。
実は像面位相差による一部レンズの仕様変更が発生しています。LUMIX G20mm F1.7は私のお気に入りのレンズの一つですが、このレンズはGH6より以前のボディではスチル撮影時はAF-Cが効かない仕様のレンズです(動画撮影時は連続AFは可能)。ですが、GH7で使用した場合においてはAF-Cで動作させることが可能となっています。これはGH7が像面位相差を採用したことと関係している様です。動画撮影とは直接関係はないですが、スチル撮影時の嬉しい仕様変更の一つです。
AFの駆動音が大きいため同レンズは動画撮影には向かないかもしれませんし、メーカー推奨の使い方ではないはずですのでその点はご注意ください。
認識AFの強化
・認識AF
人物と動物しか認識AF機能がなかったGH6ですがGH7では大幅にその機能が拡充されています。特にLUMIXで飛行機認識が入ったのはこの機種が初めてです。
GH7では飛行機の認識AFが追加になった
認識AFは人物・動物・車・バイク・電車・飛行機が選択できるようになっています。それぞれの被写体に対してどの部位にAFを合わせるかの選択をする画面があります。
認識する被写体と部位
なお、この認識AFはGH6同様に4K120pなどのハイフレームレートでは使用ができない点はご注意ください。
その他
ライブ配信機能
GH6にはライブ配信機能が備わっていませんが、GH7には配信機能が備わっています。ネットワークに繋がる環境であれば簡単にすぐに配信ができるのが特徴です。この部分に関しては同機能を搭載しているLUMIX GH5M2やS5IIXの過去の記事や解説動画が参考になると思います。
細かすぎて伝わらないかもしれない新機能
リアルタイムLUTの濃度、重ね掛け
リアルタイムLUTはフルサイズLUMIX S5II/S5IIXで初めて搭載された機能です(GH6には非搭載)。いわゆるLUT(ルックアップテーブル)と言われるRGBのそれぞれの輝度情報を変換するテーブルを適用することで様々なルックを表現できる機能です。
LUTは自作することも可能ですが、LUMIX Color Lab.ではLUTは配布されておりまずは以下サイトから気に入ったものをダウンロードして使ってみるのが良いかと思います。
LUMIX Color Lab|LUMIX BASE TOKYO
この機能に関しては詳細を書くので割愛しますが、そのリアルタイムLUTがさらに進化したものがGH7に搭載されているリアルタイムLUTです。
適用度を調整したり、2つのLUTを重ね合わせると言う事がGH7ではできるようになっています。
重ね掛けはなかなかその効果を予想することは難しいですが、少なくともリアルタイムLUTの適用度を調整できる機能を望む声は以前からありました。その声に対応したものがこの機能だという理解です。
HDMI出力時の情報表示がHDMI/背面液晶で可能に
GH6はHDMI出力時に情報表示がOFFになってしまう仕様でした。これは外部モニタを接続した際に露出の設定情報(OSD on-screen display)が背面液晶か外部モニタのいずれか一方にしか表示されないと言う仕様で、一部のユーザーからは不評でした。私も多くの場面でこれで困る場面に遭遇したことがあります。
ホットシューなどに外部モニタをマウントするワンマンオペレーション撮影の場合はこの仕様でも問題ないのですが、HDMI接続したモニターが離れた場所で複数人で設定を確認すると言う使い方はGH6では出来なかったのです。
GH7ではOSD表示が背面液晶、外部モニタの両方で表示できるようになったのは地味ながら大きな進歩だと思います。
尚、5.7K収録の場合はHDMI接続時では認識AFが使えませんので、HDMI出力を行う場合において認識AFを使用したい場合は4Kの解像度に設定する必要があります。
クロップズームによる連続的なズーム表示・記録が可能になった
従来のLUMIXは画素のフルエリアを記録するかPIXbyPIXで動画記録するかの選択はできましたが、その中間値を設定することはできませんでした。
GH7では中間値を設定することが可能になり、また動画記録中にデジタルズームを行う事が可能になりました。ただし、そのズーム範囲は解像度が担保される範囲となりますので、5.7KであるGH7の場合、4K撮影では最大ズームは1.4倍となります。
プロキシ収録(リアルタイムLUT適用も可能)
GH7では動画収録時に本来の記録フォーマット(メインの記録フォーマット)とは別に、低解像度で軽量なプロキシフォーマットでの記録が可能となっています。PCの負荷が高いフォーマットで記録したとしても、編集時にプロキシを使い軽快に編集作業を行い、書き出す時にメインの記録フォーマットを参照するといった使い方ができます。この編集方法は高解像度フォーマットでの編集では一般的ですが、GH7の場合ちょっと変わった使い方が可能になっています。
それは、メインの記録フォーマットはLUTを適用しない状態で記録しつつ、プロキシにはLUTを適用した映像を記録させる方法です。このような使い方は多くのシネマカメラで可能な収録方法だと思いますが、GH7ではこの撮影方法が可能となっています。
プロキシ記録が可能である動画フォーマットの場合は下記の様に「プロキシ可能」と表示されています。プロキシは全てのフォーマットで使用できるわけではなく、5.7K30p/60pや4K120p記録時には使用することが出来ません。
プロキシにLUTを適用し、元素材にLUTを適用せず記録するためには、フォトスタイルのメニューからリアルタイムLUTもしくはMY PHOTO STYLEを選択します。V-Logプロファイルで記録(LUT適用無し)、プロキシ撮影(LUT適用有り)の場合は下記の様にLUTを選択した状態でLUT:OFFに設定します。
また、V-Log以外のプロファイルでLUT無し、プロキシ撮影時LUT有りの記録する場合は上図の様にマイフォトスタイルを使い、同様の設定をする必要があります。
この設定ができたら、以下の様にプロキシ記録:ONに設定し、リアルタイムLUT(プロキシ):ONに設定すればメインのデータはLUTが適用されていない映像となり、プロキシにはLUTが適用された映像が記録される事になります。
ここらへんのインターフェースは少々分かりにくいので少々慣れが必要かと思います。
オーディオフォーマットの仕様変更
GH6では4chオーディオ記録が可能になりましたが、一方で本体のみの収録時であってもモノラル4ch分の記録がなされていました。本体のみの記録の場合は2chはステレオで記録されずに4chがバラバラに記録されるという仕様にユーザーは少し混乱した過去があります。
慣れてしまえばこれをステレオに振り直す事は大した手間ではないのですが、GH6以前のフォーマットと大きく異なった事もあり、この仕様は一部で不評だったとも言えます。
GH7では音声の本体収録時はステレオ2ch記録となるようになっています。
また、XLR2ユニットを使用した場合、今までの24bit記録に加え32bit記録ができるようになっています。32bit収録の外部レコーダーが市場では多く見られるようになりましたが、外部ユニットは必要ではありますがカメラ内部に32bit記録できるというのはGH7が初めてであるという認識です。
また、XLR2ユニットを試用した音声記録に関してはガイプロモーションの照山氏が詳細なレビューを行なっていますので、こちらを是非ご覧ください。
完全体になったダイナミックレンジブーストで画質が大幅に向上した(GH6との画質比較)
これに関してはこのカメラのGH6との一番の違いと言えるかもしれませんし、私が本レビューで一番お伝えしたい内容です。
そもそもGH6は低感度ではダイナミックレンジブーストがONしません。
GH6ではダイナミックレンジブーストがONさせた場合、低ISOと高ISOを合成して一枚のフレームを作り出すと言う機能を有していますが、この機能はISO2000(V-Logプロファイル時)以上の場合に限られます。
つまりGH6では低ISOの場合は低ISO回路のみが動作している事を意味します。これに対してGH7は低ISOであってもダイナミックレンジブーストが有効になることから下記の様なイメージになると思われます。(筆者推測)
ダイナミックレンジブーストの低感度撮影時のイメージ
尚、GH6には「ダイナミックレンジブースト」のON/OFF切替メニューが存在していましたが、GH7では存在しません。これはGH7にとってOFFする必要がないためでしょう。
繰り返しになりますが、GH6でのダイナミックレンジブーストは使用するとベース感度がISO2000(V-Log時)に跳ね上がる仕様だったため、ユーザー側にON/OFFを委ねる思想だったのです。それに比べてGH7の場合はベース感度はISO500(V-Log時)になります。この最低感度ISO500はLog撮影のベース感度としてごく一般的なものです。つまりダイナミックレンジブーストをユーザー側でOFFできる設定をカメラに持たせたとしても、メリットはほとんど無いのです。ユーザー側は意識せずに常に広いレンジで撮影できると言う思想がGH7のダイナミックレンジブーストです。
尚、ダイナミックレンジブーストが強制的に無効になる動画フォーマットがいくつかあります。
・4K120p
・FHD120p/240p
・VFR撮影で4K60fps、FHD60fpsを超えるフレームレート設定をした場合
`例)VFR 4K 30p記録フレームレート75fps 等
ダイナミックレンジブーストが無効なモードでは最低ISO感度が250(V-Logプロファイル時)となり、標準照度(0STOP)からハイライトクリップまでのSTOP数は4.5STOPとなります。GH6での低感度撮影(V-Log ISO2000未満)では全てのモードにおいてこのダイナミックレンジブーストが使えない状態でした。
一方でGH7は最低感度がISO500となるもののハイライトクリップまでの余裕が5.5STOPとなります。ハイフレームレートを使わない限りダイナミックレンジブーストが自動的にONとなるのです。これは使い勝手の面と画質面で圧倒的にGH7が有利と言えます。
また、ダイナミックレンジブーストは「ハイライトがクリップするまでの余裕が1STOP伸びる」と言う機能と思われがちですが、実は注目すべきは低照度側にあり、シャドー部の描写で威力を発揮します。
ここで少し実験をした結果を示します。
以下は標準照度よりも暗い-3STOPアンダーに撮影した映像です。
これをポスト処理で+3STOPプッシュしてレベルを持ち上げたものが以下となります。
両者が全く画質が異なることがわかるかと思います。この違いはさらに-4STOPの撮影データを補正した際にさらに顕著になります。
-4STOP(+4STOP補正)のGH6のデータにはマゼンタのノイズがマダラ状に分布していますが、GH7のデータにはそれらが見当たりません。この大幅な画質改善はG9PROII同様ではありますが、GH6が低ISO回路から読み出された画像のみで生成されているのに対し、GH7の画像のシャドー部は選択的に高ISO回路から読み出されたデータを使用しているためであるためです。
GH6では一定のグレーディング耐性を持っていたものの、GH7の低感度撮影時のシャドー部のグレーディング耐性はフルサイズセンサーを搭載したカメラに匹敵するものです。
両者適正露出で撮影すればさほど違いは気付かないかもしれませんが、カラーコレクションやカラーグレーディング時のシャドーのノイズの乗り方は両者でかなり異なる印象です。
つまり、GH7では極端な明暗差があるような場面ではハイライトクリップしないようにアンダー気味に撮影したとしても画質が保てるという事を意味します。
シャドーのノイズが明らかに違うということはそれだけグレーディングの自由度が違います。
シャドーの表現力が格段に向上した(動画作例より)
GH6で初めて採用された2500万画素と言う画素数のセンサーが持つ、本来のポテンシャルがフルに発揮されたのがGH7だと私は考えています。GH6も素晴らしい描写を持つカメラではありますが、2500万画素のセンサーを搭載したハイブリッドカメラの完成形がこのGH7と感じる1番の理由がこのダイナミックレンジです。言うなれば新ダイナミックレンジブースト、ダイナミックレンジブーストNEOと言うべきかもしれません。
使いこなしのポイントと次回予告
さて、ここまでGH7について紹介しました。GH7はGH6でできる事は全てできる上でより高機能になっていますが、そもそもGH6だけでも、言ってみれば「機能てんこ盛り」なのです。ですが、GH7の全貌を紹介するにはこれくらいの文面で足りるはずがないのです。そのため次回以降、少しユースケースを想定して以下の内容について紹介して行きたいと思っております。
・フォーカスリミッターを使用した動画撮影
・ローリングシャッター(幕速)検証
・カスタムダイヤルを使用した撮れ高が上がる撮影方法
・カスタムファンクションの動画撮影で便利な設定
・LUTの使いこなし
・高感度撮影設定のツボ
・EVF/液晶同時表示、前面タリー、外部タリーランプ追加などマニアックな部分
これらは、私が今までこのブログで記載してきた内容と被りますが、自分自身の整理も兼ねて今一度記事にしたいと思います。
ぜひブックマークをしていただけると幸いです。
まとめ
GH7は既に高機能すぎるほどに高機能なGH6に対し、像面位相差AF、動画手ブレ補正の強化などの機能をアドオンしたカメラであると捉える方が多いかもしれません。
もちろんそれらも素晴らしいアップデートですが、私自身は、GH7の売りは最後に示したダイナミックレンジブーストが全ISO領域で使える「素晴らしい画質」であると感じます。
低感度からダイナミックレンジブーストが使えることで画質が大幅に向上したことで、文句が無く高画質になったカメラであると言えます。GH6との画質の低感度画質の向上は色やトーンを調整する人にとっては明確に感じられる変化の一つだと思っています。
ダイナミックレンジブーストと言うテクノロジをミラーレスカメラに初めて搭載したGH6の登場から2年。新たなGH7は、より高画質になりより扱いやすく多くのクリエーターの道具として活躍すると思います。その登場を心から歓迎したいと思います。
筆者:SUMIZOON
Facebookグループ一眼動画部主宰
Youtubeチャンネル STUDIO SUMIZOON の人